「コスメ」を買っているんじゃない、希望を買っているんだ 人生が少し楽しくなる趣味の話

「コスメ」を買っているんじゃない、希望を買っているんだ 人生が少し楽しくなる趣味の話

『趣味とお金』というテーマだというのに冒頭からなんなの、という感じですが、私は今まで人に「趣味は?」と聞かれて「コスメです」と答えたことはありません。いつもは「映画です」「漫画です」と返していたと思います(それも本当のこと)。



ただ「好きなことは?」と聞かれた場合は、「コスメやメイクが好きです」と答えているような気がします。なぜなら、私の中で「趣味=その対象に費やす予算や時間を別途作るもの」という概念があったからです。



その点、コスメは日用消耗品に該当しますし、メイクは髪を梳かしたり服を着たりするのと同じように身だしなみの一環ですので、「趣味=コスメ」というのは少し違和感があったのだと思います。



この機会だからと、検索サービスを使って類語を調べてみたところ……。

しゅみ【趣味】
道楽 ホビー 余暇活動 好み 嗜好

になるようです。うん、全部当てはまってる!

そして自分の概念をひっくり返すことになりますが、紛れもなく私は、コスメやメイクに対して予算や時間を別途作っています。

私、趣味はコスメです!

私にとってのコスメ・メイクとは

えー、と勝手に再認識したところで、私にとってコスメとメイクが日用消耗品と身だしなみ以上の存在になるまで昇華された経緯をご説明したいと思います。


私は昔からコスメが好きで夢中だったわけではなく、むしろかなりの遅まきデビューです。なぜなら、私は若い時からアトピー持ちで、最もメイクに興味を抱き始める年頃に、コスメどころか、洗顔料すら何もかも合わない! という状態だったからです。



時は戦国アムラー時代を、ノーメイクもノーメイク、ノー刀の気合いのみで乗り切ってきた侍とは私のことです。それから社会人になるまで、いろいろ試行錯誤して体質改善に努めました。すると段々アトピーが落ち着いてきて、ここ最近では何年かに1〜2回発症する程度まで改善され、普段からメイクができるようになりました。



そうしたらまぁ……メイクって楽しい!



ブランドごとのコンセプト、季節ごとのコレクション、ネーミングやパッケージの美しさ、微妙な色や質感の違い……コスメを買うたびにワクワクする! 顔が色づく以上に気持ちが色づく。



きっと、メイクをして顔が変化することよりも、自分の五感が掘り起こされて磨かれていくような感覚に楽しさを覚えたんだと思います。

メイクとは、数学であり国語であり理科であり美術であり、課外授業である

メイクを知れば知るほど、メイクとは顔にあれこれ塗装するという表面的な作業ではなく、知識と教養の体現に他ならないということに気付きました。というのも、メイクそのものを、学校の科目にそのまま当てはめて考えることができるからです。

まずは数学。これは「引き算メイク」という用語があることからも明らかです。リップを濃いめにしたらチークは薄めに、マスカラをボリュームたっぷりにしたらアイラインは控えめに。顔の中での引き算!

次に国語。ツヤと一口に言っても、それはどのようなツヤなのか? 湿度を感じるツヤなのか? ラメによるツヤなのか? パールによるツヤなのか? 立体感を呼び起こすツヤなのか? 内側から発光するツヤなのか?

このような言語化の読み解きがあって初めて、コスメカウンターのBA(ビューティーアドバイザー)さんに「会社にもつけていけるようなさり気ないパール感の、乾燥しないパウダーハイライトを探しているんですけど……」と的確な要望をぶつけることができるのです。

実は、理科の重要性も忘れてはなりません。メイクは、その日の天候と気温と湿度を十分に考慮した上で、自分の肌の水分量と油分量にも注視する必要があるからです。そこからは、日々実験です。テカらず、乾燥せず、崩れないメイクを見つけるために。

美術がメイクと最も密接な関係性にあることは、どなたでも想像がつくかと思います。メイク道具が美術で使う道具そのものですし、デッサン力……つまり自分の顔をいかに正確に捉えるかによって、なりたい顔に近づけることができます。ちなみに私は絵が鬼のように下手です。

時には飛び出せ! 己のメイクコーナーから!

メイクを数学や国語でひもとくだけでなく、時には「課外授業」として外へ飛び出していくことも大切です。私が最も役に立った課外授業は、30歳ぐらいの時に初めて足を踏み入れた「アナスタシア」という眉毛専門サロンです。

アイブロウ トリートメントのアナスタシア|ANASTASIA

眉毛を綺麗に整えてデザインするという技術に特化しているのですが、私はアナスタシアへ通うことを義務教育に入れてもいいと思っています。施述を終えた時に「今までの人生返して!!」と思わず言いたくなるほど、これまでの自分の眉毛は正解でなかったことを知ってしまったのです。

私自身を筆頭に、眉毛迷子がどれだけいることか? 『迷子の大人たち』という映画があったと思いますが、私が監督だとしたら『眉毛が迷子の大人たち』という作品を撮りたいです。なぜ自分の眉毛の方向性を見失ってしまうのか。毎日鏡で顔を見ているのに。

それは、皮肉にも眉毛が顔の中にあるからなんです。顔の中にあるばかりに、我々はついついファンデーションやチークや口紅なんかと一緒のカテゴリーで眉毛を捉えてしまいがちでした。

しかし、眉毛は毛!そう、毛なんです。

髪の毛を自分で切る人ってどれぐらいいるでしょう? 中にはいらっしゃると思いますが、ほとんどの方が、ヘアカタログや芸能人の髪型を参考にして「こんな感じになりたいんですけど……」と美容師さんにオーダーするのではないでしょうか。

そこで美容師さんから「あなたの髪質だとこういう髪型の方がいいですよ。この長さの方が似合いますよ」というカウンセリングやアドバイスがあって、少しでも似合う髪型やお気に入りの髪型を見つけていくものじゃないでしょうか。はい、一緒! 眉毛も一緒!

そこに気付くのに私は30年かかってしまいましたが、若い子とお話しする機会があったらまずこう言うでしょう。「アナスタシアは行っとけ!」と。

アナスタシアの初回料金は4,800円(税別)。2回目以降は4,300円(税別)です。眉の形を定着させるために、平均5回通うことを推奨されます。実際その通りにしたとして、合計22,000円(税別)。全然いい。全然高くない。正しい眉毛は顔の一生の財産。そう言い切れます。

私が毎日使うコスメ紹介

それではここで、私が実際に毎日使用しているメイクアイテムをご紹介したいと思います。前述したように、出掛ける場所や時間や季節によって使うものは変わるのですが、以下が最近のラインナップとなります。

ベースメイク

(A)ビューティーモール ダブルフラーレンモイストUVミルク SPF35・PA+++/6,300円(税別)

こちらの日焼け止め化粧下地は、傑作中の傑作だと思います!(紹介するもの全て傑作コスメなのですが)

肌の弱い私が日焼け止めを選ぶ際に最優先する点は、まずは何が何でも肌荒れしないこと。荒れないだけで儲けもん、その他は二の次という控えめなスタンスでやってきたのですが、このビューティーモール ダブルフラーレンモイストUVミルクは、メイク下地としても最高の機能を持っていたのです!
肌を均一につるーんと整える、毛穴が目立たなくなる、ファンデーションのノリを良くする、ファンデーションが崩れない、肌が疲れないくすまない。良いところしかない!

お値段が少し高いと感じるかもしれませんが、日焼け止め、下地、毛穴用プライマーが全て一緒になっていると思えば、むしろ安いのでは? と思います。

(B)ドゥ・ラ・メール ザ・ルミナス クッション ファンデーション SPF20/13,000円(税別)

2018年に発売されたファンデーション。ベースメイクの仕上がりへの貪欲さが増す一方の私を唸らせた(上から目線)ファンデーションです。健康的で涼しげなツヤと透明感がすごい! 最初からレフィルが1個ついてくるので、意外とお得です。

(C)ジョルジオ アルマーニ ビューティー ネオヌード リキッドパウダー/8,000円(税別)

こちらも2018年に新発売となったコスメです。パウダーなのですが、肌の水分に反応してリキッドのようにしっとりとした滑らかな仕上がりとなります。わざとらしくなく、肌の奥底から湧き上がるようなツヤが出ます。ハイライト不要。

(D)リアルテクニクス ミラクル コンプレクション スポンジ/734円(2018年7月時点)

(E)歯ブラシ型ブラシ /プレゼント

水を含ませて絞って使う、外国からやってきたオレンジ色のスポンジ(大雑把)は、リキッドファンデーションを肌に伸ばす時に使用します。

この形と使用法のスポンジはいろいろなメーカーから発売されているのですが、最初に考えた人には「大変感謝しています。日本のメイク好き一同より」という言葉を添えて、折り鶴を送るべきなのではないかと思います。それぐらい、このスポンジを使ったファンデーションの仕上がりを知ってしまったら……二度と指で塗る頃には戻れない! 肌への密着感、肌との一体感が段違い。

歯ブラシ型ブラシは、パウダーをのせる時に使用しています。これまた外国からやってきたブラシなのですが、同じく開発者に折り鶴を送りたいと思います。

アイブロウメイク

(F)アナスタシア ディップブロウポマード/2,800円(税別)

(G)アナスタシア クリア ブロウジェル/3,000円(税別)

(H)アナスタシア デュオブラシ/4,200円(税別)



眉関係は全てアナスタシアのものです。眉メインでやってきている方たちが作ったプロダクトなので、さすが抜群に使いやすいです。

アイメイク

(I)アーバンディケイ プライマー ポーション/海外で購入



アイシャドウのモチを良くする下地(アイプライマー)です。海外で買ったミニサイズなので、値段は忘れました。アイプライマーはプチプラ((「プチプライス」の略称。値段が安いこと))でも優秀なものがたくさんあるのですが、アーバンディケイのアイプライマーは乾燥が全くないのがいいですね。



(J)アディクション ザ アイシャドウ(タイニーシェル)/2,000円(税別)



この世で私に一番似合うアイシャドウです。私の場合、これをアイホール全体と下まぶたに使えばとりあえず何とかなります。

(K)RMK インジーニアス パウダーアイズN(ソフトメタリックオレンジ)/2,200円(税別)



2018年に限定発売された夏っぽいオレンジ色のキラキラシャドウです。アディクションのタイニーシェルはパールを効かせたツヤが出ますが、RMKのソフトメタリックオレンジはラメ感のあるツヤです。

(L)RMK インジーニアスパウダーアイズN(ブラウン)/2,200円(税別)



こちらは締め色に使います。

(M)マリークヮント アイラッシュ カーラー/1,000円(税別)



目幅が狭いタイプの目にぴったりのビューラー。目尻の睫毛まできっちり上がります。

(N)エテュセ ラッシュバージョンアップ/1,000円(税別)



マスカラのカールをキープする下地として使います。ジムで汗をかいてもパンダ目になりません。コーム型で塗りやすいところが好きです。

(O)メイベリン ボリューム エクスプレス ラッシュセンセーショナル(ブラック)/1,600円(税別)



一番好きなマスカラなのですが……これ単品ではカール力がないし汗にも弱い……。というわけで、エテュセのマスカラ下地が必須となるのですが、何が好きってセパレートの美しさと、睫毛にトリートメントをしたようなツヤ!


 (P)クレ・ド・ポー ボーテ ライナーリキッドアンタンス(ブラウン)/5,000円(税別)


んー高い! 高いんです、これ。でも一度このアイラインを引いてみたなら……値段がぶっ飛ぶ描きやすさ。「目元過ぎれば値段を忘れる」ということわざがあったような気になります。

チーク・リップメイク

(Q)NARS ブラッシュデュオ(オーガズム・ラグナ)/2,600円(税別)


墓まで持って行くと決めているぐらい大好きなチークです。オーガズムという大層なネーミングなのですが、実際大層な頬にしてくれます。一番使用頻度の高いチークなのにちっとも減らないです! ラグナはシェーディングとして影を作りたいところに使います。

(R)フィジシャンズフォーミュラ プランプポーション(ピンクローズ)/1,036円(2018年7月時点)


唇をパーン! ポーン! とふっくらさせてくれるチートアイテムです。ヒアルロン酸を注入したような唇になります。私はこれを口紅を塗る前の下地にしています。パーン! ポーン! 効果は時間とともに薄れるのですが、1日中強力な保湿力が続きます。



(S)ちふれ リップスティックY(744)/ 500円(税別)


どんなメイクにも合う万能ブラウンリップ。少しオレンジがかっていて、顔色が明るく見えます。500円のお安い口紅ですが、幅広い場面で使えるので重宝しています。



(T)クレ・ド・ポー ボーテ ブリアンアレーブルエクラ(ファイアールビー)/4,000円(税別)


一見、少し怯むぐらい真っ赤なグロスなのですが、実際はとてもシアーで、唇だけに留まらず顔全体に透明感をもたらしてくれるような発色です。単品でもかわいいですし、どんな口紅に重ねてもとても美しい唇になります。保湿力が非常に高く、リップトリートメントとしても使えます。



以上が、私の平均的な顔ができるまでのコスメアイテムになります。実は、コスメって種類にもよるのですが、そう簡単に減らないんです。年単位で使用しているものなんてざらです。でも次から次へと手を替え品を替え発売されるんです……。



コスメ好きが声をそろえて言うのが「顔が足りない」。守護霊のそのまた守護霊にもメイクをしないと追いつかないぐらいです。

コスメのコストパフォーマンスというものについて、今一度

上記のコスメ紹介で、私の観点で「高い」「安い」という感想をいくつか述べていますが、コストパフォーマンスは日本語で言うと、費用対効果。

一般的にコスメにおける「コスパ(コストパフォーマンス)がいい」とは、大きく分けて「安くて品質がいい」「値段の割に量が沢山入っている(もしくは使用量が少ないので長く使える)」の2つの意味合いで使われることが多いように思います。

しかし、実のところは「高い・安いは愛があっての結果論」です。愛がある前提で、なんやかんやちょっと言っているだけに過ぎないんです。ものすごく高くて、ものすごく気に入ったコスメと出会った時には、その「ものすごく高いところ」も含めてそのコスメを愛しているんです。口では「これでもっと安かったら最高なんだけどなー」なんて言いつつ。

反対にものすごく安くて、ものすごく気に入ったコスメと出会った時には、安くなくてもきっと愛しているんです。「安さの割にはいいよー」なんて言いつつ。

値段はコスメ愛の前では無力! それがコスメのコスパだ!

結局のところ、私が買っているものって

コスメ大好きメイク大好き人間の「あるある」。「なんかメイクやる気が起きない」。この状態、こんなに愛だなんだと語っておいても「あるある」なんです。

そんな時は決まって、メイクだけじゃなくて、他のあらゆることも「なんかやる気が起きない」という状態になっています。アイシャドウとかリップの色とか心からどうでもいい。ハイライトがパウダーだろうがクリームだろうが何の差があるのか分からない。ネットで頼んでたコスメが届いても、封を開けずに置きっぱなし。

メイク好きの人間にとって、この「メイクどうでもいい現象」が起きた時は、すでに日常のさまざまなことに「どうでもいい」が波紋のように広がっているはずです。

なぜなら、メイクに対する熱量は、生きる熱量に比例していると言ってもいいと思うからです。何かしらの事案でテンションが下がる→テンションが下がるとメイクしたくなくなる→メイクしないと更にテンションが下がる→誰にも会いたくない→何もしたくない→全てにセイグッバイ、ってなるんです。私はなります。「1週間ぐらい土に埋まっとくんであとはよろしく」って気分になります。

メイクをする気になれない時、コスメを見てもときめかない時、自分の見た目なんてどうでもいい時。そんな停滞時が長い人生で何度かあっても、私はそれを「自然なこと」だと思います。

でも、あまり乗り気じゃなくても、土から手を伸ばして新しい口紅を1本買ってみた時、土を払って神的に似合う色アイシャドウをつけてみた時に、それが再び世界を照らして心を動かすスイッチとなる。それもまた「あるある」で、自然なことなんです。

今日は何色のアイシャドウ使おうかな? チークはクリームにしようかパウダーにしようかな? と想いを巡らせてるうちは、自分と世界をつなぐものが循環している証拠だ、と私は思えるのです。

あらゆる趣味に対して言えることだと思いますが、時には、その分野に全く興味がない人から「それ、何の意味があるの?」という疑問を投げ掛けられることがあると思います。



私の答えはこうです。「あのね、少し楽しく生きることができるんだよ」。



だから私は、類語辞書の「趣味」にひとつ付け加えることができるなら、最後にこう記したいと思います。

しゅみ【趣味】
道楽 ホビー 余暇活動 好み 嗜好 希望

コスメとメイクを通して見えるものについて熱く語るのが好きです。 理屈と体感がフル稼働になるのでボケ防止に良いと思います。

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