迫力満点、馬の一発逆転ライブショー!開催執務委員長が語る「ばんえい競馬」の魅力
競馬といえばスピーディなレースというイメージを抱いている方が多いと思いますが、北海道帯広市では一風変わった競馬「ばんえい競馬」が開催されているのはご存じでしたか? サラブレッドよりも一回り、二回りも大きな「ばん馬」たちがソリをひいて持久力を競うばんえい競馬は、私たちが普段目にする競馬とは違ったパワフルなレースが展開されます。
今回は、ばんえい競馬の開催執務委員長である佐藤徹也さんに「馬の一発逆転ライブショー」とも称されるばんえい競馬について伺いつつ、ばんえい競馬が伝えたい「ばん馬の魅力」や、運営を支援するふるさと納税などについてもお話を伺いました。
1トンを超える馬たちが眼前を闊歩する大迫力レース
―本日はお時間をいただきありがとうございます。早速ではありますが、ばんえい競馬とはどのような競技なのか、簡単にご説明をお願いいたします。
佐藤 徹也さん(以下、佐藤):よろしくお願いいたします。ばんえい競馬は、農用馬とも呼ばれる大きな馬「ばん馬」が、騎手を乗せた鉄ソリをひいて直線を走るレースです。平地競走で活躍するサラブレッドの2倍、体重1トンを超える馬たちが観客の目の前で躍動するばんえい競馬は、世界でもここ北海道帯広市でしか開催されていません。
競馬場でレースをご覧になるお客様のなかには、馬たちと並走しながら観戦される方もいらっしゃいます。大きな馬たちが迫力あるレースを展開する、ばんえい競馬ならではの楽しみ方ですね。
―ばんえい競馬はナイター開催が中心ですが、ナイター開催をおこなうきっかけは何だったのでしょうか。
佐藤:この季節(取材当時は11月下旬)、北海道の夜はとても厳しい冷え込みです。こんな時期にナイターを開催するというのは、本来であれば考えられないことなんですね。そうした環境下でのナイター開催を選んだのは、まさに苦渋の選択でした。
帯広市単独開催となった平成19年からの4年間、ばんえい競馬の業績は右肩下がりで、毎年「来年は開催できるのだろうか」という話が出るほどに業績が振るわなかった。そうした苦しい状況の打開策として挙がったのが、ナイター開催とインターネット中継だったんです。
結果、全国の皆さんにレースをご覧いただく機会が増え、近年ではインターネットでの売り上げが主な収益となっています。特に今年は巣篭もり需要が高まったこともあり、より多くの方々にばんえい競馬の存在を知っていただけた一年となりました。
佐藤さんが尽力する「馬の魅力」を伝えるための取り組み
―続いては、レースがおこなわれている帯広競馬場が持つ魅力についてお聞きしたいと思います。
佐藤:実は、帯広競馬場は日本で唯一の「市が運営する競馬場」です。そのため、「帯広にはばんえい競馬があるよね」と帯広市民の皆様に言ってもらえるような、地元に愛される競馬場を目指して運営に励んできました。
今年はコロナの影響で開催できていないのですが、例年は競馬場のなかで花火大会やグルメイベントをおこなっています。また、引退したばん馬やポニーとの交流を楽しめる「ふれあい動物園」という施設を場内の一角に設けています。
1年を通したイベントの開催や、競馬に馴染みのない方でも楽しめる要素の充実に努めた結果、帯広市民の皆さまだけでなく、観光客の皆さまにもご来場いただける競馬場になりました。
現在はコロナの影響をふまえ開催を見合わせていますが、平常時はいかにレース以外の魅力を発信できるか、という点を大切に普段立ち入ることのできない競馬場のなかをご案内する「バックヤードツアー」をはじめとしたツアーイベントなども開催しています。
―ツアーやイベントを通して、競馬ファン以外の方も楽しめる場所として親しまれているんですね。
佐藤:そうですね。とてもありがたいことです。こうした「馬の魅力」を伝えるための取り組みが実ってきているのか、最近は女性の来場者も増加してきています。ばん馬たちはサラブレッドと比べるとおっとりとした性格で、とても優しい目をしているんですよ。そのあたりの魅力が伝わっているのであれば嬉しいです。
―女性ファンの方に向けた取り組みなどはされているのでしょうか?
佐藤:大きな取り組みというものはないのですが、四半期に1度発行している小冊子「ポムレ」は女性スタッフが中心となって編集をおこなっています。こちらは女性をターゲットにした取り組みのひとつと言えるかもしれません。
場内で無料配布している冊子のため、書店などでは販売していないものなのですが、女性の方から「最新号を送ってほしい」というお問い合わせをいただくことが多いんです。全国から「見たい」という声をいただけているのは、編集スタッフともども非常に励みになっています!
コロナ禍でのばんえい競馬
―2020年は新型コロナウイルスの流行により、スポーツ界全体で無観客試合が主流となりました。そんななか、ばんえい競馬は競馬界で最も早く有観客レースを再開されましたね。
佐藤:「ばんえい競馬は生でご覧いただいてこそ」という思いがありましたので、1日も早くお客様をお迎えして開催したかったんです。全国の規制や緩和状況なども参考にしながら、ゴールデンウイークあたりから取り組みを続けていました。
7月のはじめに地方競馬界全体でのガイドラインが制定された後、7月10日にはイベントに関する規制が緩和されました。ばんえい競馬ではその翌日、7月11日にお客様をお迎えしてのレース再開に踏み切りました。
長いこと準備に苦心してきたものの、心配する要素はありましたし、地元市民の皆さまからの抗議の電話も覚悟していました。しかし、そうしたお問い合わせはほとんどありませんでしたし、現在もこうして開催を続けられていることに一安心しております。
―帯広競馬場では、コロナ対策としてどのような取り組みをされているのでしょうか。
佐藤:お客様が滞留しないための工夫やパーテーションの設置など、人の「動線の確立」を大切に場内整備をおこないました。スタッフの配置についても、密を作らないことを第一にしています。
ご来場いただいたお客様を見ていると、ほぼすべてのお客様がマスクを着けていらっしゃっています。「マスクを着けていない」と私のもとに報告があったのは、この5か月間で数人程度でした。そうしたお客様のご協力もあって、7月の再開から継続してレースを開催できております。
バックヤードツアーや協賛レースの表彰式などは依然再開を見合わせておりますが、イベントを楽しみにされているお客様のためにも、来年のゴールデンウイークを目途に、何か大きなイベントを開催したいと考えています。感染症対策を第一に考えつつ、イベント再開に向けた準備を進めていく予定です。
ばんえい競馬は「協賛レース」だけでなく「ふるさと納税」でも支援できる
―続いては、先ほどのお話にも出てきた「協賛レース」についてお話をお伺いしたいと思います。こちらはどのようなレースなのでしょうか?
佐藤:プレゼンターとして協賛金をご提供いただく代わりに、お名前などを冠したレースを開催できるというものです。誕生日や記念日を祝うためにご利用される方が多いですね。
さらにばんえい競馬では、平常時は「表彰式への参加」「口取り写真の撮影」などの特典をご用意しております。現在は新型コロナウイルスの影響により、表彰式への参加をはじめとした競馬場でのイベントを見合わせておりますが、代わりにレース写真やレース名入りレプリカ馬券を添えた記念パネルを送付させていただいております。
―協賛金はいくらから提供できるのでしょうか?
佐藤:個人のお客様は1口1万円から、企業のお客様は1口3万円からとさせていただいております。もちろん1口だけでも全く問題ございません。今年度も、多数のお客様からご支援をいただいております。この場を借りて、多大なる感謝を申し上げます。
―インターネットからも申込めるよう体制が整っているので、気軽に支援してみようという気になりますね。ちなみに、佐藤さんのなかで思い出に残っている協賛レースはありますか?
佐藤:名勝負、印象に残っているレース名などは沢山ありますが……。そういえば以前1度だけ、表彰式でプロポーズされたお客様がいらっしゃいました(笑)。私どももまさかそんなことをされるとは思ってもみなかったので、とてもビックリしました。それが1番かな。ちなみに無事OKでしたよ!
―それはビックリですね(笑)。続いてですが、近年注目されているふるさと納税とばんえい競馬の関わりについてお伺いしたいと思います。
佐藤:帯広市では、ふるさと納税でご寄附いただいたお金の使い道として「ばんえい競馬の振興」をご指定いただけます。いただいた寄附金は、先ほどお話した小冊子「ポムレ」の発行や、「ふれあい動物園」の運営など、馬の魅力を伝えるための取り組みに活用させていただいております。
ばんえい競馬は北海道内外でのPR活動にも精力的に取り組んでいるのですが、こちらの活動も皆さまからの寄附金によって成り立っています。全国各地の競馬場やイベントへ引退したばん馬たちが出張していますので、見かけた際にはぜひばん馬の魅力に触れていただきたいと思います。
―ふるさと納税での支援をされている方へ向けたメッセージなどはありますでしょうか?
佐藤:実は、ふるさと納税を使ってご寄附いただいている方の多くが、一度レースをご覧になられたお客様なんですね。ばんえい競馬を知った方が、こうした形で継続的に支援をしてくださっていることを非常に嬉しく思っております。
インターネットという新たな可能性とともにばんえい競馬を盛り上げていきたい
―ファンからの継続的な支援が多いということですが、この記事を通してばんえい競馬に興味を持った方へ向けて、今後の注目レースをご紹介いただけますでしょうか。
佐藤:ばんえい競馬は年明けから3月にかけてどんどんレースが盛り上がっていきます。1月は2日に年明けの大一番である帯広記念が、31日には新設の翔雲賞がありますね。翔雲賞は2020年にデビューした2歳牡馬限定のレースとなっています、今後のばんえい競馬を担うスター候補たちの活躍にご期待ください。
3月末には年度を締めくくる頂上決戦、ばんえい記念が開催されます。重さ1トンにもなる巨大なソリをパワフルにひく馬たちは躍動感いっぱいですよ。インターネット中継もおこないますので、ばんえい競馬最高峰のレースをぜひ一度ご覧いただければと思います。
―ありがとうございます。最後に、記事をご覧になっている読者へのメッセージをお願いいたします。
佐藤:ばんえい競馬で活躍するばん馬は、北海道の開拓・文化の発展を支えてきた歴史の継承者でもあります。彼らが走ることができる場所を残すことは、北海道の馬文化を守ることにもつながる……そういった思いを胸に、日々のレース開催に臨んでいます。
今年度は新型コロナウイルスの影響による無観客開催、各種イベントの中止など、開催に際してさまざまなアクシデントに見舞われた一年でした。そうしたなかでも、インターネットを通じてばんえい競馬を応援してくださったファンの皆さまには大変感謝しております。
北海道の冷え込みはどんどん厳しくなっていきますが、帯広競馬場ではばんえい記念をはじめとした熱いレースがまだまだ続きます。インターネットという新たな可能性とともに、ばん馬の魅力を伝えていけるよう尽力してまいりますので、ぜひ今後も帯広市のばんえい競馬をお楽しみいただければと思います。本日はありがとうございました。
―こちらこそ、貴重なお時間をいただきありがとうございました!
帯広市農政部ばんえい振興室 室長
ばんえい競馬開催執務委員長
ゲーム、アニメ、医療、車などの分野で、WEB・書籍問わずさまざまな媒体のライター・編集業務に従事。マネ会ではカードローン記事を担当している。クレジットカードはau walletカードを利用し、節度あるクレカライフを目指している。最近のスマホ決済ブームに乗り遅れまいと、増税をきっかけにau PayとLINE Payを使いはじめた。行きつけのゲームセンターやレンタルビデオショップにも導入された、電子マネー・スマホ決済の可能性に心躍らせるゲームと洋画のオタク。