投資信託の特徴と危ない投資信託を見極める6つのポイント
投資信託は運用をプロに全て任せてしまうため非常に人気のある金融商品です。
以前は投資信託を買う人というと「お金を持ったシニア世代」と思われていましたが、最近は若い世代でも人気があります。
いくらプロに運用を任せているからといっても、全ての銘柄の運用がうまくいっているとは限りません。
損失を出している赤信号の投資信託も存在していることは確かです。そこで今回は「赤信号の投資信託を見極めるポイント」についてご説明させて頂きます。
投資信託とは?
投資信託とは、多数の投資家から多額の資金を集めてその資金で様々な金融商品を購入してお金を運用し、その利益を投資家に分配する金融商品のことです。
以前はお金持ちのシニア層に人気が高かったイメージがありますが、昨今では若年層にも人気が出てきています。
2017年度の投資信託の残高は110兆円と過去最高を記録し、個人マネーの流入が続いています。世界的な株高傾向とNISAや積立NISAの効力もあり20代~30代の若年層で投資信託の積立が増えているようです。
- 1万円前後から買える
- 分散投資によるリスクの軽減効果がある
- プロが運用してくれる
以上が投資信託の特徴になります。投資信託では株や債券、為替、不動産などに投資を行い運用します。そこで個人で全ての金融商品に投資を行うとなると莫大な資金を準備しなければなりません。しかし投資信託なら1万円前後というお手軽価格で始めることができます。
複数の金融商品で運用するため、1つの分野が値下がりしても他の金融商品が値上がりすることもあるのでマイナス分を相殺し、損失リスクを軽減してくれます。プロが運用してくれるので長い時間を取られることもなく、会社員でも取り組みやすい投資です。
赤信号の投資信託を見極めるポイント
投資信託は売却益や分配金などで利益をえる金融商品ですが、全ての銘柄が利益を上げているかといわれるとそうではありません。
売買のタイミングや選ぶ銘柄、その時の経済状況などによって利益が出るか損を出すのかが変わってきます。どんなポイントで銘柄を選べば良いのでしょうか?
- コストが高すぎる(通貨選択型)
- 通貨選択型は手数料が高い
- 運用成績が悪い
- 基準価格の変動が大きい
- 高すぎる分配金
- AIなど流行りのものを投資対象にしている銘柄
以上のポイントに当てはまる投資信託には注意が必要です。では続いて更に詳しく見ていきましょう。
コストが高すぎる
投資信託のコストには①申込手数料②信託報酬③信託財産留保額の3つが主なコストになります。この3つのコストは銘柄や販売会社によっても差があり、どれくらいかかるかによって投資効率が変わってきます。
①申込手数料
申込手数料は投資信託を購入する時にかかる購入手数料のことです。銘柄の中にはこの申込手数料がかからない「ノーロード」といわれるものもあります。
この申込手数料は0%~5%程がほとんどです。一見小さな数字に見えますが、例えば1,000万円分の投資信託を購入したとして0%なら0円、5%なら何と50万円分もの手数料になります。
買うだけで資産がマイナス50万円からのスタートになるため0%と5%では大きな差になります。
②信託報酬
信託報酬とは、投資信託を保有している間ずっと支払い続ける手数料になります。この信託報酬は販売会社と運用会社、信託銀行の3つに分けられます。
この信託報酬は日々間接的に支払うことになります。投資信託の日々の基準価格はこの信託報酬を差し引いた後の数字になります。つまり運用益が一定ならば基準価格は信託報酬分日々下がっていることになります。
③信託財産留保額
これは投資信託を解約する際にかかる売却手数料のようなもので、0%~0.3%程のものがほとんどです。
以上の3つが投資信託のコストになります、運用効率を上げたい場合はどの手数料も低いに越したことはありません。この中で特に気を付けたいのが②信託報酬になります。
信託報酬は保有している間は必ず支払うものになるため重要です。例えば1,000万円分の投資信託を購入し、10年間保有したとします。
①と③は0円として、10年間のリターンが0円で元本が変わらず保有したとすると信託報酬が0.4%のものと1.5%のものでは10年間で100万円分ほどの差がでることになります。この差は大きいですよね。
通貨選択型は手数料が高い
投資信託の中でも特に手数料が高めに設定されているのが、複雑な仕組みの銘柄で最近人気の「通貨選択型」になります。
通貨選択型は低金利通貨を売ったり高金利通貨を買ったりしてその金利差で利益を上げるものですが、この為替取引にはコストがかかるためその分信託報酬に上乗せされているということになります。
コストがかかる取引をしているからと言ってリターンが大きいとは限らないため、通貨選択型の投資信託を購入する場合には注意が必要です。
どの通貨コースを選ぶのかで手数料も変わり、特に分配金の高いブラジルレアルやメキシコペソ、豪ドルなどの高金利通貨コースを選ぶと手数用も高くなります。
運用成績が悪い
運用成績が悪い銘柄も赤信号の投資信託になります。運用成績が悪いこと事体、運用がうまくいっていないことになるからです。
この運用成績を確かめるには、毎月発行される運用報告書や全体の運用報告書などから読み取る必要があります。
運用報告書に記載されているファンドの基準価格の推移と純資産総額と騰落率を確認しましょう。最も悪いのが純資産総額が減り、基準価格も下がっていることです。
純資産総額が減るということは換金する人が増えていて、そのファンド自体の資金が減っているということです。
そうなると基準価格が回復する見込みはほとんどなくなります。騰落率も設定来からの数字を見て、プラスであれば良いです。
ただし、この騰落率は分配型ではなく再投資型を記載されているため、分配型の方を選ぶのであればあてにはなりません。
基準価格の変動が大きい
基準価格の変動が大きい銘柄も注意が必要です。投資信託の基準価格は1日1度変わり、その投資信託の基礎となる価格になります。
1口あたりの信託財産の時価になり純資産総額÷受益権口=基準価格で計算されます。
この基準価格は投資信託で運用している株式や不動産、債券などの価格変動や金利の変動、為替の変動などさまざまな要因によって変動します。
多少の価格変動ならば仕方ありませんが、投資信託は複数の金融商品で運用することによって分散投資を行うことを目的にしているのにも関わらず、価格の変動が大きすぎるとういうのは偏った運用を行っている可能性があります。
大きく上昇しているものは下落した場合でも極端な値下がりをする場合もあるため、長期での堅実に資産運用をしたい方は基準価格の変動が大きい銘柄には注意が必要です。
高すぎる分配金
毎月分配型は月々決まった日に分配金を受取ることができるため人気です。特に年金暮らしのシニア層や専業主婦などにとっては、お小遣い感覚で分配を受取ることができるため再投資よりも分配型を選ぶ方が多いです。
この分配金は高い銘柄だと1万口あたり200円~250円ほどにも上ります。基準価格が高くないにも関わらず高額な分配金を出す銘柄には注意が必要です。
通常、投資信託の分配金は投資信託の純資産の中から支払われることになり、分配金の額は運用成績によって変わります。
利益を上げていないのに高い分配金を出している銘柄は特別分配金とよばれる元本払い戻しの可能性があります。
投資信託の分配金には普通分配と呼ばれる利益を分配するものと個別の元本を下回る部分からでる分配金の2種類があります。
この元本払戻金で分配金を出している投資信託は、その投資信託自体の資産を食いつぶしていることになるので基準価格がその分下がることになり、結果的に投資資金を減らしてしまうことになります。
目先の分配金の高さだけで銘柄を選ぶとこのような赤信号の投資信託を選んでしまうことになるので注意が必要です。
AIなど流行りのものを投資対象にしている銘柄
AIやフィンテック関連などの流行りのものを投資対象にしている銘柄にも注意が必要です。
これらの流行りの銘柄はその時は値上がり率が高いかもしれませんが、ブームを去った後に極端な値下がりがある可能性があるからです。
投資信託は株やFXなどと違って数年~数十年にもわたる長期投資が基本になるため(売買差益を狙うには売買手数料が高いので)このような流行りのものを対象にしている銘柄は避けた方が賢明でしょう。
投資信託の種類
投資信託にはさまざまな種類があります。
・株式投資型
・上場投資信託
・不動産投資信託
・特殊な投資信託
などの種類があります。株式投資型とは、運用対象に株式を組み入れることができる投資信託になります。株式を組み入れることができないものは公社債投資信託といい、MMFやMRFなどが代表的な公社債投資信託です。
上場投資信託とは証券取引所に上場している投資信託で、株価連動型(日経平均やTOPIX)に連動するように設定されており、株と同じようにリアルタイムで売買することができます。
指値や成行注文ができ証券会社を通して購入します。証券会社や銀行などで購入する投資信託は非上場の投資信託になります。
不動産投資信託はリート(REIT)と呼ばれるもので投資家から集めた資金でビルや賃貸マンション、商業用施設やホテルなどの不動産を購入し、その家賃収入などを投資家に分配する投資信託になります。
この不動産投資信託も上場しているものもあり指値や成行注文などが可能です。
特殊な投資信託とは先物やオプション取引等のデリバティブを活用して積極的に運用するもので、ハイリスク・ハイリターン商品になっています。
代表的なものにブル型ファンド(相場が上昇するとその上昇率を更に数倍程度上回る利益が出るように設定されてる)やベア型ファンド(相場の下落時に下落率よりも数倍程度上回る利益がでるように設定されている)ものなどがあります。
その他にはファンド・オブ・ファンドとよばれる複数の投資信託に投資をする投資信託などもあります。
賢い投資信託の買い方
投資信託を積立で購入している若年層が増えてきていますが、投資信託には実はお得な買い方があるのをご存知でしょうか?ドル・コスト平均法という方法がおすすめです。
ドル・コスト平均法とは
ドル・コスト平均法とは毎月決まった金額で投資信託を購入していく方法になります。ドル・コスト平均法の反対が定量(口数)で購入する定量投資になります。このドル・コストと定量投資を比較してみましょう。
例えば投資信託Aをドル・コスト(月々1万円)と定量(月々1万口)とで購入したとします。
投資信託の基準価格が10,000円、15,000円、8,000円、10,000円と推移したとすると、ドル・コストで購入すると4万円分、定量法で4万口購入することになります。
1ヶ月目 | 2か月目 | 3ヶ月目 |
4ヶ月目 |
|
---|---|---|---|---|
購入金額 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 |
10,000円 |
購入口数 | 10,000口 | 6,666口 | 12,500口 | 10,000口 |
1ヶ月目 | 2か月目 | 3ヶ月目 |
4ヶ月目 |
|
---|---|---|---|---|
購入金額 | 10,000円 | 15,000円 | 8,000円 |
10,000円 |
購入口数 | 10,000口 | 10,000口 | 10,000口 | 10,000口 |
ドル・コスト平均法は4万円で39,166口、定量法43,000円で4万口購入しています。
ドル・コスト平均法では1万口=10,212円、定量法では10,750円となるためドル・コスト平均法の方が平均購入価格を安く抑えることができます。
このドル・コスト平均法は分散投資の中でも時間分散に分類され、投資するタイミングを分散させる方法として有効です。
いかがでしたか。この記事が皆様の一助になれば幸いです。
著者:hironohikari
元大手証券会社で資産運用コンサルティングとして働いていました。現在は投資家兼金融ライターとして活動しています、皆様のお役に立てる記事を配信していきたいと思います。