確定申告と年末調整はどう違う?どちらも対象になるケースも紹介
年末調整は、サラリーマンや公務員の方が対象となるものです。基本的には自分で確定申告をしなくてもよいので、自営業の方より、税金における雑務は少ないといえます。
しかし、年末調整対象者であっても、確定申告が必要となるケースもあります。それは、年末調整の対象外となる控除を受けたり、副業などでほかにも一定の収入があったりする場合です。
ここでは、年末調整と確定申告の違いや、年末調整をしたうえでの確定申告方法などを、詳しく紹介します。
確定申告と年末調整は対象者が違う
確定申告と年末調整、この2つは「対象者」が違います。
まず、確定申告は、飲食店経営者やフリーライターといった「個人事業主」が納付すべき所得税額を確定するものです。
その一方、年末調整は、主に「サラリーマン」や「公務員」などが、会社を通して所得税の過不足を調整してもらえる制度です。
年末調整は確定申告とは違い、個人的に税務署へ所得税の申請をする必要がありません。会社を通じて税金を支払うことができるため、手間が掛からないメリットがあります。
確定申告の対象者
確定申告の対象者は、基本的に個人事業主です。具体的には、会社を経営している会社役員や、パン屋やラーメン屋といった個人経営者、フリーランスで働く人などが当てはまります。
個人事業主の場合、サラリーマンのように組織に所属してお給料をもらっているわけではありません。そのため、自分が得た収入所得における税金申告も、自分でおこなう必要があります。個人で事業を営んでいる人は、確定申告の対象者となります。
年末調整の対象者
年末調整を受ける対象者は、会社や組織に属しているサラリーマンや公務員です。
サラリーマンや公務員の場合、組織から給与をもらうことになります。雇用主は、働く社員の代わりに所得税の納税額を算出します。これにより、月々の給与から源泉徴収という形で、所得税に相当する金額を天引きしています。
そして、年末最後の給料を支払う際に、年収の金額が明らかになります。このように、サラリーマンや公務員の場合、雇用主が所得税の納税額調整もおこなってくれるので、基本的には確定申告をする必要がないのです。
年末調整しても確定申告が必要なケースとは
しかし、サラリーマンや公務員であっても、年末調整だけではなく確定申告が必要なケースもあります。
- 年末調整の対象とならない控除を受ける場合
- 年末調整で控除できるものをしなかった場合
- 年末調整していても確定申告の義務がある場合
- 年度の途中で退職した場合
ここからは、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
年末調整の対象とならない控除を受ける場合
年末調整の対象となる控除は、基礎控除や扶養控除などさまざまあります。しかし、次の5つに関しては年末調整の対象にはならず、自分で確定申告をおこなう必要があります。
- 医療費控除
- 住宅ローン控除
- 寄付金控除
- 特定支出控除
- 雑損控除
以下は、各控除を分かりやすく表現したものです。
所得控除の名称 | 概要 |
---|---|
医療費控除 | 自身や配偶者などの年間の医療費が10万円を超えるなど一定額以上の場合に適用される控除 |
住宅ローン控除 |
住宅ローン残高金額をもとに、翌年以降の所得税から差し引かれる控除。 初年度の控除に限っては年末調整の対象とならない |
寄付金控除 |
いわゆる「ふるさと納税」のこと。 また、国や地方公共団体などに対し寄付金を支払った場合も年末調整の対象外となる |
特定支出控除 |
通勤費や転居費、単身赴任している社員の帰省費用などを、給与支払者が証明した場合の支出を指す。 これらの支出がその年の給与所得控除額の2分の1を超えた場合、所得控除の対象となる。 |
雑損控除 | 災害や盗難、横領などによって資産に損害を受けた場合、一定金額まで所得控除が受けられる。 |
これらの控除は年末調整には含まれず、還付を受けるためには、自分で確定申告をおこなう必要があります。
年末調整で控除できるものをしなかった場合
年末調整を受けるためには、会社へ必要書類を提出することが鉄則です。しかし、期日までに必要書類を出さず、年末調整を受けられなかった場合、自分で確定申告をする必要があります。
ちなみに、年末調整で控除できるものは、次のようなものです。
- 生命保険・地震保険・小規模企業共済掛金控除
- 自分で払っている社会保険料控除(国民年金・国民健康保険)
- 2年目以降の住宅ローン控除
- 扶養扶養家族の控除配偶者控除・配偶者特別控除など
たとえば、結婚をしたのに、うっかりその事実を会社へ伝え忘れていた場合、配偶者控除や配偶者特別控除などを受けられなくなります。
そのようなときに、自分で確定申告をすれば、年末調整を受けられなくてもそれらの控除を受けられるようになります。
年末調整していても確定申告の義務がある場合
サラリーマンや公務員でも、以下に当てはまる場合は確定申告が必要です。
- 給与所得が2000万円を超えている
- ほかに20万円を超える収入がある
- 2か所以上の会社で給与を受けており一定の収入がある
サラリーマンや公務員でも、給与所得が2000万円を超えている場合は確定申告をおこなわなくてはなりません。
また、副業などをして、本業のほかにも20万円を超える収入がある場合も確定申告が必要です。
たとえば、フリマアプリなどを使って自身のものを売り、年間20万円を超える別途所得がある人もいるでしょう。そのようなケースでも確定申告は必要となります。
そして、2か所以上の会社で給与を受けており一定の収入がある場合も、確定申告は必要です。具体的には、ダブルワークをしており、メインではない仕事の収入が20万円を超えている場合は、確定申告の義務があります。
年度の途中で退職した場合
年末調整の対象者は、その年の1月1日から12月31日までに在籍していることが条件です。つまり、その年の12月31日に在籍していない従業員の場合、年末調整は対象外となります。
そのため、転職をした際の年末調整は、12月31日の時点でどの会社に在籍しているかがポイントです。
たとえばA社からB社へ、年の途中で転職したとします。すると、12月31日に在籍しているのはB社であるため、年末調整はA社ではなく、B社で対応してもらうことになります。
年末調整した人が確定申告する方法
年末調整した人が確定申告をする手順は以下のとおりです。
- 必要書類を集める
- 記入用紙の入手
- 申告書に記入する
- 最寄りの税務署へ提出する
まずは還付申告のための必要書類を用意し、そこに記載したあと、近くの税務署へ提出することになります。
還付申告の提出方法
確定申告をして還付金を受け取るには、直接税務署へ書類を持参する以外にも、郵送やネットで申告する方法があります。
- 税務署へ直接持参する
- 郵送する
- ネットで申告する(e-tax)
ここからは、これらの具体的な方法について見ていきましょう。
税務署へ持参する
年末調整をしたうえでの確定申告は、必要書類を持って直接税務署へ行くのがもっとも分かりやすいです。
一般的に、確定申告に慣れていないサラリーマンや公務員の方は、還付に必要な書類の記載方法も、難しいことが予想されます。
税務署では、確定申告における還付の相談は無料でおこなっています。その場で書き方を教えてもらいながら、書類に記載をすることも可能です。
ただ、確定申告の締め切りである3月は、非常に税務署が混み合います。年末調整が終わった時点で、早めに税務署へ相談に行くことをおすすめします。
郵送する
確定申告書の提出は、パソコンから必要項目を入力し、プリントアウトして税務署へ郵送する方法もあります。郵送方法の流れは次のとおりです。
- パソコンで国税庁HPを検索
- 「確定申告書等作成コーナー」を選ぶ
- 「書面提出」を選んで申告書を作成する
- プリントアウトし封筒に入れて郵送する
郵送する際は、書留などは必要なく、切手を貼った封筒に入れて送る「普通郵便」で大丈夫です。
ただ、確定申告書は信書として受理されるため、ゆうパックやゆうメール、宅急便で送ることはNGです。
e-Tax(イータックス)
確定申告はe-taxでもおこなうことができます。ただ、一回限りの還付申告であれば、e-taxはあまりオススメはしません。
そもそもe-taxとは、インターネットを通じて申請ができる簡素化された確定申告です。ただ、e-taxを利用するには、利用開始の届出を税務署へ申請したり、住基カードや専用機材が必要だったりします。
そのため、今年だけ確定申告をしたい人にとっては準備が大変であり、さほどメリットはありません。直接税務署へ行くか、郵送を選んだ方が、手続きはスムーズに終えられるでしょう。
確定申告と年末調整はどう違う?のまとめ
年末調整はサラリーマンや公務員の方が対象ですが、状況によっては確定申告を自分でしなければならないこともわかりました。
- 確定申告は自営業などの個人事業主が対象
- 年末調整はサラリーマンや公務員が対象
- 年末調整の対象外控除があるなら確定申告を
- 年末調整をしても確定申告が必要なケースもある
確定申告は一見手間がかかるようにも見えますが、申請することでしっかりと還付金が戻ってくることも多いです。
また、年末調整をしていても確定申告が必要なケースもあります。申請する控除や、自分自身の収入状況を確認し、状況に応じた確定申告をしっかりとおこないましょう。
クレジットカードや車両保険の記事をこれまで200記事以上執筆。勉強のため10枚以上のクレジットカードを保有した時期もあったが、ポイントが分散されるため損をすることが分かる。どのカードがマイルが貯まりやすいのか、どのカードがポイントが貯まりやすいのかなど研究中。また、ネット通販やお買い得商品の紹介など、生活全般における記事も多数執筆しているため、クレジットカードのポイントを使った生活術なども実践中。