その街の安くて美味しい店は理容室の人に聞けばわかる。約5,000円で楽しむハシゴ酒~墨田区本所編~

その街の安くて美味しい店は理容室の人に聞けばわかる。約5,000円で楽しむハシゴ酒~墨田区本所編~

さまざまな街を散策する中で感じた「理容室の人に聞けばその街の美味しい店がわかる」から始まった新企画、第二回目は両国駅と押上駅の間くらいに位置する墨田区の本所(ほんじょ)へ。



今回も地元の人が知る、予算5,000円(食費のみ)ほどで楽しめる安くて美味しい店を堪能してきた(前回の恵比寿編はこちら)。



100年以上続く理容室へ

まず向かった先は両国。以前訪れた時に下町らしい街並みが自分好みだなあと感じ、前から一度ゆっくり歩いてみたいと思っていた。駅近くの「江戸東京博物館」や「すみだ北斎美術館」を見て回り、それから街を散策した。

今回の理容室は「Face hair mode」。両国駅から押上駅方面に向かう途中の本所にある。ホームページに載っていた店主・高橋さんの笑顔と、ページから伝わってくるお店のアットホームな雰囲気に惹かれてここに決めた。

店に着くまでにこのような街並みが広がる。


「Face hair mode」に到着。店頭には可愛らしい小さなサインポールが。


早速シャンプーをしてもらい、丁寧にカットしていただく。



店長の高橋さんはホームページからイメージしていた通りの優しい方で、やはり笑顔が素敵だった。この理容室はなんともう100年以上経営されており、今は四代目だという。年齢が自分と1歳差ということもあり話しやすい。


「今、この辺りで美味しいお店を探していて……。地元の理容師さんはその街の美味しいものを知っているという企画で……」と、正直わかりづらいだろうなと思いつつも話してみると、嫌な顔をせずに真剣に考えてくれた。


そして今回教えていただいたのが、この4軒。前回と同様、丁寧にメモもいただいた。いつも行く店行く店、皆さん優しくてじんとくる。



高橋さんから「『川勇』さんは近くの老舗の鰻屋さん『鳥義』さんは、その名の通り鳥がうまくて鍋もいいですよ。『わかば』さんはもつ焼き。あと『信玄』さんは鳥料理もいいけど個人的には海鮮がおすすめ。場所は錦糸町寄りになっちゃいますけどね」と聞いた。どれも気になる……。

カットもこの通りにさっぱり。

ちなみに奥に写るトロフィーは高橋さんがコンテストでいただいたものの一部という。ここに書いてある通り、たくさんの賞を受賞されている。最初から最後まで、ものすごく気持ちいい時間を過ごすことができた。本当にありがとうございました。



お店を出ると、偶然にも教えてもらった「わかば」の女将さんがいらっしゃったので、ご挨拶。その場で企画趣旨を話して、お店に伺うことになった。



よし、最初は「わかば」で軽く串を。その後は涼しいから「鳥義」で鍋を食べて〆よう。場所はいずれも理容室から歩いて行ける本所周辺だ。鰻や海鮮も捨てがたいが……次回髪を切った後に伺わせていただくことにしよう。



《1軒目》「もつ焼き わかば」わかば割り、シロ刺し、串 1,830円

17時にオープンの「わかば」は理容室から徒歩5分ほどのところにあった。緑の提灯と暖簾が色鮮やかなお店だ。

席に座り、まずは飲み物を。メニューを見て気になった、わかば割り(緑茶割り)をお願いした。提灯や暖簾と同じ、奇麗な緑色だ。気のせいかもしれないが、いつも飲む緑茶割りに比べてお茶の風味が濃く感じられた。

この日のお通しはところてん

料理はこのシロ刺しから。お店の人に「特にシロ(腸)が美味しい」と伺って注文したところ、本当にその通りで、このシロ刺しはふわふわで柔らかく今まで食べたことがない。甘酸っぱいタレとネギでさっぱり。シロは噛みしめるほどに美味くて、わかば割りにも合う。最後になればなるほどにタレのうまさがクセになる。

続いて串を。お店の方に相談させていただき、シロカシラレバタン、それから鳥タタキ(つくね)の合計5本を注文した。



まずテーブルに運ばれてきたのはタン鳥タタキ。タンは大きく弾力がある。鳥タタキは鶏の旨味たっぷりでジューシー。塩加減も最高。お酒もすすむ、すすむ。

続いてやってきたのは、左からレバシロカシラ。こちらはお店特製のにんにく醤油で。左端のレバは味が濃いのが自分好みでうれしい。右端のカシラは余分な脂がなく歯ごたえのある食感がいい。そして……何よりも真ん中のシロは、感動的に美味しかった。噛めば噛むほどにうまい脂が口の中に溢れ、最後はすっと溶ける。こんなに美味しいシロは初めてだった。


存分に美味しいお酒と料理を楽しんで、そしてここでもお店の方々に親切にしていただき、気持ちよくお店を後にした。お忙しいところ、丁寧に対応してくださりありがとうございました。



《2軒目》「ふぐ・ちゃんこ 鳥義」 鶏ちゃんこ、冷酒、焼酎 3,110円

大満足の「わかば」を後にして、鍋で〆るぞと秋らしい涼しい夜道を歩き約10分。「鳥義」に到着した。席に着くと常連さん、特に家族で来ている方々が多く、地元の人に愛されているのが分かる。

メニューを見るとちゃんこ鍋があった。しかもなんと、一人前から注文できる。寒い夜に下町でちゃんこ飲み、いいなあ。種類は鶏つくねちゃんこ特製 鶏ちゃんこ海鮮ちゃんこがあるようで、お値段も約1,700円~とお手頃だ。ちゃんこの他には鶏もつ鍋も人気のようで、壁に「鳥義の鳥もつ鍋、お薦めです!!」と書いてあった。鳥もつ鍋の誘惑に負けそうになりつつも、今回は鶏ちゃんこをオーダーした。



鶏ちゃんこを待っている間にお通しがやってきた。鴨ロース、胡瓜、貝を甘く煮たもの……どれもうまい。

お酒は、まずは菊正宗を。



耳を澄ませると落ち着いた店内で「あー、どすこい、どすこい」という声が響く。訪ねると有線から流れる「相撲甚句」の音声らしい。「あー、どすこい、どすこい」そんなBGMに下町を感じながら、菊正宗をもう一口いただく。

女将さんに「この辺りに住んでいるの?」と聞かれたので、「理容室『Face hair mode』の高橋さんに、この近くで美味しいお店を聞いてやってきたんです」と伝えた。



すると「あらそうなの! ありがとうねえ、これでもつまんで待っていてね」とサービスで漬物をいただいてしまった。紹介していただいた高橋さんとお店の方にただただ感謝した。

そして待ちに待った特製 鶏ちゃんこが運ばれてきた。一人前とは思えないくらいのボリュームだ。でもまだお腹に余裕があったから、これくらいがちょうどいい。


鳥義のホームページに「当店は元々両国で鶏肉専門店を営み、 相撲部屋に鶏肉をおさめていました。 鶏肉には自信ありますよ・・・!」とある通り、鮮度が良さそうな鶏肉がぐつぐつと煮込まれている姿は、見るだけでお腹が空いてくる(さっき美味いもつ焼きを食べてきたばかりだというのに)。鍋を見ながらちびちびと飲むのも、またいい。

いい具合に煮えたら小皿に取り分けて……よし、いただきます。スープのうま味が染み込んだ熱々の肉や野菜、椎茸を頬張る。ああ、口の中いっぱいに“美味しい”が広がる。鶏はぷりっぷりで出汁が染みていて最高だけど、それ以上につくねがすごい。ジューシーで癖になる味付けで、いくらでも食べられそう。次に来るときは、鶏つくねちゃんこもありだなあ。

と、ここで2杯目のお酒をオーダーした。黒霧島のロックでいただくことに。届いたグラスはこの通りのなみなみっぷり。ああ、いいな。うまい酒とちゃんこに心も体も温まる。今の季節でこんなに満足するのだから、冬になったらもっともっと幸せなんだろうなあ。そんなことを考えながら、もくもくとちゃんこをつまみながら飲んだ。

徐々に酔いがいい感じに回ってきて、お店の人との会話を楽しんでいたら、あっという間に完食。



最後は軽めのうどん(無料)がついてきた。やはりスープが抜群に美味しい。野菜の旨味と鶏の旨味が出ていて、後味は柚子胡椒の爽やかな香りが。もう、最高だ。お腹もいっぱい。ご馳走様でした。

お店を後にして家に帰りやすい押上駅まで歩いた。途中にある源森橋からの眺めが気に入った。



今日会った皆さんの優しさにただただ感謝しつつ、あまりにも美味しかった串とちゃんこ鍋に思いを馳せる。「次また、いつ食べに行こう」そんなことを考えながら帰路へ。いい夜だったなあ。また行こう。冬が楽しみだ。

【今回食事に使った合計金額:4,940円】

※本記事に記載のものは2017年9月20日取材時点の情報です
※予算に含まれるものは食事代(全て税込金額)のみです

編集者&ライター。1987年神奈川県生まれ。ブログ「ウォーキング✕美味しいもの」では日々見つけた美味しいものや歩いた街について書いてます。

…続きを読む

関連記事