1泊2日、予算10,000円で美味しいものとお酒を楽しむ旅「富山県・富山駅周辺」

1泊2日、予算10,000円で美味しいものとお酒を楽しむ旅「富山県・富山駅周辺」

前回の酒田に続いて、食費予算10,000円でその街ならではの「美味しいものとお酒」を楽しもうという旅。今回は富山に行ってみた。

なぜ富山かというと、春が旬のものって何だろうと考えたときに、真っ先に思いついたのがホタルイカだったから。小さい頃からイカが好きで、その中でも特に好きだったホタルイカ。春に、ぷっくりとしたホタルイカを酢味噌や生姜醤油で食べながら日本酒を飲むときの幸せといったら……。
そんなわけでいろいろ調べていたら富山県推奨とやまブランドによる、こんな資料(PDF)を見つけた。
“これを食べんと春が来ない”
この言葉を見て、ますます富山に行って新鮮なホタルイカを食べながら日本酒が飲みたくなった。

《1日目》昼食「美乃鮨」 の富山湾鮨 3,240円

東京からは北陸新幹線で2時間と少し。9時過ぎに出発して昼頃、富山駅に着いた。

事前に富山出身の友人から、富山はやっぱり寿司が美味しいと聞いていた。期待が高まる中、その友人に教えてもらった「美乃鮨」へ。お店に入ると優しそうな店主が丁寧に寿司を握っていた。席に着き、おすすめという富山湾鮨をオーダー。出てきた寿司を一挙に紹介しよう。

最初にやってきたのはクロダイ。これが、柔らかくて柔らかくて、シャリと一緒に口の中でふわっと溶けていくよう。

続いて綺麗な赤い

次はアジ。海苔がパリッとしていて、先ほどの2つと違いやや固めの歯応えが特徴的。

次から次へと美味しい寿司がやってくる……。こちらはシメサバ


甘エビは口いっぱいに広がる”甘さ”がとにかく濃厚。

バイ貝。海の香りが一気に口の中に広がる。こりこりとした食感も楽しい。噛めば噛むほどに旨みが……。


スミイカ。これは噛むと音がするくらいに新鮮。


富山で有名な白エビ。もう、最高。

そして次にやってきたのが、ホタルイカ。まさかお寿司屋さんで食べられると思っていなかったから、突然の出会いに驚く。



「ホタルイカの寿司なんて食べたことがないなあ。どんな味なんだろう」と一口食べれば、これだけを食べに富山へ行く価値があるんじゃないかと思うくらいに美味しい。ホタルイカの旨みや魅力がぎゅっと凝縮されているような一貫。金沢の「のどぐろ」並に感動した。

最後はカニ。カニの下にカニ味噌が隠れる。ホタルイカのインパクトに比べて見た目がシンプルだな……と思ったのもつかの間、その見た目の印象を良い意味で裏切られた。甘さ、香り、全てのバランスがばっちりで最後の〆にふさわしい。

お店の方もとても優しく、美乃鮨が大好きになった。そして何より、美味しい富山の寿司を存分に楽しむことができ、良い気分で店を後にした。



夕食まで街を散策しよう

その後、駅前で広告を見て気になった「富山市ガラス美術館」へ行って、常設展やこの時やっていたガラスコレクション展を見た。富山はガラスの街らしい。

それからホテルで少し休み、夕方また歩き始める。富山駅周辺は観光スポットがたくさんある訳ではなさそうだが、ゆったりした落ち着きのある街並みで、そこが好きだ。

特に、滞在中に何度も通り過ぎたこの松川が気に入った。日本さくら名所100選にも選ばれているそうで、桜の季節はにぎわうらしい。

富山に住むならこの川の近くがいいなあ、と思ったりしながら街を楽しんだ。



《1日目》夕食・一軒目「いろり」 日本酒・蛍烏賊天麩羅・蛍烏賊刺身・蛍烏賊釜揚げ 3,931円


今回の旅において最大の目的は「新鮮なホタルイカと一緒に富山の美味しい日本酒を飲む」こと。それを叶えるために夜の富山を探索する。

こちらも友人から事前に、新富町と呼ばれる地域周辺で居酒屋をいくつか紹介してもらっていた。その中からなんとなく気になって入ったのが「いろり」。19時頃にはもう大にぎわい。人気店だ。

まずはお酒を考える。悩んだ末、いろいろ試したかったから富山地酒のみくらべ 三種(各90cc)をお願いした。三種の内容は千代鶴、黒部峡、羽根屋。さすがガラスの街、グラスも美しい。量もちょうど良くてうれしい。

外が寒かったのでまずは温かいものから、と頼んだのが蛍烏賊天麩羅。そう、ホタルイカの天麩羅だ。


熱々でサクッとした衣の中から肝がとろりと溢れる。苦味と甘さが混ざった肝の旨さこそがホタルイカの大きな魅力。ああ、美味しい……。これが日本酒に合わないはずがなく、3種類のお酒は違いを楽しみながらみるみる減っていく。そんな富山の夜。

もちろんこの後もホタルイカで攻めていく。続いては蛍烏賊刺身


見たことがないくらいに薄く透明度の高いホタルイカ。


初めてホタルイカの刺身を食べる。1枚つまんで口の中に入れてみれば、ぺたっとくっつくように薄いのに、噛めばちゃんと歯ごたえがあり甘い。つるつるとした食感とその甘さがクセになって、1枚、もう1枚……と止まらなくなる。醤油にほんの少しだけつけて味わいながら、日本酒グラスを傾ける。


ああ……これがやりたかったやつだと、居酒屋で一人念願のホタルイカ飲みに感無量。幸せだ。このホタルイカの刺身はホタルイカ好きなら必食だと、自信を持って言える。





予算を考えず、ついつい蛍烏賊釜揚げも勢いで頼んでしまった。

刺身は既に切られていたけれど、釜揚げはそのままの姿のホタルイカ。これがまた美しい。

釜揚げということで、鍋が沸騰したらホタルイカを投入する。



しゃぶしゃぶのようにさっと湯に通して食べるのも美味しいけれど*1、個人的にはしっかりと熱して、ある程度身が膨らんできた時点で食べるのをおすすめしたい。鍋の中で泳ぐようなホタルイカに見とれる……。

鍋も身も徐々に色が赤くなる……。

最終的にはこんな感じになり、パンパンに張ったイカは噛めば“ジュ”と汁が溢れる。すかさず日本酒を飲む。これがまた堪らない。


天麩羅も刺身もこの釜揚げも、全部良かったし、どれもこれも日本酒に合うからお酒が進んで仕方がなかった。



《1日目》夕食・二軒目「ラーメン一心本店」ミニ黄金煮玉子ラーメン 680円

〆にラーメン行きたいなあ、富山ブラックのお店は近くにないのかなあと思っていたら、いろりで隣に座って仲良くなった地元のおじちゃんがいくつか店を教えてくれた。おじちゃんが好きな富山ブラックのお店はやや遠いらしいので、富山ブラックではないけどおすすめという「ラーメン一心」へ。

黄金煮玉子ラーメンがいいとのことなので、〆としてミニを注文した。席に置いてあった自家製きゃべつキムチも美味しくてはまる。

ミニといっても、ある程度ボリュームがあって満足できた。麺がとにかく“つるっ”としており気持ち良くすすることができる。フレッシュで香り良い葱、そして何でこんなに柔らかくとろけるんだっていう煮玉子の黄身が忘れられない。





スープはコクがあるのに後味がすっきり。これは〆にちょうどいいなあ……。


こんなに美味しいラーメン屋さんを教えてくれたおじちゃんに感謝しながら、ホテルに戻って初日を終えた。



《2日目》昼食 「パノラマレストラン 光彩」蛍烏賊と竹の子のポッラータ仕立てスパゲッティー 850円

2日目はどうしても来たかった「ほたるいかミュージアム」へ。

ほたるいかミュージアム 道の駅 ウェーブパークなめりかわ [富山県滑川市]


一度、自分の目で見てみたかったホタルイカの発光。5月下旬までの期間限定で発光ショーを見られると聞いて、滑川駅へ。ミュージアムは駅から歩いて10分程。



ショーを見る前に、ミュージアム内のレストラン「パノラマレストラン 光彩」で昼食をとることにした。



今回の旅のテーマはホタルイカということで、春限定の蛍烏賊と竹の子のポッラータ仕立てスパゲッティーを頼んだ。竹の子&ホタルイカの組み合わせに春を感じる。

ホタルイカがたっぷり。スパゲッティにも合うなんてホタルイカは本当優秀だ。

レストランはガラス越しに美しい富山湾を眺めることができるので、天気の良い日は気持ち良さそう。





お腹も膨れたところでミュージアムへ移動。館内では、毎深夜にスタッフが富山湾から連れてきているというホタルイカを見ることができる。スイスイと泳ぐホタルイカは、ゆらゆらと漂うクラゲのようで、妙に癒された。


水槽によってはこの通りライトアップされていて奇麗。ホタルイカ上に写る細い線は卵らしい……!

実際にホタルイカを触ることができるコーナーもあり、よく見るとホタルイカの足が青く光っている。元気なホタルイカは、手の上で軽く暴れたりちょっと噛んできたりして、痛いけどそれが可愛い。


発光ショーは撮影禁止なので写真はないけれど、約15分の間に、ホタルイカ漁のビデオ上映や実際に光る瞬間を見せてもらえた。真っ暗な会場の中、キラキラと青く小さく光るホタルイカは美しかった。



と同時に、ホタルイカの1年間という寿命の短さに驚き、まだ解明されていないことも多くあるその神秘性になんだかときめいた。ほたるいか海上観光はいつか行ってみたいなあ。



《2日目》夕食・一軒目「お食事処 喜八」富山ブラックラーメン並 720円

滑川から富山駅に戻り、ちょっと早めの夕食として向かったのは昨日教えてもらった「喜八」。駅北口から歩いて15分程の小さな商店街にお店はあった。

富山ブラック「並」を注文し、メニューを読むと

ご飯のおかずになるラーメン


昭和22年、戦後の復興期に白飯入りのドカ弁を持ち込んで店にやってくる労働者のために、ご飯のおかずになるラーメンとして先代の師匠(高橋是康氏)が考案されたものでした。


(店内メニューより)

とある。ご飯のおかずになるラーメンかあ~と、席に運ばれてきたラーメンを一口食べる。すると、その言葉にすぐ納得した。

濃い。非常に濃い。

普通に食べたんじゃあ本当にブラックの味がわからない。幾重にも積み重なった具とスープを、とにかくひっくり返して混ぜる。これが一番大切な一作業だ。(略)胡椒が大丈夫な方は、タップリかけてもより一層美味しくなること請け合いだ。


(店内メニューより)

とも書いてあり、それに従って混ぜて胡椒をこれでもかっ! てくらいにかけて食べる。ブラック用の胡椒は粗挽きで一気に辛くなるが、これがまた刺激的。いいぞ。

水をごくごくと飲みながらそのしょっぱさに痺れながらも、一気に麺を食べ終え、恐る恐るスープも飲んでみる。するとご飯がほしくなるから、やっぱりこれはおかずだ……。穏やかな印象があった富山で出会った強烈な“ブラック”に驚いた。



《2日目》夕食・二軒目「日本酒スローフード とやま方舟」勝駒 純米吟醸・蛍烏賊の沖漬け 1,544円

駅に戻ればもう旅も終わり。あっという間の2日間。駅前の「きときと市場 とやマルシェ*2」でお土産を探していた時に気になるお店を見つけた。

「日本酒スローフード とやま方舟」という、富山県内の全蔵元のお酒が楽しめるお店だ。こういうお店が駅前にあるのがうれしいなあ。よし、最後に1杯飲んで帰ろう。

頼んだのは勝駒 純米吟醸。富山で一番小さな造り酒屋という清都酒造場の勝駒。わずか5人で、大量生産せずに良い酒を造り続けようとしている、自分が大好きな富山のお酒の1つだ。


もちろん、つまみはホタルイカで。


定番の沖漬けもやはり富山で食べるものは一味違うなあ、としみじみ。身が大きくてフレッシュ。この旅ラストのホタルイカとお酒を真剣に味わった。

富山で出会ったホタルイカは、今まで東京で食べてきたホタルイカとは全然違った。どう違うかは、ぜひ実際に行って食べてみてほしい。


ひたすら好きなホタルイカを食べ、美味しいお酒を飲んだ今回の富山旅。ホタルイカの旬は3月~5月とのことなので、今だけのこのホタルイカを食べに富山へ行ってみてはどうでしょうか。今回も良い旅だった。

【今回食事に使った合計金額:10,965円】

(勢いで蛍烏賊釜揚げを頼んだせいで若干オーバーしてしまいました……。すみません)

※本記事に記載のものは2017年3月27日取材時点の情報です

※予算に含まれるものは食事代(全て税込金額)のみです

*1:富山の居酒屋を見て回ったら「しゃぶしゃぶ」として出しているお店も多い
*2:「きときと」とは富山弁で「新鮮」という意味らしい

編集者&ライター。1987年神奈川県生まれ。ブログ「ウォーキング✕美味しいもの」では日々見つけた美味しいものや歩いた街について書いてます。

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