女性だからこそ正社員にこだわりたい~保険外交員:前田瑞紀さん~

女性だからこそ正社員にこだわりたい~保険外交員:前田瑞紀さん~

学校を卒業して一度は社会に出たものの、結婚や出産を機に退職を余儀なくされる女性は非常に多いことと思います。
出産休暇や育児休暇などを利用できるように法整備は進んでいますが、実際にそれを取得できる企業は諸事情により少ないのが現実でしょう。
そうなると子育てが一段落した女性が復職するのは相変わらず厳しい時代が続いているとも言えます。

そんな中で、歩合制の給与体系となっている保険のセールスレディと呼ばれる女性たち。
契約を取った分だけ給与に反映される社会で、男も女も関係なく、自分の実力だけで勝負ができるこの世界に飛び込む女性も少なくありません。
ここでは、現在高校生となる娘の母として、家庭では妻として、そして生命保険会社営業所の一員として働く、前田瑞紀さんにお話を伺いました。

子供との時間が取れずショップ店員から転職

──現在保険外交員として働いておられますが、どんな経緯を辿ってこられたのでしょうか?
職歴としては短大を卒業して、メーカーの販売員として就職しました。当時は”就職氷河期”なんて言われていて、内定をもらえるだけでもありがたい時代だったんです。
でもありがちなんですが、22歳の頃に結婚を機に退職したんですよね。
それからは細々と主人の扶養に入ってアルバイトをしていました。そして妊娠、出産というごく普通の道を歩んでいますね。
子供を保育園に預けるようになってからは地元のショッピングモールでショップ店員として遅くまで働いていました。保育園って夜は6時30分まで見てもらえたんですが、仕事が終わるのが夜7時。子供のお迎えや晩御飯なんかは実家の母親に頼らざるを得ない状況でした。
立場上アルバイトだったんですが、主人の扶養には入らず、稼げるだけがんばろう、とほぼフルタイムで働いていたんです。
そうなると当然保育園のお迎えはいつも行けず、さらには実家も自営業をしていましたから子供だけ遊ばせておいて、両親も仕事。私ももちろん早い時間には帰れませんから随分寂しい思いをさせてしまったんじゃないかなぁ、と今でも思います。

──転職に踏み切ったきっかけはありましたか?
普段仕事で遅くなってしまっていましたので、子供との時間は大切にしていきたい、っていう思いがずっとあったんですよね。
けれどもアルバイト先からは社員にならないか?って打診も受けていたんです。
ただでさえ子供との時間がないところに、社員となると研修や勤務時間の都合でなおさら仕事優先になってしまう、と心に引っかかるものはありました。
けれども主人の給料だけでは今後何が起こるか分からないので、私も収入源を確保しておきたい。でも子供が・・・っていう考えがグルグルしてしまって。
それで幼馴染が保険外交員をしていて相談したら「うちに来なよ」って誘ってくれたのがきっかけでしたね。話を聞いてみると子供との時間が取りやすいというのが決め手になりました。

試験を乗り越え入社、その後は実力社会

──資格とかそういったものは何も必要なく、すぐに入社できるものなのですか?
無資格でも入社可能です。
他の保険会社は分かりませんが、うちの場合は、まず最初に2週間の研修を受けましたね。
そこで入社試験の対策をしてから入社試験を受けるんです。それでがんばって試験に受かって入社はできました。けれども次から次へと試験が続くんですよね。結局いくつもある試験をそれぞれ受かるまで繰り返すので、2~3年は試験の連続になってしまいます。
それ以外にも保険商品って制度が変わったり、新しい商品が出ますので知っておかなくちゃいけませんよね。日々勉強です。

──給料は歩合制になるんですか?
ある程度そんな感じです(笑)
1本契約したら○○○円!っていう単純な仕組みではないんですが、契約を取れれば取れるほど上がっていきますよ。なので本当に実力ですよね。
頑張らなければそれに見合った給料しかもらえない、けれど頑張れば頑張った分だけ、その成果が給料にダイレクトに反映されていきます。やろうと思えばどれだけでも上を目指せるシステムになっているので、実力がある人は本当に稼いでいますよね。

保険外交員、仕事上の時間の制約は?

──一般的な仕事をイメージすると、出勤から退勤までオフィスや作業所で働いているため、その時間だけどうしても動きが取れないと思います。保険外交員はどうなんでしょうか?
基本的に歩合制に近い給与体系なので、休んでも誰にも迷惑がかからないんです。保険の請求手続きとかそういうお客さんからの連絡があるときは別なんですが・・・
保険の契約を取れて始めて収入につながりますので、休んだら自分の稼ぎが減るだけなんですよね。だから「子供が熱出したので休みます。」とか「子供のお迎えがあるので行ってきます。」とかかなり時間を都合しやすい環境にありますね。

どうしても仕事が外せないときには営業所に子供を連れてきて仕事をする方もいますね。しかも今の営業所は全員女性で、子育て世代の母親や子育てを終えた年代の人までいるんです。
だからそういう子供に関しては周りがちゃんとカバーしてくれます。それに自分自身もそんな道を辿ってきた人ばかりなので理解もありますしね。
だから子供との時間を取ることに関しては、かなり理解や協力を得やすい職場なのかなぁ、と思います。

保険外交員の仕事について

──保険外交員は基本的に保険会社の社員さんなんですか?
そうなんですよ。社員になります。けれど給与は歩合っていうね(笑)ちょっとサラリーマンをイメージすると不思議な感じになりますよね。
ただ「社員」っていう立場はものすごく大切にしたいんです。それは企業年金があるからなんです。
生きていく上で収入は絶対必要になるじゃないですか。日々の生活をしていくのに少しでも多い方が安心ですからね。
出産休暇や育児休暇などの制度も手厚いので女性にとっても優しいですし、「社員として戻れる職場がある」っていう安心感は大きいです。

──普段の仕事内容はどんな感じなんでしょうか?
基本的には保険を契約してもらうことが仕事になりますので、自分の担当地区の企業や個人宅を訪問して営業します。
契約者の方から保険請求があればその手続き、保険の見直しなんかも定期的に行っています。
販売店だと、お客さんが欲しい商品を買いにくるじゃないですか。
でも保険ってそうじゃないんですよね。「何かあったときのため」のものなので契約のときにはお金が出て行くデメリットばかり感じられてしまいます。
だからすごく厳しいことも言われたりしますし、企業に訪問してもあまりいい顔はされませんよね。
けれど何かあったときに「保険に入っておけばよかった!」とならないためにも、必要なものだと思いますので、しっかりと説明させていただくように心がけてます。

とにかく「信頼」を得られなければ始まらない

──飛び込み営業なんかも多いと思いますが、そういった営業の仕事は抵抗はありましたか?
入社するときから「営業とかできるのかなぁ」とすごい不安を抱えていましたね。それでもやってみると営業ができるかどうか、っていうより慣れちゃいます。

今まで営業職は未経験、まして保険のことも全く分からない状態で入社してます。それに訪問先では保険会社の人間と分かるとけっこう扱いが冷たいんですよ(笑)
でもそこで”居場所がないなぁ”って感じても、しつこく通ってまず顔を覚えてもらうことが大事だと思ってます。顔を覚えてもらって、少しずつ世間話でもさせてもらえるようになってこないと保険の話なんて聞いてもらえませんから。
大切な自分や家族の保険のことになるので、信頼していない人にはやっぱり任せられないと思うんです。自分を知ってもらって、保険について「信頼される」ということが第一歩ですよね。

そのためにはやっぱり立ち居振る舞いや言動には気を遣って、失礼に当たらないよう心がけています。あと大切にしているのが契約者のフォローですよね。
保険に入ってもらっておしまい、ではそこに信頼なんて生まれないじゃないですか。
定期的に訪問して、そのときのライフプランに沿って見直しをしていただけるようにしています。

必要とされている責任感と充実感

──実際のところ保険ってなかなか難しくて、見直しとか億劫なんですよね。
いつも保険の内容を確認しているわけではないので、正直どんな契約なのか忘れてしまう人も多いんです。
けれど営業を通じて信頼を得て、契約がいただけるようになってくると保険について色々と質問を受けることも増えてきます。利率が変わるタイミングだったり、それこそ人生の転機、例えば結婚とか子どもが増えたとか、そういうときに声をかけてもらえるっていうのはものすごく嬉しいですよね。

この仕事を始めて8年経ちますが、出入りさせてもらっている会社の若い社員さんの子どもが生まれたときとかは本当嬉しいですよ(笑)やっぱり8年も出入りしてると新人さんのときから知ってるんですよね。
そんな社員さんが結婚して子どもが産まれたって聞くと、もう自分の子どもみたいな感じになっちゃいます。「保険のことなら力になるから相談して!」って(笑)けれど保険って保障次第でその人の生活設計を大きく左右することもあるんですよね。
頼ってくれるっていう充実感もありますが、それ以上にいい加減なものはおすすめできませんから責任も感じます。
お金を支払って保険加入していただくわけなので、どんなケースでどんな保障内容になっているのか、手厚いところや弱いところも含めて納得いただけるまで一緒に考えさせていただきますよ。

女性こそ自分自身の将来設計を

お客さんの生活設計を考えるのはもちろんですが、自分自身の今後も真剣に考えていかなきゃいけませんよね。
主人が働いていて現役で収入があるうちってあまり考えることも少ないのかもしれませんが、もし自分だけ残されてしまったら、って考えてみてください。
生活をしていく上での収支は人それぞれ違うと思うんですが、どうしても生活費が厳しくなってきてしまうこともあります。
家族の大黒柱の収入が突然0に、そうなると生活も激変して一気に苦しくなってしまう。あまり考えたくありませんが実際ありえない話しでもないんですよね。

──保険の仕事をしている方ならではの視点ですね。
なんとなく難しい感じがして敬遠してしまう方も多いみたいですね(笑)仮に大黒柱の収入がなくなっても、そんなとき自分の収入源を確保できていれば、リスクは少しでも抑えることができます。私が正社員にこだわりたい理由はそこにあって、老後にも働いた年数によって企業年金を確保できることもあります。
現役世代、そして老後へと人生が移り変わる中で、生活をするには必ず収入が必要になります。男性が収入を得ている家庭がほとんどだと思いますので、その点はどこも大差ないじゃないですか。
だから女性が働けるのであれば、正社員として現役世代の給与、そして老後の年金と少しでも多く確保していくことが大切なんじゃないか、って思います。

給与は実力でありながら正社員の立場は守れる

──子育てをする世代は子どもを優先に、子育てが終われば仕事に、と自分で調整できるんですね。
そうですね。
子どもとの時間が欲しかった私にとって本当にありがたいシステムと職場でしたね。さらには営業所の人間関係も良好なので随分助けられています。
実際子どもとの時間を大切にしながら子育てをして、自分の時間が確保できるようになれば仕事をがんばればいいんです。しかもやればやっただけ数字に表れてきます。
歩合なので安定とは少し離れますが、それでも正社員としての立場は出産しても子育てをしても守ることができます。

──最後に、保険外交員の仕事に興味を持つ方に一言お願いします。
「営業」っていう仕事なので抵抗がある方も多いとは思いますが、まずは飛び込んでみることが大切かもしれませんね。だって最初からできる人なんてものすごく少ないと思いますし、この職業に就いたからこそ自分の将来設計をもう一度見つめ直すこともできるようになってきます。
しかも完全実力主義なので、お客さんに合わせることができて、積極的に仕事をしたい方は向いているんじゃないでしょうか。
人と関わる仕事になるので信用第一。それが一番に考えられることが大切だと思います。8年この仕事をしていますが、私もそれは一緒で変わらずに持ち続けていかなきゃいけない気持ちですよね。

まとめ

子育ての時間と仕事の時間を両立させるのはなかなか簡単なことではありません。
しかし実力社会でもある保険外交員だからこそ、収入を抑えて時間を取る、プライベートの時間を削って仕事を取る、というように自由な働き方を選択できる余地があるのも事実。
また、前田さんは、時間を融通しながらも、正社員としての立場にこだわり続けた方がいいと語ってくれました。
ライフプランニングはまず自分で考えることから始まります。将来をしっかり見据える彼女の目には、「安定」を求めて日々を進んでいく意志を強く感じることができました。

「一億総活躍社会」が叫ばれる中、このインタビューが女性の社会進出の一助となってくれることを願ってやみません。

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