長く続く事業者を増やす「たけはら創業塾」とは?竹原商工会議所にインタビュー PR

長く続く事業者を増やす「たけはら創業塾」とは?竹原商工会議所にインタビュー

日本各地の商工会議所は、事業者をさまざまな形で支援しています。しかし人口減少に伴う事業者減少に悩む地域も少なくない現在、新たに事業を始める人を増やす取り組みも重要です。

広島県竹原市にある竹原商工会議所では、創業に際しての具体的なプランを考え、創業者同士のコミュニティ形成にも役立つセミナー「たけはら創業塾」を開催し、実践的に学べる機会を設けています。

今回は同所の事務局長 田中雅一さんに、「たけはら創業塾」をはじめとする創業支援の取り組みについて伺いました。

温暖な気候と豊富な観光資源をもつ竹原市

瀬戸内海の多島美を収めた画像

―本日はよろしくお願いします。まずは竹原市の特徴や魅力、主な産業などを教えてください。

田中さん:竹原市は広島県の海岸沿い、中央部に位置する街です。江戸時代には温暖な気候と瀬戸内海の利点を活かし、塩を作る製塩業が盛んでした。現在、竹原商工会議所の建物がある場所も、元々は塩田だったそうです。

沖合に停留した大型船から小型船へ荷物を移し、陸に荷下ろしする廻船業も栄えました。各地の文化を取り入れた街並みは昭和50年代から重要伝統的建造物群保存地区に指定され、竹原市の観光資源となっています。古いものだと築250~300年の建物が今も残る地区で、「安芸の小京都」と呼ばれています。

ここ数年、観光客からもこうした古民家が注目され、古い町家を活かしたカフェや喫茶店などを始める方が増えてきました。

街並み保存地区の画像

また、水がおいしい土地であることから酒造をはじめとする醸造業、温暖な気候で作られるみかんやレモンなどの柑橘類、「うさぎ島」と呼ばれる観光スポット大久野島があることも竹原市の特徴です。乾燥した気候で赤土が豊富なため、古くからレンガの製造も盛んでした。

大久野島のうさぎの画像

交通面では広島空港へ15分~20分程度とアクセスしやすく、首都圏との往復に大変便利です。瀬戸内海の豊かな自然と温暖な気候に惹かれ、近年は竹原市へ移住して創業される方も増えています。

―ありがとうございます。竹原商工会議所のご活動についても教えてください。

田中さん:移住者はいるものの、近年全国で問題となっているように、竹原市も人口減少が続いています。毎年400~500人ほど減少しており、現在の人口は24,000人を切りました。

人口が減るとマーケットも縮小し、会員事業者さんの高齢化や業績低迷にともなう経営指導や各種相談への対応も重要となります。

また当所では、私が人事異動で経営指導員となった12年前から、全国に先んじて商工会議所の情報化・IT化を図ってきました。

まず経営指導にタブレットを活用し始め、各地の商工会議所でモデル事例として取り上げられました。当所は2023年4月に現在の場所へ移転した際、業務システムやソフトウェアも新しいものに変えており、取材や専門家からもヒアリングを受けています。

まずはできる範囲で取り組み、さらなる情報化・IT化推進に向け試行錯誤しながら、引き続き会員さんの模範となることを目指しています。

創業に向けた学びの場「たけはら創業塾」

インタビュー中の田中事務局長

―創業者向けのセミナー「たけはら創業塾」について、開始の経緯や目的を教えてください。

田中さん:「たけはら創業塾」は今年で11期を迎えます。人口減・会員減が想定される竹原市では、まず事業者さんの母数を維持する必要があると考えました。

また、教員の知人から「退職後にカフェをやってみたい」と聞き、起業・創業を考える人は身近にたくさんいるのではないかと感じたのもきっかけのひとつです。

―受講者はどのような方が多いのでしょうか。

田中さん:最初は退職後の第2の人生として創業したい竹原市内の方をターゲットとして想定していましたが、初年度の参加者11名には市外からの方もいらっしゃいました。

飲食店の開業を目指す受講者が多く、互いに切磋琢磨して、受講者同士のコミュニティもできていると感じています。竹原市には観光資源もありますので、方法次第ではまだまだビジネスチャンスがあると思います。

―受講者同士のコミュニティは、初年度から自然と醸成されたのでしょうか?

田中さん:「たけはら創業塾」は毎年全3回ということもあり、最初の頃は受講者同士の横のつながりがあまりなかったと思います。そこで6年目から「6期生」という呼称に変えたところ、同窓意識が生まれたのか、つながりが強化された印象があります。

それ以降は同期生のLINEグループができたり、忘年会開催、イベントへの共同出店をしたりと、受講者同士の交流が活発になりました。

本当に続けられる事業を始めるための創業塾

たけはら創業塾開催中の様子

―受講者のみなさんは、受講前から明確なビジネスプランをお持ちなのでしょうか。

田中さん:「たけはら創業塾」のカリキュラムでは、自分が始めたい事業のターゲット像や自身の強み、強みを活かしてどのようなサービス・商品を展開するかなど、具体的な話をしていきます。

そのため、ある程度は自分のビジネスについてイメージが必要です。「これがしたい」と、明確なイメージを持たれている方が比較的多いかもしれません。

ただ、イメージ通りに進められるとは限りません。例えば、事業を始めるには資金が必要ですから、自己資金を用意するのか借り入れるのかなどを考えなくてはなりません。

そうした現実問題に直面し、挫折しそうになる方もいます。でも、それはそれで創業塾へ来たからこそわかったことですし、現実的な課題を学ぶ機会がないまま事業を始めると、事業を長く続けるのは難しいでしょう。

―事業を始めるだけでなく、継続するために必要なことを学ぶのも大切なのですね。「たけはら創業塾」の具体的な受講内容をご紹介ください。

田中さん:全3回のうち、2日間はベースとなる創業計画の作り方を講師の方から指導いただいています。過去から現在、未来に向けて自身の経験や保有資格、人脈などを棚卸しし、それらをどのように活用してビジネスにつなげていくか、計画を練ります。

そして事業のターゲットを掘り下げ、年代や生活エリアといった具体的なレベルで考えます。時代の変化に合わせたビジネスチャンスを見極めることも重要です。

最近はSNSを活用した集客も重要です。ホームページ制作のほか、YouTubeやInstagram、Facebookなど、集客に使える媒体について学んでいただきます。

昨年度からは、魅力ある写真の撮り方、商品やサービスの見せ方といったテクニックも盛り込み始めました。スマートフォンのカメラ設定や手ぶれ防止に使える道具など、最近のトレンドも紹介しながら、ビフォア・アフターで写真による効果の違いを紹介しています。

―講師役についても教えてください。

田中さん:創業計画作りは中小企業診断士の先生に、IT活用や写真の撮り方については、ITコーディネーターやビジュアル戦略プロデューサーの方に担当いただいています。

また、前年に「たけはら創業塾」で学んで実際に創業された方にも先輩創業者としてお招きしています。1年前に同じ場で学んでいた方から、計画段階で見込んでいた売上に対して現実はどうだったのか、売上と現実が違う理由は何かなど、生の声を聞かせていただいています。

受講後も創業者に寄り添うことで生まれる好循環

たけはら創業塾開催中の様子

―受講された方の感想や、受講後の後日談があればお聞かせください。

田中さん:「まだまだ考えが足りなかった」と感じる方も、「自分の考えている方向性は間違っていなかった」と確認される方もいますが、皆さん総じて「受講してよかった」とおっしゃいます。ちなみに、1回だけでなく翌年にもう一度受講される方もいるんですよ。

また、同じ場で学んだ仲間意識が生まれることで、創業者としての孤独も感じにくくなっています。何かあれば同期生と連絡を取り、相談し合う良いつながりができたことは期待以上の効果です。

私たち商工会議所としては、受講生がお店をオープンしたら終わりではなく、3年から5年は様子を見ていく必要があると考えています。事業は計画通りに進んでいるか、軌道修正が必要なところはないかを確認し、売上の伸びが分かればすぐに連絡しています。ちょっとしたことで相談を受けるなど、頼っていただけるのは嬉しいですね。

「たけはら創業塾」で学んだことを次の創業者さんに教えている方もいて、好循環が生まれています。

空き店舗・空き工場の情報も、創業者支援につながる

インタビュー中の田中事務局長

―今後の計画や目標があればお聞かせください。

田中さん:行政とも連携し、これからも新しい事業者さんを育てられる環境作りをしていきたいと思います。現在、移住者・創業者に向けた竹原市内の空き家や空き店舗・空き工場の情報を集めてホームページに掲載していますので、さらに情報を集めていきたいです。

創業前、最初にぶつかる壁は物件探しです。家賃や広さ、立地、駐車場の条件など、希望に合う物件はなかなか見つかりません。予算別や業種別など、目的に合った物件を紹介できる仕組み作りが必要です。

創業する土地として人口の少なさを不安視する方もいますが、竹原市には観光資源があり、交流人口による売上も期待できます。上手くプロモーションすれば、人口が減っても訪れる人は増え、マーケットとして成立するはずです。

「竹原に行ってこれを買いたい」「竹原であれを食べたい」というような、観光の目玉となるものを作り、街の魅力を底上げしていきたいですね。

時代の変化は速くなりましたが、しっかりと追いつき、事業者が長くビジネスを続けられるよう、支援ができればと思います。

―最後に、マネ会読者へメッセージをお願いします。

田中さん:移住先や他地域での創業を考えるとき、最初から場所を決めてしまうのではなく、まずはいろいろな場所を訪れて、自分に合う街かどうか五感で判断してみてください。

実際に行ってみて現地の人と話すことが一番の判断材料です。商工会議所や行政、あるいは街をよく知る人と交流すれば、自分に合う土地かどうかがわかると思います。

全国各地で家賃や改装費の助成といった移住者支援もあるので、上手く活用すれば費用を抑えて移住や創業することも可能です。ぜひ支援制度の情報を積極的に探して、ご自身に合う地域を見つけていただけたらと思います。

―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

竹原商工会議所 事務局長

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