「JPQR」が8月1日本格始動|メリット・問題点・実証実験を詳しく解説
8月1日に決済サービス各社でJPQRの導入がスタートしました。
次々と登場している決済サービスのQRが一つに統一されるということで、気になっていた方も多いのではないでしょうか。
本記事では
- 統一QRコード「JPQR」とは
- 「JPQR」導入の背景
- 4県でスタートしたJPQRの実証実験
など、話題のJPQRについて、気になるポイントを詳しく解説しています。
JPQRとは何か、どのような事業なのか、詳しく見ていきましょう。
統一QRコード「JPQR」とは
JPQRは、総務省が推進する「統一QR決済用コード」のことです。店舗がひとつのバーコードを提示することで、ユーザーが使いたい決済サービスを選べるようになります。
2019年8月1日より、メルペイ、LINE Payなどを含む9サービスがJPQRに準拠する予定となっています。
また、2019年8月1日以降、和歌山県など4県でJPQRを実際の店舗で導入しての実証実験も行われています。
この4県での実証実験を受けて、今後、全国で横展開を目指していくことになります。
QRコード決済の決済方式は「MPM方式」と「CPM方式」の2種類
決済方式は、店舗がコードを提示してそのコードを消費者が読み取る「MPM方式」と、消費者が決済用のコードを提示して店舗がそのコードを読み取る「CPM方式」の2種類です。
それぞれの決済の流れは以下の通り。
- 各種決済アプリを起動し、QRコードを読み取る
- 支払い金額を入力し、スタッフに掲示のうえお支払いボタンを押す
- 決済完了の画面をスタッフが確認して支払い完了
- 各種決済アプリを起動し、バーコードを掲示
- スタッフがバーコードリーダー等でスキャンして読み取る
- 決済完了の画面をスタッフが確認して支払い完了
岩手県、長野県、和歌山県、福岡県の4県でスタートする普及事業では、PayPayはCPM方式のみの参加、他の8事業者はMPM方式とCPM方式の両方で参加予定となっています。
統一QRコード「JPQR」導入の背景
JPQRの目的は、乱立するQRコード決済を一つに統一して、店舗と消費者双方の利便性を向上させることです。
最近では、各社から様々な決済サービスが登場していますが、サービスごとに決済プロセスが少しずつ異なるために、店舗側の負担が増えています。
現状のQR決済では、店舗としては各社のQRコードへ個別に対応する必要があり、導入や従業員教育など大きな負担となっています。
JPQRは、こうした店舗の負担を軽減し、決済サービスをより導入しやすくするために、キャッシュレス推進協議会により導入が推進されています。
JPQRは、店舗側だけでなく、消費者側にもメリットがあります。
現状、店ごとに使える決済サービスが異なり、消費者としては、どのサービスを利用するか迷ってしまう状況ですが、JPQRが普及すれば、どの店でも自分が使いたい決済サービスが利用できるようになります。
政府としては、キャッシュレス決済の比率を2025年までに40%に引き上げることを目標としており、JPQRはこうしたキャッシュレス推進事業の一環として期待されています。
JPQRは8月1日午前3時に各社が一斉導入
8月1日午前3時に「メルペイ」「LINE Pay」などの一部事業者が「JPQR」を一斉導入しました。8月1日よりJPQRに準拠した決済サービスは以下の通り。
- au PAY
- 銀行Pay(OKIPay、はまPay、ゆうちょPay、YOKA!Pay)
- メルペイ
- LINE Pay
- 楽天ペイ(アプリ決済)
- りそなウォレット
8月1日以降も、各コード決済サービスにおいて準備が整い次第JPQRへの移行が予定されています。年内にさらに6サービスがJPQRに準拠する予定となっています。
JPQRの導入のメリット
JPQRが各お店で導入され普及することで、店舗側にも、消費者側にも大きなメリットがあります。
JPQR導入による「店舗側のメリット」、「消費者側のメリット」をそれぞれ見ていきましょう。
JPQRの店舗側のメリット
店舗側のメリットは主に以下の3点です。
- 複数のサービスに一括申し込みできる
- 2020年6月30日まで決済手数料が優遇される
- 集客力がアップする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット①複数のQRコードサービスに一括申し込みできる
JPQRなら、一度の申込みで複数の国内決済サービスと同時に契約することができます。従来のように1社ずつ手続きする必要はなくなり、複数のQRコードに対応するための事務負担は大きく軽減されます。
メリット②2020年6月30日まで決済手数料が優遇される
決済手数料優遇期間中(2020年6月30日まで)に申込みをすると、通常よりも低い決済手数料(最大1.8%程度)で契約ができます。
QR決済を導入なると、決済手数料もハードルの一つになりますが、決済手数料優遇期間中の今なら、かなり導入がしやすくなっています。
メリット③集客力がアップする
同時に複数の決済サービスに対応すれば、集客アップが期待できます。
とくに実証実験をおこなう4県では、のぼりやポスターの提供、地元イベントなど、県をあげてのPRもおこなっています。こうした面でも消費者の注意を惹くことができるでしょう。
JPQRの消費者側のメリット
消費者側としても、JPQRが普及することで、QR決済が使えるお店が増えることが大きなメリットです。
JPQRが普及すれば、「店ごとに使える決済サービスが異なる」という不便も解消され、どのお店でも主要なQR決済がすべて使えるようになります。QR決済が今よりずっと便利になるはずです。
JPQRの実証実験|2019年8月1日から4県でスタート
2019年8月1日から、岩手県、長野県、和歌山県、福岡県の4県で実証実験がスタートしています。
4県での実証実験は、地域のスーパー・商店街など、県内の店舗の2〜3割でJPQRのコード決済を導入し、店舗業務の効率化や消費者の利便性の向上についての効果を検証するものです。
なお、実証期間中の決済手数料を優遇したり(最大1.8%程度)、セットアップのフォロー体制を敷いたりして、環境の整備がおこなわれることになります。
導入される決済サービスは以下の8つで、8月1日に一斉導入ではなく、順次提供が開始されるという運びになります。
- ▼2019年8月1日提供開始
Origami Pay
J-Coin Pay
メルペイ - ▼2019年10月1日提供開始
au PAY
ゆうちょPAY
YOKA!Pay - ▼2019年12月以降提供開始
d払い
LINE Pay
(2019年8月以降に順次対応予定)
- Origami Pay
- J-Coin Pay
- メルペイ
- au PAY
- ゆうちょPAY
- YOKA!Pay
- d払い
- LINE Pay
- PayPay
4県での「JPQR」の申し込み方法
岩手県、長野県、和歌山県、福岡県の4県での普及事業への申し込みの流れは以下の通り。
- 申込書の記入
- 事業への申込み・審査
- スタートキット到着
それぞれ見ていきましょう。
申込書の記入
まずは「JPQR」普及事業の申込書をダウンロードし、申込書の記入をおこないます。
申込書は「JPQR」普及事業の公式のページからダウンロードできます。
申込書と合わせて記入サンプルもダウンロードできるので、記入サンプルに従って記入を進めていきましょう。
事業への申込み・審査
申込書のダウンロードページから、記入サンプルも合わせてダウンロードできます。
記入済の申込書全ページを印刷して商工会議所・商工会まで持ち込みし、対面での手続きをします。
申込時には下記の書類が必要となります。
許認可写し |
許認可写しのある業種の方 (飲食店・宿泊業・卸売/小売業・運輸業・サービス業・製造業・医療福祉・不動産業・建設業の方等) |
---|---|
本人確認書類のコピー 下記のうちいずれか一つ 運転免許証(表裏両面) 日本国発行パスポート(顔写真付きページ+住所記載欄) |
個人事業主の方 |
登記簿謄本 (履歴事項全部証明書) ※発行日より3ヶ月以内、コピー可 |
法人の方 |
事業内容が分かる資料 各行政機関発行の許認可証、会社案内、パンフレット、チラシなど |
事業内容が確認できるホームページURLをお持ちでない方 |
店舗内観・外観の写真 | 全員 |
金融機関お届印 | ゆうちょPay、YOKA!Payお申込みの方 |
営業実態を確認する書類のコピー 許認可写しのない方は下記のうちいずれか一つ ・開業届 ・確定申告書 ・納税証明書 |
経産省ポイント還元事業の登録要請を同時におこなう個人事業主の方で、許認可写しのない方 |
申込時必要審査書類の詳細は、統一QR「JPQR」普及事業サイトから確認できます。申し込み前に詳細について必ずご確認ください。
スタートキット到着
「JPQR」の加盟店ステッカーやPOP、ポスターなど、加盟店広報に必要な資材が郵送で届きます。
各決済事業者ごとの利用開始手続き後に決済が可能となります。なお、d払いは12月以降、LINE Payは2月以降、JPQRに統一されます。
2つの決済サービスを申込んだ事業者の方には、暫定的にそれぞれLINE Payのみ利用可能なQR、d払いのみ利用可能なQRを配布されます。
「JPQR」の問題点
JPQRで複数のQR決済を導入する際の負担が軽減される一方で、会計処理の手間が増えるという問題があります。
MPM(店舗提示型コード決済)方式の店舗では、事業者ごとに個別に会計処理をおこなう必要があります。
つまり、各事業者のアプリやWebページから個別に売上げを確認し、レジでの会計と合わせて処理する必要があるということです。
QRコードは1つに統一されますが、事業者ごとに契約している状況は変わらないため、JPQRが導入されても日々の会計処理が楽になるわけではありません。
むしろ一度にたくさんのQR決済が店舗に導入されることで、会計処理の負担が大きくなることが予想されます。
CPM(利用者提示型コード決済)方式であれば、POSでの一括管理でこうした負担を回避できますが、中小規模の店舗がPOSを導入するのは難しく、基本的にはMPM方式での導入になるはずです。
JPQRで、QR決済導入の手間や、決済自体の負担は軽減されますが、会計処理を含めると負担が増えてしまう可能性もあるということです。
まとめ:統一QRコード「JPQR」については今後の動向にも注目
JPQRについて解説しました。今後は、4県での検証実験を受けて、他の県でもJPQRが横展開されていく見込みです。
JPQRが普及すれば、現状のQRコード決済が乱立する状況が改善し、ますますQR決済の利便性が向上することが期待されます。
今後の動向にもぜひ注目しておきたいところですね。
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