e-Taxで確定申告をする方法〜ネットで簡単!手順やメリットを初心者向けに解説
インターネットを通じて確定申告ができる「e-Tax」というサービスをご存知ですか?
ひと昔前まで、確定申告といえば用紙を税務署から取り寄せて必要事項を書き込み、郵送するという方法が一般的でした。しかし、2004年にe-Taxサービスが開始されてから、確定申告はインターネット上で手軽におこなえるようになりました。
本記事では、e-Taxをこれまで利用したことがないという初心者の方に向けて、e-Taxの基礎知識やメリット、e-Taxを使った確定申告のやり方などについて解説していきます。
e-Taxとは
e-Taxは、国税に関するさまざまな手続きをネット上でおこなうことを目的に2004年に導入された、国税庁が管轄するサービスです。正式名称は、「国税電子申告・納税システム」といいます。
e-Taxでは、おもに以下の3つの手続きをおこなうことができます。
- 確定申告
- 全税目の納税(電子納税)
- 青色申告の承認申請、法定調書などの提出
それぞれどのような内容なのか、簡単に説明していきます。
インターネットで確定申告ができる
e-Taxでできる手続きの代表的なものに、所得税や贈与税などの国税の電子申告があります。
e-Taxで申告ができる国税には、以下のものがあります。
- 所得税
- 贈与税
- 法人税
- 地方法人税
- 消費税(地方消費税を含む)
- 復興特別法人税
- 酒税
- 印紙税
確定申告には、e-Taxを使ってネット上でおこなう方法と、専用の申告書を税務署に持参もしくは郵送する方法の2種類があります。
申告書で申請する場合、まず用紙を税務署から取り寄せたり、国税庁のホームページからダウンロードしたりして用意する必要があります。さらに、必要事項を記入した後に、用紙を税務署に郵送する手間がかかります。
その点、e-Taxを使った電子申告なら、データの作成から提出まで申告に関する手続きをすべてネット上で済ますことができるため、申告書を使った方法に比べて楽に手続きをすることができます。
マイナンバーカード方式とID・パスワード方式
e-Taxを使った確定申告では、2019年から従来の方式に加えて、マイナンバーカード方式とID・パスワード方式の2つの方式が利用可能になりました。
従来の方式では、e-Taxを利用するにはマイナンバーカードとID・パスワードの両方を用意する必要がありました。しかし、新しく2つの方式が加わったことにより、上記のうちのどちらかひとつを用意すれば手続きがおこなえるようになりました。
それぞれの方式での確定申告のやり方については、後ほど「ネットで簡単!e-Taxで確定申告をするやり方」の章で詳しく解説します。
全税目の納税がインターネットで可能
e-Taxでは、ネットを通じて全税目の納税もおこなうことができます。ネットを経由して納税をすることを、電子納税といいます。
電子納税には、次の2つの方法があります。
- インターネットバンキングやATM等による納税
- ダイレクト納付
インターネットバンキングやATM等による納税は、ネット決済サービスのペイジー(Pay-easy)を利用します。また、インターネットバンキングを使って納税するには、事前に利用する金融機関でネットバンキングの利用登録をする必要があります。
いっぽうのダイレクト納付は、事前に登録した預貯金口座から振替により納税をおこなう方法です。ダイレクト納付をする際は、別途「利用届出書」の提出が必要となります。
青色申告の承認申請、法定調書などの提出
e-Taxでは、税金の申告や納税以外にも、税に関するさまざまな申請や届出の提出もおこなうことが可能です。
たとえば、「個人事業の開業・廃業」や「所得税の納税地の変更」などの届出や、「青色申告承認申請書」などの提出をネット経由でおこなうことができます。
e-Taxで確定申告をする4つのメリット
e-Taxで確定申告をすると、次のようなメリットがあります。
- 自宅で簡単に確定申告ができる
- 提出書類を減らせる
- ほかのやり方より早い時期から申告ができる
- 控除額が10万円アップする
それぞれどのような内容なのか、順番に見ていきましょう。
①e-Taxなら自宅で簡単に確定申告ができる
e-Taxのサービスが開始される前までは、確定申告をする際は税務署に申告書を持参または郵送するしか提出方法がありませんでした。
しかし、2004年にe-Taxのサービスが開始されてからは、ネット経由でデータ化した申告内容を送信できるようになったため、自宅やオフィスからでも簡単に確定申告ができるようになりました。
また、サービスの利用時間内であれば、24時間いつでも申告データを提出できる点もe-Taxの大きなメリットです。
e-Taxの利用可能時間
e-Taxは、通常期と確定申告時期によって利用できる曜日や時間が異なります。
時期 | 利用可能な曜日 | 利用可能な時間 |
---|---|---|
通常期 |
月曜日〜金曜日 (休祝日および12月29日〜1月3日を除く) |
24時間(※) |
毎月の最終土曜日および翌日の日曜日 | 8:30〜24:00 | |
確定申告時期 | 全日(土日祝日を含む) |
24時間 (メンテナンス時間を除く) |
表からもわかるとおり、確定申告時期は土日祝日含めて24時間利用することができます。
仕事などが忙しく、なかなか税務署に行く時間が作れない方にとっては、ネット環境さえあれば場所を問わずいつでも確定申告ができるe-Taxは、非常に便利なサービスと言えるでしょう。
②e-Taxで確定申告をすると提出書類を減らせる
e-Taxで確定申告をすると、源泉徴収票や医療費の領収書などの提出を省略することができます。
提出を省略できる書類には、次のようなものがあります。
- 源泉徴収票
- 医療費の領収書
- 社会保険料控除の証明書
- 生命保険料控除の証明書
- 寄附金控除の証明書
- 特定口座年間取引報告書 など
e-Taxを利用する場合、これらの書類については記載内容を入力して送信することにより、税務署への提出を省略することができます。
ただし、場合によっては入力内容を確認するために、税務署からこれらの書類の提出を求められることがあるので注意が必要です。その際に提示に応じられないと、書類の提出がなかったものとして取り扱われてしまいます。
書類の提出を求められるのは、原則として「法定申告期限から5年間」とされています。提出を求められたときに困らないよう、確定申告後も書類は最低5年間は捨てずに保管しておきましょう。
③e-Taxはほかのやり方より早い時期から申告できる
所得税の確定申告の受付期間は、毎年2月16日〜3月15日が基本です。
しかし、e-Taxを利用する場合は1月上旬から受付が可能となり、1ヵ月も早くから確定申告をすることができます。また、e-Taxを使って早めに確定申告をすると、早く提出した分だけ還付金の振込もスピーディーにおこなわれるというメリットもあります。
④青色申告はe-Taxの利用で控除額が10万円アップする
平成30年(2018年)度の税制改正により、2020年(令和2年)分の確定申告から青色申告特別控除額が変更になりました。それまで青色申告の控除額は一律65万円でしたが、2020年からはe-Taxで確定申告した場合のみ65万円で、そのほかの方法だと55万円に減額されることになりました。
同時にこの改正では、すべての納税者が平等に受けることができる「基礎控除」の金額を、それまでの38万円から48万円へと増額しました。
この税制改正により、2020年分からの確定申告では、e-Taxを利用して手続きをすると「青色申告特別控除額」が10万円分増えることになりました。青色申告者にとって、この優遇措置は非常に価値があるものと言えるでしょう。
e-Taxで確定申告をおこなう準備
ここまで、e-Taxの基本情報やメリットなどについて紹介してきました。ここからは、実際にe-Taxを使った確定申告のやり方について解説していきます。
e-Taxを使って確定申告をするには、事前に準備をしておかなければいけないことがいくつかあります。
- パソコンのOSやネット環境の確認
- マイナンバーカードもしくはID・パスワードの取得
- 利用者クライアントソフトのインストール(※)
- ICカードリーダライタの購入(※)
それぞれどのような内容なのか、順番に解説していきます。
パソコンのOSやネット環境の確認
e-Taxは、利用者のパソコンと国税庁の受付システムがネットを通じて申告データをやり取りすることを前提としています。そのため、e-Taxの利用に当たっては、利用者のインターネット環境が整っていることが必須条件となります。
また、e-Taxで確定申告する際に、どのソフトを使うかによってもパソコンの推奨環境が異なるので注意が必要です。たとえば、国税庁のサイトからダウンロードできる「e-Taxソフト」は、Windowsのみ利用可能で、Macでは利用できません。
そのほかのシステム利用に関する詳しい条件については、e-Tax公式サイトの「システム利用のための環境等」をご確認ください。
マイナンバーカードもしくはe-TaxのID・パスワードの取得
e-Taxを利用するには、マイナンバーカードかe-TaxのID・パスワードのどちらかを取得する必要があります。
以前までは両方入手する必要がありましたが、2019年にマイナンバーカード方式とID・パスワード方式が追加されてからは、どちらかを用意すればe-Taxで確定申告ができるようになりました。
マイナンバーカードの申請方法
マイナンバーカードの申請には、市区町村から通知カードと一緒に送られてきた交付申請書が必要になります。交付申請書を紛失してしまった場合、郵便で申請するか、お住まいの市区町村窓口で再発行してもらう必要があります。
交付申請書が用意できたら、マイナンバーカードを申請します。申請方法には、スマートフォン、パソコン、郵便、証明用写真機の4種類があります。
それぞれの申請方法の手順を、一覧表にまとめました。
申請方法 | 手順 |
---|---|
スマートフォン |
①スマホで顔写真を撮影 ②スマホで交付申請書のQRコードを読み取る ③申請用WEBサイトでメールアドレスを登録 ④申請者専用URLが届いたら顔写真を登録、必要事項を入力して申請完了 |
パソコン |
①カメラで顔写真を撮影 ②申請用WEBサイトでメールアドレスを登録 ③申請者専用URLが届いたら顔写真を登録、必要事項を入力して申請完了 |
郵便 |
①交付申請書に必要事項を記入 ②6ヵ月以内に撮影した顔写真を貼り付けて郵送し、申請完了 |
証明用写真機 |
①タッチパネルから「個人番号カード申請」を選択 ②撮影料金を投入し、交付申請書のQRコードをバーコードリーダーにかざす ③画面の案内にしたがって必要事項を入力 ④画面の案内にしたがって顔写真を撮影・送信し、申請完了 |
マイナンバーカードは、確定申告以外にもさまざまな行政手続のオンライン申請に利用することができます。発行するのに多少手間はかかりますが、身分証明書の代わりにもなるので、持っていると非常に役に立ちます。
ID・パスワードの取得方法
ID・パスワード方式を利用するために必要となる利用者識別番号(ID)と暗証番号(パスワード)を取得するには、税務署の窓口まで行き、交付手続きをしなくてはいけません。
手続きには身分証明書が必要となるため、運転免許証などの本人確認書類を忘れずに持参しましょう。
利用者クライアントソフトのインストール
マイナンバーカード方式で確定申告をするには、使用するパソコンに利用者クライアントソフトをインストールしておく必要があります。
利用者クライアントソフトとは、e-Taxなどの行政手続きをおこなう際に、マイナンバーカードや住民基本台帳カードに記録された電子証明書を利用するために必要なソフトです。
利用者クライアントソフトは、公的個人認証サービスのサイトからダウンロードすることができます。
e-Taxで確定申告するには「ICカードリーダライタ」が必要
マイナンバー方式で確定申告するには、ICカードリーダライタも用意する必要があります。ICカードリーダライタとは、マイナンバーカードなどのICカードに記録された電子情報を読み込むための機器です。
マイナンバーカード方式で確定申告をするには、e-Taxに対応したICカードリーダライタを購入する必要があります。価格は、安いものなら2,000円程度で購入することができます。なお、ID・パスワード方式の場合はICカードリーダライタは不要です。
マイナンバーカードに対応しているICカードリーダライタの製品名や型名は、公的個人認証サービスのサイト内にある「マイナンバーカードに対応したICカードリーダライタ一覧」から確認することができます。
ネットで簡単!e-Taxで確定申告をするやり方
先ほどもお伝えしましたが、e-Taxを使って確定申告するには、マイナンバーカード方式とID・パスワード方式のどちらかを選んでおこないます。
それぞれの方法の、確定申告の手順と準備するものを表にまとめました。
方式 | 申告の手順 | 準備するもの |
---|---|---|
マイナンバーカード方式 |
①マイナンバーカードの取得 ②申告データを作成・送信 |
・マイナンバーカード ・ICカードリーダライタ ・利用者クライアントソフト |
ID・パスワード方式 |
①税務署へ行き本人確認をおこない、e-Taxの「開始届出書」を提出 ②e-TaxのID・パスワードの受領 ③申告データを作成・送信 |
・e-TaxのID・パスワード |
表からもわかるとおり、2つの方式では確定申告の手順や準備するものが異なります。しかし、「申告データの作成と送信」に関しては、どちらも同じ方法でおこないます。
申告データの作成・送信方法には、以下の3種類があります。
- e-Taxソフトを使う
- 国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用する
- 市販の確定申告ソフトを使う
それぞれどのような方法なのか、順番に解説していきます。
e-Taxソフトを使って確定申告をする
国税庁のサイトからダウンロードできる「e-Taxソフト」を使って、申告データを作成する方法です。
e-Taxソフトは無料で利用できるメリットがある反面、市販の確定申告ソフトと比べて操作が難しいという欠点があります。e-Taxソフトには操作マニュアルも用意されているので、使い方がわからないという方はご参照ください。
また、OSはWindowsのみ利用可能で、Macには対応していないので気をつけましょう。
国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用する
e-Taxのサイト内にある「確定申告等作成コーナー」でも、無料で申告データの作成と送信をすることができます。
確定申告等作成コーナーでデータを作成し、提出するまでの流れをまとめました。
- 国税庁ホームページから確定申告等作成コーナーへアクセスします
- 画面の案内にしたがい金額等を入力すると、税額等が自動計算され、申告書が作成されます
- 申告書をe-Taxで送信するか、印刷・郵送して提出します
確定申告等作成コーナーでは、画面の案内に従って金額などを入力すれば、確定申告書を作成できます。作成したデータはそのまま送信することもできますし、印刷して税務署へ郵送することも可能です。
市販の確定申告ソフトを使う
市販の会計ソフトを使って、確定申告をする方法もあります。市販の会計ソフトは有料ですが、操作が非常に簡単で、データの作成から提出まで一貫してサポートしてくれます。
市販の会計ソフトには、パソコンにインストールして使う「インストール型」と、会費を払ってクラウドサービスを利用する「クラウド型」の2つのタイプがあります。
代表的な会計ソフトを、一覧表にまとめてみました。
会計ソフト名 | 料金(税込) | タイプ | 対応OS | 対応デバイス |
---|---|---|---|---|
freee(フリー) | 有料プラン(年間):12,936円〜 | クラウド型 | Windows・Mac | パソコン・スマホ |
やよいの青色申告 オンライン |
初年度無料 有料プラン(年間):8,800円〜 |
クラウド型 | Windows・Mac | パソコン・スマホ |
やよいの青色申告 | 13,200円〜 | インストール型 | Windows | パソコン |
マネーフォワード クラウド確定申告 |
フリープラン:0円 有料プラン(年間):12,936円〜 |
クラウド型 | Windows・Mac | パソコン・スマホ |
みんなの青色申告 | 10,780円 | インストール型 | Windows | パソコン |
インストール型の場合、使用するパソコンにCDをインストールする手間がかかることに加えて、原則としてインストールしたパソコンでしか作業することができません。
いっぽうのクラウド型なら、契約後すぐにWebからログインすることでサービスを利用することができ、ネット環境さえあればパソコンとスマホのどちらからでも作業することができます。
これから市販の会計ソフトを使って確定申告をするという方には、利便性が優れているクラウド型をおすすめします。
e-Taxで確定申告をする方法まとめ
ここまでe-Taxを使った確定申告のやり方などについて説明してきましたが、いかがだったでしょうか。
最後に、特に重要なポイントをまとめてみました。
- e-Taxとは、国税に関するさまざまな手続きをネットでするためのサービスのこと
- e-Taxでは、確定申告、電子納税、各種届出・承認申請の提出の3つができる
- e-Taxを利用するには、マイナンバーカードかe-TaxのID・パスワードが必要
- e-Taxで確定申告すると、青色申告特別控除額が10万円増える
- ネットで申告データを作成する方法は、①e-Taxソフト②確定申告等作成コーナー③市販の会計ソフトの3種類
e-Taxを利用すると、申告書に必要事項を手書きで記入したり、税務署へ申告書を持参したりする手間が省けるので、確定申告をする作業が非常に楽になります。
また、e-Taxで電子申告をすると、青色申告特別控除額が10万円増えるなどの優遇措置を受けることもできるので、経済的にも大変お得です。
これまでe-Taxを利用したことがないという方は、記事の内容を参考にして、e-Taxでお得に確定申告してみてください。
<参考>
・e-Taxサイト
・国税庁ホームページ
・公的個人認証サービスポータルサイト
フリーランスのライターとして飲食やマネーの記事を執筆していた経緯を経てマネ会を担当。話題になったQR決済など生活に関わるお金の話題はどんどん使って調べてしまう性格。飲むこと、食べることが好きすぎて自分でおつまみからメインディッシュまで料理するのも大好き。得意料理はイタリアン。ふるさと納税で日本各地の名産物がやってくるのが楽しみで、普段では絶対変えないフルーツやお肉を頬張りながらお得な情報をお伝えします。