住民税が高い地域はどこ?住民税が高い市町村ランキングと効果的な節税方法を解説
都道府県、市町村に支払う住民税。必要な税金だとは分かっていても、「住民税が高く感じる」「支払いのたびに不安になる」という方は少なくないでしょう。「地域によって住民税は違う」といううわさもありますが、実際にはどうなっているのでしょうか。
住民税は原則、収入に関わらず課されるのでご家庭の状況によっては負担感が大きくなるケースもあります。「高い!」と感じる住民税をどのように節約すれば良いのでしょうか。
この記事では、住民税の計算方法や、住民税が高い地方自治体のランキングをご紹介しています。さらに住民税を節約する方法も解説していくので、支払い額を少しでも減らしたい方はぜひ参考にしてください。
そもそも住民税とは
そもそも住民税とは、都道府県や市町村が提供している行政サービスの運営に必要な経費を、そのエリアに住んでいる住民が分担して支払うものです。
住民たちから集められた住民税は、高齢者支援、子育て支援などの福祉に加え、消防や警察など普段の暮らしに欠かせない行政サービスに利用されています。
住民税には、個人に課される「個人住民税」と、会社など法人に課される「法人住民税」があります。一般的な会社員が支払うのは「個人住民税」とです。住民税は基本的に20歳以上の方すべてが払う税金です。
ただし前年度の所得が一定水準以下の方は、例外として住民税の支払いが免除されています。
住民税の計算方法とは
働いている多くの人が支払う住民税ですが、具体的な金額はどのように決められているのでしょうか。
住民税の基本的な計算方法は所得割+均等割となります。
住民税は、所得によって変わる「所得割」と一律に課される「均等割」の2つから計算されています。以下では、所得割と均等割について解説していくので、自分の支払うべき住民税を計算したい方はぜひ参考にしてください。
住民税の所得割とは
住民税における所得割とは、前年の所得に応じて計算される税額です。
地方公共団体が課税する時に通常用いることとされている「標準税率」では、都道府県税が所得の4%、市町村税が所得の6%と設定されており合計で10%の税金が課されます。
ちなみに指定都市の場合、都道府県税は2%、市町村税は8%と設定されていますが合計は同じく10%です。
ただし条例によって標準税率とは異なる税率を課している自治体もあるので、まずはお住いの自治体ホームページをチェックしましょう。
住民税の均等割とは
住民税の均等割とは、収入に関係なく課される税金です。先ほど紹介した標準税率では、都道府県税が1,500円、市町村税が3,500円の計5,000円と設定されています。
ただし地域に均等割で課される金額を条例によって変えることもできるので、住民税の負担はお住いの自治体によって異なります。
住民税の標準金額はどのくらい?
住民税の平均的な金額は、国の設定した標準税率によって決まります。標準税率では、所得割が収入の10%、均等割が一律5,000円となっているため、これらを合わせた金額が一般的な住民税の額となります。
給与所得控除、基礎控除、社会保険控除などを引いた額が200万円となった会社員の場合、住民税は下記のように計算されます。
所得割と均等割の計算方法
所得割:200万円×10%=20万円
均等割:5,000円(一律)
このように計算され計205,000円の支払いが必要になります。もちろん地域によって税率は異なりますが、基本的には控除などを引いた額×10%が住民税として徴収されると考えておくと良いでしょう。
地域によって住民税にほとんど差はない!
「住んでいる場所によって住民税が全然違う」こうしたうわさを聞いたことのある人は少なくないでしょう。確かに地域によって、住民税に差があるのは事実です。
しかし、実は住民税の額にほとんど地域差はありません。
非常に収入の高い方であれば別ですが、年収400~500万円ほどの世帯であれば、住民税のもっとも高い自治体と低い自治体で年1万円ほどの差です。
1万円しか差がないのであれば、住民税を節約するため引っ越しをする方がはるかに高コストだといえるでしょう。
今支払っている住民税が高いと感じているなら、引っ越しをするより節税対策をするのがおすすめです。
しかし「どうしても住民税の地域差が気になる」という方は以下で住民税が高い市町村ランキングをご紹介しているので、参考にしてみてください。
住民税が高いといわれる市町村ランキング
住民税には標準税率があり、およその課税額は一律に定められています。しかし条例で税率を変えている地方自治体もあるため、住民税の額にほんのわずかですが地域差が生じることもあります。
もちろん住民税が少し高いからと引っ越しをするより、節税をした方がお得です。しかしどうしても気になるという方のためここからは日本全国の自治体の中で住民税が高い市町村を解説していきます。
「住んでいる街の住民税は高い?」「本当に住民税にほとんど差はないの?」とお悩みの方はぜひチェックしてください。
また今回のランキングは、年収が400~500万円程度の平均的な世帯を想定して作成しています。
年収が高い世帯の場合、所得割が高い地域ほど住民税の負担額は大きくなるため、ランキングに違いが出る可能性もあります。正確な住民税の額を知るには、まずお住いの自治体ホームページをご確認ください。
住民税が高い市町村1位・夕張市
2019年度、住民税が最も高いのは北海道・夕張市となっています。夕張市では、均等割が標準課税額よりも500円高く、所得割が0.5%の増税となっています。夕張市が属する北海道では、超過課税はありません。そのため道民税と合わせた住民税は、下記のとおりです。
夕張市の住民税
所得割10.5%+均等割5,500円=215,500円
道民税は標準課税額と同じですが、夕張市の課税額が高めに設定されていることから第1位となりました。
一度、財政破綻した自治体として一時話題になった夕張市。行政サービスを守るため、標準よりほんの少し高い住民税を課しているようです。
住民税が高い市町村2位・豊岡市
住民税が2番目に高いのは、兵庫県豊岡市です。豊岡市では所得割が0.1%の増税となっています。また豊岡市を有する兵庫県では、県民緑税として均等割が800円増税となっています。
市民税と県民税を合計すると、下記のとおりです。
豊岡市の住民税
所得割10.1%+均等割5,800円=207,800円
このように標準税額より高めに設定されています。
豊岡市は、特定のエリアに居住する人のみが支払う「都市計画税」を廃止する代わりに所得割の増税をおこなったとしています
住民税が高い市町村3位・横浜市
住民税が高い都市として第3位にランクインしたのは、神奈川県横浜市です。横浜市では、「横浜みどり税」という独自の税金があり、均等割が900円の増税となっています。
そして横浜市の属する神奈川県では、水源環境保全税という税金が設定されており均等割が300円、所得割が0.025%の増税となっています。
そのため合計で支払う住民税は下記のとおりです。
横浜市の住民税
所得割10.025%+均等割6,200円=206,700円
横浜市は神奈川県では都市環境を守るため特別な税金が課されていることから、標準的な税額より住民税が少しだけ高めになっています。
ここまで住民税が高い市町村を紹介しましたが、最も高い夕張市でも所得割が0.5%、均等割が500円高くなるのみとなっています。
また横浜市以下の市町村のほとんどが、住民税の基本となる標準価額を住民に課していますので、住民税が地域によってかなり違うというのは単なるうわさだといえるでしょう。
差がほとんどない住民税を負担に感じる理由
住民税に地域差はほとんどありません。しかし「なぜか住民税が高い気がする」、「同僚より支払い額が多い」とお悩みの方は少なくないはずです。
ここからは住民税を高いと感じてしまう理由を解説していきます。住民税の支払い額を見直したい方はぜひチェックしてください。
理由①住民税は後払いだから
所得税、保険料、年金など給料から引かれる税金はたくさんありますが、多くは給料からの天引きです。
会社員の場合、住民税も給料から天引きされるので大きな負担感なく納め続けることができます。しかしフリーランスや自営業の方、会社で天引きをされていない方は手取りから後日住民税を支払わなければいけません。
住民税は所得の10%程度であり、決して安いものではありません。会社員でも自営業でも住民税の額は変わりませんが、一度手に入れたお金の中から10%を税金として後日、支払えば当然負担感が大きくなります。
どの地域に住んでいても、住民税として所得の10%ほどを支払う必要があることに違いはありません。そのため、特に住民税が天引きされていない人は「住民税が高い!」と感じてしまうのです。
理由②支払い時期にずれがあるから
住民税は、去年の所得で支払い額が決まります。したがって、去年の収入が多く、今年少ない人には住民税が大きな負担となってしまいます。
例えば収入の変化が大きい野球選手で考えてみましょう。
昨年度、年俸1億円で球団と契約していた野球選手。翌年ケガで収入が大幅に減った場合でも住民税は昨年度の収入で計算されます。
そのため現在はほとんど収入がない状態にも関わらず、1億円分の収入で計算された住民税が課されるのです。
一般的なサラリーマンの場合、ここまで極端なケースは少ないでしょう。
しかし退職した年に昨年度分の所得で計算された住民税が課されるので、退職年に税金の負担感を強く感じる方もいるはずです。
理由③住民税が所得税よりも高いケースがあるから
住民税は、所得に関係なく10%程度が課されます。
もちろん自治体の規定よりも収入が低い方(125万円以下とする自治体が多い)、生活保護をうけているかたは支払いの対象にはなりませんが、それ以上の収入がある方は一律に住民税の支払いが必要です。
年収が1億円でも、年収が200万円でも住民税は10%なので、所得税より住民税の負担の方が重くなるケースも少なくありません。
例えば収入が195万円以下の場合、所得税の税率は5%とかなり軽減されています。しかし住民税はどのエリアでも変わらず10%程度なので、収入の少ない人であれば所得税より住民税の方が大きくなるのです。
そのため、支払いの度に「住民税の負担が重い!」と感じてしまう人が多いのです。
高い住民税を少しでも安くする方法
住民税は、所得割+均等割で計算されます。
所得割の税率、均等割の額は地方自治体によって決められているので、変更はできません。しかし課税対象となる収入を減らすことで、所得割の額を減らすことは可能です。
そこでここからは、所得割の金額を減らす節税方法について解説していきます。特にフリーランス、自営業の方は節税対策次第で数万円も支払い額に差が出ることがありますので、確定申告前にチェックしておくことが大切です。
また会社員の方でも使える節税方法もありますので、お仕事を問わずぜひ読んでみてください。
方法①ふるさと納税を活用する
会社員、個人事業主、フリーランスの方すべてにおすすめできる節税方法が、ふるさと納税の活用です。自分で選んだ自治体に寄付をすると、寄付した額から2,000円を引いた額が控除の対象となり、住民税の課税対象ではなくなります。
もちろんふるさと納税したお金がそのまま戻ってくることはありません。しかし自治体によっては納税のお礼として返礼品がもらえるため、欲しい物品がある場合にはふるさと納税の方がお得でしょう。
また、ふるさと納税で申告できる控除については、「ワンストップ特例制度」が利用できます。ワンストップ特例制度とは、確定申告をしなくても1年間で5自治体までであればふるさと納税の控除が受けられる仕組みです。
ふるさと納税をした自治体に所定の書類を送ることでワンストップ特例制度を利用できるので、ふるさと納税に興味のある方は利用してみましょう。
方法②必要経費を計上する
自営業やフリーランス、サラリーマンで副業をしている方は必要経費を計上し課税額を下げましょう。
必要経費を申請することで住民税の計算に使われる収入が小さくなるため、節税効果を得られます。
ついつい計上し忘れてしまう必要経費を以下で列記しますので、ぜひチェックしてください。
- 仕事で使う備品
- 取引先との交際費
- 職場までの交通費
- 電気代
- 家賃の一部
- インターネット通信費
- 業務で使う有料サービスの使用料
確定申告をする際はしっかり計上するよう意識しましょう。
方法③医療費控除を利用する
1年間にかかった医療費が10万円を超えた場合、医療費控除として超えた分の金額を控除することが可能です。
控除の対象となるのは、その年の1月1日~12月31日までにかかった医療費です。
医療費10万円以上が対象となるので、「大きな病気やケガをしていないから」と制度の利用を諦めてしまう方は少なくありません。
しかし医療費として含まれるのは、自分が支払った病院代だけではありません。医療費として申請できるのは、以下の通りです。
- 自分の診察費(保険外のものも含む)
- 生計を共にする家族の診察費(保険外のものも含む)
- 市販の薬代
- 病院へ行くときの交通費
- 入院費
- 入院中の食事代
- 妊娠の定期健診・検査代
- 不妊治療費用
年間10万円は大きな額に思えますが、家族の分の診察費や検査費を含むため適用される人は案外多いはずです。
医療機関でもらった領収書は必ず保管し、確定申告の際に控除しましょう。
方法④扶養控除を利用する
自分の子供など、扶養している家族がいる場合は控除を使い住民税の課税額を下げることができます。
扶養控除は、扶養親族1人当たり33万円です。扶養親族に含まれるのは、配偶者以外の親族で、納税者と生計を一にしている人です。
親族と別居している場合でも仕送りなどで養っている子供がいる場合、扶養親族として控除の対象になります。
扶養親族は、年間の所得金額が38万円以下でなければいけません。扶養親族がいる場合は、サラリーマンでも控除の申告が可能です。
方法⑤生命保険料を控除してもらう
1年間に支払った生命保険などのうち、一定額を所得から控除してもらうことが可能です。
控除額は支払っている保険料の種類に応じて決められています。
生命保険などを含む「一般生命保険料控除」、医療保険、がん保険などを含む「介護医療保険料控除」、個人年金保険を含む「個人年金保険料控除」ではそれぞれ、最高で4万円の控除を受けられます。
この3つの種類を合わせ、最大で12万円を控除してもらうことも可能なので、まずは国税庁のページをチェックしてください。
方法⑥小規模企業共済を活用する
小規模企業共済の掛け金は、全額所得から控除されます。小規模企業共済とは、個人事業主や小規模企業の役員が入れる共済制度です。
廃業や退職をした場合、掛け金に応じて積み立てたお金が支払われるので、将来の備えとして有効な制度となっています。
月小規模企業共済では毎月1,000円から掛け金を自分で決めることができるので、該当する方は節税対策として加入するのをおすすめします。
方法⑦個人型確定拠出年金(iDeCo)を活用する
会社員、個人事業主がともに加入できるのが、個人型確定拠出年金(iDeCo)です。iDeCoで支払った掛け金は全額、所得控除の対象となります。
iDeCoとは、毎月一定額を掛け金として支払い、定期預金や投資信託などを用いて運用する制度です。
60歳以降に一時金、または年金として積み立てたお金を受け取ることができるので、将来のためにも加入しておきましょう。
iDeCoは月々5,000円~となっており、掛け金は1,000円単位で自由に設定できます。
住民税が高いと感じたら節税を考えよう!
住民税の額はお住いの地域によって異なりますが、地域ごとの差は非常に小さいです。住民税の節税を考えるなら、引っ越しよりも節税に挑戦してみましょう。
会社員であっても利用できるふるさと納税は、節税効果の高い対策です。まずは今支払っている住民税の額をチェックし、自分の家庭でできる節税方法を考えてみましょう。
金融・ビジネス分野を中心にライティング活動を行う専業ライター。大学は経済学部を卒業しており、交通経済学専攻だった。ビジネスとは直接関係していないが旅行好き。大学時代は一人で日本一周をしたことがある。しかし日本一周の経験は現在の仕事でさほど生かされていない。ポイントを集めるのが好きで、ポイントカードを100枚以上持っている。お店でポイントカードを作るか聞かれると必ず作ってしまう。