株式分割後の株価は上がるのか?下がるのか?

株式分割後の株価は上がるのか?下がるのか?

株式分割を発表された場合、株価に好影響を与えて株価が上昇するというのは定説になっています。
それでは、株式分割が発表された日ではなく、基準日に株式分割が行われて株数が増えてしまった後の株価推移は、分割前と比べてどのような推移になるのでしょうか。
今回は、株式分割実行後の株価推移のデータを分析してみます。

1.上がる仮説と下がる仮説、どちらが強いか

株式分割が行われると、権利落ち日には株価が調整されます。1:2の株式分割を行った銘柄の場合、権利付き最終日で5,000円だった株価は権利落ち日には2,500円に調整されてスタートします。

過去の株価データも分割に合わせて全て調整され、分割が調整されている株価を『分割調整済み株価』と呼ぶことがあります。株式分割が行われた後の株価推移には2つの仮説が存在します。

株式分割後に株価が上がる仮説

一つ目の仮説は株式分割後、投資ができる人が増えて株価が上がる説です。単元株数が100株の株式で株価が5,000円の場合、1単元を購入するための最低投資額は50万円となります(ミニ株は除く)。
 
しかし、1:2の株式分割が権利日をまたいで行われて場合、権利落ち日以降の株価は2,500円に調整されますので最低投資額は25万円へと下がります。今まで50万円の資金を用意できなかった人も、25万円であれば購入できますので、新たな購入者の参入が期待され、株価にプラスの影響がもたらされるという仮説です。

分割によって流動性が上がることも、プラス材料とされます。

株式分割後に株価が下がる仮説

もう一つの仮説は、反対に株価が下がる説です。株式分割は発表してから大体1ヶ月~2ヶ月後に権利確定日がきます。それに対して、株価は株式分割のニュースが出た瞬間に織り込まれます。

株式分割のニュースで4,000円だった株価は即座に分割のニュースに反応して5,000円程度まで上昇し、権利落ち確定日近くになっても株式分割で上昇した株価は戻ることなく、そのまま5,000円程度で推移している傾向が多くみられます。

株式分割を発表した時点で株価は反応し、既に上昇を始めてしまっています。既に株価は割高な水準へと上昇していると考える人が多いと、その考えを持っている人は実際に株式分割が行われたタイミングで売りを出すことがあります。

売りが増えることにより、株式分割後に売り物に押されて株価が下がるといった仮説もまた考えられます。この株式分割後の『上がる仮説』『下がる仮説』どちらも一定の説得力はあり、どちらが強いかによって株価は上下することになります。

2.権利付き最終日からの集計

それでは、実際のデータを見ていきましょう。
本記事のサンプルデータは、昨年2016年12月27日以降に株式分割を行った合計128銘柄の7月18日の終値までのサンプルデータで集計していきます。

※6月28日で株式分割された銘柄については、7月18日までしかデータはありません。

騰落率は、「(権利付き最終日の○営業日後の株価-権利付き最終日の調整株価)/権利付き最終日の調整株価」で計算していきます。

【5,000円の株価の銘柄で1:2の株式分割が行われたケース】

  • 権利付き最終日の調整株価          2,500円
  • 権利付き最終日の1営業日後の株価 2,450円
  • 権利付き最終日の2営業日後の株価 2,400円
  • 権利付き最終日の3営業日後の株価 2,500円

上記の場合、以下のような計算式になります。

  • 権利付き最終日の1営業日後の騰落率は (2,450-2,500)/2,500=▲2.00%
  • 権利付き最終日の2営業日後の騰落率は (2,400-2,500)/2,500=▲4.00%
  • 権利付き最終日の3営業日後の騰落率は (2,500-2,500)/2,500= 0.00%

3.気になる株式分割後の騰落率は?

それでは、実際に株式分割後の株価推移を表にしてご紹介します。平均騰落率は、「平均騰落率=騰落率の総和/サンプル数」で計算できる単純平均値です。

サンプル数 平均騰落率 上昇サンプル数 下落サンプル数
1営業日後 128 -0.03% 59 69
2営業日後 128 0.28% 50 78
3営業日後 128 0.74% 55 73
4営業日後 12 80.57% 51 77
5営業日後 128 -0.63% 44 84
6営業日後 128 -1.38% 44 84
7営業日後 128 -2.37% 41 87
8営業日後 128 -2.17% 38 90
9営業日後 128 -2.13% 41 87
10営業日後 128 -2.46% 38 90
11営業日後 128 -3.60% 40 88
12営業日後 128 -3.53% 43 85
13営業日後 128 -3.92% 39 89
14営業日後 128 -3.74% 39 89
15営業日後 128 -2.80% 42 86
16営業日後 105 -2.42% 34 71
17営業日後 105 -1.62% 37 68
18営業日後 105 -1.23% 34 71
19営業日後 105 -1.28% 34 71
20営業日後 105 -0.70% 34 71
21営業日後 105 0.69% 39 66
22営業日後 105 0.83% 42 63
23営業日後 105 0.46% 44 61
24営業日後 105 0.40% 44 61
25営業日後 105 0.93% 45 60
26営業日後 105 2.40% 52 53
27営業日後 105 1.90% 52 53
28営業日後 105 1.73% 51 54
29営業日後 105 1.10% 47 58
30営業日後 105 1.06% 50 55
31営業日後 105 1.62% 51 54
32営業日後 104 1.54% 51 53
33営業日後 104 0.99% 48 56
34営業日後 104 0.66% 48 56
35営業日後 104 1.18% 51 53
36営業日後 104 2.43% 53 51
37営業日後 104 2.93% 54 50
38営業日後 93
4.20% 50 43
39営業日後 93 4.40% 52 41
40営業日後 92 4.86% 52 40
41営業日後 92 5.59% 50 42
42営業日後 92 6.77% 52 40
43営業日後 92 7.01% 53 39
44営業日後 92 7.90% 56 36
45営業日後 92 7.49% 54 38
46営業日後 92 8.84% 54 38
47営業日後 92 8.22% 52 40
48営業日後 92 9.20% 52 40
49営業日後 92 9.15% 53 39
50営業日後 92 8.91% 51 41
51営業日後 92 8.33% 50 42
52営業日後 92 8.93% 51 41
53営業日後 92 7.56% 51 41
54営業日後 92 7.87% 53
39
55営業日後 92 8.08% 52 40
56営業日後 92 8.76% 51 41
57営業日後 92 8.52% 51 41
58営業日後 88 8.13% 49 39
59営業日後 88 8.49% 51 37
60営業日後 88 7.84% 50 38
61営業日後 88 8.56% 51 37
62営業日後 87 9.97% 52 35
63営業日後 86 8.55% 49 37
64営業日後 86 8.98% 52 34
65営業日後 86 8.78% 50 36
66営業日後 86 9.20% 49 37
67営業日後 86 8.93% 51 35
68営業日後 85 7.51% 44 41
69営業日後 85 8.76% 47 38
70営業日後 85 9.56% 47 38
71営業日後 85 9.26% 48 37
72営業日後 84 9.23% 47 37
73営業日後 84 9.91% 46 38
74営業日後 84 9.53% 46 38
75営業日後 84 10.08% 49 35
76営業日後 84 10.69% 47 37
77営業日後 84 10.54% 47 37
78営業日後 41 7.29% 23 18
79営業日後 41 8.29% 25 16
80営業日後 41 7.95% 25 16
81営業日後 41 8.92% 24 17
82営業日後 41 9.79% 24 17
83営業日後 41 10.93% 24
17
84営業日後 41 11.50% 25 16
85営業日後 41 12.05% 26 15
86営業日後 41 13.87% 27 14
87営業日後 41 14.53% 27 14
88営業日後 40 15.28% 29 11
89営業日後 40 15.35% 29 11
90営業日後 40 15.62% 30 10
91営業日後 40 15.65% 30 10
92営業日後 40 17.10% 32 8
93営業日後 40 18.06% 31 9
94営業日後 40 18.41% 29 11
95営業日後 40 18.32% 30 10
96営業日後 39 19.16% 29 10
97営業日後 39 19.18% 30 9
98営業日後 39 19.58% 31 8
99営業日後 39 20.37% 30 9

データを見ていくと、1営業日後の平均騰落率は微々たるマイナス程度となっています。
ただし、サンプル数をみると、上昇(変わらず含む)のサンプル数は59なのに対して、下落サンプル数は69と若干分が悪いようです。
その後2営業日~4営業日位までは平均騰落率は堅調なものの、5営業日目位からマイナスに突入していきます。
13営業日目(約3週間程度経った)時の平均騰落率は-3.92%になり、上昇(変わらず含む)のサンプル数は39なのに対して、下落サンプル数は89とサンプル数の約7割が下落していることになります。

その後は徐々に持ち直してきて、21営業日後にはプラスになり、サンプル数は少ないものの上昇しているようなデータが多くみられるようになっているようです。

4.短期的(1~3週間程度)には下落の仮説、中期的(数か月)には上昇の仮説が正しいか

上記の結果を見ると、株式分割で株数が増えた後、短期的には市場に出回る株券が増え、株価が下落していく仮説の方が正しいと思われます。

株式分割があった直後であればマーケットでは上がる予想と下がる予想が拮抗して売り買いが交錯しますが、短期的には売り注文が多く出てきて株価はジリ下げになる展開が多くみられます。
 
その後、中期的には徐々に既存株主から新規株主への株式移転も終わり、株式分割の本来の目的通りに株価は上昇していくようです。

5.権利付き最終日から2~3週間くらいしたら狙い目

今回のデータ集計ではサンプル数が128銘柄で集計した結果であり、日経平均の騰落率(2016年12月27日の日経平均株価は19,403.06円、2017年7月18日の日経平均株価は19,999.91円)やマザーズ指数のベンチマークの動きや分割比率など細かいところは考慮に入っていません。
 
もっと長い期間でサンプル数を分析し、株価が下落局面であった場合などでは全く違う結果が出てくる可能性もあります。しかしながら、株式分割が行われ、株数が増加した後、平均値として短期的には株数の増加から市場での売り物が増えて株価はジリ安になります。

中期的には、本来の成長と購入者の再分配から株価が上昇に転じていく銘柄が多いのには一定の傾向がみられるようです。株式分割の銘柄を狙う時、権利付き最終日を狙うのではなく、権利付き最終日から2~3週間位から狙ってみる戦略も投資のタイミングとしてはおもしろいかもしれません。
 
株式分割銘柄を持っている人は1~3週間の動きに惑わされず、我慢して持ってもいいかもしれません。有効なデータと証明されているわけではありませんが、投資をする時に「こんなデータがあったな」と思い出してみてください。

まとめ

  • ・株式分割後株価が下がるのか上がるのか、直近の分割実施銘柄128銘柄で集計
  • ・短期的(1~3週間後)には下がるが、その後回復して上がる
  • ・分割の権利付き最終日から2~3週間位してから購入がねらい目

著者:先ず隗より始めよ

現役金融マン。証券アナリストの資格あり。ちょっとマニアックな金融知識やニュースをわかりやすく書いていきます。

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