テクニカル分析とファンダメンタル分析、株式市場ではどちらが重要か

テクニカル分析とファンダメンタル分析、株式市場ではどちらが重要か

株式投資を始めてからある程度の経験を積んだ方であれば、テクニカル分析とファンダメンタル分析を勉強していくことになるでしょう。

テクニカル分析とファンダメンタル分析。
「どちらが優れていて、どちらを勉強するのが良いのか」という疑問が、ある程度投資経験を積んだ方は必ず抱くと言っても過言ではありません。
そこでテクニカル分析とファンダメンタル分析にはどの様な特徴があり、どの様な投資手法において向いているのか解説していきます。

『美人投票』という考え方ではテクニカル分析

テクニカル分析とは、過去に発生した株価や出来高等の取引実績から将来の価格を予想・分析する手法です。
ファンダメンタル分析の様に企業の業績や世界情勢はもちろん、日本や海外における政治や金融政策の変化などは一切考慮に入れず、株価や出来高で計算された数値で淡々と投資判断を行って行くのがテクニカル分析の大まかな特徴です。
価格の勢いや、売られ過ぎ・買われ過ぎという判断では、テクニカル分析はとても役に立ちます。

個人投資家はテクニカル分析が好き

テクニカル分析が好きという個人投資家非常に多いです。
何故テクニカル分析が多くの個人投資家に支持されるのかというと、テクニカル分析が簡単で結果が出るまでの期間が短い為だと思われます。

テクニカル分析は種類こそ豊富にありますが、全てを理解して使う必要はありません。
大きく分けて以下の2つを理解すれば、そこそこ分析が可能になります。

  • ①取引価格の上昇トレンドと下落トレンドへの転換を見出す方法
  • ②取引価格に対する売られ過ぎや買われ過ぎを見出す方法

「上昇トレンドの線」や「移動平均線」、「MACD」や「ボリンジャーバンド」など、いくつかあるテクニカル分析の手法の中で自分の気になった銘柄に合う手法を見つけて組み合わせ、それらを使っていくだけで分析できる手軽さがテクニカル分析の良いところです。

対して、ファンダメンタル分析は結果が出るまで時間がかかります。
既存の情報は既に株価に織り込まれていますので、未来の成長性をファンダメンタル分析で見出した結果は何年も経ってからでないと、正解だったか間違っていたかはわかりません。



株は『美人投票』、テクニカル分析で充分

充分テクニカル分析は企業業績や利益と言ったものは一切使わないため、企業の本質的な価値を見る分析とは言えません。
そのため、テクニカル分析を批判をする人は少なからずいます。

株価は業績が良いからと言って必ず上がるとは限りません。
株価は業績が良い銘柄が上がるのではなく、買う人が多いと上昇します。
難しいことは考えずに美人と思う投資家が多くいる株に投資することも、株式投資においては有効な手法といえるでしょう。

いくら業績が良くてファンダメンタル分析では割安で買いであっても、判断材料がなかったり、注目度が低かったりする企業の株価は買いが集まらないので上昇しません。

短期~中期投資はテクニカル分析が向いている

テクニカル分析は長いトレンドで見て長期投資に使う事もできますが、基本的な使い方としては短期~中期でのトレードに向いているとされています。
悪い業績が発表されて売り注文が大量に出ている時や、海外情勢の変化で日経平均株価が1,000円安を付けた時など、「売られ過ぎのシグナル」をテクニカル分析で読み取るといった使い方は有効な手法でしょう。
 
買って反発したら売却を繰り返すスイングトレードも簡単にできるので、テクニカル分析は短期~中期のトレードに対して有効であると言えるでしょう。

株式の価値という考え方ではファンダメンタル分析

ファンダメンタル分析とは「財務諸表、政策、競争優位性、市場成長率」などを分析することにより、その株式の価値を算出する方法です。
株式の価値という考え方は、専門的に言うと将来のキャッシュフローを予測して算出した事業価値から金融資産を足して有利子負債を引いた額になります。

今は利益が少ないけれど将来のキャッシュフローが大きい企業は、配当も大きく出せるようになりますので、その企業価値は当然高くなります。
この将来のキャッシュフローを予測し、予測される企業価値に比べて割安に放置されている銘柄を見つける分析がファンダメンタル分析の主な役割になります。

ファンダメンタルが個人投資家に不人気なのは難しいから

ファンダメンタル分析をあまり行わない個人投資家の方は結構います。
ファンダメンタル分析の難しさが個人投資家を遠ざけている面があるのでしょう。

ファンダメンタル分析で利益は重要な分析ポイントです。
しかし、最終利益がどのくらいか発表されていても、発表された利益は貸倒引当金などでお化粧をされていることも多く、きちんとしたファンダメンタル分析はプロもかなり経験が必要となります。
何よりも株価は人気投票ですので、どんなに業績が良くても買い注文が集まらなければ株価は上がりません。

ファンダメンタルズ分析を少しかじっただけでは間違った分析をしてしまい、逆に痛い目を見ることも多くあることが、よりファンダメンタル分析を遠ざける原因になっているかもしれません。

中期~長期投資はファンダメンタルズ分析が向いている

ファンダメンタル分析は一長一短では中々身に付きませんが、自身で株式の価値がわかってくると銘柄を選出する能力も身に付いてきます。

特に、ファンダメンタル分析は相場の大きな流れを把握するのに重要で、中~長期投資ではファンダメンタル分析は重要です。
「どの様な市場成長が見込まれ、どの様にキャッシュフローが増えていくか」について分析できれば、足元の株価下落で心を乱されることもなく、長期投資を行うことが可能になります。

「ヤフー株を公募で買っていれば、150万円が3.8億円になった」という夢が長期投資にはあります。
テクニカル分析では割高になったところで手放しているはずなので、長期投資で大きく儲けるのはファンダメンタル分析でなければ無理でしょう。

ファンダメンタル分析が行うことができれば、第二のヤフー株を見つけられますし、多少の株価の上下で利食い・損切をしないような判断ができるようになります。
倒産しそうな企業についても、ファンダメンタル分析をきちんと理解していれば手を出すのを回避できるので、相場で長く生き残る能力を身に付けられます。

テクニカル分析、ファンダメンタル分析両方勉強しよう

テクニカル分析は手軽で覚えやすく、直ぐに結果が出る分析手法です。
テクニカル分析に関する本を一冊読み、どの証券会社のチャートが使いやすいか調べて口座を開設すれば、明日からでも使えるようになるはずです。

一方でファンダメンタル分析を深く理解するにはきちんと勉強が必要ですし、労力も多くかかります。
しかし、自身が将来の成長率を考えて割安と判断できれば、株価の多少の上下にも惑わされずに株式を持ち続けられるでしょうし、何百倍になるまで長期投資を行うこともできます。

テクニカル分析とファンダメンタル分析、どちらが大切なのかと言えば、「投資手法によって違いはあれど、どちらも大切である」というのが答えになるでしょう。
ファンダメンタル分析で金融政策や政治、国際情勢を分析し、成長見通しがある業界を見つけて財務分析を行い、投資対象を絞り込む。そしてテクニカル分析で割安になったタイミングで投資すれば、その投資の成功率は格段に上がります。

長期投資ならファンダメンタル分析を重視し、短期投資ならテクニカル分析を重視する方法も有効です。
テクニカル分析・ファンダメンタル分析両方を理解できれば、投資の見方が広がって投資が楽しくなり、政治や経済も理解できるので仕事への応用も利きます。

テクニカル・ファンダメンタル分析の両方を勉強して、自分が決めたルールは曲げないで守り、一流のトレーダーを目指してください。

まとめ

  • ○テクニカル分析は比較的簡単、結果も出やすい
  • ○テクニカル分析は短期~中期投資にお勧め
  • ○ファンダメンタル分析は専門知識が多く理解するまで期間と勉強が必要
  • ○ファンダメンタル分析は中期~長期投資にお勧め
  • ○どちらも重要なので苦手意識を持たずに勉強しよう

著者:先ず隗より始めよ

現役金融マン。証券アナリストの資格あり。ちょっとマニアックな金融知識やニュースをわかりやすく書いていきます。

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