帯封崩しも辞さないカメラマニアが浪費哲学を語り尽くす
いわゆる、「物欲の春」も終え、桜の花を散らした薫風も終わり、湿度を感じる時期に入ったが、みんな元気に物欲しているだろうか。私、アレモコレモ(@_aremokoremo_)はいつも通り物欲全開である。いつもフルスロットル。いつも全盛期という感じがするが、果たしていつ衰えるのだろうか。お金がなくなった時だろうか。物欲の衰えはまるっきり見えず、このまま買い続けるとお金がなくなる予感しかない。いや、なくなるだろう。絶対に。
ではこんなお金の使い方をしている私は地獄へ行くのだろうか。行くだろう。しかし、やりたい放題やって生き抜いてやる。地獄に行っても物欲で支配してやる。物欲神として皆をひれ伏せさせてやるわ。そんな私のお金の使い方について書いてみたい。
趣味は人生における潤い
私の趣味は写真だ。ここでいう写真とは、撮り、現像し、プリントするといった、「写真にまつわる、あれもこれも」のことだ。決して「カメラ・レンズ収集」が趣味ではない。あまりレンズのことは詳しくないし、光学など全然わからないし、レンズの性能を表すという「MTF曲線」の見方もわからない。多分、真っ直ぐならいいんだろう。MTF曲線は直線ならいい。それぐらいの知識しかない。詳しく知りたければ、下のニコンの引用を読むといいだろう。ズミクロン、ビオゴン、ゾナーなどレンズ関連の名前はいっぱい知っているが、写りは実際に使ってみないとわからない。
MTF(Modulation Transfer Function)は、レンズ性能を評価する指標のひとつで、レンズの結像性能を知るために、被写体の持つコントラストをどの程度忠実に再現できるかを空間周波数特性として表現したものです。
MTF曲線とは | レンズ | ニコンイメージング
広角レンズの名玉、ビオゴンは一体どんな写りをしてくれるのか、どんなロマンがあるのか。ライカレンズの王者、ズミクロン、一体どんなレンズなのだ。知りたい。ならば買うしかないのだ。身銭を切って初めてわかることもある。何にしてもカメラ・レンズの“写り"が欲しいから買う。買ったら写す。写して気に入らなければ売る。その繰り返しなので全然お金が増える気がしない。わらしべ長者からは程遠い。入ったら使う。そのままだ。右手で受け取り左手で支払う。こうして私の人生は物欲によって潤うのだ。
趣味を持っているか否かで人生の楽しみはかなり変わってくるのではないか。終電間際の電車で帰宅する。なんとか食事をしてシャワーだけ浴びてベッドに身体を投げる。そして朝、目を覚まし、また終電で帰る。ルーティンだ。しかし、趣味があれば、仕事を早く終わらせて趣味に時間を使おうと、日々のモチベーションが上がるかもしれない。趣味が日本のGDP、生産能力、景気を上げてしまうかもしれない。アベノミクスも真っ青である。
想像してほしい。写真を撮ることが趣味ならどんな人生になるだろう。もちろん、趣味以外の時間の価値を否定するわけではない。仕事そのものがライフワークの場合もあるだろう。しかし、ほんの少しだけお金と時間を分けて欲しい。カメラやレンズなどに使うお金と、シャッターを切るための、1/125秒ほどの時間を。
日常に潜む、写真趣味の罠
写真趣味の楽しみは、なにも「撮影」だけじゃない。プリントも楽しさの一つだ。撮ってきたものをプリントして飾る。写真のある生活。とてもいい生活だと思わないか。もちろん、お店でプリントしてもらってもいい。それを自分好みのフレーム、額縁に入れ、好みの場所に飾る。素敵だ。植物などの緑を飾ると心が安らぐように、写真があり目に入ると、ああ、私ってこんな写真を撮ったのね。私、すごいね。いいね、いいね。自己肯定感が溢れかえる。憂鬱な気分よさようなら。
また家族の写真を飾るだけでもいい。一つ提案がある、トイレに写真を一枚飾ってほしい。人生の中で一番悩まずに一つのことに集中していられるのがトイレだからだ。純粋に写真を楽しめる。
「現像」も写真を楽しむ上でのポイントだ。フィルム派でモノクロフィルムがメインの私は自分で現像しているので、暇を見つけては撮影済みフィルムを水場で現像している。デジカメを使っている方でも、RAWで撮れば、Lightroomなどの専用ソフトで現像するだろうし、JPGのみという方でも少しはレタッチなどを行うだろう。これが雨の日、室内でもできる趣味になる。今やネット社会なのでSNSなどにアップして、いいね!をいっぱい押してもらおう。ハロー、自己肯定感。
・用語解説【1】RAW……超簡単にいえば、未加工の写真データ。一般的なJPGデータと比較し、撮影後に明るさや色合いなど調整できる範囲が広く、いわゆる「やっちまった」写真であってもRAWデータならば救出できることも。この調整〜JPGへの変換といった一連の作業を、「現像」と表現する。ま、こうしたデジタルな現像作業も相当の時間泥棒であることは間違いない。(編注)
写真を趣味にするにあたってかかる費用
これはいくらとはっきりとはわからない。ポートレイトが好きな人、風景が好きな人、スナップが好きな人など、被写体の種類によって機材に投じる費用は変わってくるからだ。しかし、おおよそいくらくらい、というのは書ける。
この1枚を撮るのにかかった費用を書いてみよう。
これはSIGMAというメーカーのカメラ、dp3 Quattroで撮った。さすがFOVEONセンサー、そしてSIGMAのレンズとしか言いようがない。そして、私のセンスすごいと。では、いくらかかったのか。
・用語解説【2】FOVEONセンサー……SIGMA社の子会社であるFOVEON社によって設計されたセンサーのことで、FOVEON X3センサーと呼ばれる。センサーの構造特性から、超高解像度の画像が得られるが短所として実用感度が低い(≒暗所での撮影が不得意)などがある。 参考:テクノロジー | dp Quattro | カメラ | SIGMA GLOBAL VISION
dp3 Quattroは現在(2017年5月現在)、新品で94,210円(ヨドバシ.comでの販売価格)で、SDカードは16Gのカードを使っているので3,440円。レンズフードは必須と考えているので3,250円。合計100,900円。無論、中古を買ったりすればもっと安くそろえることは可能である。約10万で上の砂地の写真が撮れたことになる。
これを高いとみるか妥当とみるかは人それぞれだが、このカメラでしか撮れなものがあるのは確かだと言い切れる。私にとってデジタルカメラ=FOVEONセンサーと言えるほどだ。
これはバルナックライカDIIIというボディ、レンズはズマール 5cm f2で撮った。
・用語解説【3】バルナックライカ……1910年代にオスカー・バルナックによって開発され、1925年より市販されたライツ社のカメラのこと。ちなみにライカとは"Leitz Camera=Leica"であり、ライツのカメラ=ライカである。
いくらか。もちろん古いフィルムカメラなので全て中古だ。2017年の私の感覚では、程度にもよるがバルナックライカは約5万。ズマール5cm f2も5万ぐらい。合わせておおよそ10万円ぐらいだろうか。安ければ8万ぐらいでも手に入る。最近ではデジタルミラーレスカメラにアダプターを介し古いレンズを装着して撮るのが流行っていて、レンズだけ高騰しているのが現状だ。
フィルムはトライ-Xというコダック製のモノクロフィルムで約900円。フィルムも高くなった。10年前はこのトライ-Xも3本で980円だった。それが今や1本だ。1本1,000円になったら諦めてデジタルに完全移行すると宣言したが、撤回する。1,000円でもフィルムで撮り続ける。それほど私にとっては魅力がある。まぁ、趣味人とはこうしてお金というふるいに掛けられ、試されているのだろうが、私は負けない。缶コーヒーをやめ、自宅でコーヒーを淹れてボトルに入れて持ち歩こうじゃないか。
そんなフィルムだって、安く上げることができる。私は長巻を最近また導入した。長巻とは「100ft缶」などと呼ばれる、30.5mの長尺フィルムのことで、1本ずつのパトローネに入っておらず、自分でデイロールなどと呼ばれるフィルムローダーを使って、パトローネに詰めて使うものだが、36枚撮りフィルムを約20本ほど巻くことができる。
2017年5月現在、ILFORDのHP5+の長巻フィルムは14,720円(ヨドバシ.com販売価格)なので単純計算すると1本736円まで下げることができる。ちなみにパトローネ入りは1本864円(ヨドバシ.com販売価格)。フィルムローダーに17,890円くらいの初期コストがかかるが、それでも長い目で見ると安くなる。さらに私はアメリカのB&Hというネット店舗から個人輸入もしている。全く難しいことはない。中学で習った英語しか使えない私でも普通に自宅に届いた。こうした海外通販は半額程度になるのでかなりお勧めである。
・用語解説【4】パトローネ……いわゆるカメラのフィルムの形を想像してほしい。あれの黒い舌のようなフィルムの部分ではなく、ケースの部分をパトローネと呼ぶ。他にカートリッジなどと呼ばれる場合も。アレモコレモ氏は、フィルムを大量購入し、パトローネへの詰め込み作業を自身の手で行い、フィルムのトータルコストを下げているというわけだ。「紙巻きタバコを買うよりも、手巻きタバコのほうが安い」と同じ理屈である。ご苦労様です、以外の言葉がない。(編注)
最もお金がかかった頃
写真を趣味にしてから10年ちょっと経ったが、私が最もお金を投じたのはいつ頃だっただろうか。最近はそれほどお金をかけていない。昨今はフィルムカメラの価格が暴落しているからだ。どちらかというとフィルムカメラがメインの私にとって、この暴落はメリットでしかない。反面、フィルム価格は高騰しているがデジタルカメラのように1日に500枚も1,000枚も撮らない。1日歩いても使うのは36枚撮りフィルムを1本ほど。一時期、2時間で6本とか撮っていたが私は量よりも質なんだなと思ったのでやめた。それでは、一番お金をかけた時と言えばいつだろう。やっぱり始めた頃だと思う。あれもこれも、使ってみたいと思っていた頃だと思う。
初めてカメラとレンズを買って撮ってみた。さらに、あのカメラなら、レンズならどうなんだろうと。「帯封」1本を崩したこともある。そう、銀行で「帯封付きで渡される額」だ。それでも全然構わないと当時は思っていた。いま思えば狂っていた。でも、振り返ってみると、それは思い出だ。不快なことは全くなかった。今でもあの時は楽しかったと思う。その結果として「落ち着いた今」がある。誰だ? 「今、落ち着いているのか?」と言っているのは。一歩前へ出ろ。帯封でビンタしてやる。お札じゃないぞ、帯封でだ。
「そんなにお金使うの?」と心配になっただろうか。安心してほしい。誰しも、お金が尽きれば買わなくなる。が、「返済」できる目処がないのに買ってしまうのは問題がある。そのときは駅前メンタルクリニックの門を叩け。私と一緒に通おう。または店頭でカメラを手にしてそのまま走り去るようになったらそれは強盗。犯罪ダメ。カメラは私がもらう。その後、警察に一緒に行こう。付き添われて云々ってやつだ。
お金の使い方には優先順位がある
「地獄の沙汰も金次第」と言うらしい。つまり地獄において閻魔大王の判決も金次第ということだ。
本当にそうか? 閻魔大王をPENTAX 67、通称バケペンで殴りつければいいじゃないのか? 浄玻璃鏡だって、バケペンで割ってやる。
好きなカメラが欲しいなら、少しの我慢もできるだろう。もちろん、我慢せずにパッと出せるのならいい。例えばライカのM型デジタルカメラM-Pなど約100万円だ。レンズは別売りだ。標準ズームキットなどない。ズミクロン35mm f2 ASPH.というレンズは約40万円だ。しかも値引き交渉などに応じるほどライカは優しくない。
ライカの店員はこう言うだろう、「欲しけりゃ買う、それが人間ってものじゃないのかね?」と。ライカはかように恐ろしいものだ。だが、一言だけ伝えておこう。月がなぜ奇麗なのか知っているか? それは月だからだ。なぜライカが欲しいのか? それはライカだからだ。欲しいのなら買うしかない。
・用語解説【5】ズミクロン……高級カメラメーカーとして知られる、ドイツのライカカメラ社がラインアップするレンズ。同社のレンズはF値(簡単に言うと、レンズの明るさを示す指標)の違いに応じて製品名が異なる。例えば、F値が1.4のものは『ズミルックス』、そしてF値が2のものは『ズミクロン』などと、やや面倒なネーミングがなされているのだ。(編注)
話が逸脱してしまった、私の悪い傾向だ。さて、欲しいカメラ、憧れのカメラを手に入れるなら、お金を使う優先度を考えるようになるだろう。極端な例だが、R32型スカイラインGT-Rという車が復活した時(1989年頃のバブル期か)のある男の逸話がある。1994年頃に生産が終わると言われた。結構な値段の車だったがどうしても欲しい。それならば72回払いで買うと決めた。しかし、給料がすぐに100万も上がるわけはない。手持ちの現金は限りがある。それでも欲しい。彼は買った。
ローン以外に、ガソリン代など1ヶ月にかかるお金は相当なものだろう。結果、食事は3食カップラーメンになった。彼の経済力には不相応だった。しかし、嬉しい、楽しい、人生が充実していると彼は言った。夜中のファミレスでお替わり無料のコーヒーを飲みながら、愛車のことを語る彼の目は輝いていた。そして深夜の高速道路へ走りに行き、納車したその日にオービスが光り、180日免停となったのだった。彼は本当に男前だったな。免停になったと聞いた時は、思わず惚れそうになったものだ。
わかるか? この生活。欲しいカメラがあるならカップラーメンをすすれ。おにぎりを食べろ。弁当を作れ。酒をやめろ。賭け事をやめろ。アイドルの推しをやめろ……無理か?
私は体質的にお酒がほとんど飲めないし、賭け事は極端な負けず嫌いなのでできない。友人に勧められ、一度だけパチンコをやったが100円を入れて10秒で飲まれて激しく怒り狂って以来、近寄っていない。つまり、お金が趣味以外にかからない。そして「狭く深く」の気質なので他のことにあまり目がいかない。カメラとレンズ以外に目がいかない。一点集中豪華主義と言ってもいい。
ローンは組まない主義
私はこう見えて繊細なので家計簿をつけている。1ヶ月分の使える支出範囲を超えたことはない。もちろん赤字、マイナスになったことはない。カードであとで支払うことがあっても「足りない」という状態になったことはない。
また、ローンも組んだことはない。カード支払いは現金を持ち歩きたくないからという理由だけで、一括で支払っている。12回払いまで手数料無料と言われてもローンは組まない主義だ。その12回分を、いちいち引き落とされるのが嫌というか、気分が悪いのだ。なんだか支払いが終わるまで自分のカメラではない気がするからだ。一括で支払うためにカメラ、レンズを売ってでもお金は用意するし、他のことを我慢する。お給料が入るまで我慢する。それぐらい人間らしい一面を持っているのだ。
もちろん、ローンを上手に利用してもいいと思う。手元に現金が残る方が人間らしい生活を送れるという考え方もある。現金の威力はすごいからね。12回払いまで手数料無料という響きにお得感を感じるのも事実だ。ただ、私は通帳残高に刻まれた数字ではなく、札束で人の頬を殴りたいし、殴ってほしいのだ。
沼よ、沼よ
時折、「趣味がない」と言う方を見かけるが、そうだろうか。趣味は生きていることと同義だと思う。仕事の帰り道に電車内で人間観察をする人もいれば、毎晩、せんべろを楽しんでいる人もいると思う。
本当に何もない。「私の人生終わってる」と思っている方は、私に連絡してほしい。優しくカメラとレンズの買い方を教えて差し上げよう。人生について長く語って差し上げよう。
メルマガ制にして、一通1,000円ぐらいもらってもいい。それを10回ワンセット。1万ぐらいたまったらレンズでも買いに行くので一緒に来てほしい。沼に沈めてやる! いや、一緒に沼に浸かろうよ? 居心地がいいよ。ぬるま湯のような人生を歩むのがいいのか? それとも物欲に追われるような人生がいいのか? どっちだ? 私は後者だ!
日々、物欲に悩まされ、闘っている。 フィルムカメラをメインにデジタルカメラも持って、写真を撮りに東奔西走。