クレジットカード会社のビジネスモデルのしくみは?利用者や加盟店のデメリットを解説!
クレジットカード会社のビジネスモデルは、利用者と加盟店から得られる手数料で成り立っています。
ビジネスモデルの仕組みを知らなくても、クレジットカードを利用することはできますが、知っておけば経済やクレジット業界の知識が身につきます。
今回は、クレジットカード会社のビジネスモデルや、利用者・加盟店のメリット・デメリットなどを解説します。ぜひ、最後までご覧ください。
クレジットカードは手数料を得るビジネスモデル
クレジットカードは、クレジットカードを利用する会員と加盟店の両方からクレジットカード会社が手数料をもらって成り立つビジネスモデルです。
アメリカでは1950年代から、日本では1960年よりプラスチックカードが登場しました。
利便性の高さやポイントなどのメリットもあり、クレジットカードは全国的に普及しています。株式会社JCBが実施した「クレジットカードに関する総合調査 2019年度版」(※)によれば、クレジットカードの保有率は85%と高い数字となっています。
しかし、生活費に占めるクレジットカードの利用割合の平均は39.2%と低い結果となっています。クレジットカードのビジネスモデルは、利用者と利用回数が増えるほど、クレジットカード会社は利益を得ます。
そのため、入会キャンペーンやポイントサービス、付帯サービスなどのメリットを強調して、会員数や利用回数を増やそうとしています。
クレジットカードの主な機能
クレジットカードはクレジットカード会社が申込者の年齢や収入、居住形態、過去のクレジット履歴などを審査して、支払い能力に問題がない方が持てるカードです。
名前にあるとおりクレジット=信用を担保にして、現金の代わりに支払いができる機能を持っています。
また、ほかにもクレジットカードにはさまざまな機能があります。
- ショッピング機能
- キャッシング機能
- ポイントサービス
- 特典サービス
クレジットカードの機能①:ショッピング機能
ショッピング機能とは、ショッピング利用代金の後払い機能になります。クレジットカードの代表的な機能のため、クレジットカードと聞くと、真っ先に思いつくかもしれません。
利用代金をその場で支払うのではなく、クレジットカード会社が立て替え、後日ほかの請求とともに利用者はまとめて支払いをします。つまり、買い物やサービスを利用したときにお金を持っていなくても、支払いができます。
支払方法は一括払いや分割払い、リボ払いなどありますが、分割払いとリボ払いは手数料が発生します。支払い期間が長くなればなるほど、手数料を多く支払うことになります。
また、クレジットカードには利用上限額が設定されており、その金額を越えようとするとクレジットカードは使えなくなります。
クレジットカードの機能②:キャッシング機能
キャッシング機能とは、コンビニや銀行のATMから現金を引き出す(借りる)機能です。借りたお金はクレジットカード会社が規定する期日までに返済する義務が発生します。
クレジットカードとATMがあれば即座に引き出せますが、手数料と消費者金融カードローンと同等の金利が発生します。
- クレジットカードのキャッシングの金利:年15.0%~18.0%
- 消費者金融カードローンの金利:年3.0%~18.0%
また、ショッピング機能と同じように利用上限額が決まっています。利用枠は自分で変更手続きができ、カード利用開始当初からキャッシング機能を使わないようにすることもできます。
クレジットカードの機能③:ポイントサービス
クレジットカードは利用代金に応じて、一定のポイントが付与されます。クレジットカード会社によって還元率やポイントの使い道は違いますが、同じ金額を現金で支払うよりもお得になります。
実際に、10万円分を現金で使うのと、楽天VISAカードで支払った場合を比較してみます。
- 現金:10万円を使ってもポイントは発生しない
- 楽天カード:10万円を使うと、最低1,000ポイント発生する
楽天カードは、利用代金の1%分が楽天スーパーポイントになります。楽天スーパーポイントは楽天市場での買い物や、加盟店での支払いに利用でき、別のポイントサービスにチャージしたり、ポイント投資に使うこともできます。
楽天市場やお店によっては、ポイントの倍率が上昇するため、さらにポイントをゲットできる可能性があります。このように、同じ金額を現金で支払うよりも、クレジットカードを使うとお得になっています。
クレジットカードの機能④:特典サービス
クレジットカードには、クレジットカード会社が用意した特典サービスがあります。内容はクレジットカード会社によって違い、同じクレジットカード会社でもカードのランクによってグレードが違います。
- レジャー施設やレストランなどの優待割引
- カード会社指定の店舗での優待割引
- 空港ラウンジが無料で利用可能
このように、普段の生活や旅行がお得になるサービスがあります。特典サービスが目当てでクレジットカードを選ぶ方も少なくありません。
クレジットカードのビジネスモデルで取引する3者の関係
クレジットカードのビジネスモデルを理解するうえで、取引する利用者・加盟店・クレジットカード会社の役割や関係を確認しましょう。
①クレジットカードの利用者
利用者とは、クレジットカード会社の審査に通ってカードを発行してもらった方を指します。
クレジットカードを発行してもらうには、審査基準をクリアしなければなりません。通常では、年会費無料などの一般のクレジットカードよりも上位カード(ゴールドカードなど)のほうが審査が厳しくなる傾向があります。
利用者はショッピングの際にクレジットカードを使い、分割払いやリボ払いなどの支払方法によっては、手数料が発生します。
②クレジットカードを導入する加盟店
クレジットカード会社と契約を結んでいる加盟店なら、消費者がクレジットカードでの決済ができます。どのクレジットカードが利用できるかは、店頭やレジにシールとして貼ってあるため、初めての店でクレジットカードを利用するときは確認しましょう。
消費者がクレジットカードを利用すると、加盟店は直接その支払われたお金を受け取らず、クレジットカード会社に請求して、利用手数料を差し引いた金額を後日に受け取ります。
③クレジットカードを発行・管理・請求するクレジットカード会社
クレジットカードは利用者にクレジットカードを発行・管理・請求をする役割と、加盟店へのクレジット業務の開拓、あるいは管理・請求をする役割があります。
2つの役割によって、クレジットカード会社の呼び方が違ってきます。
利用者に対してクレジット業務を請け負うイシュア
イシュアとは、クレジットカードを利用者に発行したクレジットカード会社を指します。利用者に対してクレジット業務を請け負っており、利用者はトラブルや相談したいことがあれば、イシュアに連絡を取ります。
クレジットカード券面裏側にある「クレジットカード発行元」がイシュアです。VISAやMastercardのような国際ブランドとは違います。エポスカードなら、エポスカードがイシュア、VISAが国際ブランドになります。
加盟店に対してクレジット業務を請け負うアクワイアラ
アクワイアラは、加盟店に対してクレジット業務を請け負っています。利用者にとってのイシュアと同じで、クレジットカード決済用のシステムを提供する代わりに、手数料を得ています。
イシュアとアクワイアラは別々のクレジットカード会社が業務提携している場合もあれば、楽天カード会社のように両方のクレジット業務を担っている場合もあります。
利用者・加盟店・クレジットカード会社の関係
利用者が加盟店でクレジットカードを利用すると、加盟店はクレジットカード会社に決済金額を請求します。クレジットカード会社は利用手数料を差し引いた金額を加盟店に支払い、利用者に対して1ヵ月ごとに利用代金の総計を請求して、利用者は利用代金の総計を支払います。
このように、利用者と加盟店とクレジットカード会社の関係は三角形のようにつながっています。
国際ブランドとイシュア・アクワイアの関係
国際ブランドとは、世界中で使える決済システムを提供するクレジットカード会社です。
- VISA
- Mastercard
- JCB
- アメリカン・エキスプレス
- ダイナースクラブ
- 銀聯(ぎんれん)
- ディスカバー
国際ブランドはイシュアやアクワイアラとライセンス契約を結び、VISAやMastercardの決済システムを使えるように提供します。イシュアとアクワイアラはライセンス契約の対価としてブランドライセンスフィーを支払います。
日本で発行されているクレジットカードには、国際ブランドが付いており、そのまま海外で使用できます。
クレジットカード会社の利益
クレジットカード会社の大きな利益は手数料ですが、手数料のほかにも年会費や広告収入を得ています。クレジットカードの利益にどのような種類があるのか、順番に解説します。
利益①:加盟店からの手数料
クレジットカード会社は加盟店からの支払いのうちの数%を手数料として徴収し、イシュアとアクワイアラで分配しています。
手数料のパーセンテージはすべての業種で一律ではありません。一般的には2%~7%程度となっていますが、加盟店の規模や業種により異なります。
- コンビニエンスストア・家電量販店:1~1.5%
- 飲食店:4~7%
- デパート:2~3%
- 小売店・専門店:3~5%
また、国際ブランドによっても手数料が異なります。そのため、海外だと支払いをする際に、その店にとって手数料の高いクレジットカードで支払おうとすると、別のクレジットカードを持っていませんかと聞かれることがあるようです。
利益②:利用者からの年会費
年会費無料としているクレジットカードがある一方で、年会費が発生するクレジットカードもあります。年会費はクレジットカード会社によって違い、同じクレジットカード会社でもカードのランクによっても違います。
たとえば、本人のカードは年会費が永年無料でも、家族カードを発行するごとに1枚につき年会費が発生するというケースがあります。
一般的なクレジットカードだと年会費は無料になり、ゴールドカードなどの上位カードなると、年会費が1万円以上になる傾向があります。
利益③:利用者からの手数料
クレジットカードは支払い方法によっては、利用者に手数料が発生します。
- 利用代金の分割払い・リボ払い
- ATMでキャッシング
実は、加盟店が支払う手数料よりも、利用者が支払う手数料の方が利益は大きくなります。そのため、クレジットカード会社はリボ払いを積極的にすすめています。
一括払いだと、手数料は発生しません。また、分割払いやリボ払いで支払ってしまう契約でも、繰り上げ返済を使えば手数料を最小限に抑えて返済できます。
利益④:広告収入
クレジットカードの明細書とともに、企業のダイレクトメールが届くことがあります。クレジットカード会社は広告主が提供する商品やサービスを紹介して、広告主から広告収入を得ています。
- 医療・生命保険
- 雑誌の定期購読
- ショッピングツアー
加盟店がクレジットカードを利用するメリット・デメリット
加盟店がクレジットカードを利用するメリットは3つあります。
- 売上を増やすチャンスにつながる
- 売上金の管理コストの負担軽減につながる
- 回転率や人件費の改善が期待できる
クレジットカードが使える店なら、そのときの現金が少ない利用者でも商品の購入やサービスを受けられるため、売り上げを増やすチャンスになります。また、支払いをなるべくクレジットカードに統一したいという利用者を逃さずに済みます。
現金の管理業務は大変労力がかかる作業です。毎日、仕事が終わってからレジを閉めて売上確認をし、金庫や銀行に預ける。店舗に現金を保管するなら、警備会社を導入する必要があり、手間とコストが増えていきます。
クレジットカード決済なら、決済のデータが自動でクレジットカード会社に送られるため、お金を管理する手間とコストが省けます。
また、個人商店ほどの規模ではメリットは限定的ですが、大型スーパーやコンビニチェーンでは、クレジットカードやキャッシュレス決済を導入することで、利用者の回転率、人件費の軽減にも大きな期待できます。
一部のコンビニエンスストアでは、店員対応するレジとは別の無人レジでクレジットカードなどの決済を導入しており、ジュース1本などの少額の買い物をしたい客がレジを並ばずに買い物ができるようになり、さらなる業務効率化を進めてます。
一方で、加盟店には2つのデメリットがあります。
- クレジットカード会社への手数料が発生する
- 実際の入金まで時間がかかる
クレジットカード会社への手数料は数パーセント程度ですが、その分の売り上げを減らします。クレジットカードを導入して全体的に売り上げが増えれば効果があったと判断できますが、増えていないなら手数料だけが負担になります。
また、クレジットカードの支払いは実際に入金されるまで時間が掛かります。クレジットカード会社によって違いはありますが、最短だと翌日、長いと2週間~1ヵ月は待たなければなりません。
現金払いなら手元に現金があり、その現金を資金として店舗を運営できます。クレジットカード払いの現金化が遅いと、資金繰りに苦労するケースがあります。
利用者がクレジットカードを利用するメリット・デメリット
利用者がクレジットカードを利用するメリットは3つあります。
- 現金が不要となり決済がスムーズになる
- 高額な商品でも分割払い、リボ払いを用いて購入できる
- 特典や付帯サービス、ポイントサービスが利用できる
- ランクの高いカードは社会的ステータスになる
クレジットカードを利用すれば、財布から現金を取り出して、会計後にお釣りを受け取る一連のやり取りが不要となり、支払いがスムーズになります。
また、高額な商品を購入する際には、分割払いやリボ払いで決済することによって、支払い金額を複数回に分けて支払うことが可能になります。
そのほか、クレジットカードは持っているだけ、使っているだけでお得になる特典や付帯サービス、ポイントサービスが魅力的です。
最近では自分で申し込んで発行できるランクの高いカードもありますが、招待制のカードを持っていると社会的なステータスにつながります。
一方で、利用者のデメリットは2つあります。
- 手数料や年会費が発生することがある
- 無計画に使用すると支払い遅延につながる
クレジットカードは年会費、あるいはキャッシング、リボ払い、分割払いなどの手数料が発生します。とくにリボ払いは月々の支払額が一定になりますが、元本の返済が長引くと手数料を多く支払うことなります。
また、クレジットカードは利便性が高いため、自分が思っているよりも多く使ってしまう場合があります。リボ払いにしていると、月々の支払額が一定のため合計の利用金額が把握しづらく、気がついたときは想像以上の利用金額になっていたというケースもあるようです。
そのため、使い過ぎを恐れて、「クレジットカードは使いたくない」と考える消費者も一定数います。
クレジットカードのビジネスモデルまとめ
クレジットカードは利用者と加盟店から手数料を得て成り立つビジネスモデルです。利用者・加盟店ともにメリットがあるため、世界中で普及されるようになりました。
しかし、一方でデメリットもあります。クレジットカードはデメリットをきちんと把握して、賢く使用しましょう。
大学卒業後、ライティング事務所に就職。2017年に独立し、フリーライターとして活動。ライティング業務に携わる中で、ジャンルを問わず多くの記事を執筆しましたが、最も得意なのは金融・経済系。特にアジア・欧州の経済や、新興スタートアップ企業に関する記事を投資webメディアにて連載中。猫が好きだけど、猫アレルギーのためモニター越しでしか眺められないのが悩み。ライティングを行う時には「分かりやすく・読みやすく・おもしろく」を心がけています。