知っておくべき株式のファンダメンタルズ分析とは

知っておくべき株式のファンダメンタルズ分析とは

投資を行う場合は株式や債券、外国為替など多くの投資法の中から選ばなければなりません。運用方法を決めたら次にどの国のどの企業の証券や資産を購入するかを決めます。どの地域のどの企業の何が一番効率よくリターンを得るのかを調べる際、ファンダメンタルズ分析が役に立ちます。

ファンダメンタルズはマーケットの動きに関係なく、その国や企業の経営が上手くいっているかの指標であって、初心者でも簡単に調べることができます。そこで今回は”知っておくべき株式のファンダメンタルズ分析”についてご説明させて頂きます。

1.ファンダメンタルとは

ファンダメンタルズ分析とはその地域(国や都市など)や企業などの団体の経済の状況がどのようなものかを表す指標のことで、日本語に訳すと「経済の基礎的条件」になります。

投資の世界でもファンダメンタル分析は利用されますが、ビジネスを行う上でも活用されます。このファンダメンタルズは相場によって変化するものが多く、投資でファンダメンタルズ分析を活用する場合は短期売買で利益を得るよりも長期で投資をする場合に重宝します。

2.ファンダメンタルズ分析のポイント

ファンダメンタルズ分析には一体どのようなものがあるのかを見ていきましょう。ファンダメンタルズ分析は国や地域、企業などの経済状況を見る指標になります。

例えば国や地域のファンダメンタルズ分析を行う場合は経済成長率や消費者物価指数、失業率や財政収支、政策金利、経営収支などで分析を行います。企業の場合は決算書や株価指標などで分析することができます。

国や地域のファンダメンタルズ分析

分析 更新頻度 内容
GDP・経済見通し ・名目GDPと一人あたりのGNI
・名目GDPと一人あたりのGNI順位
・国際機関の経済見通し
・実質GDP成長率
名目GDPはその国のある一定期間の間の経済活動の水準で、GNIは国民総所得のことです。どちらの数字も高いと財政が豊かであると言えます。
景気指標 ・鉱工業生産指数
・失業率
・消費者物価指数
鉱工業生産指数は製造業と鉱業の量を指数で表したものでその国の生産動向を見ることができます。この鉱工業生産指数は景気動向に敏感に反応するため投資家の間では注目の高い指標になります。消費者物価指数は全国の世帯が購入する商品やサービスの価格の動きを表した指標になります。
財政・金融指標 ・財政収支
・長期金利
・政策金利
財政収支は国の収支が黒字なのか赤字なのかを見る指標になります。長期金利が上昇すると景気が回復し、景気が後退すると金利は下がるとされています。
国際収支指標 ・経営収支
・外国の外貨準備高(金を除く)
経営収支はその国の国際収支を表す指標になっています。貿易収支、サービス収支、経常移転収支と所得収支の4つから成り立っていて、黒字か赤字かで判断することができます。外貨準備高は外国証券の保有や日本企業が輸出によって稼いだ分の外貨がどれくらいなのかを示します。日本の外貨準備高はほとんどが米国債になります。
為替・株 ・為替相場
・株価
輸出企業の多い日本では一般的に円安傾向にあると企業の収支が改善されて株価が上がりやすくなっています。

このように、国や地域のファンダメンタルズ分析を行う場合は表のような基礎的な指標を用いることがほとんどです。経済指標でも現在の景気と一致する鉱工業や景気に遅れて数値にでる失業率など、更に景気先行型、一致型、遅行型の3つのタイプに分類することができます。

企業のファンダメンタルズ分析

株や債券投資などを行う場合は企業のファンダメンタルズ分析が需要になってきます。特に配当狙いの株投資や債券による金利収入を狙う長期投資を前提としてた場合は景気によってあまり左右されないファンダメンタルズ分析は大切です。ファンダメンタルズ分析を行うにはどのようなポイントをみると良いのかをご説明させて頂きます。

ファンダメンタルズ分析のポイント

・決算書
・株価指標以上の2点がポイントになってきます。決算書は損益計算書と貸借対照表、キャッシュフロー計算書の3つから成り立っています。株価指標は株の買い時や売り時、割高か割安かなどを見るには重要になってきます。ではこの2つにポイントを更に詳しく見ていきましょう。

決算書

決算書のなかでもリアルタイムで業績を確認できる「決算短信」がポイントになっています。決算短信とは、証券取引所が定める規定に則って作成する短期の決算書であり、決算日から45日以内に提出しているものなので企業のその時の内情が簡単にまとめられています。有価証券報告書よりも速くて理解しやすい内容になっています。決算短信には年に3回の四半期ごとに出される四半期決済短信と年1回に出される決算短信の2種類があります。

決算短信に見るポイント

・業績
・財政状態
・配当
・キャッシュフロー決算短信は企業のサマリー情報と添付資料に分かれており、サマリー情報には上記の4つのポイントが記載されています。四半期決算短信は決算短信よりもより簡単にまとめられています。

まずは業績です、この業績が過去の業績と比較して伸びているかどうかが重要になってきます。過去の業績よりも落ち込んでいるのに来季の業績予測が高めに設定されている場合は注意が必要です。また会社四季報など決算短信よりも少し前の情報と比べてみて、業績数値や業績予測数値に開きがある場合も業績が伸び悩んだりしている場合があります。

会社四季報で見ると業績予測が良く、株も割安と判断されたのにいざ決算短信を見てみると割高銘柄である場合等もあります。予測数値が大幅に違った場合は、企業は業績予測の数値を修正するので決算短信の発表だけではなく、業績予想の修正にも注意が必要です。

財政状態

財政状態を知ることも重要なポイントになってきます。過去数年の業績推移を見た時に突然の赤字転落や大幅な黒字化などを目にする場合があります。そのような財政状態の変化を調べるのに決算短信は便利で、その場合は経営成績や財務状況に関する分析の箇所をみると良いです。この箇所を見ると赤字や黒字の原因が記載されていて、四季報などよりも詳しい事情を知ることができます。

配当

配当では年間の配当金が記載されていて以前の配当と比較することができます。ここで見るべきポイントは「配当性向」になります。配当性向とは利益をどれくらい株主に還元するのかを見ることができ、この数値が高い程株主への還元度が高いといえます。但し、いくら配当性向が高いからと言っていい企業とは限りません、設備投資や研究に力を入れている企業などでは利益を企業投資に回すため配当性向が低くなる傾向があります。

逆にベンチャー企業など若い企業は株主から資金を集めたいために配当性向を高くすることもあります。配当に関する記載は2017年度より決算短信の簡素化を東京証券取引所が認めたため、企業間で内容にかなりの差があります。配当に関する方針を記載しない企業も多く存在しているため注意が必要です。

キャッシュ・フロー

キャッシュ・フローでは営業活動によるもの、投資活動によるもの、財務活動によるものの3つを見ることができます。キャッシュ・フローにより会社のお金がどのように流れているのかがわかります。営業活動によるものキャッシュ・フローですがこの数字が悪いと会社の運営がうまくいっておらず、本業で利益を出せていないことになります。

投資活動によるキャッシュ・フローとは株式や債券などを売買した場合に変動があります。会社が保有している資産を売却した場合などはこの投資活動によるキャッシュフローの数字が大きくなります。財務活動によるキャッシュ・フローとは自己株式の取得や配当金の支払いなどによって変動があります。自社株を購入したり、株主に配当金を支払ったりするとこの数字がマイナスになるため一般的な企業はマイナスになることが多いです。

キャッシュフローのポイント

営業活動によるキャッシュ・フローは金額が大きいほど良い
投資活動によるキャッシュ・フローはマイナスでも問題ない
財務活動によるキャッシュ・フローは内容によってはマイナスでも問題ない

株価指標で分析する

株価指標とは株投資を行う場合に株が割安なのか割高なのか買い時が売り時なのかを見るために役に立ちます。その企業の株に買う価値があるのかを調べることができます。

株価収益率(PER Price Earning Ratio)

株価収益率とは企業にどれくらいの収益率があるのかを測るものです。株価÷1株あたりの予想当期税引後利益で計算し、一般的には同業他社や過去の数値から比較します。数字が高いと株価が割高で、低いと割安になります。このPERは会社四季報や決算短信にも記載されています、このPERは予想当期の税引後利益から計算されるので当然ですが修正されることもあります。このPERは自分が投資した金額が何年分の当期純利益で回収できるのかを示していています。

例えばA社の株価が1,200円で1株当たりの予想当期税引後利益が30円であるとすると1,200÷30=40倍になります。この場合は投資した資金は40年分の純利益で回収出来るということを示しています。投資効率を良くしたい場合はこのPERの数字が低い銘柄を選ぶと良いでしょう。

株価純資産倍率(PBR Price Book-value Ratio)

株価純資産倍率とは企業の純資産価値に着目した投資尺度になります。株価÷1株あたりの純資産で計算することができ、PERと同様に同業他社や過去の数値と比較します。この数値が高いと株価は割高で低いと割安になります。

このPBRは1倍を下回ると割安と判断されます。通常、株主になると企業が破たんや倒産した場合に借金を返済した後に残った財産を受取ることができます。このPBRとは自分が保有している株の企業が解散した場合に、株主が受け取れる1株あたりの金額のことを言います。

毎年順調に売り上げを伸ばしている企業で、株価の変動がない銘柄の場合はPBRは更に低くなり割安度が増していきます。これは会社の売上により増えているのにも関わらず、株価が上昇しないため株価がどんどん割安になっていることになるからです。この0.6以下になるとかなり割安株だといえます。

自己資本利益率(ROE Return On Equity)

自己資本利益率とは自己資本に対してどれくらいの税引後の利益が出ているのかを表した数字になります。一般的にこのROEが高いと収益率が高く、低いと収益率も低いといわれています。決算短信では自己資本利益率や自己資本当期純利益率などと記載されていて、当期純利益/自己資本×100で表されています。例えば当期純利益が80億円で自己資本が1,000億円ある企業ではROEは8%になります。

このROEは自己資本を元にしてどれくらの利益を出せるのかを見ることができ、企業の規模に関わらず収益力を測ることができます。基本的にこのROEが高いと投資尺度が高く、低いと投資する価値があるかは疑問になります。株式投資ではこのROEが高いけれども株価が安いベンチャー企業を探すのも良いでしょう。

配当利回り

配当利回りとは1株あたりの配当金÷株価×100で計算されます。例えば1株あたりの配当金が50円で株価が2,000円の場合は配当利回りは2.5%になります。配当利回り狙いで銘柄を決める場合は、配当利回りは株価と配当金の変動によって利回りが変動するといいことです。この配当利回りは高い銘柄になると7.55%(㈱プロスペクト3582)などや丸三証券㈱8613 6.22%という5%を超えるものも多数存在しています。

このように高配当の銘柄は株価が下落している局面では配当利回りが上がるため買い注文が増えることもあります。そのため株価が底堅く推移する傾向があります。他銘柄では岩井コスモホールディングス㈱8707配当利回り5.27%やJT2914配当利回り5.05%などもあります。

配当性向

配当性向とは利益に対してどれくらいの配当が行われているのかを示す指標になります。1株あたりの配当金/1株あたりの税引後利益×100で表します、例えば1株あたりの配当金が10円で1株あたりの税引後利益が40円の銘柄の場合だと配当性向は25%になります。この配当性向は数字が高い程株主への還元度が高いと言うことになります。

3.ファンダメンタルズ投資に役立つアイテム

ファンダメンタルズ分析に役に立つアイテムは何と言っても「会社四季報」になります。昨今ではインターネットで簡単に情報が手に入るため株式投資のためにわざわざ会社四季報を買う人は少なくなってきているかもしれませんがファンダメンタルズ分析ではかかせません。

会社四季報

会社四季報とは上場企業の事業内容から財務状況、業績から株主情報まで幅広く掲載されていて、株投資に役に立つ情報を完結にまとめている書籍になります。毎年、年4回発行されていて過去の業績のほかに2期分の業績予測が載っています。

株価のチャートや財務(自己資本比率や有利子負債)情報、業績など幅広い情報を見ることができます。会社四季報オンラインもあり、インターネット環境があれば株情報を入手することもできます。

日本取引所グループ(JPX)

日本取引所グループは東京証券取引所と大阪証券取引所を統合したグループになります。株などの有価証券の売買や上場、清算、決済などの情報を発信してくれます。この日本取引所グループのホームページでは上場企業の情報を適時開示情報閲覧サービスによって見ることができます。決算短信や役員人事、業績予測の修正など幅広い情報を提供しています。

4.ファンダメンタルズ分析の注意点

株価は思いもよらない動きをするため、ファンダメンタルズ分析を行ったとしても同じような結果になるとは限らないということを覚えておく必要があります。例えばPERが低く、割安だと思っていても無条件に購入するのはリスクがあります。PERが低いのに株価が上がらないのは企業の不人気や株式市場全体の低迷、業績の悪化が予測されているなどそれなりの理由があるからです。

他にも配当利回りがいくら高くても安易に飛びつくのも注意が必要です。配当利回りが高いのに株価が上がらないのもその銘柄にマイナスな理由があるからです。例えば、来期は配当金が減配になることや業績の悪化が懸念されるなどや業績に関する修正があるなどの理由があるからです。

株価にはトレンドというものがあり、いくら業績が良くても株価が下がることもあります。トレンドとは株価の方向性のことで、上昇トレンドと下降トレンド、横ばいトレンドなどがあります。トレンドによっては業績と株価が逆の動きをする場合もあるため注意が必要です。

のようにファンダメンタルズ分析だけでは予測不可能な動きをする場合もあります。数字だけで判断するよりも、会社全体の情報を照らし合わせて予測した方が良いでしょう。

いかがでしたか。この記事が皆様の一助になれば幸いです。

著者:hironohikari

元大手証券会社で資産運用コンサルティングとして働いていました。現在は投資家兼金融ライターとして活動しています、皆様のお役に立てる記事を配信していきたいと思います。

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