ブランクを抱える看護師は多い!ブランクを埋める方法やおすすめ復職先を紹介

出産や育児、家庭の事情などで、看護師の仕事にブランクが生じることがあります。
復帰を思い立っても、「今までのように働けるのだろうか」「採血や点滴に手こずって、患者さんに迷惑をかけないだろうか」と不安に感じることがあるかもしれません。
この記事では、看護師としての仕事のブランクを埋める方法や、ブランクがあるときにおすすめの復職先を紹介します。
転職サポートを無料で受ける方法も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
ブランクを抱える看護師は多い
厚生労働省の報告によれば、2012年時点で、看護師資格を保有している方は約225万人でした。
そのうち、64歳以下の方で看護師として就業していない方は、約71万人です。
したがって、看護師資格所有者全体の3割近くが、資格を活用していないことがわかります(※)。
なお、看護師資格を持ちながらも、看護師として就業していない方を潜在看護師と呼びます。
潜在看護師のなかには、出産や育児のために看護師の仕事を離れ、ブランクが生じた方も多くいます。ブランクが長くなればなるほど、復職をためらう気持ちも大きくなるでしょう。
看護師不足がしばしば話題になりますが、新人看護師の確保だけに目を向けるのではなく、潜在看護師に注目し、看護師資格を所有する方が働きやすい環境をつくることも大切といえるでしょう。
(※)平成24年看護職員の現状と推移
看護師がブランクを抱える理由5選
すべての方が、学校を卒業してから定年退職するまで働き続けるわけではありません。
何らかの理由で仕事を離れる人も珍しくなく、すぐに復職する方がいる一方で、復職しないままブランクが長引く方もいます。
ブランクが長引くと復職しづらくなることもあるため、ブランクの理由について理解し、離職する前に対策を講じておくことは大切なことです。
まずは、看護師がブランクを抱える主な理由について見ていきましょう。
- 結婚・出産・育児
- 病気や体調不良
- 介護
- 配偶者の転勤
- キャリアチェンジ
それぞれの理由について、具体的に説明します。
結婚・出産・育児
結婚を機に、看護師として働くことを辞める方は多いです。
結婚後も仕事を続けていた看護師でも、出産・育児を機に仕事を辞めることは珍しくありません。
なぜなら、居住する地域によっては待機児童が多く、子どもを預けたくても預けられないケースがあるからです。
また、子どもが大きくなってから働こうと思っているうちにブランクが長くなり、看護師として働くことに不安を感じる方もいます。
病気や体調不良
病気や体調不良で、看護師の仕事をいったん離れる方もいます。
看護師の仕事には体力が求められるため、「体力が十分に戻ってから復職しよう」と考えがちですが、体力は目に見えて分かる部分ではなく、復職のタイミングも難しいところです。
仕事のブランクは、知らず知らずのうちに長引いてしまうものなので、復職の期日などを決めておくと良いでしょう。
介護
家族の介護のために、看護師の仕事を辞める方もいます。
父母や祖父母だけでなく、義父母の介護が必要になり、仕事との両立が難しくなることもあるでしょう。
24時間の介護が必要なケースでも、要介護度や地域によっては、すぐに介護施設に入所できるとは限りません。
自宅で介護をしている間に数年、十数年経ち、看護師としての復職が難しくなることもあります。
配偶者の転勤
配偶者の転勤により、看護師の仕事を辞めることがあります。
転勤先ですぐに看護師として復職しようとしても、慌ただしく過ごしているうちにブランクが長引き、復職しづらくなることも考えられます。
また、引っ越し先で思うような仕事が見つからないケースもあるでしょう。
社宅が辺ぴな場所にあることや、近くに働きやすそうな医療機関が見つからない、といった状況もあるかもしれません。
キャリアチェンジ
看護師資格を取得し、看護師として働いてみたものの、自分にはあわないと感じることもあります。
単純に別の仕事も経験してみたいという気持ちから、看護師以外の仕事にキャリアチェンジする方もいるでしょう。
いくつか別の仕事を経験した結果、「やはりわたしには看護師があっている」と実感するかもしれません。
ただし、あまりにもブランクが長引くと、いざ現場に立つとなると、「ミスをしてしまいそうで怖い」と感じるようになり、復職をためらう可能性もあります。
看護師の仕事はブランクを抱えても大丈夫?
ブランクがあると復職しづらくなることがあります。
たとえば、看護師の仕事を離れてから、ゆっくりとした生活リズムで暮らしてきた方なら、1日中走り回るような忙しい職場に、いきなり復職するのは難しいでしょう。
とはいえ、職場や仕事内容を選べば、ブランクを抱えていてもスムーズに復職することは可能です。
ここでは、ブランクを抱えている看護師におすすめの働き方を説明します。
ブランクを抱えてもすぐ復職できる場合
緊急時の対応が少なく、仕事量が多すぎない職場であれば、ブランクがあっても復職しやすいと考えられます。
たとえば、デイサービスやクリニック、美容クリニックなどなら、夜勤もなく、仕事量が多すぎることもほとんどありません。
また、保健師の免許を持っている方なら、保健所や産業保健師の働き方もおすすめです。
いずれも緊急時の対応はほとんどなく、日勤のみで生活リズムを保ちやすいでしょう。
ブランクを抱えると復職が難しい場合
最新の医療知識や専門スキルが求められる職場は、ブランクを抱えた後では少し難しいものがあります。
まずは、クリニックなどで働きながら看護師としての感覚を取り戻し、徐々に働きたい職場へと軸足を移していきましょう。
慌てずゆっくりと、ご自分のペースで看護師としてのキャリアを築いていく姿勢が大切です。
看護師のブランクを埋める方法とは
ブランクが長引くと、看護師として復職することに難しさを感じるようになるかもしれません。
特に医療知識や高度なスキルを必要とされる職場には、復職しづらいと感じるでしょう。
復職に不安があるときは、次の方法を試してみてください。ブランクを埋め、看護師として自信を持って働けるようになります。
- 復職支援制度を活用
- セミナー受講
- ボランティアに参加
- 転職エージェントに相談
それぞれの方法について見ていきましょう。
復職支援制度を活用
離職するときに、都道府県のナースセンターに届け出ると、復職支援制度を利用できるようになります。
また、専用サイト「とどけるん(※)」を使って、オンラインで届出することも可能です。
復職支援制度では、職業相談を受けられるだけでなく、病院の最新情報や最新医療知識などについて、学びの機会も得られます。
看護師の仕事をいったん離れるときは、忘れずに登録しておきましょう。
(※)看護師等の届出サイト|とどけるん
セミナー受講
日本看護協会やナースセンター、自治体などでは、看護師の復職をサポートするセミナーを実施していることがあります。
セミナーの内容はさまざまあり、復職への不安を相談できるカウンセリングや、採血や注射などの看護技術研修、一次救命処置など多岐にわたります。
受講生同士の交流や、意見交換などもおこなえる良い機会となりますので、復職を考えている方は、ぜひ参加されてみてはいかがでしょうか。
ボランティアに参加
看護師を必要とする、ボランティア活動に参加するという方法もあります。
在宅看護のサポートや被災地支援など、ボランティア活動を通じて看護や医療に触れることで、看護師としての感覚を取り戻せるでしょう。
ただし、ボランティア活動のなかには、採血や救命措置などの高度な看護スキルが求められる業務もあります。
周囲の方に迷惑をかけないためにも、ボランティア活動を始める前に、看護師としてブランクがあることを率直に伝えておきましょう。
転職エージェントに相談
看護師専門の転職エージェントサービスに登録すると、看護師の働き方や転職に精通したキャリアアドバイザーのサポートを受けられるようになります。
ブランクがある看護師に適した仕事も紹介してもらえるので、無理なく復職を進めていけるでしょう。
また、ブランクがあるときに不安を感じるポイントとして、採用面接が挙げられます。
面接では、「なぜすぐに復職しなかったのですか?」「体力的に看護師復帰は難しいのではないですか?」といった、少々答えにくい質問をされるかもしれません。
ただ、キャリアアドバイザーから、事前に面接対策のサポートを受けることで、面接での不安を大きく解消できるはずです。
ブランク解消のために学び直しておきたい知識
看護の仕事を学び直すことで、ブランクがあっても不安なく復職できるようになります。
とりわけ、次の知識・スキルは、ブランクを抱える方にとって不安を感じる要素となりますので、しっかりと学び直しておきましょう。
- 日常生活援助
- 注射・採血
- フィジカルアセスメント
- 急変時の対応
- 各種検査方法
日常生活援助
日常生活援助とは、患者さんの生活をサポートすることです。
車椅子に乗せること、食事や入浴の介助をすること、ベッドメイキングなどの療養環境を整えることなどが挙げられます。
いずれも看護師のスキルとしては基本的なものばかりですが、長くブランクがあるときには、スムーズに対応できないかもしれません。
教材を見直したり、家族を相手に練習するなどして、復習に努めておくと良いでしょう。
注射・採血
注射・採血は、看護師として毎日業務をおこなう方にとって、特に不安を感じることのないスキルです。
しかし、看護業務を離れていると、「患者さんに痛みを与えずにできるだろうか」と、不安に感じるかもしれません。
そのため、現場に立つ前は、復職支援制度やセミナーなどを活用して、学び直しに努めたいところです。
また、ブランクが長い場合は、注射や採血の手技が変更されている可能性もあるため、注意が必要です。
たとえば、かつては採血の際、患者さんに手を握ったり開いたり(クレンチング)してもらいましたが、現在では、検査値に響く恐れがあるため推奨されていません。
フィジカルアセスメント
フィジカルアセスメントは、患者さんの状態を把握し、急変や疾患の長考を早期発見するためのスキルです。
適切にフィジカルアセスメントができなければ、対応が遅れて命にかかわることもあるため、必ず習得しておく必要があります。
看護師として働いていたときは、問題なくフィジカルアセスメントできていた方でも、ブランクによってかつての感覚を忘れているかもしれません。
復職支援制度やセミナーなどを活用して学び直したり、看護学生時代のテキストを開いて、入念に復習しておくと良いでしょう。
急変時の対応
急変対応も、少しでも間違うと患者さんの命にかかわることがあるため、学び直しが必要です。
的確な判断が求められるだけでなく、スピードも求められるため、ブランクが空いたことで対応できなくなっていることが懸念されます。
また、復職支援制度やセミナーなどを活用して学び直すときは、実習があるかに注目してください。
とりわけ、AEDの使い方や酸素投与の機器の扱い方などは、知識だけで学び直しても、実習を経ていなければスムーズに対応できない可能性があります。
各種検査方法
検査方法も学び直しが必要です。
検査方法や検体の取り扱いを間違えると、正しい結果が得られないだけでなく、検査をやり直すことになり、患者さんに負担をかけることにもなりかねません。
また、検査データの正常値なども頭に入れておくと、よりスムーズに検査業務をおこなえます。
テキストを読み直し、知識を身につけてから再就職に向けての活動を始めましょう。
ブランクを抱える看護師におすすめの復職先
ブランクを抱える看護師の方に向けて、おすすめの復職先を紹介します。
いずれも緊急時の対応が少なく、生命に関わる業務にも携わらないため、過度なプレッシャーを抱えることなく復職に臨めるでしょう。
- 診療所
- 検診センター
- デイサービス
- 慢性期病棟
- 保育園
診療所
診療所であれば、基本的には日勤のみです。
ブランクが長引いている看護師だけでなく、家事や育児と仕事を両立したい看護師にもおすすめの職場といえます。
また、診療所によっては、「午前中のみ」「夕方のみ」といった働き方も可能です。
経験したことのある診療科であれば、ある程度の知識・スキルも習得していると思われますので、さらに復職しやすくなるでしょう。
健診センター
健診センターも日勤のみのため、復職先としておすすめです。
また、緊急対応が必要になるケースがほとんどなく、看護師としての感覚を取り戻していない状態でも対応しやすいでしょう。
ただし、健診センターでは採血スキルが必須です。
ブランクがあることを事前に伝えておくと、配慮してもらえるかもしれませんが、復職支援制度を活用するなどして、早々にスキルを習得しておくと良いでしょう。
デイサービス
デイサービスも日勤のみで、ブランクのある看護師におすすめな復職先です。
緊急対応がほとんどなく、採血や注射もないため、手技に自信がない方でも働きやすいでしょう。
ただし、注意点として、デイサービスでは看護業務をおこなう機会が少ない、といったことが挙げられます。
将来的に病院看護師としての復職を考えている方は、クリニックなどの看護業務が多い職場の方が、向いていることも考えられます。
慢性期病棟
病院看護師としての復職を考えている方なら、慢性期病棟がおすすめです。
夜勤はありますが、緊急対応が少なく、比較的穏やかなペースで業務をおこなえます。
また、患者さんとかかわる時間が長いため、コミュニケーションスキルを養う場としても適しています。
病院によっては日勤のみの働き方も可能なので、無理のないペースで復職しましょう。
保育園
夜勤のない職場で働きたい方は、保育園看護師として復職するのはいかがでしょうか。
小児科の経験があるならば、業務にもスムーズに対応できるはずです。
ただし、上述したデイサービスと同様に、看護業務をおこなえる機会は少ないと考えられます。
主な業務は、衛生管理や保健指導になるため、転職にあたってはその点も踏まえておかねばなりません。
とはいえ、看護師としての手技に不安がある場合や、椅子に座っての業務を臨む方にとっては、適した職場となるでしょう。
ブランクを抱える看護師におすすめの転職エージェント3選
看護師専門の転職エージェントサービスのなかには、ブランクを抱える看護師のサポートを得意とするところもあります。
復職に不安を感じているときや、再就職活動をどのように進めていけばよいのかわからないときは、ぜひ看護師専門の転職エージェントサービスを利用してみましょう。
ここでは、専属のキャリアアドバイザーから手厚いサポートを受けられる、転職エージェントサービスを3つ厳選してご紹介します。
看護roo!
看護roo!に無料登録をすると、転職のプロのサポートを受けられるようになります。
ブランクがある看護師に適した案件や、研修制度が充実した医療機関を紹介してもらえるので、安心して再就職活動に臨めるでしょう。
また、LINEやメールなどで、転職に関する悩みを相談することも可能です。
再就職に対する不安や、家事との両立など、気になる点があれば積極的に相談してみてはいかがでしょうか。
レバウェル看護
ブランクがあるときは、「再就職してうまくやっていけるだろうか」と不安に感じるものです。
ただ、再就職する前に職場の雰囲気を詳しく知ることができたなら、少しは不安も解消されるはずです。
レバウェル看護では、転職した方を対象に、実際に働いてみてどうだったのかアンケートを取っているので、施設ごとのリアルな声・意見を聴くことができます。
また、希望する施設を伝えることで、アドバイザーが内情を調査して教えてくれるため、転職のミスマッチも防ぎやすくなるでしょう。
マイナビ看護師
マイナビ看護師では、オンラインや対面でキャリアアドバイザーに直接相談することができます。
メールなどでは伝えにくいことも、顔を見て相談できるので、復職に対する不安を解消しやすくなるでしょう。
また、マイナビ看護師では入職後のサポートも提供しています。復職したものの、思うような働き方ができないときは、率直にキャリアアドバイザーに相談してみてください。
自分では解決できなかった悩みでも、プロの意見から解決の糸口が見つかるかもしれません。
まとめ
ブランクがあるときでも、セミナーや復職支援制度などを活用することで、復職のハードルを大きく下げることができます。
また、看護師専門の転職エージェントサービスに登録すれば、キャリアアドバイザーから、丁寧かつ専門的な復職サポートを得られるでしょう。
紹介した転職エージェントサービスはいずれも無料で利用できますので、ぜひ有効活用して、ブランクの不安を解消してみてください。
投資信託・株式の運用歴20年以上。相続問題が発生したことを機に、ファイナンシャルプランナー2級とAFPの資格を取得。 大学や省庁で研究活動をおこないながら、2014年度からはマネーやファイナンス、医学関係の執筆活動を開始。 ライフマネープランニングやIPO投資、金融詐欺の見分け方、ローン・クレジットカードの使い方などを得意テーマとしている。 現在メインで利用しているカードはアメリカンエクスプレスのプラチナ。招待制から申込制に変わって、ちょっと残念に思う毎日。
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