求職者支援資金融資でお金を借りる方法は?条件や審査について解説
「会社を退職して新しい職を探している」「転職を機会にスキルアップを図りたい」方のなかには、生活のための資金が足りず、お金を借りたいと思っている方もいるのではないでしょうか。
求職者支援資金融資は、国が再就職や転職、スキルアップを行う方を支援する「求職者支援制度」のひとつです。要件を満たすと、低い金利でお金を借りられます。
この記事では、求職者支援資金融資の内容、借りられる金額や金利、借りるための条件や方法を解説します。そのほかのお金を借りる方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
求職者支援資金融資とはどんな制度?
求職者支援資金融資とは、求職者支援制度で職業訓練受講給付金を受給する予定の方を対象に、不足する生活費のためのお金が借りられる制度です。
求職者支援制度では、雇用保険が適用されなかった離職者の方、自営業やフリーランスを廃業した方、一定額以下のパートタイマーで働きながら転職を目指す方などを対象に、職業訓練の受講を支援しています。
求職者支援制度には「職業訓練受講給付金」の制度があり、職業訓練中の生活のために、職業訓練受講手当(月額10万円)や通所手当、寄宿手当などの受給が可能です。
ただし、職業訓練受講給付金のみでは生活していけないケースもあります。たとえば、配偶者や子どもを扶養している方の場合、10万円の職業訓練受講手当だけでは生活費を賄えない場合もあるでしょう。
そのようなときに、役立つ制度が求職者支援資金融資です。求職者支援資金融資を活用すると、職業訓練の受講予定月数に応じたお金を低い金利で借りられ、生活費に充てることができます。
求職者支援資金融資で借りられる金額の上限
求職者支援資金融資は配偶者の有無など家族構成により、借りられる金額の上限に違いがあります。
家族構成 | 貸付額 |
---|---|
同居または生計を一にする別居の配偶者、子ども、父母がいる場合 | 月額10万円(上限)×受講予定訓練月数(最大12) |
上記以外の場合 | 月額5万円(上限)×受講予定訓練月数(最大12) |
同居する配偶者・子ども・父母、あるいは別居はしていても生計を一にする配偶者・子ども・父母がいる場合は、月額上限10万円に受講予定訓練月数をかけた金額を借りられます。
一方、上記以外の場合、たとえば一人暮らしの方、単身者の方の場合は、月額上限5万円に受講予定訓練月数をかけたものが借りられる金額の上限です。
たとえば、訓練期間が4ヵ月であった場合の限度額の一例は以下のとおりです。
家族構成 | 限度額 |
---|---|
配偶者と同居している場合 |
・限度額40万円 ・月額10万円×4ヵ月 |
一人暮らしの場合 |
・限度額20万円 ・月額5万円替える×4ヵ月 |
なお、貸付額は1万円単位です、また、求職者支援資金融資の受講予定訓練月数は最大12ヵ月となっています。12ヵ月を超える訓練期間の場合は、1年間が経過する前に再度求職者支援資金の手続きが必要です。
求職者支援資金融資の金利は年2.0%
求職者支援資金融資の金利は以下のとおりです。
- 年2.0%(信用保証料0.5%を含む)
以前は年3.0%の金利でしたが、令和3年1月1日以降にろうきんと求職者支援資金融資の契約を締結したものから、2.0%に変更となっています。
一般的なカードローンは10%を超える金利の商品も多い点と比較すると、求職者支援資金融資は2.0%と金利が抑えられている点が特長です。
また、求職者支援資金融資は担保人や保証人の必要がありません。金利に信用保証協会から保証を受けるための信用保証率(0.5%)が含まれる点もメリットでしょう。
なお、期日どおりに返済できない場合には、返済が遅延している元金に応じて年14.5%の損害金(遅延利息)が生じます。
求職者支援資金融資は「給付」ではなくあくまで「貸付」であるため、利用する際は生活に必要な資金を借りることをおすすめします。
振込みにはろうきんの口座が必要
求職者支援資金融資の振込先は、ろうきん(労働金庫)の口座に限定されています。理由は、ハローワークの指定金融機関がろうきんであるためです。
求職者支援資金融資を利用する際は、ろうきんの口座を準備しておきましょう。口座を保有していない方は、最寄りのろうきんで口座開設の手続きを行ってください。
また、ろうきんでは「ろうきんアプリ」を使ってスマホで普通口座を開設するサービスを提供しています。来店不要で口座を開設できるので、ご自宅でろうきんの口座を開設したい方におすすめです。
ろうきんアプリを使った口座開設の流れは以下のとおりです。
- スマホに「ろうきんアプリ」をダウンロード
- 「口座開設はこちら」をクリック
- 運転免許証の撮影、必要情報の入力
- キャッシュカードの送付
キャッシュカードは、ろうきんアプリでの手続き完了後約1~2週間でご自宅に届きます。求職者支援資金融資を利用したい場合は、余裕をもって口座開設の手続きを行いましょう。
求職者支援資金融資でお金を借りるための条件
求職者支援資金融資を利用するためには、以下の要件の両方を満たしている必要があります。
- 職業訓練受講給付金の支給決定を受けた方
- ハローワークで、求職者支援資金融資要件確認書の交付を受けた方
各要件の詳しい内容を解説します。
職業訓練受講給付金の支給決定を受けた方
職業訓練受講給付金は、ハローワークでの職業訓練を受ける方に対し、訓練受講中の生活費を支援する制度です。
職業訓練受講給付金の支給を受けるためには、以下の支給要件をすべて満たす必要があります。
- 本人の収入が月8万円以下
- 世帯全体の収入が月30万円以下
- 雇用保険被保険者でない、または雇用保険の失業給付を受給できない
- 世帯全体の金融資産が300万円以下
- 現在お住いのところ以外に土地や建物を所有していない
- すべての訓練実施日に出席(やむを得ない事情がある場合は8割以上の出席)
- 同じ世帯に職業訓練受講給付金の受給を受けている方がいない
- 過去3年以内に、不正行為で特定の給付金の支給を受けていない
- 前回の受給から6年以上が経過している
求職者支援資金融資を受けるためには、前提条件として職業訓練受講給付金を申し込み、支給の決定を受ける必要があります。
上記の要件には例外なども設けられているので、疑問点やわからない点などがあるときは、最寄りのハローワークで相談してみましょう。
ハローワークで、求職者支援資金融資要件確認書の交付を受けた方
求職者支援資金融資要件確認書は、ハローワークが対象となる方の要件を確認し、交付する書類です。
求職者支援資金融資要件確認書の交付要件は以下となります。
- 貸付の希望理由が適当と認められること
- 貸付金の返済意思があると認められること
- 「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」第2条第6号に規定する暴力団員でないこと
- 未成年者でないこと
求職者支援資金融資要件確認書の交付を受けたい場合は、職業訓練受講給付金とともに、ハローワークで手続きを行いましょう。
求職者支援資金融資要件確認書はろうきんで融資の手続きを行う際にも必要な書類です。交付を受けたら大切に保管してください。
求職者支援資金融資制度の審査は厳しい?
求職者支援資金融資は公的な制度であるため、金利や返済方法などで職業訓練を受ける方への配慮がなされています。ただし、公的な制度だからといって審査が甘いわけではありません。
先述のように、求職者支援資金融資は「職業訓練受講給付金の支給要件」と「求職者支援資金融資要件」の両方を満たす必要があります。
特に、職業訓練受講給付金の支給要件は、収入や所有する金融資産、職業訓練への出席など、細かな部分まで設定されています。まずは、この要件を満たすことでも大変な場合もあるでしょう。
さらに、上記の要件を満たせば必ず融資を受けられるわけではありません。融資を実行するろうきんでは、審査が実施されるからです。
ろうきんでは、融資をする方の返済能力を調べるため、日本労働者信用基金協会が審査を実施します。審査の基準は公開されていませんが、申込んだ方の属性情報や信用情報などが確認されるのが一般的です。
信用情報には、過去のクレジットカードやローンなどの利用履歴が記録されています。場合によっては審査を通過できなかったり、希望する融資額にならなかったりする可能性も考えておきましょう。
審査に落ちた場合には、生活福祉資金貸付制度などを活用する方法もあります。そのほかの貸付制度は後述しているので、そちらもあわせて参考にしてください。
求職者支援資金融資制度でお金を借りる方法
求職者支援資金融資でお金を借りるときの主な流れは以下のとおりです。
- ハローワークに相談する
- 受講する職業訓練を選び、申込む
- 職業訓練受講手当の支給決定を受ける
- 求職者支援資金融資要件確認書の交付を受ける
- ろうきんで貸付の手続きを行う
求職者支援資金融資でお金を借りる際は、まず最寄りのハローワークに相談してみましょう。融資を含め、求職者支援制度の説明が受けられます。
なお、求職者支援制度は雇用保険を受給できない方を支援する制度です。支援の対象となるには、特定求職者である必要があります。
- ハローワークで求職の申し込みをしていること
- 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でないこと
- 労働の意思と能力があること
- 職業訓練などの支援を行う必要があるとハローワークが認めていること
特定求職者は「求職者支援訓練」または「公共職業訓練」を基本的に無料で受講できます。受講する職業訓練を含め、ご自身が制度を利用するかハローワークの窓口で相談してみましょう。
次に、職業訓練受講給付金の手続きを行います。職業訓練受講給付金の事前審査で必要な書類は以下のとおりです。
- 受講申込・事前審査書
- 職業訓練受講給付金要件申告書
- 職業訓練受講給付金通所届
- 番号確認書類(マイナンバーカードや通知カードなど)
- 身元確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)
- 支給要件に関する確認書類
受講申込・事前審査書などの用紙はハローワークで受け取れます。また、支給要件に関する確認書類では、住民票の写しや収入証明書類などが必要となるので、ハローワークの指示に従って準備してください。
職業訓練給付金支給決定を受け、求職者支援資金融資要件を確認されたら、最寄りのろうきんで貸付の手続きを行います。各決定を証明する書類とろうきんの口座を持参し、窓口で必要な手順を行ってください。
求職者支援資金融資で借りたお金は返済免除ができない
求職者支援資金融資には、職業訓練後に就職したからといって返済が免除される制度はありません。職業訓練受講給付金と異なり、借りたお金は必ず返済しなければない点に注意してください。
求職者支援資金融資は、貸付日が属する月の翌月末以降で、毎月末日が返済日です。
ただし、訓練終了月の3ヵ月後の末日までは、元金が据え置かれます。そのため、訓練中とその後3ヵ月は、利息のみの返済でOKです。受講生の方が、職業訓練に集中できるように配慮されています。
元金を含めた返済が開始するのは、訓練終了月の4ヵ月後の末日からです。返済金額は、申し込みの際に登録したろうきんの口座から自動で引落されます。
なお、職業訓練中に就職が決まるなどで訓練が途中で終了した場合は、訓練終了日が属する月の末日の4ヵ月後の末日から元本を含む返済が始まるので注意しましょう。
不正受給をすると一括返済になり給付はストップする
求職者支援資金融資を利用する場合は、不正受給に注意してください。職業訓練受講給付金を不正に受け取っている事実が発覚すると、給付金の支給がストップするだけでなく、借りたお金の一括返済を求められる場合があります。
なお、給付金の支給ストップや求職者支援資金融資の一括返済が求められるケースは、不正受給だけではありません。以下の行為を行った場合、支給ストップや一括返済となる可能性があります。
- 不正受給を行った
- やむを得ない事由以外で欠席を繰り返した
- 就職支援を拒否した
- 職業訓練受講給付金の支給がストップした
債務残高の一括返済は大きな負担です。求職者支援資金融資はあくまで安定した就職を目指す方を支援する制度である点は、覚えておきましょう。
お金を借りるためのほかの公的支援との違い
「求職者支援資金融資の要件を満たせなかった」「ろうきんの審査で落ちてしまった」ときなどは、そのほかの公的支援も検討してみましょう。
生活費でお困りの方を対象として公的制度には「生活福祉資金貸付制度」があります。生活福祉資金貸付制度では、低所得者世帯や障害者世帯、高齢者世帯などを対象に、以下の貸付を行っています。
資金の種類 | 貸付額 | 金利 | |
---|---|---|---|
総合支援資金 |
・生活支援費 ・住宅入居費 ・一時生活再建費 |
15万円~60万円以内 |
・保証人あり:無利子 ・保証人なし:年1.5% |
福祉資金 |
・緊急小口資金 ・福祉費 |
10万円~580万円以内 |
・保証人あり:無利子 ・保証人なし:年1.5% |
教育支援資金 |
・教育支援費 ・就学支度費 |
50万円以内 | 無利子 |
不動産担保型生活資金 |
・不動産担保型生活資金 ・要保護世帯向け不動産担保型生活資金 |
土地の評価額の70%程度 | 年3% |
特に、緊急小口資金は10万円以内のお金を無利子で借りられます。緊急で生計の維持が難しくなった場合に有用な制度です。
なお、生活福祉資金貸付制度は低い金利でお金を借りられるメリットがある一方、対象は限定されており、要件も満たさなければなりません。実際にお金を受け取れるまで、一定の期間がかかる点もデメリットです。
もし、少ない金額をすぐに借りたい場合には、カードローンを活用する方法もあります。即日融資が可能で、一定期間の無利息キャンペーンを実施している商品もあるので、お金がを借りたいときの選択肢となる商品です。
お金を借りるなら求職者支援資金融資を検討しよう
求職者支援資金融資は、職業訓練中の生活費を職業訓練受講給付金だけではカバーできない方に向け、低金利でお金を貸し付ける制度です。
融資を受けるためには、「職業訓練受講給付金の支給決定」と「求職者支援資金融資要件の確認」が必要です。ろうきんでの審査もあるため、事前に必要な書類を準備しましょう。
緊急時にお金を借りる方法には、生活福祉資金貸付制度やカードローンなどの選択肢があります。ご自身の状況に合わせ、適切な借入先を選択してください。
<参考>
・お金を借りる方法一覧!|ドットマネー