債券価格や利回りはどうやって決まる?債券の基礎をポイント別に徹底解説!

債券価格や利回りはどうやって決まる?債券の基礎をポイント別に徹底解説!

「債券で資産運用を行う」と聞いても、いまいちピンときませんよね。

投資と聞くと、株式や不動産投資の他に、外貨預金やFX、投資信託などをイメージする方も多いでしょう。

実際は、銀行預金にお金を預けている人であれば、誰でも間接的に債券投資をしていることをご存知でしょうか?

債券とはそれほど馴染みが深く、手軽かつ堅実に資産運用ができる金融商品なのです。

今回は、債券投資をしたことのない人から債券をすでに保有している人まで、全ての人に向けて「債券価格や利回りはどうやって決まる?」についてご説明させて頂きます。

債券とは

債券とは、お金を必要とする国や地方公共団体、企業、政府機関などが、資金集めのために発行する証書になります。
 
簡単に言うと、借金の「借用証書」のようなものです。

その借用証書である債券ですが、あらかじめ償還(返済期限)までに支払われる利率や期間、販売価格(発行価格)などが決められています。

つまり債券は、発行された時に購入すると、通常だと払ったお金が満期には戻ってきます。
 
その上、償還までの期間は決まった利率が受け取れるということになります。

このように債券とは、使う予定のある資金の運用をする人や、堅実にお金を増やしていきたい人に人気のある投資方法になります。

日本の国が発行する「国債」ですが、日本政府が発行して銀行が預金者から集めた資金で購入します。
 
私達の預金は、知らない間に「国債」で運用されているということです。

その国債の利率から銀行の運営費と引いたものが、預金の利率として支払われているという仕組みになっています。

債券投資を行う場合に知っておくべきこと

債券で投資を行う場合、前もって知っておくべきことを表にまとめてみました。

【債券の必須要項】
用語
内容
額面金額 購入の単位金額のことで、償還時に戻ってくる金額のことです。額面金額が1,000万円の債券だと、償還時に1,000万円戻ってきます。
表面利率(クーポン) 額面金額に対して、毎年受取ることができる利息の割合です。
償還年限 発行から償還までの年限のことです。
利払い日 利息が支払われる日です。
利付債券 利息が付く債券
割引債 利息が付かない債券、利息相当分があらかじめ額面から割り引かれている

債券のポイント

債権のポイント
  • 債券は国、地方自治体、企業などが資金集めのために集めるために発行する借用証書のようなもの
  • あらかじめ、運用の条件が決められている
  • 債券の価格は変動する
  • 年2回利息を受取ることができる
  • 株式などの金融商品と同様に売買できる

債券投資で利益を得る方法

債券投資の方法について、話を進めていきましょう。

債権投資の方法
  1. 売買差益
  2. 利息収入
  3. 償還差益
  4. 為替差益

①から順番に、さらに詳しく見ていきましょう。

①売買差益

まずは、売買差益で利益を得る方法を紹介していきます。
 
債券は、株式やFX、不動産などと同様に売買することができます。
 
債券は、償還まで待たずに「購入価格<売却価格」で途中売却すると売買差益を得ることができます。

②利息収入

利付債券では、一般的に年2回に分けて、購入価格に対する1年間の利息を受取ることができます。

③償還差益

債券は、あらかじめ償還の金額が決まっています。
 
そのため、額面金額(100円)よりも低い価格で購入している場合は、償還時の差益を得ることができます。
 
反対に額面金額よりも高い金額で購入した場合(100円以上)、償還時の差損を被ることになります。

④為替差益

外貨建ての債券の場合、購入時よりも売却時や償還時に円安になっていれば為替差益を得ることができます。
 
逆に、円高になっている場合は為替差損を被ることになります。

債券投資で利益を得るポイント

利益を得るポイント
  • 購入時は額面価格(100円)よりも低い債券を選ぶ
  • 利息の高い債券を選ぶ
  • 外貨建債券の場合は、為替レートにも注目し、円安になった場合に売却する
  • 購入価格<売却価格の場合は、利益が出る。

債券の種類

債券には、いくつのも種類があります。
 
債券の種類を表にまとめてみました。

債券の種類

種類 発行団体 債券の分類 内容
①公共債 国債 日本国が発行する債券
地方公共団体 地方債 地方自治体が発行する債券
公団・公庫
政府機関
政府保証債
政府無保証債
公団や公庫などの政府関係機関が発行する債券、政府の保証有と保証無のタイプがある
②民間債 民間企業 社債 民間企業が資金調達のために発行する債券
金融機関 金融債 銀行、証券会社などの金融機関が発行する債券
③外国債 海外発行体 外国債券 外国政府、外国企業など外国にある団体が発行する債券
国内発行体 外国債券 国内にある団体が外貨建で発行する債券

以上が主な債券の種類になります。
 
続いて、さらに詳しく見ていきましょう。

①国債

日本国内で1番信用力の高い債券になります。
 
日本国が資金調達のため発行します。
 
発行量は国内最大規模になります。

一般的に国民が買える国債は、個人向け国債と新窓販国債の2種類になります。

【個人向け国債と新型窓口販売方法の違い】
  • 個人向け国債(1万円から)よりも新型窓口販売方式の方が最低金額が高い(5万円から)
  • 金利の違い
  • 金利タイプの違い
  • 新型窓口販売方法では、購入対象者の制限がない
  • 新型窓口販売方法は元本割れリスクがある
  • 個人向け国債は、変動金利タイプ(10年)がある
  • 新型窓口販売方法は、固定金利のみ

地方債は、都道府県や市町村などの地方公共団体が発行する債券です。
 
国債と同様に信用度が高く、発行量が多いです。

政府関係機関債は、住宅金融公庫や日本道路公団などの特殊法人が発行する債券です。

信用度も高く、発行量が多いのが特徴です。

②社債

社債は、民間企業が発行する債券になります。証券会社で購入可能です。
 
金融債は、金融機関が発行する社債になります。

利付金融債と割引金融債の2種類に分類されます。
 
証券会社や銀行などで購入可能です。

信用力は国債などに劣りますが、その分利率が良く、人気の企業の債券などは店頭には出てこない場合も多々あります。
 
社債の購入を検討しているのならば、日頃から証券会社の担当に伝えておくと良いでしょう。

③外国債券

外国債券は、外国の国債や外国企業などが発行する債券になります。
 
米国債(トレジャリ―)や英国債などが人気の外国債券になります。

日本国債よりも利率が高いのがメリットですが、償還時には為替損益が発生します。

債券の種類のポイント

種類のポイント
  • 国債は日本で一番信用度の高い債券
  • 民間債は、利率が高く人気がある
  • 外国債券は、利率が高く人気があるが場合によっては為替差損を被ることもある
  • 公共債は、信用度が高いが利率が低い

債券の価格について

債券は他の金融商品と同様に、日々価格が変動します。
 
債券の価格が変動する主な原因を表にまとめてみました。

債券価格の主な変動理由

変動理由 その理由 参考指標 結果
①景気 日本銀行が金利操作をするため GDP統計
個人消費など
景気が下がれば価格は上がる
②株価 株価と債券は逆の動きをするため 日経平均株価
TOPIXなど
株価が上がれば債券価格は下落株価が下がれば債券価格は上昇
③物価 物価によって日本銀行が金利操作をするため 消費者物価指数
賃金動向など
物価が下落すると価格は上昇
④為替< 為替レートによって、日本の景気が左右されるため ドル円相場
為替レート
G7など
円高傾向の方が上昇傾向
⑤金融政策 日本銀行が金利操作をするため 金融政策決定会合
日銀の調節とコートレール
日銀総裁等の発言など
金融緩和で金利を引き下げると価格は上昇
⑥海外の動向 外国資金が国内債券に流入するため 米国の経済・金利動向など 米国の金融緩和や金利低下は価格上昇
⑦需要・供給 債券の発行数の減少や償還の増加などのため 公共債の発行状況など 債券発行数の減少は価格上昇につながる
⑧信用格付け 債券の発行体の信用度によって金利と債券価格が変動 格付け会社の評価スタンダード&プアーズムーディーズなど 信用度低いと債券価格下落信用度が高いと債券価格は上昇

このように、様々な理由によって債券の価格は変動しています。
 
ここで注目して頂きたいのが「金利」の動きです。

上記の表の動きによって金利が変動し、その結果債券価格が変動するというのが大きな流れになっています。
 
金利と債券の動きの一般的なポイント2つあげてみました。

  1. 金利が下がると、債券価格は上昇する
  2. 金利が上がると、債券が価格は下落する

以上の2点が債券相場では基本になっています。
 
この2点を踏まえて、表の①から順番に詳しく見ていきましょう。

①景気と債券価格

  • 景気が悪い場合:日本銀行は、景気を良くするために金利を引き下げます。すると、債券価格は上昇します。
  • 景気が良い場合:日本銀行は、景気の過熱を抑えるため金利を引き上げます。その結果、債券価格は下落します。

②株価と債券価格

株価と債券の関係は一定ではありません。
 
しかし、株価が上がると債券価格は下落、株価が下がると債券価格は上昇すると言われています。

  • 株価が上がる:債券などよりも売買益を狙える株価へ資金が流れる、その結果債券が売られて価格が下落する
  • 株価が下がる:安定的に運用できる債券へと資金が流れる、その結果債券が買われ、債券価格が上昇する

③物価と債券価格

景気と債券価格と同じ動きになります。
 
景気が悪いと物価が下がり、金利を引き下げるため債券価格は上昇します。

逆に、景気が良い場合は物価が上昇し、金利を引き上げるため債券価格は下落します。
 
これを言い換えると、景気が低迷すると物価が下落して、銀行は企業への資金の貸し出しが減少するということになります。
 
債券価格が下落すると、銀行は利息がもらえる債券に持っているお金を投資します。その結果、債券価格が上昇します。

反対に、景気が良い場合は物価が上昇し、お金を借りたい企業が増えるため、銀行は資金を債券よりも高い金利で企業に貸し出します。
 
そのため、持っている債券を売却し、現金化して企業に貸し出します。
 
その結果、債券価格は下落します。

④為替と債券価格

為替と債券価格の関係は、通常円高が進行すると景気が悪くなり、金利は低下する関係にあります。その結果、債券価格は上昇します。
 
円安傾向の場合は、景気が良くなり、金利が上昇して債券価格は下落すると言われています。

  • 円高時:金利低下、外国人投資家の円債買いにより債券価格は上昇する
  • 円安時:金利上昇、外国人投資家の円債売りにより債券価格は下落する

⑤金融政策と債券

金融政策は債券価格に影響を与える関係にあります。

【金融政策】
  • 政策金利の引き上げ:債券価格は下落(債券の金利は上昇)
  • 政策金利の引き下げ:債券価格は上昇(債券の金利は下落)

⑥海外の動向と債券

債券価格ですが、特に米国の経済によって左右することもあります。

  • 米国経済が良好、米国の金利が上昇の場合:日本の経済も良好=日本の金利も上昇つまり債券価格は下落します
  • 米国経済が不況、米国の金利の低下:日本の経済も不況=日本の金利が低下、つまり債券価格は上昇します。

このように、米国の景気や金利の動向によって、日本国内の債券も大きく左右されています。

⑦需要と供給と債券

債券価格が上昇する場合:債券の発行数が減少
投資家の資金ポジションが良好

⑧信用格付けと債券価格

「債券の発行体がどれくらい信用できるか」を評価するのが、『スタンダード&プアーズ』や『ムーディーズ』などの格付け会社が行う「信用格付け」になります。

一般的に、発行体の信用度が高いと金利が下がり、信用度が低いと金利が上がります。

したがって、信用度の高い債券は低金利で価格が上昇、信用度が低い債券は高金利で低価格になります。

例えて言うと、医師や弁護士などにお金を貸す場合、返済能力や社会的地位が高いため、かなりの確率で返済されるとみなされます。

反対に、無職の人にお金を貸す場合は、返済されない可能性が多くあるため、金利をあげて価格を低く設定してリスクヘッジを行うということです。

債券の世界では、債券の信用度を測る「長期債券格付け」を格付け会社が発表します。

その発表で格付けが下がれば債券の価格が下がり、格付けの評価が上がれば債券価格も上昇するということがあります。

債券価格は、格付け会社の評価によって変動することもあります。

このように債券価格は、さまざまな要因によって日々変化しています。

債券価格の変動のポイント

変動のポイント
  • 景気が悪くなると、債券価格が上昇
  • 米国が利下げしたら債券価格は上昇
  • 株価が下がると債券価格は上昇
  • 金利が上がると債券価格は下落
  • 金利が下がると債券価格は上昇

債券の利回りとは

債券投資を成功させるためには、利回りをしっかりと理解することが大切です。
 
債券の利益は、「①利息、②購入金額と償還金額の差額、③購入価格と売却価格の差額」の3点になります。

1年あたりに換利回りとは、債券を所有している期間の収益を算して、それを購入金額で割ったものになります。

仮に利率が3%の債券があったとして、額面100万円のものを98万円で買った人もいれば、102万円で買う人もいます。
 
5年所有で101万円で売却する人もいれば、2年所有して105万円で売却する人、償還まで待って100万円を受取る人など、同じ債券でも購入価格、購入時期、売却価格や売却時期によって利回りは変わってきます。
 
このように債券を購入する前には、債券の利率よりも利回りをしっかりと計算することが大切です。

【利付債券の利回り】
  1. 応募者利回り
  2. 最終利回り
  3. 所有期間利回り
  4. 直接利回り

それでは、①から順番に詳しく見ていきましょう。

①応募者利回り

新規で発行された債券を、償還まで所有した場合の利回りです。
 
例に沿って、計算式を見ていきましょう。

表面利率 2%
価格 額面金額100円につき101円
年限 10年

このような条件の債券を購入する場合、額面の100円を101円で購入すると言うことです。
 
1円高く購入しますが、その代わり2%の利息を受取れるというものです。
 
それでは、この条件の債券を10年間運用すると、1年あたりの利回りはいくらになるのでしょうか。

【応募者利回りの計算式】

{表面利率+(額面金額-発行価格)}÷償還年限}×100/発行価格

これを上記の条件に当てはめてみると、
{2%+(100円-101円)÷10年}×100/101円=1.8811…%
この条件の場合は、年利1.88%ということになります。
 
100万円分購入すると、年18,811円の利息を10年間受け取れるということですね。

②最終利回り

最終利回りとは、すでに発行されて債券市場で売買されている債券を購入して、償還まで保有した場合の利回りとなります。

表面利率 1.0%
価格 額面価格100円に対して101円
残存年限 4年

この債券の場合はすでに発行されています。
 
額面価格100円を101円で購入して、表面利率1.0%で残っている年限4年間運用した場合の、1年あたりの年利はいくらになるでしょうか。

【最終利回りの計算式】

{表面利率+(額面金額-購入価格)÷残存年限}×100/購入価格

これに上記の条件をあてはめてみると
{1.0%+(100円-101円)÷4年}×100/101円=0.742…%

つまり、この条件の債券を購入すると、償還までの4年間の間は年利0.742%で運用するということになります。

③所有期間利回り

所有期間利回りとは、新規もしくは既発の債券を購入して償還前に売却した場合、所有していた期間はどれくらいの年利で運用していたかを求める計算になります。

表面利率 1.2%
購入価格 101円
売却価格 102円
所有期間 3年

この債券を例にとって見てみましょう。
 
利率1.2%で101円の債券を3年間保有して、価格が102円になったところで売却したとします。
 
所有していた3年間は、年利いくらで運用したことになるのかを見ていきましょう。

【所有期間利回りの計算式】

{表面利率+(売却金額-購入価格)÷所有期間}×100/購入価格

{1.2%+(102円-101円)÷3年}×100/101円=1.518…%
 
この債券の場合、所有していた期間は年利1.518%で運用していたことになります。

④直接利回り

直接利回りとは、購入金額に対して、毎年いくら利息があるのかを見る計算方法です。

表面利率 2.0%
価格 額面価格100円に対して104円

この場合、利率2%で100万円の債券を104万円出して購入した場合です。

毎年どれくらいの利息が入るのか見てみましょう。

【直接利回りの計算式】

表面利率/購入価格×100

これに例を当てはめてみると
2%/104円×100=1.923….%
毎年、年利1.923%で運用しているということになります。
 
このように利息のつく利付債券には、4つの利回りの計算方法があります。

割引債とは?

割引債とは、利息は付かない代わりに、利息相応額があらかじめ割り引かれている債券になります。
 
このように割引債は、割引分を利回りに換算して計算することができます。

債券の利回りのポイント

利回りのポイント
  • 債券投資では利率よりも利回りを重視する
  • 利付債券には4つの利回り計算がある
  • 利回りは、購入価格と額面価格が関係してくる
  • 購入時期、売却時期によって利回りは変わってくる
  • 割引債の利回りは、年限が長いほど割引率が高い

債券のリスク

債券には3つの大きなリスクがあります。

  1. 信用リスク
  2. 価格変動リスク
  3. 流動性リスク

①から順番に詳しく見ていきましょう。

①信用リスク

信用リスクとは、債券の発行体が「倒産」「破綻」もしくは「財政難」に陥って、元本や利息の支払いを受けられなくなってしまうリスクになります。

②価格変動のリスク

債券は、株式などの金融商品と同様に、日々価格が変動します。
 
仮に債券を償還前に売却する場合は、購入価格より低い価格で売却することもあります。
 
償還までの期間が長く、利率が大きい債券ほど価格の変動が大きいと言われています。

③流動性リスク

一般的に発行体の信用度が低かったり、流通量の少ない債券は流動性が低く、売買できない場合があります。
 
このように、債券には大きな3つのリスクが存在します。

最後に・・・

債券の価格や利回りについてご理解いただけたでしょうか?
 
一助になれば幸いです。

著者:hironohikari

前職では大手証券会社のコンサルティング業務に携わり、現在は金融ライター兼トレーダーとして活動しています。

皆様のお役に立てる情報を発信していきたいと思います。

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