確定申告の国民健康保険料の控除とは?申請方法や還付金計算方法も徹底解説
日本に在住するすべての国民に義務付けられている公的保険への加入ですが、自営業を営む個人事業主や、企業を退職し社会保険を継続していない無職の人などが加入するのが国民健康保険です。
この国民健康保険は、確定申告をすると保険料が控除されることをご存知でしょうか。
今回は、確定申告の国民健康保険料の控除の概要をはじめ、控除を受けるための申請方法と条件、確定申告書の書き方、申告期限、還付金計算方法について解説します。
確定申告の国民健康保険料の控除とは
国民健康保険の加入者は、確定申告により控除を受けることができます。国民健康保険に加入しているのは、主に以下のような人です。
- 自営業を営む個人事業主
- 企業を退職し社会保険を継続していない無職の人
- 老齢年金の給付を受けている65歳未満の人
- 個人事業主が営む事業所など、社会保険の強制加入事業所に該当せず、任意加入していない事業所で働いている人
- パートの掛け持ちなど2ヵ所以上で働いており、勤務先の社会保険の加入要件を満たさない人
続いて、確定申告の国民健康保険料の控除について詳しく解説します。
国民健康保険の加入者が控除を受けられる
確定申告の国民健康保険料の控除を受けることができるのは、国民健康保険の加入者のなかでも以下の条件に該当する人です。
- 年末調整を受けていない人
- 年末調整を受けていても国民健康保険料の控除を受けていない人
確定申告をしなければいけない自営業者に加え、会社員でも年末調整で国民健康保険の控除を受けていない人や忘れた人でも、確定申告をすれば控除を受けることができるのが特徴です。
また、企業を退職し再就職をしていない人など、年末調整をしていない人も控除の対象になります。
家族の国民健康保険料も控除できる
生計を同じくする家族の国民健康保険料を支払っている場合も、確定申告で控除を受けることが可能です。
ただし、自分が支払っている健康保険料であることが条件になっています。
たとえば、家族が年金受給者で、そこから国民健康保険料が特別徴収(天引き)されている場合、保険料を支払ったのは家族とみなされ、支払った本人以外の控除額として認めてもらうことができません。必ず条件を満たしているか確認のうえ、申請をおこなうようにしましょう。
確定申告の国民健康保険料の控除に関する例外
確定申告をしなくても控除が受けられたり、控除を受けなくても所得税の負担がない場合など、確定申告の国民健康保険料の控除には例外となるケースがあります。
その条件を詳しくみていきましょう。
確定申告をしなくても控除が受けられる場合
確定申告をしなくても控除が受けられるのは、勤務先の年末調整で社会保険料が控除されたケースです。
退職して国民健康保険に加入した場合でも、年内に新たな勤務先に就職し、前職の源泉徴収票や、自分で支払った国民健康保険料の金額が記載された書類、もしくは通帳などから計算して金額を記入した申請書類など、必要とされる書類を提出することで、年末調整で国民健康保険の控除を受けることができます。この場合、確定申告は不要です。
控除を受けなくても所得税の負担がない場合
一方、国民健康保険料の控除を受けなくても所得税の負担がないケースもあります。1年間に支払われた給与が「基礎控除38万円」「給与所得控除65万円」の合計103万円以下となる場合です。
ただし、2ヵ所以上で給与を得ている場合、主な勤務先の給与以外の収入と、その他の所得が20万円を超えているようであれば、確定申告の義務が生じます。
上記には除外規定があり、以下に該当する場合は確定申告の義務はありません。
- 給与による収入から、基礎控除・医療費控除・寄付控除・雑損控除以外の所得控除を引いた金額が150万円以下の場合
- 給与所得と退職所得以外が20万円以下の場合
なお、除外規定は、主となる勤務先では給与から甲欄で源泉徴収がされており、主となる勤務先以外からは乙欄で源泉徴収されている必要があります。必ずあわせて覚えておきましょう。
確定申告の国民健康保険料控除の申請方法
次に、確定申告の国民健康保険料控除の申請方法を解説します。
申請をおこなう際には、必要書類などをすべて用意し、申請書類に漏れなく記入したうえで早めに申請手続きをしましょう。
①確定申告書の入手方法
確定申告書を用意しましょう。確定申告用紙の入手方法は以下の3つです。
- 税務署へ取りに行く
- 郵送で依頼する
- 国税庁のホームページからダウンロードする
②申請するための必要書類
国民健康保険料控除を申請するための必要書類を準備しましょう。以下の書類から、自分が該当する書類を用意してください。
- 源泉徴収票・支払調書(勤務先企業やフリーランスで仕事をした企業から送付される)
- 国民健康保険の納付済証明書・控除証明書(自治体により名称が異なるが支払った総額がわかる書類)
- 上記2.がない場合、国民健康保険の領収書
- 厚生年金など他社会保険の控除証明書
③確定申告書の書き方
控除の申請に必要な書類がすべて揃ったら、確定申告書Bに記入していきましょう。記入が必須とされている欄は以下の通りです。
- 収入金額等
- 所得金額
- 所得から差し引かれる金額
- 税金の計算の各カテゴリーおよび還付される税金の受取場所
①収入金額等
収入金額等の欄は、給与額や副業での収入を記入しましょう。源泉徴収票や支払調書を確認し、手取りではなく支給額を記載してください。
②所得金額
所得金額欄には、経費などを差し引いた額を記入します。なお、給与所得の場合は、源泉徴収票の給与所得控除後の金額を所得金額として記入しましょう。
③所得から差し引かれる金額
所得から差し引かれる金額欄は、支払った国民年金保険料など社会保険料の合計を記入しましょう。扶養控除や基礎控除など、該当する控除の金額を記載してください。
④税金の計算
税金の計算欄は、確定申告書Bに記載されている計算式に従って税金の額を計算したうえで、算出した金額を記入しましょう。
⑤還付される税金の受取場所
還付される税金の受取場所の欄には、還付金の振り込みを希望する銀行口座を記入します。還付金のある場合のみに使用するので、還付金が発生しないときは記入の必要はありません。
還付金の計算方法とシミュレーション
還付金と所得税額の計算方法について解説するとともに、シミュレーション例を紹介します。
控除額の計算方法
還付金は以下の計算式で算出します。
すでに支払っている所得税(源泉徴収額)ー確定した所得税=還付金
源泉徴収額は収入の10.21%になります。たとえば報酬が20万円の場合は以下の通りです。
20万円×10.21%=20,420円(源泉徴収額)
勤務先から給与が支払われる、あるいは取引先から報酬を受け取る場合、支払額の一部から所得税が源泉徴収されています。この額は経費や控除などが考慮されていないので、年末調整や確定申告などでその分を計算し直し、正しい所得税額を確定させる必要があります。
控除額が多ければ所得税額が少なくなるので、支払うべき所得税も少なくなることがポイントです。源泉徴収されている所得税額より支払うべき所得税が少ない場合は、その差し引き分が還付金として返ってきます。必ず確認するようにしましょう。
所得税額の計算方法
所得税は以下の計算式で算出します。
(収入-必要経費-所得控除)×所得税率-税額控除=所得税
所得税率および税額控除は、以下の表を用いて計算しましょう。
所得税率 | 控除額 | |
195万円以下 | 5% | 0 |
195万〜330万円以下 | 10% | 97,500 |
330万〜695万円以下 | 20% | 427,500 |
695万〜900万円以下 | 23% | 636,000 |
900万〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000 |
1,800万〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000 |
控除額のシミュレーション
国民健康保険料を控除した場合の具体的な例をシミュレーションで確認しておきましょう。
- 源泉徴収額50万円
- 収入が500万円、必要経費が200万円
- 自分と配偶者の国民健康保険料年額は合計40万円
- 青色申告(複式簿記)
■所得税額の計算
(500万円-200万円-65万円)-(40万円+38万円+38万円)×5%=59,500円
■還付金の計算
50万円-59,500円=440,500円
このように、所定の計算式を用いて所得税を算出したうえで、すでに支払っている所得税から確定した所得税を差し引き、還付金を割り出します。
計算を間違えないように、ひとつずつ確認しながらおこないましょう。
確定申告の国民健康保険料の控除申告の期間と注意点
最後に、確定申告で国民健康保険料の控除申告をおこなうにあたって、申告の期間と、その際の注意点を解説します。
国民健康保険料の控除申告の期間
確定申告の期間は毎年2月16日~3月15日です(当日が休日の場合は延長有り)。
個人事業主は、上記期間に確定申告をしなければ申告漏れになり、延滞税等がかかります。ただし、国民健康保険料の控除など還付だけを目的とした確定申告であれば、上記期間以外でも申告が可能です。
還付金が戻ってくるのは、申告をおこなった日から1か月~1か月半後が目安になっています。
控除申告をしていない、忘れてしまった場合は?
国民健康保険の控除をこれまでの確定申告でしていない、もしくは忘れていた場合でも、定められた期間内であれば申告できます。
還付申告の期間は、還付対象の翌年1月1日から5年間です。確定申告の期間前、または期間後でも受け付けてもらえます。
ただし、数年分をまとめて申告することはできないので、1年分ずつまとめて計算し必要書類を添えて税務署に提出しましょう。後日、各年の所得税から還付金が返ってきます。
「5年間も期間があるなら、いつでもいいや」と考える方もいるかもしれませんが、所得額を元に計算されるもう一つの税金である住民税は、所得額が高くなればなるほど比例して高くなるため、還付申告だからと先送りにすると税金を多く払うことになってしまいます。
しっかりと節税対策するためにも、早めに申告することが大切です。きちんと所得控除して、翌年の住民税が高くなることを防ぎましょう。
確定申告の国民健康保険料控除のまとめ
今回解説した通り、確定申告の国民健康保険料の控除申請は節税のためにも必ず忘れずにやっておきましょう。
なお、確定申告の際は源泉徴収票の添付が必要ですが、国民健康保険の証明書や領収書は必ず添付しなければいけないというわけではありません。もし手元に証明書類がない場合は、通帳などから計算して、申請書類に記入したうえで提出するようにしましょう。
大手国内生命保険会社などでトータルライフプランナー(上級営業主任職)・マーケター・ディレクター・生産管理統括として勤務後、フリーのライター兼フォトグラファーに。生命保険業界での在籍期間中、総合支社内営業1,500人以上において営業成績常時TOP20入り、TOP10複数回達成の実績を活かし、金融系コンテンツの執筆も多数。営業・マーケティングアドバイザーとしても活動中。公私にわたり美味しい料理と写真撮影が大好物。