骨壷は1万5千円、高級棺は500万円!? 葬儀とお金について葬儀社さんに聞きました

骨壷は1万5千円、高級棺は500万円!? 葬儀とお金について葬儀社さんに聞きました

はじめまして! 2人の子持ち、アラサーライターの浦和ツナ子です。結婚して5年、義理の実家に帰省すると、義父母の話題は必ず「死」に関連すること。



長期的な介護を受けたくはない、ピンピンコロリ((ピンピン元気で過ごし、コロリと亡くなること))と死んでいきたい、葬式にたくさんの人は呼ぶな、大層な墓はいらぬ……。などと快活に話し続ける義父母に、息子である旦那はいつも神妙な面持ち。



そりゃそうだ。自分の両親が死ぬことなんて、できれば考えたくない。
でも、きっと義両親は真剣だと思うんです。自分の老後や死後の理想を、しっかりと伝えておきたい。遺された子どもたちが迷ったり悩んだり、揉めたりすることのないように。
……と、前置きがかなり長くなりましたが、身近な家族と、「お葬式の話」ってしていますか?

喪主になる日は、突然訪れる

身近な人の葬儀というのはそう何度も経験するものではなく、ましてや自分が誰かの葬儀を取り仕切る“喪主”になる日がくるなんて、なかなか考えが及ばないものです。

一般的に喪主は、故人に一番近しい血縁者がなるとされています。あなたが突然、誰かの喪主になる日だって、ないとは言い切れません。

けれど、「お葬式の話」って普段から話題にあがらないもの。

今回は、これからの日本の葬儀のあり方を変えていく「 鎌倉自宅葬儀社」の馬場翔一郎さんに、近年の葬儀事情や、人には聞けないお葬式にまつわる「お金」について伺いました。

大切な人が亡くなったらたくさんの人を集めて立派なお葬式を出してあげたい、という考えだけでなく、近年仰々しい葬儀が減りつつある。葬儀のあり方が大きく変わってきていると、馬場さんは言います。

お葬式って、どういうものだっけ?

──今、日本で行われている葬儀というのは、どのようなものなのでしょうか。

馬場さん:これまでの日本の伝統的な葬儀は、亡くなったらお知らせを出し、たくさんの会葬者を呼んで式を行う“一般葬”が主流でした。しかしここ最近では、高齢化などさまざまな時代背景から、そのような葬儀は縮小傾向にあります。一般の会葬者を辞退して家族だけで行う“家族葬”が好まれ、さらに火葬式だけ行う“直葬”も増えています。

──葬儀もたくさんの種類があるのですね。そもそも、わたしたちは葬儀に対しての知識が乏しすぎるのかも……。葬儀ってどのような流れでどのようなことを行い、何にどれだけのお金が掛かるものなのか、全く知りません。

馬場さん:本当に、「何が分からないのかが分からない」という声はよく聞きますね。実際に喪主を務められた経験者であっても、事務手続きや弔問客へのおもてなしで精一杯で、悲しむ間も無く次々と事が進んでいってしまった……という声が多いです。

──では、例えば突然両親が亡くなって喪主を務めなくてはいけなくなった……という場合。一般葬だと、どのような流れで行われるのでしょう。

馬場さん:近年、在宅での介護や看護が推進されていますが、現状では約9割もの人が病院で亡くなっていくと言われています。病院でご逝去されるとまず、霊安室に移動します。そこでおそらく、病院側から「葬儀社は決まっていますか」と聞かれるでしょう。

──生前に故人の意向を聞いていたりしない限り、葬儀屋を事前に決めているケースは珍しいのでは? でも、多くの病院では、お抱えの葬儀社がありますよね。大手の葬儀会社さんというものがあるのでしょうか。

馬場さん:病院にいる葬儀社さんはさまざまですね。全国展開で有名な所があるというよりは、地域によっていろいろな葬儀社さんがあります。

ただ、突然の訃報でなければ、危ないと分かった時点で葬儀社を探しておくことは、不謹慎ではありません。亡くなった後の準備をしておくことは、故人にとっても、ご遺族にとっても大切なことです。

今はインターネットなどで簡単に葬儀社を探せる時代ですので、条件に合った葬儀社を見つけておくだけでも、ご逝去後の対応はスムーズだと思います。

──良い葬儀社を見極める上で、何か見ておいたほうが良い点はありますか。

馬場さん:まずは、搬送時における葬儀社の担当者の対応を見ておくと良いでしょう。ご逝去後は、ご遺体の安置が最優先事項です。ご遺族は安置場所を決め、病院でお体を綺麗にしてもらったら、葬儀社さんに安置場所までの搬送をお願いします。

まれなケースだと思いますが、安置場所まで連れていってくれた葬儀屋さんに納得できない点があったとすれば、ひと呼吸おいても良いと思います。搬送してくれた業者に葬儀をお願いしなければならないという決まりはありません。

──なるほど。実際の葬儀の内容というのは、その後決めていくわけですよね。

馬場さん:安置を済ませたら、そのまま葬儀の段取りや見積もりなどの相談に入るのが一般的な流れです。

はじめに、どういった形式で送り出すのかを決めます。一般葬か、家族葬か、社葬なのか。宗教葬の場合はお寺さんなどとやりとりをし、葬儀の挙げられる日を聞きます。

その後、火葬場の空き状況を見る。火葬場の日程が抑えられた時点で、式場はどこで、内容はどうするのか、というのを細かく決めていきます。

──火葬を決めたら、その日から逆算して準備期間が決まるのですね。

馬場さん:そうです。一般的にはご逝去から3~5日くらいで、通夜・告別式・火葬を済ませます。段取りの打ち合わせはそういった流れの中で行なわれるのですが、亡くなってすぐにいろいろと決めていくのは精神的につらいものがあるので、葬儀社を決める際は、焦らず立ち止まって考えるのもいいと思います。

──何が何やら分からないことだらけで、葬儀屋さんに言われるがままに……という事態に陥りそうです。葬儀の準備に心がついていかない状況なら、一旦立ち止まるのもアリだと。

馬場さん:もちろんです。落ち着かない気持ちの中、「棺はどれにしましょうか?」などから始まり、考えなければならないことが山積みです。ご遺族は、大切な人を亡くしてすぐの精神状態で葬儀を決めていかなければなりません。

ですから鎌倉自宅葬儀社の葬儀では、“亡くなったその日は何もしない”ことを基本的な進め方としています。見積もりは、亡くなった翌日、少し落ち着いてから。

他の葬儀社さんであっても、ご遺族を焦らせずに、じっくり話をして見積もりを取ってくれるところが良いですね。遅い時間に亡くなったのだとすれば、翌日にあらためて打ち合わせの時間を設けてくれるようにお願いすることもできます。

葬儀にかかるお金は、どれくらい?

──では、葬儀には何が必要か、ということを細かく教えていただけますか。

馬場さん:最低限必要なのは、ご遺体まわりのものになります。お棺、骨壷、病院で亡くなった場合は自宅(などの安置所)までの寝台車、安置所から火葬場までは霊柩車、そして安置しておく際に必要なドライアイス……。物理的に必要なのはこういったものです。

これらのものをひとまとめにしたセットのプラン料金があり、それをベースに整えていきます。お棺や祭壇をランクアップしたい、この装飾はいらない……といった風に、カスタマイズしていくのです。

──ところで、みなさん一体、葬儀にどれくらいのお金をかけているものなのでしょうか。

馬場さん:2014年に日本消費者協会が発表したデータによると、葬儀全体の総額は平均で188万9000円。

プラン料金設定も多く、個別の費用の詳細が分からないというケースがあるのですが、だいたいの内訳としては、祭壇、お棺、人件費、ホール使用料、骨壺、供花、ドライアイス、火葬料、遺体運搬費などの「葬儀費用一式」が、122万2000円。会葬者への「飲食接待費」が、33万9000円。宗教葬の場合にかかってくる、僧侶や神父・牧師などへのお礼「寺院などへの費用」が、44万6000円です。((金額は「いい葬儀」葬儀費用(葬式費用)より参照(※総額は合計ではございません))) 

これらの価格は、2010年の同じ調査よりも、低額化の傾向にあります。

500万の棺も!? 葬儀費のカラクリ

──葬式の費用って、ざっくりとまとめられて請求されるイメージがあるのですが、お棺はいくら、骨壷はいくら、など明細が出るものなんですか。

馬場さん:もちろん、出そうと思えば出せますよ。ただ、これまでの葬儀業界では、そういったものはブラックボックスでした。

お棺や骨壷、その他ひとつひとつの価格というのは表示が無いのが当たり前。それぞれにいくらつけるかは、実は葬儀屋の裁量なんです。だから卸値5万円のお棺が、Aの葬儀社では20万、Bの葬儀社では50万……となります。

──馬場さんの知る限りで、一番高価なお棺はどれくらいのものなんでしょう……?

馬場さん:500万のお棺の話を聞いたことがありますね。そこまで高価でなくとも、素晴らしい彫りが施されていたり、宇宙船の形をしていたり、華道家・假屋崎省吾さんプロデュースのお棺もありますよ。こだわりを持つ方はこういった個性的なものを選ばれます。

骨壷もシンプルなもので1万5000円くらいからありますが、大理石、有田焼、有名デザイナーの装飾が付いている……など、上を見たらきりがない。

お棺や骨壷、装飾などをこだわって選択する方は、生前から故人の希望があって、というケースが多いです。

──自宅葬儀だと、どのような料金プランがあるのですか。

馬場さん:鎌倉自宅葬儀社の場合、宗教葬を必要としないプラン、宗教葬を行うプラン、自宅葬に追加して一般の方をお別れ会にお招きするプランなど、いろいろなケースのプランを用意しています。

明確な見積もりを出し、1回きりで最終決定をせず、2回ほど時間を取って、本当に満足のいくものなのか見直していただいております。

──お写真を見せていただくと、とてもセンスがいいなと思うのですが……。お棺や祭壇、装飾などはどのようなものを使っているのでしょうか。

馬場さん:どんなところにお金をかけるか、の感覚が変わってきています。間伐材を使用し、葬送で排出されるCO2をオフセットする「WiLLiFEのエコフィンシリーズ」を基本的に取り扱っています。

ひらくとそのまま一部が祭壇になるものなのです。棺がそのまま、メモリアルコーナーのような役割を果たします。小さなスペースでも有意義に、センス良く使えるので、こういったものを好まれるご遺族は多いですね。

お金がなくても、葬儀は挙げられる?

──ところで、葬儀費用ってどのタイミングで、どのようにお支払いするのですか。

馬場さん:ほとんどの葬儀社さんが、お支払いは葬儀が終わったあとにしていると思います。お支払いの方法は、銀行振込、現金支払い、クレジットカードなど、葬儀社さんによってさまざまです。

──例えば、結婚式だと一般的に「費用の半分くらいはご祝儀で賄える」などと言われていますよね。一般葬の場合は、香典があると思うのですが、葬儀費用をフォローできるものなのでしょうか。

馬場さん:価格の総額でいうと、家族葬は一般葬よりコンパクトで安価に思えますが、一般葬よりもご遺族の“持ち出し”が多い場合があります。

一般葬での香典は、3~5000円くらいで、香典返しはその半返しと言われています。しかし、会葬者がどれだけくるのか、香典がどれくらい集まるのかは予測することがとても難しいです。

──では、一般葬で、香典収入内で済ませたい……というのは無理そうな話ですね。

全額というのは難しいかもしれませんが、そういった金額面のことを葬儀社に相談してみてもいいですよ。料理を出さずにおもてなしを最低限に抑える、そして香典返しはあとからお渡しする形をとれば、香典収入である程度の葬儀費用をまかなうことも可能だと思います。

はじめに、ご遺族が用意できる予算を葬儀社に伝えてみるのもひとつの手です。

葬儀のお金のかけ方は変わってくる

馬場さんは20歳から葬儀業界に足を踏み入れ、葬儀社はじめ、花屋や返礼品屋など葬儀に関わるさまざまな業種を経験します。たくさんの葬儀に携わってくる中、葬儀の簡略化が望まれる一方で、「故人らしい・ご遺族らしい、葬儀を行いたい」という新たなニーズを感じるようになったのだとか。

そこで、家族葬と直葬の間にある"自宅葬"という、古くて新しい葬儀のカタチの提案を始めます。

馬場さん:高齢化社会において、葬儀の時間や内容が短縮されてきているのは事実です。しかし、簡略化された直葬では、「偲び足りなかった」という遺族がたくさんいらっしゃいました。ではどのような葬儀が本当に望まれているのか、ずっと考えてきました。

わたし自身、4年前に自分の祖父の葬儀を仕切ってみて、初めて気が付いたんです。「そんなに焦ることはないんだな」と。祖父の場合、会葬者が多く自宅葬にはできなかったのですが、火葬場や斎場の都合で、式までの準備期間が1週間あった。その間、自宅で安置ができ、ゆっくりと過ごすことができたんです。

祖母や母と語らう時間も出来たし、弔問にきてくれる方に祖父の人となりを聞かせてもらったり……。何より、闘病生活で叶わなかった“家に帰してあげる”ということが叶えられた。

住宅事情はさまざまですが、最後に家に帰してあげる“自宅葬”というカタチが、いまの日本で最もしっくりとくる葬儀のあり方なのではないかと思ったのです。

では、馬場さんの考える“自宅葬”とはどのような葬儀なのか。サードウェーブ葬儀とも言われる“自宅葬”について、次回は掘り下げて聞いてみようと思います。

20歳から葬儀業界に従事し、葬儀施行だけでなく、葬儀に関わるお花、返礼品、料理、テントなどさまざまな業務にも携わり、神奈川、東京、埼玉などさまざまなエリアで、葬儀に立ち会う。13年間業界に従事した経験から、「最後の思い出つくり」の場としての自宅葬の企画をカヤックに持ち込み、2016年8月に100%子会社として、「株式会社鎌倉自宅葬儀社」を立ち上げ。取締役に就任。

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