PayPayとLINE Payは共存するのか?キャッシュレス覇権戦争は終焉を迎える?

PayPayとLINE Payは共存するのか?キャッシュレス覇権戦争は終焉を迎える?

2019年11月18日にLINEはヤフーとの経営統合することを発表しました。

両者はQRコード決済サービス「LINE Pay」と「PayPay」をそれぞれ展開しており、今後の展開が気になった方は多いのではないでしょうか。

そこで今回は「PayPayとLINE Payの今後」について消費生活ジャーナリストの岩田 昭男さんに語っていただきました。

月刊誌記者などを経て独立。流通、情報通信、金融分野を中心に活動するが、メインはクレジットカード&デビットカード、電子マネーなど。とくにSuicaは2001年のサービス・スタート以来の愛好者で、通勤から買い物まで活用している。年に4回ほどクレジット&電子マネーのムックを出版しており、最新情報にも詳しい。2020年東京オリンピックを目指して始まったキャッシュレス促進の利用者側に立ったオピニオンリーダー。

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LINEがPayPayの軍門に下った日

「キャッシュレス・ポイント還元事業」で一番注目を集めているのがQRコード決済のグループでしょう。

同じキャッシュレスといってもクレジットカードや電子マネーと違い、ユーザーはスマホのみで決済が完結し、店舗側はQRコードを印刷したポップがあれば良いという手軽さが売りになっています。

さらに人気の理由としては、このQRコード決済を手がけるのがドコモ、楽天、KDDI、ソフトバンク、ヤフー、みずほ銀行など、日本を代表する大企業なので、キャンペーンの額が大きく「お得」が多いという利点もあります。

なかでも、三傑と呼ばれるPayPay、LINE Pay、楽天ペイは覇権を争うライバル同士です。そして、その戦いは永遠につづくと思われたのですが、熱戦は突然、終焉を迎えることになりました。現実は甘くはありませんでした。

2019年11月18日にLINEはPayPayの親会社であるヤフーとの経営統合を発表して、戦いからの撤退を表明しました。

キャッシュレス分野では常に先頭に立ってきたLINEでしたが、トップのPayPayとのキャンペーン競争で100億単位の出費が続いたために、財政難に陥っていたと言われています。

その結果、とうとう潤沢な資金を持つヤフーに助けを求めざるをえませんでした(実質的な身売りでした)。

LINE PayとPayPayの共存は難しい?

ただ、両者とも巨大企業ですから、正式には公正取引委員会の審査を経て、2020年秋に統合となります(巨大事業者同士の統合はかなり厳しいという意見もあります)。

もし、これが実現すれば、LINE PayとPayPayが同じグループに属するようになるので、マスコミは大騒ぎをしました。たくさんの利用者を抱える両陣営の与える影響があまりに大きかったからです。

実際に利用するにしても、LINE PayとPayPayの2つが今後どうなるのか。利用者にとっては、非常に気になるところです。2つとも今まで通りに使えるのか、それとも1つだけ残って、もう1つが落ちるのかといったことが心配になります。

親会社のヤフーとしては、QRコード決済を2つも持ちたくはないので何とかして1つに統合しようと努力するはずです。いずれは1つにまとめて、いいとこ取りをしようとするものです。

通信アプリと決済アプリの違い

しかし、実際にそうなるのでしょうか。事態はもう少し複雑でしょう。というのも、両者の性格があまりに違いすぎるからです。

LINE Payは通信アプリ「LINE」のQRコード決済で、LINEはもともと、友達の輪を広げたり、チャットで話したりするアプリです。その中で、友達同士(主婦やOL)でお金のやりとりをする時に活躍するのがLINE Payなのです。

一方のPayPayは、基本は決済アプリで、最初から買い物をする時のサポートをするのが役割となっています(クレジットカードと同じ)。

同じQRコード決済といってもまったく異なるもので、両者は互いに補完はするけれども、重なり合うことはありません。ヤフーとしても相乗効果を得やすい良い組み合わせとなっています。ですから、無理やりひとつにする必要はないのです。まさにそこが孫正義氏の思惑だったといえるでしょう。

PayPayはあらたに若者と女性を取り込める

ヤフーの中心ユーザーは、スマホではなくパソコンを利用する中高年です。そこにLINEの若いユーザー、女性がどっと入ってくるわけです。

それはこれまでにない客層であり、伸び代の大きな顧客たちです。それを拒む経営者がどこにいるのでしょうか。孫社長にとって、もしかしたら「若者と女性」がいちばん大きな魅力だったのかもしれません。

PayPayはスーパーアプリに一歩近づく

PayPayのスーパーアプリ構想を表した画像

もう1つ、これはPayPayにとってのメリットと言っていいのですが、PayPayはいまポイント還元競争から足を洗いたがっています。

彼らにとってもLINEの買収は、不毛な消耗戦を終結させるいい機会だったのです。私もずっと追いかけてきましたが、激しいキャンペーン合戦にはPayPay自身がかなり消耗していたのはたしかです。お金のばらまきに代わる未来につながる戦略を探していたということです。

その末に行き着いたのがスーパーアプリ構想でした。

スーパーアプリ構想とは、電気料金などの公共料金の支払いから、ショッピングの支払い、さらには、映画のチケット、飛行機やバス、レストラン、ホテル、アミューズメント施設の予約、さらにはタクシーの配車アプリなど、暮らしに関係したアプリをPayPayアプリ内にすべて集約して、支払いが生じるありとあらゆるものをPayPayアプリ内で完結できるようにするといったものである。

すでにインドやインドネシアなどのアジアの国々では盛んになっているのですが、ヤフーもこれに取り組もうとしていた矢先でした(現在はすでにDiDiという配車サービスのアプリを入れるなどその一端が見えるようになっています)。

一方、LINEはすでにこうしたアプリをたくさん取り込んでいます。たとえばレストランの予約キャンセルアプリというのがあります。お目当てのレストランの予約キャンセルが出たらすぐに教えてくれるアプリで若い女性に人気です。

今後はPayPayとLINEがそうしたアプリを共有し、ユーザーに提供できるようにして、「暮らしに必要なものをすべて提供する」というスーパーアプリ構想の実現と、ネット(スマホ)を通してあらゆるサービスを提供するプラットフォーマーを目指していくでしょう。

勝ち組、PayPayの次の一手はスーパーアプリ!!

中国の展開がPayPayとLINE Payの手本になっている

中国では、アリババ(Alipay)とテンセント(WeChatPay)の2社が性格を若干異にしながらうまく共存し、刺激し合っています。

PayPayとLINE Payのようにそれぞれの役割が微妙に違っていて、カニバル(共食い)がないのです。アリババは中国Eコマース最大のプレーヤーで、テンセントは「WeChat」と呼ばれる、日本で言うところの「LINE」に相当するメッセンジャーサービスを提供しており、PayPayとLINE Payの立場に非常に似ています。

PayPayとLINE Payは共存へ

いずれにしても、アリババに出資しているソフトバンクすなわち孫社長は、こうした中国の事情をよくわかっています。

ですから、それぞれの良さを生かしながら、PayPayとLINE Payをうまく共存させていくことを考えているはずです。中国のAlipayとWeChatPayがうまく共存しているように、PayPayとLINE Payを共存させながら双方を大きくしてくことを考えているかもしれません。

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