住民税の支払いはいつから?納付のタイミングや詳しい計算方法を解説します!
住民税はいつから、どのような基準で支払うのか、よくわからないという方はいませんか?社会人とはきってもきれない住民税なのに、知らないことがあるのは不安ですよね。
この記事では、納税額が決まるタイミングや支払い開始など住民税に関する疑問をわかりやすく解説。支払うタイミングや住民税の計算方法、住民税の控除について、具体的に説明します!
住民税とは?
住民税は固定資産税などと同じ地方税の一種。その趣旨は、都道府県や市町村が提供するサービスに対して、住民がその費用を分担するというものです。所得税と同じように年間の所得金額に応じて納税額が決定されます。
それでは、住民税とは何か、さらに詳しくお伝えしていきます。
道府県民税(都民税)と市町村民税(特別区民税)のこと
住民税は自治体の住民に対して課される税金で、道府県民税(東京都は都民税)と市町村民税(東京都23区は特別区民税)の2つの税金から成ります。住民税は1月1日時点で居住している自治体から課税されます。たとえ1月2日に転居したとしても、住民税を納めるのは転居前の市区町村です。
個人に対する個人住民税と法人に対する法人住民税に分類されますが、この記事では個人住民税を前提に話を進めていきます。
住民税は所得割と均等割が課税される
住民税には、年間の所得金額に応じて課税される所得割、すべての住民に等しく課税される均等割、利子所得に応じて課税される利子割、特定配当などに課税される配当割、株式などの譲渡所得に課税される株式等譲渡所得割の5つの課税額があります。
5つの課税額のうち、利子割と配当割、そして株式等譲渡所得割については、所得を得るタイミングで証券会社などの金融機関に徴収されます。これを特別徴収といいます。
金融機関との取引がなくても発生する所得割と均等割について、以下、解説を進めていきましょう。
住民税の納付方法には普通徴収と特別徴収がある
住民税の納付方法には、先ほど登場した特別徴収と普通徴収の2つがあります。そして、特別徴収と普通徴収のどちらかによって、住民税を納めるタイミングが異なります。
そこで、特別徴収と普通徴収の違いについて、説明していきましょう。
給与所得者は天引きによる特別徴収
特別徴収は、住民税を納める際に一定の便宜を受ける納付方法です。
代表的なのが、勤務先から給与を受け取っている会社員。会社員をはじめとする給与所得者の場合、市区町村からの納税額の通知は特別徴収義務者となる勤務先におこなわれます。そして、6月から翌年5月までの計12回にわたって、毎月の給与から天引きで納税されるのです。
給与所得者であれば、株や不動産といった給与以外の所得があって確定申告をした場合でも、原則として特別徴収の対象となります。
また、65歳以上で公的年金を受給している方も、特別徴収の対象となるのが一般的です。
個人事業主は納税通知書による普通徴収
普通徴収は、住民税の納税額を通知された住民が自ら納付する方法。給与所得者を除く、個人事業主などが対象となります。
給与を受け取らない個人事業主らは毎年1~3月の確定申告によって、年間の所得金額を申告します。その内容に基づいて市区町村が住民税額を計算し、毎年6月頃に納期や納付額を記載した納税通知書が交付するのです。
納付は年4回(おおむね6・8・10・翌年1月)の分納と一括納付から選択できます。一括納付することで税額を軽減できる自治体もあります。
給与所得者の住民税は入社2年目から
住民税は前年の所得に応じて課税されます。つまり、給与所得者は入社2年目の6月から住民税の納付が始まります。
ただし、これは前年に非課税限度額を超える所得がなかった新入社員のみ。たとえば、転職された方で前年に相応の所得があった場合、転職先での特別徴収がすみやかに開始されます。
前年まで個人事業主で普通徴収をしていた場合も、給与所得者になれば、特別徴収へと切り替わります。しかし、普通徴収による納付が滞っていると、切り替えがスムーズに進まないこともあるようです。
また、住民税は前年における所得に対して課税されます。均等割はすべての住民に等しく課税されるものですが、所得によっては非課税になることを考慮すると、やはり前年の所得が関係するといえるでしょう。
退職した翌年に住民税が請求されることも
住民税の支払いで給与所得者が気をつけたいのは、会社を退職するときです。
1月1日から5月31日までは、前年に決定された住民税を12回に分けて支払っている途中。この期間に退職するときには、最終の給与から住民税の残額を会社に一括で徴収されることがほとんどです。「給与が少ない」と慌てないようにしてください。
6月1日から12月31日までの退職で、すでに転職先が決まっているなら、転職先で特別徴収を継続してもらえばOK。しかし、まだ決まっていないようなら、普通徴収に切り替えて住民税を自分で支払います。
もっとも注意すべきは、退職した翌年に支払う住民税の存在です。4月に一括徴収で住民税を支払ったとしても、それは前年の所得に対するもの。翌年には1月から4月までの所得に対する住民税を支払うことになります。
住民税は「後払い」。これを失念すると、突然請求される住民税にパニックになる恐れも。退職するときには住民税の支払いについても考慮しておくといいですね。
個人事業主の住民税は非課税限度額を超えた翌年から
会社員などの給与所得者に対する特別徴収とは異なり、個人事業主は普通徴収で住民税を納付します。とはいえ、方法が異なるだけで、住民税を支払う
タイミングは特別徴収の考え方と同じです。
個人事業主も、前年の年間所得に応じて住民税が決定されます。そのため、非課税限度額を超えた年度の翌年6月から、住民税の普通徴収が開始されます。
特別徴収の納付は給与からの天引きのみですが、普通徴収は現金のほか、クレジットカードでの支払いに対応する市区町村もあります。
住民税の計算方法
会社員にせよ個人事業主にせよ、住民税の納付金額は市区町村が算出してくれるため、自分で計算する必要はありません。しかし、住民税の仕組みを理解したいなら、計算方法を把握しておくことは大切です。
それでは、住民税の計算方法を詳しく確認していきましょう。
所得割と均等割の考え方
先にお伝えしたとおり、住民税には所得に応じて課税される所得割とすべての住民が等しく負担する均等割があります。つまり、住民税は「所得割+均等割」で計算されると考えればいいでしょう。
所得割は所得税とほぼ同じ方法で計算されます(所得割の計算については事項で詳しく説明いたします)。一方の均等割は、道府県民税(都民税)が1,000円、市区町村税(特別区民税)3,000円の計4,000円と定められています(※)。
所得割の計算方法
住民税の所得割でも所得税でも、初めに計算すべきは年間の課税所得。年間の課税所得は、収入総額から所得控除を差し引いた金額で求められます。たとえば会社員なら課税所得は「給与所得ー給与所得控除」で計算されます。
そこに所得割の税率をかけます。現在、所得割の税率は道府県民税(都民税)と市区町村税(特別区民税)を合わせて一律10%です。最後に対象となる税額控除を差し引きます。
以上を計算式としてまとめると、所得割は「課税所得(給与所得ー所得控除額)×10%ー税額控除」で求められるということになります。
所得割の計算シミュレーション
それでは実際に、住民税の所得割を計算してみましょう。計算条件は以下のとおりです。
- 前年の給与収入が600万円の40代会社員
- 前年の生命保険料の支払い総額10万円
- 扶養家族は40代専業主婦の妻、16歳の子(ともに収入なし)
- 対象となる税額控除はふるさと納税のみ(5万円)
給与収入が360万円から660万円以下の場合、給与所得控除額は「収入金額×20%+54万円」で計算されるため、174万円となります。そのため、課税所得は「600万円ー174万円」から計算されて426万円とわかります。
所得控除額は、基礎控除が33万円、配偶者控除が33万円、一般扶養控除(子)が33万円、生命保険料控除が35,000円となり、計102万5,000円となります。
つまり、所得割は「426万円-102万5,000円×10%-5万円(ふるさと納税の税額控除)」で、27万3,500円だと計算されます。
これに均等割の4,000円を加えた27万7,500円が住民税の納付額です(※)。
所得控除が多いほど節税につながる
所得割の計算に登場する所得控除は、扶養する家族の有無や生命保険料の支払いなど、個人の経済的事情を税金に反映させるための制度です。
所得税も、住民税の所得割と同じ考え方で計算されますが、所得控除額に違いがあります。そのため、住民税の所得割と所得税は、同じ計算式であっても結果に違いが出ます。
以下、住民税と所得税の主な課税控除です。
控除名 | 住民税の控除額 | 所得税の控除額 |
基礎控除 | 33万円 | 38万円 |
配偶者控除 | ~33万円 | ~38万円 |
配偶者特別控除 | ~33万円 | ~38万円 |
一般扶養控除 | 33万円 | 38万円 |
特定扶養控除 | 45万円 | 63万円 |
生命保険料控除(旧) | ~3万5千円 | ~5万円 |
生命保険料控除(新) | ~2万8千円 | ~4万円 |
地震保険料控除 | ~2万5千円 | ~5万円 |
所得税とは額に違いがあるにせよ、所得控除が多いほど課税額は減り、節税につながる点は共通しています。
住民税の控除はいつから?ケースごとに解説!
住民税をいつから支払うかという疑問は、「1月1日」を基準に「前年の所得金額」を元に計算することさえ覚えておけば、ほとんどクリアされるでしょう。しかし、納付以外にも、住民税には気になるタイミングがいろいろありますよね。
ここでは、所得割と均等割を除いた、住民税の「いつから?」にお答えします!
住宅ローン控除はいつから?
住宅ローン控除は、年度末時点の住宅ローン残高の1%を最大10年にわたって所得税から控除するもの。このとき、所得税で控除しきれなかった金額を住民税で控除することになります。
つまり、住宅ローン控除で住民税の税額控除がおこなわれるタイミングは、所得税が確定したとき。給与所得者であれば勤務先の申告期限である1月31日、個人事業主などであれば確定申告の期限である3月15日が一般的です。
いずれも住民税で基準日となる1月1日より遅いため、実際に住宅ローン控除が住民税から控除されるのはその翌年です。
配偶者控除や扶養控除などはいつから?
結婚や出産をすると、配偶者控除や扶養控除といった所得控除を受けられます。しかし、控除の対象となる理由が年度途中に起こったのであれば、適用されるのはその翌年の住民税からです。
これは生命保険料控除や地震保険料控除といった所得控除についても同じです。
先ほどの住宅ローン控除と同様、住民税の基準は1月1日ということを覚えておくとわかりやすいでしょう。
ふるさと納税はいつから?
ふるさと納税は、自治体への寄付金のうち2,000円を超える金額に対して、住民税の特別控除を受けられる制度。住民税と所得税の寄付金控除に加算される特例の税額控除です。
寄付金をフルで控除する目安は、おおむね住民税の2割以内。その範囲内であれば、税額控除による節税効果に加え、実質的に自己負担2,000円で自治体の提供する返礼品の恩恵を受けられます。
ふるさと納税による税額控除を受けるには、確定申告かワンストップ特例(※)による申告が必要です。
確定申告を選ぶと、ふるさと納税の翌年の確定申告によって所得税が還付され、住民税はさらに翌年に減額されます。一方、ワンストップ特例を選ぶと、ふるさと納税をした翌年の住民税からすべて減額されます。
住民税の支払い期間まとめ
税金にまつわる「いつから?」は、誰にとっても気になる話題。しかし、住民税は市区町村が納税額を計算してくれるため、どんなタイミングでどれだけ支払うかが見にくくなりがちです。
住民税にわかりにくさを感じたら、前年の所得金額を対象に、1月1日を基準として計算される税金であることを思い出すといいでしょう。
大切な自分のお金から支払う住民税のこと、今一度見つめ直してみてくださいね。
フリーランスのライターとして飲食やマネーの記事を執筆していた経緯を経てマネ会を担当。話題になったQR決済など生活に関わるお金の話題はどんどん使って調べてしまう性格。飲むこと、食べることが好きすぎて自分でおつまみからメインディッシュまで料理するのも大好き。得意料理はイタリアン。ふるさと納税で日本各地の名産物がやってくるのが楽しみで、普段では絶対変えないフルーツやお肉を頬張りながらお得な情報をお伝えします。