クレジットカードの与信枠とは?その仕組みや属性について解説

クレジットカードの与信枠とは?その仕組みや属性について解説

クレジットカードの与信枠とは、カード利用者にとっての利用限度額になります。

限度額は収入や勤続年数などを集めたスコアリングから決定され、一般的には収入や職業などの属性が高い方ほど与信枠はアップします。

本記事ではクレジットカードの与信枠についての解説や、具体的な与信枠の算出方法、そしてあまり知られていないクレジットカードの途上与信や、オーソリについて解説します。

クレジットカードの与信枠とは利用限度額のこと

クレジットカードの与信枠とは、カード利用者にとっての利用限度額になります。

そもそも与信とは、クレジットカード会社にとって、申込者に対してカードを本当に発行して良いのか見極めること。利用者から取引の代金が回収できるかどうか、信用を供与することを意味します。

つまり与信枠の金額とは、個人への信用度に等しいものになります。与信枠の金額が高い方ほど、カード会社からの信頼は高いといえるでしょう。

与信枠が決まるポイントとは

クレジットカードの与信枠は、カードのランクやクレヒス、収入などで決まります。以下は与信枠が決まるとされている属性です。

与信枠が決まる属性
  • 年齢
  • 性別
  • 職業
  • 勤務形態
  • 年収
  • 居住年数
  • 勤務先の会社の規模
  • 婚姻の有無
  • 同居家族の有無 など

与信枠は、カード利用の延滞リスクが少なかったり、高収入だったりするほうが、金額設定は高めになります。

また、属性は全て点数化、つまりスコアリングされています。スコアリングの点数が高いほど、与信枠の大きさはアップします。

与信枠は収入が大きなポイントになる

与信枠のなかでも重要視される属性が「収入」です。

与信枠は、1年間に支払うことができると考えられる金額です。いくら勤続年数や年齢などのスコアリングが高くても、そもそも収入に不安がある場合は、与信枠を上げることはできないのです。

そのため、スコアリングでも収入が一番大きなポイントになります。収入別に見たスコアリングの一例を紹介しますので参考にしてください。

収入・年収 スコアリングの点数
100万円未満 10点
100万円~200万円 30点
200万円~300万円 50点
300万円~400万円 70点
400万円~600万円 90点
600万円~800万円 110点
800万円~1,000万円 130点
1,000万円以上 150点

これを見ると、収入が300万円以下の方と、1,000万円以上の方では、100点にもおよぶ点数差があることがわかります。

つまり収入が高い方ほど、返済能力は高いと判断されるため与信枠はアップします。

支払い可能見込み額の算出方法

支払い可能見込み額とは、カード会社が利用者に対し、1年のうちにクレジット代金として支払えると想定した金額です。

例えば、年収1,000万円あれば、支払い可能見込み額は200万円くらいなど、年収によってその金額はおおむね決まっています。

支払い可能見込み額の具体的な算出方法は次のようになります。

支払い可能見込み額の算出方法
  • 支払可能見込額=年収・預貯金-年間請求予定額-生活維持費

ショッピング利用可能枠の算出方法

ショッピング利用可能枠とは、買い物(ショッピング)で1年間に利用できる上限金額です。こちらも具体的な算出方法があるので、同じく年収330万円を例に算出してみましょう。

ショッピング利用可能枠の算出方法
  • 支払可能見込額×90%以内 = ショッピング利用可能枠の上限

専門家からのコメント

南 陽輔
南 陽輔

上記の支払可能見込額の算出方法等は、割賦販売法で定められています。

令和3年(2021年)4月から施行された改正割賦販売法では、事業者が経産省の認定を受けることで、技術・データを用いた与信審査手法を用いることができるようになりました。

経産省の認定を受けた事業者を「認定包括信用購入あっせん業者」といいます。

つまり、法改正以前では支払可能見込額の算定方法はどの事業者でも同じでしたが、法改正後は、事業者が「認定包括信用購入あっせん事業者」かどうかによって、支払可能見込額が異なるというケースが生じる可能性があります。

クレジットカードの途上与信とは

途上与信とは、クレジットカードの利用中にカード会社がおこなう審査のことです。

クレジットカード入会時におこなわれる審査とは違い、利用中に以下の3つのポイントを中心に利用者に対してスコアリングをおこなっています。

途上与信のスコアリング
  • 支払い履歴
  • 現在の借り入れ状況
  • 取引の長さ

例えば、収入が高い方であれば、カード発行時の審査において、与信枠は高く設けられることが多いでしょう。

しかし、いざカードを持たせたら借り入れが多く、返済が滞ってしまった場合、その利用者に対する与信は下がってしまいます。

このように途上与信とは、カードを利用したあとの行動を調べ、入会時の与信とどう変わったか確認することをいいます。

途上与信により与信枠がアップする

遅延や延滞がなくクレジットカードを使い続けていくと、途上与信により徐々に与信枠がアップすることもあります。

例えば専業主婦がクレジットカードを申込む場合、自らの収入はないとみなされます。そのため入会時の与信枠はたったの10万円、ということもあるようです。

しかし、毎月の返済に問題がなく、長期間に渡って安定したカードの使い方をすると、途上与信により与信枠が20万円にアップすることも少なくありません。

こうした与信枠の増額は、カード利用者が自ら増枠申請をすることもできますが、カード会社から与信枠アップの案内をされることもあります。

カードが利用停止になることも

途上与信に問題があると、クレジットカードが利用できなくなることもあります。

カードの支払いや借り入れに問題があると、突然カードが使えなくなってしまうことも。場合によっては与信枠も減枠されてしまいます。

多くの場合、与信枠の減枠が事前に知らされることはありません。ある日突然与信枠が減額されたり、カードの利用が停止になったりするので、注意が必要です。

専門家からのコメント

南 陽輔
南 陽輔

基本的には、毎月の支払いを怠っていなければカードが利用停止になることはありません。

しかし、支払いを怠ると、カード会社等の金融機関で共有している信用情報に傷がつきます。いわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。

支払いを1回遅延しただけですぐに信用情報に傷がつくわけではありませんが、支払遅延後のカード会社からの連絡に応じなかったり、2回以上支払いを怠ったりすると、カードが利用停止になるとともに、信用情報に傷がつきます。

一度、信用情報に傷がついてしまうと、新たにカード取引ができるようになるまで数年かかってしまうことがありますので注意しましょう。

クレジットカードの仮売上(オーソリ)とは

あまり知られていない与信枠の使われ方として、仮売上(オーソリ)があります。オーソリとは、クレジットカードの利用限度枠の確保のみをおこなう決済処理です。

例えば、お店で利用者が「カードを使って1万円の商品を買いたい」といっても、お店はカードが問題なく使えるかどうか、すぐに判断することができません。

そこで、店はカード情報をカード会社へ送信し、問題がないかチェックしてもらいます。問題がない場合は、カード会社が利用限度額から1万円を差し引き、利用者は1万円の商品を購入できることになります。

オーソリは簡単に説明するとこのような流れであり、カード発行会社へ取引に応じてよいか事前承認をおこなうことをいいます。

オーソリによりキャンセル等トラブルが回避できる

オーソリがあるおかげで、キャンセルなどのトラブルを防ぐこともできます。

例えば、「入手が難しい海外のブランドバッグ」といった商品の場合、申し込みをしたけれど、その商品が本当にこの先輸入できるかどうかは不明瞭です。

そのような場合、オーソリがあるおかげで「与信枠から決済金額を確保できる」状態となり、即座にバッグの代金が差し引かれることはありません。

つまり、バッグが輸入できなかった場合は自動的にキャンセルとなり、入荷できた場合は、事業者側がすぐにバッグ代のカード引き落とし決済ができるようになるのです。

このようにオーソリのシステムがあることで、商品が届いていないのにクレジットで引き落としがあった、といった内容のクレームを防ぐことができます。

クレジットカードの与信に関するまとめ

クレジットカードの与信とは、ざっくりまとめると次のようなものになります。

まとめ
  • 与信とは利用相手に信用を供与することを意味する
  • 与信枠とはクレジットカードの利用限度額
  • 与信枠は収入などのスコアリングで決まる
  • 途上与信とはカード利用中における審査のことである

与信枠は収入によって決まることが多いです。しかし、カード利用中に問題があった場合、途上与信におけるスコアリングが下がるため、与信枠が減額されてしまうこともあり、注意が必要です。

自らが持つ与信枠を下げないよう、クレジットカードは計画性を持って利用していきましょう。

南 陽輔

専門家からの一言

南 陽輔

クレジットカードは、手元に現金がなくても使える便利なものですが、後からお金を支払ってくれるという信用のもとで成り立っているものです。

また、与信枠という利用上限があります。与信枠を超えてしまったり、支払いを怠ったたりした場合には信用を失い、クレジットカードが使えなくなります。

長年きちんと支払いを継続していても、支払を怠ってしまうと、築き上げた信用がすぐに失われることになります。

カード会社は信用情報を相互に共有しており、1社でカードの利用停止となった場合には他社でもカードが利用できなくなる可能性が高いです。

自分が総額でどれくらの支払額が残っているのか、毎月どれくらい返していく必要があるのか、月に1度、しっかりと把握して自己管理するようにしてください。

大阪大学法学部、関西大学法科大学院卒業。2008年に弁護士登録し、大阪市内の法律事務所に勤務した後、2021年3月に一歩法律事務所を設立し、独立開業しました。大阪弁護士会所属の弁護士です。従来の法律事務所での顧問契約の壁を取り払い、サブスク(必要に応じてご利用いただきご清算いただく都度利用形式)、オンライン対応のもと、契約書チェックや起業時の法律相談などの予防法務に関して、利用しやすい弁護士サービスの提供を行っております。

…続きを読む

Web系コンテンツで小説・ライトノベル・漫画原作を連載している作家兼編集者。双葉社より書籍&電子書籍も発売中。金融関係はもちろんのことエンタメ系から商品紹介まで様々なメディアの編集者&ライターを経験。 ゲーム・アイドル・ガジェット・動物・アート・自転車・旅行などが大好き。過去には自転車で日本一周したこともある。 クレジットカードはエポスゴールドカードと楽天カードを保有。楽天マニアのため楽天ペイ・楽天Edy・楽天銀行を使いこなしており、できれば楽天カードと添い遂げたいと願っている。

…続きを読む

関連記事