小規模企業共済の貸付制度でお金を借りる方法は?限度額や手続き方法を解説

小規模企業共済の貸付制度でお金を借りる方法は?限度額や手続き方法を解説

事業を経営していると、資金繰りに困ったり、急にお金が必要となったりするシーンに遭遇します。

もし、小規模企業共済に加入しているなら、必要な資金を比較的早く準備できるかもしれません。小規模企業共済には貸付制度があり、最大で2,000万円の事業資金を借りられます。

この記事を読むと、以下のことがわかります。

この記事でわかること
  • 小規模企業共済の貸付制度とはどのようなものか
  • 貸付制度の種類
  • 貸付制度で借りられる金額と利子のシミュレーション
  • 貸付制度のメリット
  • 貸付制度の手続きの流れ

事業資金でお金を借りる必要のある方は、ぜひ参考にしてください。

目 次 更新日:
  1. 小規模企業共済の貸付制度は積み立てた掛け金からお金を借りられる制度
    1. 貸付限度額は掛金の納付月数により異なる
    2. 小規模企業共済の貸付制度で借りられる事業資金の種類は7つ
  2. 小規模企業共済の貸付制度の限度額は最大2,000万円!
  3. 実際にいくら借り入れできる?月額の掛金ごとにシミュレーション
    1. 掛金月額が1万円の場合
    2. 掛金月額が3万円の場合
    3. 掛金月額が5万円の場合
    4. 掛金月額が7万円の場合
  4. 小規模企業共済の貸付制度は0.9%または1.5%の低金利
    1. 利子は前払い!借り入れ希望額は必要な金額より数万円多くしておく
  5. 小規模企業共済の貸付制度を利用するメリット
    1. 審査なしだから他から借りていても借り入れできる
    2. 返済が厳しくても利子を支払えば借り換えられる
    3. 掛金の残高があれば何度でも借り入れができる
    4. 特例緊急経営安定貸付は無利子で借り入れができた
    5. 節税の対象になる
  6. 最低でも1年以上加入していないと借りられない点がデメリット
  7. 小規模企業の貸付制度の申し込みから融資までの手続き手順
    1. 1.必要書類を準備する
    2. 2. 窓口で貸付制度の利用を申し込む
    3. 3.申込書などに必要事項を記入する
    4. 4.手続きが完了後、貸付金などが交付される
    5. 申込みに必要な書類
    6. 借り入れ金額は預金と支払利息に分けて仕訳する
    7. 返済は手動での振込みのみ
  8. お金を借りるなら小規模企業共済の貸付制度を検討しよう

小規模企業共済の貸付制度は積み立てた掛け金からお金を借りられる制度

小規模企業共済の貸付制度とは、共済契約で積み立てた掛金の範囲内で、お金を借りられる制度です。

そもそも「小規模企業共済制度」は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主が事業を廃業したとき、または退職したときの生活資金を積み立てる制度です。国から事業の委託を受け、独立行政法人中小機構が運営しています。

いわゆる「経営者や個人事業主の退職金」にあたる制度ですが、小規模企業共済では貸付事業もおこなっており、お金を借りることができます。お金を借りる場合でも、小規模企業共済を解約する必要はないため、退職金を受け取れる点もメリットです。

例えば、小規模企業で資金繰りが悪化した場合、銀行などの金融機関からすぐに融資を受けるにはハードルがあるケースがあります。小規模企業共済の貸付制度なら、自分が積み立てた掛金の範囲内でお金を借りられるため、迅速に融資が受けられます。

また、小規模企業共済の貸付制度は審査なしで融資を受けられます。融資を受ける際の審査が不安な方にも向いているといえるでしょう。

なお、お金をすぐ準備するために、「小規模企業共済を解約すれば良いのでは」と感じる方もいると思いますが、小規模企業共済の解約はあまりおすすめできません。経営の悪化で廃業となったときに退職金が受け取れなくなり、万が一のときの生活資金の確保が難しくなります。

貸付限度額は掛金の納付月数により異なる

貸付限度額は、掛金残高と掛金の納付月数に応じて変わります。つまり、小規模企業共済の掛金残高が多い人ほど、小規模企業共済に加入して長い人ほど、多額のお金を借りられる仕組みです。

貸付限度額は、掛金残高と掛金の納付月数をもとに、4月と10月の年2回設定されます。小規模企業共済の貸付制度を利用したことのない人は、中小機構から送付される「貸付限度額のお知らせ」を確認してみましょう。

また、掛金ごとの貸付限度額のシミュレーションも後述しているので、そちらもご参照ください。

なお、貸付限度額は、貸付制度ごとに上限が設定されています。貸付制度は大きく分けて「一般貸付制度」と「特別貸付制度」の2種類があり、それぞれの限度額は下記のとおりです。

小規模企業共済の貸付限度額
貸付制度 借入の限度額

一般貸付制度 10万円以上2,000万円以内(5万円単位)
特別貸付制度 50万円以上1,000万円以内(5万円単位)

小規模企業共済の貸付制度は、自分の掛金の範囲内かつ、各貸付制度の上限以内でお金を借りられます。掛金総額が多い場合でも、各貸付制度の上限を超えてお金を借りられるわけではないことも、覚えておきましょう。

小規模企業共済の貸付制度で借りられる事業資金の種類は7つ

小規模企業共済の貸付制度で融資を受けられるのは主に事業資金です。一般貸付制度のほか、特別貸付制度で6つの制度があり、合計7つの種類の貸付制度が提供されています。

各貸付制度により、使い道や限度額などが異なります。7つの小規模企業共済の貸付制度をまとめると、下記となります。

小規模企業共済の貸付制度
貸付制度の種類 使い道 限度額
一般貸付制度 事業資金であれば使途自由
2,000万円以内
特別貸付制度 緊急経営貸付 一時的な売上減少などで資金繰りが難しくなった場合の事業資金 1,000万円以内
傷病災害時貸付 入院や災害被害時の経営安定のための事業資金
1,000万円以内
創業転業時・新規事業展開等貸付 新規開業や転業、事業多角化などに伴う事業資金 1,000万円以内
福祉対応貸付 福祉向上に必要な住宅改造資金や福祉機器などの購入資金
1,000万円以内
事業承継貸付 事業承継で事業用資産や株式の取得などに必要な資金
1,000万円以内
廃業準備貸付 個人事業の廃業や会社の解散などに必要な資金 1,000万円以内

小規模企業共済の貸付制度を活用するときには、「どのような資金に使うのか」を事前に明確にすることが大切です。

また、小規模企業共済の貸付制度は、制度ごとに借入期間や返済方法、適用利率に違いがあります。

例えば、特別貸付制度の「緊急経営安定貸付」は、「コロナの影響で売り上げが減少した」など、経済環境の変化により資金繰りが悪化した場合にお金を借りられる制度です。

掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、50万円以上1,000万円以内でお金を借りられます。借入期間は500万円以下の場合は36ヵ月、505万円の場合は60カ月です。

そのほか、緊急経営安定貸付は適用利率が年0.9%と比較的低い利率でお金を借りられる点も特徴です。

なお、小規模企業共済はそもそも経営者や個人事業主の制度であるため、「退職金にも貸付制度を利用できるだろうか」と考えるかもしれません。しかし、貸付制度は、退職金の用途には利用できないので注意しましょう。

小規模企業共済の貸付制度の限度額は最大2,000万円!

小規模企業共済は、一般貸付制度なら限度額は最大2,000万円です(10万円以上、5万円単位)。もちろん、自分の掛金の範囲内という条件はつきますが、さきほど紹介した特別貸付制度(最大1,000万円)と比較すると、1,000万円多くお金を借りられます。

また、必要書類を準備して手続きが完了すると、即日中に借りられる点もメリットです。

そのほかの金融機関や消費者金融などのビジネスローン、フリーローンと比較すると、資金を受け取るまでのスピーディーさがあり、多額の資金を短い期間で用意しなければならないときに重宝する制度です。

さらに、一般貸付制度は「事業資金」であれば用途は限定されていません。材料費支払いのための資金が必要なとき、金融機関への返済に困ったときなど、事業に関する資金ならさまざまな使い道でお金を借りられます。

一般貸付制度の貸付上限額や最低借入額などをまとめると、下記となります。

一般貸付制度
貸付上限額
・2,000万円以内
・掛金納付月数により、掛金の7~9割の範囲内
最低借入額
10万円
借入単位
5万円
借入期間
・100万円以下:6ヵ月、12ヵ月
・105万円以上300万円以下:6ヵ月、12ヵ月、24ヵ月
・305万円以上500万円以下:6ヵ月、12ヵ月、24ヵ月、36ヵ月
・505万円以上:6ヵ月、12ヵ月、24ヵ月、36ヵ月、60ヵ月
利率
年1.5%
返済方法
・借入期間が6ヵ月、12ヵ月:期限一括償還
・借入期間が24ヵ月、36ヵ月、60ヵ月:6ヵ月ごとの元金均等割賦償還
利子の支払い方法 ・期限一括償還:借入時に一括前払い
・割賦償還:借入時と返済時に6ヵ月分の前払い

一般貸付制度は、借入金額ごとに借入期間が設けられている点が特徴です。100万円以下の場合は6ヵ月と12ヵ月から選択できます。505万円以上になると、6ヵ月、12ヵ月、24ヵ月、36ヵ月、60ヵ月の5つの選択肢から選べるようになります。

ただし、借入期間ごとに返済方法が変わり、利子の支払い方法も異なる点には注意が必要です。借入期間が6ヵ月と12ヵ月の場合は期限一括償還となり、お金を借りるときに利子を前払いします。

一方、借入期間が24ヵ月、36ヵ月、60ヵ月の場合は元金均等割賦償還となり、利子はお金を借りるときと返済するときに、6ヵ月分の利子を前払いします。

実際にいくら借り入れできる?月額の掛金ごとにシミュレーション

小規模企業共済の貸付制度では、自分が積み立てた掛金の範囲内、かつ各貸付制度の上限内でお金を借りられる点は、すでにご紹介したとおりです。

ただし、毎月の掛金は1,000円から7万円の範囲内(500円単位)で自由に設定できます。小規模企業共済に加入している人それぞれで月額掛金には違いがあるので、「自分の掛金の場合、いったいどれくらいが貸付制度で借りられる範囲となるのだろう」と疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。

掛金の範囲内は掛金納付月数により掛金の7~9割となるため、借り入れられる限度額の計算方法は下記のとおりです。

限度額の計算方法
  • 借りられる限度額 = 掛金月額 × 掛金納付月数 × 0.7~0.9

借りられる限度額がイメージしやすいように、以下で掛金月額ごとのシミュレーションを紹介します。

掛金月額が1万円の場合

小規模企業共済の掛金月額が1万円の場合は、掛金の納付期間が1年で10万円、10年で84万円~108万円程度のお金が借りられます。

掛金納付期間が20年を超えてくると、借りられるお金の限度額も160万円を超えてきます。「当座の運転資金のために150万円が必要」であるときなどに、有効活用できます。

掛金月額が1万円の場合
掛金納付期間
掛金総額 借りられる限度額
1年
12万円 10万円
2年
24万円 16.8万円~21.6万円
3年
36万円 25.2万円~32.4万円
4年
48万円 33.6万円~43.2万円
5年
60万円 42万円~54万円
6年
72万円 50.4万円~64.8万円
7年
84万円 58.8万円~75.6万円
8年
96万円 67.2万円~86.4万円
9年
108万円 75.6万円~97.2万円
10年
120万円 84万円~108万円
15年
180万円 126万円~162万円
20年
240万円 168万円~216万円
25年
300万円 210万円~270万円
30年 360万円 252万円~324万円

なお、小規模企業共済の掛金月額は1,000円から7万円までの範囲で、500円単位での増額や減額が可能です。

掛金を多くするほど退職金として受け取る金額が多くなるほか、貸付制度で借りられる金額も増えます。掛金は全額を課税対象となる所得から控除できるので、手元の資金に余裕があるときは、掛金増額の検討も選択肢です。

掛金月額が3万円の場合

小規模企業共済の掛金月額が3万円の場合は、掛金の納付期間が1年で25.2万円~32.4万円程度、10年で252万円~324万円程度のお金が借りられます。

掛金月額が3万円の場合
掛金納付期間 掛金総額 借りられる限度額
1年 36万円 25.2万円~32.4万円
2年 72万円 50.4万円~64.8万円
3年 108万円 75.6万円~97.2万円
4年 144万円 100.8万円~129.6万円
5年 180万円 126万円~162万円
6年 216万円 151.2万円~194.4万円
7年 252万円 176.4万円~224.8万円
8年 288万円 201.6万円~259.2万円
9年 324万円 226.8万円~291.6万円
10年 360万円 252万円~324万円
15年 540万円 378万円~486万円
20年 720万円 504万円~648万円
25年 900万円 630万円~810万円
30年 1,080万円 756万円~972万円

10年の納付期間がある場合、掛金月額が1万円と比較すると約200万円の違いです。業務の効率化のためにITツールを導入したい場合など、設備投資に200万円ほどの費用が掛かるケースでも、貸付制度を利用して資金を用意できます。

掛金月額が5万円の場合

小規模企業共済の掛金月額が5万円の場合は、掛金の納付期間が1年で42万円~54万円程度、10年で420万円~540万円程度のお金が借りられます。

掛金月額が5万円の場合
掛金納付期間 掛金総額 借りられる限度額
1年 60万円 42万円~54万円
2年 120万円 84万円~108万円
3年 108万円 126万円~162万円
4年 240万円 168万円~216万円
5年 300万円 210万円~270万円
6年 360万円 252万円~324万円
7年 420万円 294万円~378万円
8年 480万円 336万円~432万円
9年 540万円 378万円~486万円
10年 600万円 420万円~540万円
15年 900万円 630万円~810万円
20年 1,200万円 840万円~1,080万円
25年 1,500万円 1,050万円~1,350万円
30年 1,800万円 1,260万円~1,620万円

毎月5万円で30年間積み立てると、1,000万円以上のお金を借りられる計算です。景気の悪化などで急激に資金繰りが悪化した場合にも柔軟に対応できるでしょう。

なお、特別貸付制度の場合は、上限額が1,000万円となっているため、掛金の範囲が1,000万円を超える場合でも、1,000万円以内での融資になります。

掛金月額が7万円の場合

7万円は、小規模企業共済で積み立てられる最大の掛金月額です。掛金月額が7万円の場合は、掛金の納付期間が1年で58.8万円~75.6万円程度、10年で588万円~756万円程度のお金が借りられます。

掛金月額が7万円の場合
掛金納付期間 掛金総額 借りられる限度額
1年 84万円 58.8万円~75.6万円
2年 168万円 117.6万円~151.2万円
3年 252万円 176.4万円~226.8万円
4年 336万円 235.2万円~302.4万円
5年 420万円 294万円~378万円
6年 504万円 352.8万円~453.6万円
7年 588万円 411.6万円~529.2万円
8年 672万円 470.4万円~604.8万円
9年 756万円 529.2万円~680.4万円
10年 840万円 588万円~756万円
15年 1,260万円 882万円~1,134万円
20年 1,680万円 1,1760万円~1,512万円
25年 2,100万円 1,470万円~1,890万円
30年 2,520万円 1,764万円~2,000万円

掛金月額が7万円であると、納付期間が30年間前後ある方の場合は、一般貸付制度の上限額である2,000万円までお金を借りられる場合もあります。小規模企業共済は自分の退職金を積み立てられるだけでなく、緊急の借入先としても有用な制度です。

小規模企業共済の貸付制度は0.9%または1.5%の低金利

小規模企業共済の貸付制度は、一般貸付制度で1.5%、特別貸付制度で0.9%という低金利も魅力です。

事業のお金が足りず、急に資金が必要となった場合、銀行のビジネスローンや消費者金融などノンバンク系のフリーローンなどが思いつく経営者の方もいるのではないでしょうか。

小規模企業共済の利率と、銀行のビジネスローンやノンバンク系のローンなどの利率を比較すると下記のようになります。

利率の比較
名称 制度・商品名 利率
小規模企業共済 一般貸付 1.5%
特別貸付 0.9%
東京スター銀行 スタービジネスカードローン 4.5%~14.5%
三井住友銀行 ビジネスセレクトローン 2.125%~
GMOあおぞらネット銀行  あんしんワイド 0.90%~14.00%
りそな銀行 りそなビジネスローン「活動力」 6.0%~14.0%
AGビジネスサポート 事業者向けビジネスローン 3.1%~18.0%
キャレント スーパーローン 7.8%~18.0%
楽天銀行 楽天スーパービジネスローン エクスプレス 3.0%~14.5%

銀行のビジネスローンやノンバンク系のローンの利率は10%を超える商品が多く存在します。一方、小規模企業共済の貸付制度は0.9%と1.5%で固定です。両者を比較すると、小規模企業共済の貸付制度の利率の低さがうかがえます。

借りたお金の返済を考えると、利率がいくらかは大切なチェックポイントです。利子を抑えて返済時の負担を少なくしたい場合、小規模企業共済の貸付制度は、優先順位の高い借入先といえるでしょう。

利子は前払い!借り入れ希望額は必要な金額より数万円多くしておく

小規模企業共済の貸付制度の利子で注意したいのは、利子を前払いしなければならない点です。

借入期間などで異なる場合もありますが、小規模企業共済の貸付制度でお金を借りると、借り入れ希望額から利子分が差し引かれてお金が振り込まれます。実際に受け取れる金額は希望額より利子分だけ少なくなる点に注意しましょう。

必要な金額が明確に決まっている場合は、利子を見越した金額を借り入れる必要があります。

なお、利子の支払方法は貸付制度の種類や借入期間の長さにより異なります。

利子の支払方法
種類 借入期間 利子の支払方法
一般貸付 6ヵ月、12ヵ月 借入時に全額
24ヵ月、36ヵ月、60ヵ月 借入時と返済時に6ヵ月分の利子
廃業準備貸付 12ヵ月 借入時に全額
廃業準備貸付以外の特別貸付 36ヵ月、60ヵ月 借入時と返済時に6ヵ月分の利子

お金を借りる際は、事前に利子がいくらくらいになるか計算しておきましょう。以下では、特別貸付(利率:0.9%)と一般貸付(利率:1.5%)に分けて、利子のシミュレーションを紹介します。

利率0.9%で1,000万円借りた場合の利子

特別貸付の利率0.9%で、1,000万円の融資を受けた場合、1日あたりの利子は単純計算で246円です。これを借入期間で計算した場合の利子総額は下記のとおりです。

利子の一例
借入期間 利子の総額
12ヵ月 約9万円
24ヵ月 約18万円
36ヵ月 約27万円
48ヵ月 約36万円
60ヵ月 約45万円

特別貸付の設定利率であれば、1,000万円を1年間借りても利子総額が10万円を超えません。60ヵ月、つまり5年間借りても利子総額が50万円を超えないので、利子返済の負担を軽減したかたちで融資が受けられます。

特別貸付は「緊急の経営の安定のため」や「入院や災害での損害の穴埋めをするため」など、特定の用途の事業資金に限定されているデメリットがある一方、利率が抑えられています。

そのため、用途の合う特別貸付の種類があれば、一般貸付よりも優先して検討する方法がおすすめです。

なお、上記はあくまで単純計算した金額で、実際の利子とは異なる点はご了承ください。

利率1.5%で1,000万円借りた場合の利子

一般貸付の利率1.5%で、1,000万円の融資を受けた場合、1日あたりの利子は単純計算で410円です。これを借入期間で計算した場合の利子総額は下記のとおりです。

利子の一例
借入期間 利子の総額
12ヵ月 約15万円
24ヵ月 約30万円
36ヵ月 約45万円
48ヵ月 約60万円
60ヵ月 約75万円

一般貸付の利率は、特別貸付と比較すると少し高くなります。そのため、利子の総額も特別貸付の場合と比較すると、高くなる計算です。

ただし、一般貸付は特別貸付のように用途が限定されておらず、「事業資金」であれば使い道は自由です。利率が高くなる分、使い道の幅が広がるメリットがあります。

さらに、一般貸付の利率1.5%は、銀行のビジネスローンや消費者金融のカードローンなどと比較すると低い金利です。特別貸付の用途にはあてはまらないけれど、事業資金のお金を借りたいときに、一般貸付はおすすめの制度です。

なお、こちらの利子金額も、実際の利子とは異なる場合がある点はあらかじめご了承ください。

小規模企業共済の貸付制度を利用するメリット

ここまでご紹介してきたように、小規模企業共済の貸付制度はメリットの多い制度です。貸付制度を利用する主なメリットをまとめると、下記となります。

貸付制度のメリット
  • 審査なしだから他から借りていても借り入れできる
  • 返済が厳しくても利息を支払えば借り換えられる
  • 掛金の残高があれば何度でも借り入れができる
  • 特例緊急経営貸付は無利子で借り入れができた
  • 節税の対象になる

お金を借りるときは、事前にメリットについてよく知っておくことが大切です。各メリットを以下でくわしく解説します。

審査なしだから他から借りていても借り入れできる

小規模企業共済の貸付制度の大きなメリットは、審査不要でお金を借りられる点です。自分が毎月積み立てた掛金の範囲でお金を借りるため、必要な書類と準備し、所定の手続きを踏めば基本的にお金を借りることができます。

一方、銀行のビジネスローンや消費者金融のカードローンなどの場合は、お金を借りるときに審査が必要です。審査を通過できなければ融資は受けられませんし、希望する金額を満額借りられるとは限りません。

また、銀行などの金融機関や消費者金融では、審査の際に信用情報機関の情報を紹介します。信用情報機関にはこれまでのクレジットカードやローンの情報が登録されています。他社からの借り入れ件数や借り入れ金額が多い場合、審査を通過できないケースもあるでしょう。

小規模企業共済の貸付制度は、他社からの借り入れとは関係なく、融資が受けられます。そのため、「銀行などでなかなか融資が受けられなくなった」場合にも、お金を借りられる制度です。

返済が厳しくても利子を支払えば借り換えられる

小規模共済の一般貸付は、新たな借り入れを行い、必要な利子を支払うと借り換えが可能です。

例えば、6ヵ月の借入期間で100万円を借りていたとしましょう。当初の予定では取引先からの入金があるはずでしたが、返済までに入金がなかったとします。このように、返済のための入金がなく、返済が困難になった場合に、借り換えの制度は役立ちます。

借り換えは、新規の貸付で提出する場合と同じ書類を準備し、新たに貸付を申し込むことで行えます。利子を再度支払う必要はありますが、その分借入期間を延ばせるため、返済までの猶予を確保できます。

なお、借り換えの手続きが可能なのは、返済期日の翌月末までです。返済が厳しい状況になった場合は、早めに窓口などで相談し、借り換えの手続きを行いましょう。

掛金の残高があれば何度でも借り入れができる

小規模企業共済は、積み立てた掛金の残高があれば何度でも追加で融資を受けられる点もメリットです。制度を利用する回数に限度はありません。

例えば、掛金月額7万円で小規模企業共済に10年間加入していた場合、掛金総額840万円の7~9割の範囲内であれば、貸付制度を利用できます。先月100万円を借りた場合でも、残高の範囲内で融資が可能です。

残高は、小規模企業共済から送付されてくるお知らせ(「貸付限度額のお知らせ」または「掛金納付状況などのお知らせ」)でチェックできます。

書類が見つからない場合は、共済相談室(050-5541-7171、受付時間:平日午前9時~午後5時)または公式サイトのお問い合わせフォームから問い合わせてみましょう。問い合わせの際は、契約者番号や2桁のCDなどを準備しておくとスムーズです。

特例緊急経営安定貸付は無利子で借り入れができた

特例緊急経営安定貸付とは、新型コロナウイルス感染症の影響拡大を受け、業績が悪化した経営者を支援するための制度です。

特例緊急経営安定貸付の特徴は利率が0%、つまり無利子である点です。コロナウイルス感染症の影響で、1ヵ月の売上高が前年あるいは前々年度の同期に比べ、5%以上減少した方を対象に提供されていました。

ただし、特例緊急経営安定貸付は期間が延長されていましたが、令和4年9月30日で受付が終了しています。

そのため、経営状況が悪化してお金を借りたい場合は、現在では特別貸付制度の「緊急経営安定貸付」を活用するか、一般貸付制度を利用することとなります。

なお、新型コロナウイルス感染症の影響により、生活に大きな影響を受けた分割共済金受給者の方への一括支給(繰上支給)は継続して実施されています。

節税の対象になる

小規模企業共済のメリットとして、節税効果がある点が挙げられます。小規模企業共済で納付した掛金は、全額が所得税の所得控除対象となるためです。退職金の準備や緊急時の貸付を利用できるだけでなく、税負担の軽減にもつながります。

これは、「小規模企業共済等掛金控除」と呼ばれる制度です。みなさんのなかにも、年末調整や確定申告で生命保険料控除を申告した経験のある方もいると思います。

小規模企業共済等掛金控除も同様の制度で、申告すると税の控除が受けられます。しかも、生命保険料控除とは違い、「全額」が所得控除の対象となるため、その節税効果は大きいといえるでしょう。

例えば、掛金月額7万円で年間の課税所得金額が1,000万円の場合、年に367,000円の節税効果があります。小規模企業共済の公式サイトで加入のシミュレーションを行えるので、気になる方はぜひ利用してみてください。

最低でも1年以上加入していないと借りられない点がデメリット

小規模企業共済の貸付制度の数少ないデメリットには、制度を利用するために最低でも1年以上の掛金納付期間が必要な点でしょう。

貸付制度の対象者の要件は下記のとおりです。

対象者の要件
  • 貸付資格を判定する時点(4月末日および10月末日)で、12ヵ月以上の掛金を納付している共済契約者

注意したいのは、「貸付資格を判定する時点」で12ヵ月以上の掛け金を納付していなければならない点です。

例えば、貸付制度を申し込む時点では12ヵ月以上の掛金を納付していたとしても、直近の貸付資格判定時点(直近の4月末日および10月末日)で要件を満たしていなければ、制度を利用できません。

繰り返しとなりますが、小規模企業共済の貸付制度は自分が積み立てた掛金の範囲内でお金を借りる制度です。まずは小規模企業共済に加入し、掛金を積み立てることが大前提である点は覚えておきましょう。

また、1年以上の掛金を納付していたとしても、借りたい金額の総額が10万円以下では貸し付けの対象とはなりません。

そのため、「小規模企業共済に加入してないけれど、緊急にお金が必要」「10万円以下の少額のお金をすぐに用立てたい」などの場合は、小規模企業共済の貸付制度は適していません。

特に、少額のお金を借りたい場合は、ほかの選択肢も検討してみましょう。例えば、消費者金融のカードローンやフリーローンなどは、即日融資が可能なサービスも多く、少額の融資に対応しています。

近年では、無利子期間のキャンペーンを設けているサービスも多く、計画的な利用により、利子を抑えながらの融資もできるようになりました。必要なお金の金額や用途を考えながら、自分に合った借入先を検討してみましょう。

小規模企業の貸付制度の申し込みから融資までの手続き手順

小規模企業共済の貸付制度を利用するには、中小機構または商工組合中央金庫で申し込む必要があります。申し込みから融資までの主な流れは下記のとおりです。

貸付制度を利用する流れ
  1. 必要書類を準備する
  2. 窓口で貸付制度の利用を申し込む
  3. 申込書などに必要事項を記入する
  4. 手続きが完了後、貸付金などが交付される

1.必要書類を準備する

小規模企業共済の貸付制度の利用には、印鑑登録証明書や本人確認書類などの書類が必要です。必要書類は後述しているので、あわせてご確認ください。

なお、必要書類の準備は、窓口での申し込みのあとでも構いません。まずは貸付の相談をしたい場合は、先に窓口に訪れてみましょう。必要書類を準備していると、早めの入金が可能となるので、資金を早く受け取りたい方は事前の準備がおすすめです。

2. 窓口で貸付制度の利用を申し込む

中小機構か商工組合中央金庫の窓口で、貸付制度の利用を申し込みます。担当者から必要な書類が揃っているか確認されるので、準備した書類を提出しましょう。

3.申込書などに必要事項を記入する

担当者から貸付金借入申込書などの書類が手渡されるので、必要事項を記入しましょう。契約書番号の記入も必要なので、共済契約者番号が記載されている書類も準備しておいてください。

4.手続きが完了後、貸付金などが交付される

手続きが完了すると、貸付金と貸付金計算書、金銭消費貸借契約証書の控えが交付されます。

上記で一連の手続きは完了です。窓口や書類の準備状況などで所要時間は変わりますが、おおむね30分前後の手続きとなります。

申込みに必要な書類

小規模企業共済の貸付制度の必要書類は下記のとおりです。

必要な書類
  • 印鑑登録証明書(原本、発行から3ヶ月以内)
  • 本人確認書類(運転免許証や健康保険証、マイナンバーカードなど)
  • 実印(共済契約者本人のもの)
  • 「貸付限度額のお知らせ」「共済手帳」など共済契約者番号のわかるもの
  • 貸付金借入申込書
  • 収入印紙(貸付金額で異なる)

すべて借入に必要な書類なので、忘れずに用意しておきましょう。近年では印鑑登録証明書をコンビニのマルチコピー機で発行できる場合もあり、以前と比較すると準備がしやすくなりました。

上記のうち、貸付金借入申込書は窓口で受け取れるので、自分で用意する必要はありません。また、収入印紙の金額は、借入金額で違いがあります。

収入印紙の金額
借入金額 収入印紙の金額
10万円 200円
15万円以上50万円以下 400円
55万円以上100万円以下 1,000円
105万円以上500万円以下 2,000円
505万円以上1,000万円以下 1万円
1,000万円以上2,000万円以下 2万円

収入印紙は金銭消費貸借契約書に必要です。事前に金額を確かめて準備しておきましょう。

借り入れ金額は預金と支払利息に分けて仕訳する

小規模企業共済の貸付制度で資金を借りたら、帳簿に計上します。計上するときには、借方に「預金」や「支払利息」、貸方に「借入金」の勘定科目で仕訳けましょう。

例えば、貸付制度で100万円を借りて、利子が1万5,000円であった場合の仕訳の例は下記のとおりです。

仕訳の一例
借方 貸方 適用
預金 98万5,000円 借入金 100万円 事業資金の借入
支払利息 1万5,000円 利子支払い

小規模企業共済の貸付制度の利子は前払いのため、借入時に支払利息を計上します。

また、借入金の返済時には返済の仕訳が必要です。借入金を借方に、預金などを貸方に計上し、借入金の消しこみを行いましょう。

返済は手動での振込みのみ

小規模企業共済の貸付制度は、口座引き落としで返済をできません。期日までに振り込みすることとなるので、期日を忘れないように注意しましょう。

返済の振込口座は、返済期日の数週間前に送付される返済通知に記載されています。一般的に、貸付を申し込んだ金融機関(商工中金など)の口座が振込口座です。

返済通知を受け取ったら、期日までに下記の手順で振り込みを行いましょう。

振り込みの流れ
  1. 振り込みに利用する口座のある金融機関の窓口に行く
  2. 振替依頼書を受け取り、氏名や連絡先、振込先の口座番号や受取人の名称を記入する
  3. 口座の通帳などとともに振替依頼書を提出し、振り込みを行う

なお、返済をする前には、借り入れをした商工中金に電話連絡する必要があります。返済通知に大まかな手順や連絡先が記載されているので、指示に従って返済してください。

お金を借りるなら小規模企業共済の貸付制度を検討しよう

小規模企業共済の貸付制度は、納付した掛金の範囲内で事業資金を借りられます。借り入れに審査はなく、お金を受け取るまでの期間が比較的短く済むため、事業で緊急にお金が必要になったときに役立つ制度です。

小規模企業共済の貸付制度には、大きく一般貸付と特別貸付の2種類があります。一般貸付は用途が広い分利率は高めで、特別貸付は用途が限定される一方、利率は低く設定されています。自分の用途に合わせ、適切な種類を選びましょう。

小規模企業共済の貸付制度は、返済が厳しい場合に新たに利子を支払うことで借り換えが可能です。事業資金が必要なときは、小規模企業共済の貸付制度は検討してみましょう。

<参考>
お金を借りる方法一覧!|ドットマネー

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