今さら聞けない「公的年金制度」の基礎知識
皆さんに昔からなじみのあるものでありながら、なかなか正しく理解されないもの、それが「年金制度」の仕組みです。しかし、「年金」は老後の生活を支える大切な制度であるのに制度が分かりにくいです。
そこで、ここでは「年金制度」について最低限これだけは知っておいてほしいことについてお話します。
公的年金制度の種類
公的年金制度は「国民年金」と「厚生年金保険」の大きく2種類に分かれます。「国民年金」がいわゆる1階部分の年金と言われる制度です。それに対して「厚生年金保険」は2階部分の年金制度と言われます。
このように、公的年金制度は2階建ての年金制度をもって老後の生活保障を行うようにした社会保障制度となります。
それでは、国民年金制度と厚生年金保険制度について、詳しく見ていきたいと思います。
国民年金は20歳になったら必ず加入する年金制度
年金制度国民年金は20歳以上60歳未満の国民すべての人が加入する年金制度です。現状で約6,700万人の人が加入対象になっています。
国民年金では大きく「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」の3種類に被保険者を分類します。
①第1号被保険者
20歳以上60歳未満の人で、第2号被保険者・第3号被保険者以外の人が該当します。
具体的には、20歳以上60歳未満の人で、第2号被保険者や第3号被保険者に該当しなければ、基本的にこの第1号被保険者となります。
また、外国人の方でも「日本に住所を有している人」であれば、第1号被保険者になります。
第1号被保険者は、国民年金の保険料の納付義務が課される点が特徴です。
②第2号被保険者
第2号被保険者は20歳以上60歳未満の方で「厚生年金保険の被保険者」が該当します。
具体的には、サラリーマンのように会社にお勤めされている人や公務員、私立学校の教職員などが第2号被保険者に該当します。
第2号被保険者は、国民年金の保険料の納付をする必要がない点が特徴です。
③第3号被保険者
第3号被保険者は20歳以上60歳未満の方で「第2号被保険者の配偶者」の人が第3号被保険者とされます。
第3号被保険者は、第2号被保険者同様に国民年金の保険料を納付する必要がない点が特徴です。
厚生年金保険は制度に加入している会社に勤め始めた時点から加入する公的年金制度
厚生年金保険は国民年金とは異なり「制度の適用がある会社に雇用されたときから加入」となっている点が特徴です。そのため、20歳未満の者であっても厚生年金保険の制度に加入することができます。
また、近年の法改正により制度の仕組みが変更されているところがあります。
・改正により変更になった点
①被用者年金制度の一元化
平成27年10月より「公務員」「私立学校の教職員」についても「厚生年金保険」の制度に加入することで制度が統一されました。
以前は「公務員」は「国家(地方)公務員共済組合」に、私立学校の教職員については「私学共済組合」というそれぞれ独自の「共済組合」が被用者年金制度を担ってきましたが、今回の改正により厚生年金保険に制度を統一されることになりました。
②短時間労働者にも厚生年金保険の適用範囲拡大
平成28年10月1日より、厚生年金保険の被保険者となるべき者の範囲が拡大されるようになります。
今回の改正によって新たに対象となる要件としては「1週間当たりの労働時間が20時間以上である者」「1か月あたりの賃金(賞与や通勤手当等は除いた基本給部分のみ)が88,000円以上である者」などがあげられます。
公的年金制度でもらえる年金の種類
年金と聞くと「老齢年金」のことを言っていると思われる方が多いですが、老齢年金は、年金給付の種類の一つです。老齢年金以外には代表的なものとして「障害年金」「遺族年金」があり、国民年金・厚生年金保険いずれの制度にもある年金給付になります。
・障害年金
障害年金とは、障害の状態になったときに請求することでもらうことができる年金です。国民年金・厚生年金保険ともに、障害年金という給付はあるのですが「一定の障害等級」に該当しなければもらえないという点が大きな特徴と言えます。
・遺族年金
遺族年金とは、被保険者が死亡した後にその被保険者によって生計を維持(簡単に言うと「扶養されていたこと」)されていた遺族に対して支給される年金給付のことです。国民年金・厚生年金ともに、遺族年金という給付はありますが、国民年金と厚生年金保険の制度によって支給される対象が大きく異なります。
年金は保険料によって賄われています
ここでは「年金保険料」についてお話します。国民年金の年金給付も厚生年金保険の年金給付もいずれも「保険料」が主な財源となっています。保険料は、国民年金も厚生年金保険についても徴収されているものですが、それぞれ納付する対象者が異なります。
国民年金は「第1号被保険者」に該当する人から徴収します。それに対して厚生年金保険は「第2号被保険者と会社」が折半負担する形で負担します。なお、「保険料を納付した期間」は、老後にもらえる年金額の計算をするうえで、大きく関係してきます。
・保険料の金額
(国民年金)
「毎月15,590円(平成27年度)」ですが、平成28年9月からは「16,900円×保険料改定率」の水準に固定されることが決まっています。
(厚生年金保険)
「標準報酬月額×18.182%(被保険者負担分:9.091%)」ですが、平成28年9月からは「標準報酬月額×18.3%(被保険者負担分は9.15%)」の水準に固定されることが決まっています。
もらえる年金額はどれくらい?
ここでは具体的な「年金額」はどれくらいになるのか?という部分についてお話していきます。先ほど、保険料を納付した期間が年金額の計算上大きく関係すると述べましたが、理由は「保険料納付済期間の分に見合った年金額」が支給されるためです。
具体的な金額については、毎年誕生日のある月に送付される「ねんきん定期便」に記載されています。
実際には「35歳・45歳・59歳」の誕生月に送付されるねんきん定期便において、具体的な年金支給額が記載されたものが送られます。それ以外の年度については「今までの保険料の納付実績」が記載されたはがきが送られます。
年金額を増やす方法もあります
年金額の具体的な金額についてお話ししましたが、これは「年額」ですので、実際に支給される金額は「年額÷12×2か月分」となります。(老齢年金は2月ごとに1回支給される仕組みをとっているため)保険料納付実績によってはほとんどもらうことができなくなる恐れがある人もいます。そんな人はどうすれば好いでしょうか?
年金額を増やす方法のひとつに「付加年金」に加入することがあります。「付加年金」は国民年金の制度の一つで、申請することで「毎月400円」の付加保険料を納付することができるようになります。そして、老齢年金を受給するときに「納付した期間×200円」の年金が上乗せされて支給されるようになります。注意してほしいのは「第3号被保険者は付加保険料を納付する者になることができない」ということです。
まとめ
・年金制度は大きく「国民年金(1階部分)」と「厚生年金保険(2階部分)」の2種類に分かれます。
・年金制度では、被保険者が「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」の3種類に分かれており、それぞれの被保険者ごとに保険料の納付内容などが異なります。
・年金の種類は「老齢年金」以外にも「障害年金」や「遺族年金」などがあります。
・保険料について、国民年金は「第1号被保険者」、厚生年金保険は「第2号被保険者と会社」が負担しています。
・年金額は、毎年の誕生月に送付される「ねんきん定期便」に記載されています。(具体的な年金額と見込みについては「35歳・45歳・59歳」の誕生日の年度のねんきん定期便に記載されています。)
・年金額を増やす方法には「付加年金」に加入することなどがあります。ただし、「第3号被保険者」については、付加年金には加入することができません。