IDeCoの思わぬデメリットにはまらないようにしよう!

IDeCoの思わぬデメリットにはまらないようにしよう!

前回『2017年も終盤、来年に向けてお得に節税できる確定拠出年金を検討しよう! - マネ会』では、確定拠出年金の効果とメリットを中心に解説していきました。

今回は逆の目線で、確定拠出年金のデメリットや、起こりうる不具合について解説します。

確定拠出年金サービスを提供している企業のホームページでは、デメリットについてあまり説明されていませんので、これから確定拠出年金を考えている人は是非参考にしてください。

資産に係る税金、特別法人税の動向に注意

『特別法人税』という言葉は聞き慣れませんが、どのような税制度なんでしょうか。
 
一見すると企業が払うような税金に聞こえますが、これはIDeCoの運用者が払うお金なのです。
 
大体のIDeCoの広告には、『運用益は非課税です!』の後に『ただし、積立金には別途1.173%の特別法人税がかかります(現在は凍結中)』と小さく書かれています。

実は、企業年金は年率1.173%の課税がされる法律になっています。
 
本来は年金資産に対し、年率1.173%の税金がかかるのですが、株式市場の低迷や景気の悪化で企業年金基金の運用環境が悪化していたため、1999年から課税凍結が行われています。
 
課税凍結は延長、延長を繰り返し、今現在までに至っていますが、撤廃されていませんから何かの拍子に復活する可能性しないとは断言できません。

特別法人税が復活すると年金資産に対して年率1.173%の税金がかかってしまいます。
 
運用益がプラスでもマイナスでも税金が発生する、恐ろしい税制度と言えるでしょう。

運用益を得るためには年率1.173%ですから、国債や定期預金に投資するファンドに申し込んでも、税金をとられて負けてしまいます。
 
撤廃に向けて金融機関が要望書を出していますが、特別法人税の動向には注意を払う必要があります。

転職をすると、とても面倒くさい

確定拠出年金には個人型と企業型の2種類があります。
 
企業型確定拠出年金は企業が掛け金を支払っており、全ての企業が企業型確定拠出年金制度に加入しているわけではありません。
 
厚生労働省の2019年2月時点では、会社員の約5人に1人程度しか加入していないので、基本的には大企業等の一部の企業勤めている正社員の人に加入者は限定されています。

企業型核的拠出年金を導入していない企業に勤めている人は、個人型確定拠出年金(愛称iDeCo)に加入している人も多くいるはずです。
 
iDeCoは勤務先が加入している年金基金によって、掛けられる月額上限値は23,000円、20,000円、12,000円と変わっていくのです。
 
2つの確定拠出年金は制度を複雑化し、転職後に手続きが必要になります。
 
企業型確定拠出年金に加入している会社の人が、加入していない会社に転職した時、iDeCoへの切り替え手続きを行わなければいけません。

退職・転職後6か月以内に移管手続きをしなかった場合、積み立てたお金の運用はストップされて他の年金基金に移動されます。
 
さらに、勝手に移動に伴う手数料や管理手数料が差し引かれていきます。
 
運用はストップしていますので、積立金は勝手に目減りしてしまうことはもちろんですが、確定拠出年金の加入期間としてもカウントはされません。

確定拠出年金の加入期間は10年間必要ですから、カウントが遅れるともらえる時期が後ろ倒しになるなど注意が必要になってきます。
 
企業型確定拠出年金に加入していない企業から企業への転職も、勤務先が加入している年金基金によってはiDeCoの変更を行わなければいけなくなります。
 
転職の際は面倒くさい手続きが必要なので、「転職の際はiDeCoは手間がかかる」ということを覚えておかなければいけません。

転職をした時は必ず、今までの確定拠出年金と、転職先の会社が入っている確定拠出年金を確認して、手続きを行うようにして下さい
 
自身が勤めている企業がどの様な確定拠出年金を利用しているかわからない人もいるので、きちんとしたチェックが必要です。

掛け金より年金受給額が少なくなる

iDeCoは預金や海外株式などリスク資産で運用を行っていく制度です。
 
年金の総額は掛け金ではなく、運用の結果で全てが決まります。
 
運用の結果には国民年金基金連合会への手数料、運営管理機関への手数料、事務委託先金融機関手数料など各種手数料が付くことも忘れてはいけません。

移管の際に数千円、毎月に数百円程度かかるため、元本保証型の制度では月々の運用額は微々たるものですから、結果的にマイナスになってしまいます。
 
リスクをとって運用するアクティブファンドを中心に設定している人はもっと気を付けなければいけません。
 
アクティブファンドで運用収益がマイナスになることはもちろんですが、アクティブファンドには信託報酬が大きくかかることが多くあります。

信託報酬が年2〜3%かかってしまいます。
 
さらに、運用損が発生してしまうと拠出した掛け金より受け取れる金額の方が少なくなってしまうこともあるでしょう。
 
もっと言うと、運用結果によっては節税効果をなくしてしまうくらいの運用損が発生することもあります。

iDeCoで節税するどころか損してしまう
こともありますので、注意しなければいけません。

途中解約ができない

iDeCoは長い期間、コツコツと積み立てる制度です。
 
長い人生ですから、途中で病気になったり、家を建てたり、子供の大学進学等の教育費が膨大にかかったりするなど、大きな出費に見舞われることも多くあるでしょう。

そんな時、「コツコツ積立を行ったiDeCoを解約できたらいいのに」と思うかもしれません。
 
iDeCoで節税や貯蓄をしていても、住宅ローンや教育ローン、場合のよってはカードローン・キャッシングを組んで利息を支払う事態になってしまってはiDeCoのメリットは相殺されてしまいます。

iDeCoで途中解約して積み立てた資金を手にできれば、このような突発的な支出に見舞われても対応ができます。
 
残念なことに、iDeCoではほとんどのケースで途中解約ができません。
iDeCoで途中解約を行う場合は、以下の条件を満たす必要があります。

iDeCoを途中解約するための条件
  • 60歳未満である
  • 「企業型確定拠出年金」か「個人型確定拠出年金」の加入資格のどちらを満たしていない
  • 障害給付金の受給権者に該当していない
  • 「企業型確定拠出年金」および「個人型確定拠出年金」の加入期間が通算で1ヶ月以上3年未満である
  • 「企業型確定拠出年金」または「個人型確定拠出年金」に加入している者が、加入資格を喪失した日から起算して2年以上経過していない

現実的に考えて、転職や結婚で専業主婦になるといった特殊な事情でもない限りは、iDeCoを60歳未満で途中解約することは難しいと言えるでしょう。
 
iDeCoはあくまで老後に向けての積み立てになりますので、住宅貯蓄や財形貯蓄、学資保険とは制度が違います。
 
毎月の生活費がカツカツだけれども、無理をしてiDeCoの加入をするような状態であると、突発的な出費があった時に立ち行かなくなります。

将来に向けた貯蓄は別に考えつつ、最後にiDeCoへの掛け金を払うくらいが丁度良いのです。
 
今後の人生プランを考えつつ、絶対的な余裕資金のみをiDeCoに回すようにしましょう。

iDeCoは利便性が高くありませんが、老後資金として心強い制度です。
 
デメリットも抑えつつ、各々に合った無理のない運用を行うようにして下さい。

まとめ

  • 確定拠出年金にはデメリットがある
  • 税金がかかったり、管理料がかかったりするなど、元本保証のはずが元本割れする可能性も
  • 転職の際の手続きも面倒くさい
  • お金を自由に引き出せないので今後の人生設計をしっかりシミュレーションしてから加入しよう

著者:先ず隗より始めよ

現役金融マン。証券アナリストの資格あり。ちょっとマニアックな金融知識やニュースをわかりやすく書いていきます。

関連記事