任意整理はクレジットカードで作った借金も対象となるのか?
借金をしたものの返済が厳しいという方は、任意整理をすると月々の返済の負担が軽くなるケースがあります。
任意整理と聞くと、銀行や消費者金融からのローンしか対象にならないと思っている方もいらっしゃるかもしれません。
「クレジットカードの利用でできた借金も任意整理できるの?」、「任意整理をすると、その後はクレジットカードを作れなくなる?」
そのような疑問にお答えすべく、本記事ではクレジットカードと任意整理の関係について徹底解説していきます。
クレジットカードで作った借金も任意整理可能!
任意整理とは、お金を借りた側(債務者)が消費者金融などの貸金業者(債権者)と交渉して金利を下げたり、月々の返済額を減らしてもらうなどして、負担を軽くする手続きのことをいいます。
そして任意整理は、クレジットカードの利用でできた借金でもおこなうことができます。クレジットカードには商品代金の立替払いをしてくれるショッピング機能と、現金を借りるキャッシング機能がありますが、任意整理はどちらに対してもおこなうことができます。
任意整理をすると借金の利息をカットできる場合もある
一般のカード会社なら、任意整理をすることで利息のカットに応じてくれる場合もあります。また、毎月の返済額が多くて困っている場合は、返済期間を伸ばして月々の返済額を減らしてもらうことも可能です。
金利を下げてもらうことと、返済期間の延長は、任意整理の最大のメリットです。
任意整理をしても借金の元本は変わらない
任意整理をしても、借金の元本が変わるわけではありません。「任意整理をしても、元本の減額には応じてもらえない」と覚えておきましょう。
ただし、過払い金がある場合は例外です。利息制限法では、お借入れの上限金利は20%までと決められています。もし20%を超える金利でお金を借りている場合は、過払い金を借金の元金と相殺させることで、借金の減額をすることが可能です。
ただし借入残高がある状態で過払い金請求をするとブラックリストにのる可能性があります。完済後であれば基本的にはブラックリストにのることはありません。
任意整理をするとショッピング枠も使えなくなる
「ショッピング枠はこれからも使いたいから、キャッシングだけ任意整理したい」と考えている人もいらっしゃるかもしれません。
ただし、原則的にショッピング枠とキャッシング枠を個別に任意整理することはできません。キャッシング枠を任意整理したら、ショッピング枠も利用できなくなるので気をつけましょう。
専門家からのコメント
クレジットカード会社は、同社のカード利用者が自己破産申し立てをすれば一切債務が弁済されなくなる可能性があることから、クレジットカード債務についても任意整理に応じることが通常です。
しかしながら、クレジットカード会社からすれば、ある人物の同社発行カードのキャッシング枠の任意整理が開始された場合、当該人物の資金繰りはパンク寸前と理解しますので、同社発行カードの当該人物のショッピング枠利用を停止することになります。
つまり、基本的にショッピング枠も同時に任意整理をすることになります。
任意整理をするとブラックリストに載りクレジットカードは解約扱いに!
契約中のクレジットカードを任意整理すると、そのカードは解約扱いになり、使用できなくなります。携帯代や光熱費などの支払いをカード払いにしている場合は、任意整理をする前に銀行の口座振替などに変更する必要があります。
また、任意整理をすると信用情報機関に事故情報として記録され、いわゆる「ブラックリスト入り」の状態になってしまいます。
ブラックリストにのっている間は、新規でクレジットカードを発行したり、銀行や消費者金融などからの借り入れができなくなる可能性が高くなるので要注意です。
1枚でも任意整理すると他のカードも自動的に解約されてしまう
たとえばA社とB社のクレジットカードを1枚ずつ持っていたとして、A社のカードだけを任意整理した場合、しばらくするとB社のクレジットカードも自動的に解約されてしまいます。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか?
それは、クレジットカード会社が定期的に途上与信をおこなっているからです。途上与信とは、カード会社が契約者に対しておこなう審査のことをいいます。クレジットカードの審査は申込時だけでなく、契約中にもおこなわれているのです。
信用情報機関に登録されている情報は、加盟しているカード会社であれば自由に閲覧することができます。カード会社は定期的に途上与信をおこない、事故情報が登録されている契約者がいれば、自社のクレジットカードの契約を解約してしまうのです。
未使用のクレジットカードや債務残高がないクレジットカードは解約されない場合がある
任意整理をした場合でも、未使用のカードや債務残高がないカードは途上与信がおこなわれても解約されないケースがあります。
カード会社によって基準は異なりますが、作るだけ作って未使用のままのクレジットカードであれば、他のカードを任意整理しても使い続けられる可能性があることを覚えておきましょう。
ブラックリストの間はクレジットカードは持てない
任意整理をしてブラックリストにのると、クレジットカードの利用を停止されたり、貸金業者から融資が受けられなくなるというのは先述の通りです。
ただし、ブラックリストにのるとずっとそのようなペナルティを受け続けるのかといえば、そのようなことはありません。
任意整理の場合、ブラックリストの登録期間は約5年間(長い場合で10年間)となります。約5年(長い場合で10年)が経過すると信用情報機関に登録されている事故情報が消されるので、クレジットカードを作れる可能性が生じます。
専門家からのコメント
任意整理をおこなうとブラックリスト(信用情報機関の事故情報)にのるため、クレジットカードを作れないだけでなく、金融機関から借入れをおこなうことができない(ローンを組めない)というデメリットが生じます。
そのほかにも、連帯保証人になることができない、商品を分割払いで購入することができないといったデメリットもあります。
具体的には、子どもの奨学金の連帯保証人になることができなかったり、スマートフォンを分割払いで購入することができなかったりと、身近なところでも不便が生じます。
任意整理後にクレジットカードが必要になった場合の対策
ネットショッピングやインターネット料金の支払いなどで、任意整理をした後にどうしてもクレジットカードが必要になった場合は、以下の方法をおすすめします。
- デビットカードを作る
- 家族カードを使う
それぞれどのような内容なのか、以下で詳しく解説します。
デビットカードを作る
デビットカードは、カードの利用と同時に自身の銀行口座から引き落としがされます。
デビットカードはクレジットカードとは異なり、カード会社から借金をするわけではないので、信用情報のステータスに関係なく作ることができます。
つまり、審査不要のデビットカードなら、クレジットカードを任意整理した後でも作成が可能ということになります。
家族カードを使う
自身のクレジットカードを任意整理しても、ご家族が作った家族カードを利用することは可能です。
家族カードを作る際は、本カードの所有者の信用情報がチェックされます。信用情報は個人単位で管理されているので、たとえ自身のステータスに問題があっても、本カードの所有者であるご家族の信用情報に問題がなければ、家族カードの作成は可能となるのです。
クレジットカードと任意整理についてのまとめ
クレジットカードと任意整理の関係について解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
最後に、特に重要なポイントをまとめてみました。
- 任意整理すると、利息のカットや返済期日の延長ができる場合がある
- 任意整理をしても、元本は減額できない
- 任意整理すると信用情報機関に事故情報が登録される(ブラックリストにのる)
- 任意整理のブラックリスト登録期間は5年〜10年
- ブラックリスト期間中にクレジットカードが必要になったら、デビットカードや家族カードで代用する
クレジットカードの利用でできた借金を任意整理すると、利息のカットや返済期限の延長ができるなどのメリットがあります。
ただしその反面、信用情報機関のブラックリストにのってしまい、5年間~10年間はクレジットカードを新規発行したり、銀行や消費者金融からお金を借りられる可能性が低くなってしまいます。
お手持ちのクレジットカードの任意整理をお考えの方は、手続きをする前に慎重に検討することをおすすめします。
専門家からのコメント
任意整理は「任意」という名称のとおり、裁判所を利用する法的な手続きではなく、あくまで個々の債権者(クレジットカード会社等)と、利息や月々の返済金額について交渉をおこなう債務整理手段であることから、基本的に家族や会社に知られることなく手続きをすることができます。
したがって、「利息さえカットできれば返済を続けることができる」、「月々の返済額がもう少し低額ならば返済を続けることができる」という事情がある場合には、できるだけ早く弁護士等の専門家にご相談いただければと思います。
しかし、任意整理をおこなった後の生活にはご注意ください。
一度任意整理をおこなった場合、同じ会社が二度目の任意整理に応じてくれることは基本的にはありません。
任意整理をおこなってもクレジットカードの家族カードを使うことはできますが、家族カードを使えばその名義人の方(家族)の借金が増えるだけです。
任意整理をおこなった以上、自己の借金を完済するまでは一切借入れ(家族カード利用を含みます)をすることなく、また、二度と同様の事態を起こさないよう気を付けて生活をするように心がけてください。
滋賀県出身。京都大学経済学部、京都大学法科大学院卒業。東京の外資系大手法律事務所にて、M&A、不動産取引、証券発行、危機管理等を含む国内外の幅広い企業法務案件を取り扱う。大阪にて独立後は、企業法務案件だけではなく、一般民事訴訟、労働事件、家事事件、債務整理案件、交通事故案件、インターネット案件、刑事事件等、個人の方の相談についても幅広く取り扱っている。2019年4月より京都大学法科大学院の非常勤講師を兼任。
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