イマイチ分からない「住民税」、ざっくり解説します

イマイチ分からない「住民税」、ざっくり解説します

Aさん:「今度引っ越すんだけど、引っ越し先の自治体って、住民税が高いらしいんだよね」
Bさん:「そうなんだ~、大変だね!」

この会話、「えっ?」と思いましたか? それとも「そうなんだ~」って納得しましたか? 

AさんとBさんは、住民税と、おそらく、自治体でばらつきがある「国民健康保険料」や、「介護保険料」を、とりちがえて会話しています。でも電車の車内などで、いまだにこんな内容の会話が聞こえてくることがあります。

住民税の税率は? 正解は「全国で一律10%」です。日本中、どこの自治体でも税率は同じです。(ためしに、今、周囲の人に言ってみてください。「え~!」という人がいるかも?)

しかし、住民税がマイナーで、そんな誤解が生まれがちなことには理由があるように思います。イマイチよくわからない「住民税」を、ざっくりと解説してみましょう。

l※本稿では、企業が払う法人住民税は除いた、個人の住民税を取り上げます。また、できるだけ単純化して説明します。(本当はかなりややこしいです)

誤解を招く原因ナンバーワン? 住民税は「1年遅れ」で払っている

サラリーパーソンのみなさんは、給与明細で「所得税」「住民税」の金額を見ていると思います。
本来、税金は自分で計算して払うものですが、勤め人の場合は、勤め先が代わって給与天引きで徴収しています。

企業決算は4月~翌年3月など、会社が自由に決めてOKです。しかし、個人の税金は1月1日~12月31日を「1年」とカウントします。

さて、年末が近くなると、勤め先の総務部などから「年末調整(ねんまつちょうせい)の書類を出してください~」とお願いがありますよね。

そもそも税金は、年収全部にかかるのではありません。
支払った社会保険料や、サラリーマンの経費にあたる給与所得控除などを差し引いた残り(所得)に対してかかります。

年末調整とは、個人の事情などによって「控除(こうじょ)」という、その分は税金をかけませんよ、という「差し引ける金額」の計算まで会社がやってくれる、という非常にありがたい制度なのです。

最近話題になった「配偶者控除」もその一つです。所得から引いてくれる所得控除は、そのほか扶養控除、生命保険料控除、などなど。
住宅ローン控除は所得控除でなく、税額からダイレクトに引いてくれる「税額」控除なので、かなり節税効果があります。

各種控除のある人は、12月の給与の手取り額がちょっと高かったりしますよね。あれはボーナスでもなんでもなく、「払いすぎた所得税」なのですが。
ともかくそんな感じで、所得税は「今年の税金は今年払う」ものなのです。

それに対して住民税は、所得税とは違って、実は「1年前の1~12月まで」の所得を基準に計算されています。

※厳密にいいますと、住民税は所得に対してかかる「所得割(しょとくわり)」と、定額でかかる「均等割(きんとうわり)」がありますが、住民税の大部分がこの所得割のほうなので、均等割はとりあえず無視します。

つまり、前年の所得から、所得税と同じような「各種控除」を引いて(配偶者控除が所得税38万円、住民税33万円というように、微妙に控除額が異なる場合もあります)、税率をかけて、そこから税額控除がある人は引く、その結果が支払うべき住民税となるのです。

ですから給与明細で「所得税」「住民税」と並んでいたとしても、「所得税」は今年の、「住民税」は昨年の、なのです。

たいてい1年前のことなど忘れていますから、「なんだか、住民税高い。そうか、引っ越したからか!」と、「引っ越し先の自治体のせいだ」と、誤解をしてしまうのかもしれません(引っ越したからといって、すぐ住民税の納付先が変わるわけではないことも、後でじっくりと触れましょう)。

自営業者は、所得税の確定申告で住民税も申告していることに

では、自分で所得税の確定申告をする自営業者が住民税を意識しているかというと、そうでもなさそうです。
一般的には、所得税の確定申告をすることで、データが自治体にうまく回るシステムになっているからです(勤め人の場合はもちろん、勤め先経由でデータが回ります)。

自営業者の場合は、12月末に帳簿をしめて、翌年の3月までに所得税の確定申告をして、6月に住民税の納付表が送られてくるというスケジュールになります。
勤め人よりはまだ、所得税と住民税が時系列で分かりやすいかもしれません。

ちなみに、納付書をもとに住民税を納付することを「普通徴収」、給与天引きで納付する方法を「特別徴収」といいます。給与から天引きで納付する方法は、実はイレギュラーなんですね。

住民税は「1月1日現在の住所地」の自治体に支払う

住民税とは、住んでいる地域でかかる公共の費用をみんなで負担する税金です。

住民税は、市町村民税(東京23区では特別区民税)の約4%と、道府県民税(東京都は都民税)の約6%に分けられていて、合計した税率は10%になります。

先ほども少し出てきましたが、では引っ越したらどうなるのでしょう?これも決まりがあって、住民税は1月1日現在に住民票がある自治体に納付します。
ですから、年末に引っ越したけれど住民票を移したのが年明け、となると、その年の住民税は前の住所地の自治体に払うことになります。

住民税は「前の年の所得」にかかって、しかも「1月1日現在の住所地の自治体に払う」、となると、「転職して転居した」場合などは、かなり複雑な結果になります。

納付する住民税=所得割+均等割

納付する住民税の中身を確認しましょう。
所得割は既述のように、合計が10%になります。

均等割は、市区町村民税3500円+都道府県民税1500円(2016年の場合。均等割は2023年まで毎年500円ずつ加算される)です。
生活に困窮している人は自治体への申請によって、免除される制度があります。

このほか、預貯金などの利子からは5%、上場株式の配当金、売却益からは5%の住民税が徴収されていることは、投資をしている人なら詳しいですよね。

勤め人の住民税支払いは「翌年6月から翌々年5月」

給与天引きで住民税を納付する「特別徴収」の人は「1年遅れ」と書きましたが、具体的に知りたい人のために補足しておきましょう。

今年の所得に対する住民税の支払いはいつから始まり、いつ終わるのでしょう? 答えは「来年6月に始まり、再来年の5月まで」です。

では納付書を持参して金融機関やコンビニで納付する、銀行口座から引き落としている「普通徴収」の納付方法はといえば、一般的には6月、8月、10月、1月など、4回に分けて納付することが多いようです。

勤め人だった人は、会社員からフリーランスになるときなどに、この「普通徴収」を実感することになります。
しかも翌年の6月頃に突然、振り込み用紙が届いてびっくり!ということになりがちです。

前年の年収が高いと、状況によっては、翌年の住民税支払いは痛手になります。
会社を辞めて独立するつもりの人は、住民税のシステムをよく理解して、備えておくことが大切ですね。

まとめ

・住民税(所得割)の税率は「全国で一律10%」。しかし自治体で税率が違うと誤解されている場合がある。
・給与天引きで住民税を納付する「特別徴収」の場合、今年の所得に対する住民税支払いは「翌年6月から翌々年5月」になる。
・住民税の支払いは1年後。「普通徴収」では翌年の6月頃に振込用紙が届く。会社を辞めて独立するつもりの人はお金を用意しておこう。

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