転職成功の鍵はタイミング?有効求人倍率から考える最適な転職時期とは
転職を成功させるために重要な要素は、数多くあります。
適切な転職先を選ぶこと、自身のスキルを磨いておくこと、面接対策をおこなうことなど、挙げればキリがないでしょう。
そういった要素のひとつとして重視しておきたいことに、「転職をするタイミング」があります。
というのも、転職活動をおこなうタイミングによって、有効求人倍率が大きく変わる可能性があるからです。
この記事では、転職の成否に大きく関わる有効求人倍率や、転職活動をおこなうにあたって知っておくべきポイントなどについて、説明します。
転職を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
有効求人倍率とは
有効求人倍率とは、求人を出している企業や、求職活動中の人の動向に関わる指標で、「求職者1人につき何件の求人があるか」を示しています。
厚生労働省が全国の公共職業安定所(ハローワーク)のデータを集計して公表しており、毎月最新のデータが更新されていきます。
現在公表されている最新の有効求人倍率(2023年2月分)は1.34倍で、これは「求職者1人につき1.34件の求人がある」ことを示しています。
計算方法
有効求人倍率は、それぞれ以下の値を分子・分母にした分数の計算結果で表されます。
分子:企業からの求人数(有効求人数)
分母:ハローワークに登録している求職者数(有効求職者数)
有効求人数は、ハローワークでの求人申し込みから有効期間内(2ヶ月)の求人を指し、有効求職者数は、ハローワークでの求職申し込みから有効期間内(2ヶ月)の求職者を指します。
ただし、ハローワークでの求人・求職申し込みから2ヶ月経っていないものの、前月中に就職者が決まった求人および就職先が決まった求職者は、上述した有効求人数・有効求職者数からは省かれています。
有効求人倍率の読み解き方
転職活動をする人にとって、「今は転職を成功させやすい時期なのか(=売り手市場なのか)」は、非常に重要なポイントです。
有効求人倍率が1を上回っている場合は、「求人数>求職者数」となっているので、総じて売り手市場であり転職を成功させやすいタイミングといえるでしょう。
反対に有効求人倍率が1を下回っている場合は、「求人数<求職者数」となっているので、総じて買い手市場であり転職を成功させにくいタイミングといえます。
ただし、有効求人倍率はあくまでもすべての求人と、すべての求職者数を対象として算出されたものです。
そのため、ご自身が転職を希望している業界や市場の動向とは、直接リンクしない可能性があることを念頭においておかねばなりません。
有効求人倍率を参考にする際の注意点
有効求人倍率を参考にする際は、「ハローワーク経由での求人・求職者をもとに算出された数字である」ことに注意しておく必要があります。
つまり、転職エージェントを利用したり、知り合いのツテで就職先を見つけたりといったような形で、ハローワークを経由せずにおこなわれる就職・採用は、有効求人倍率に反映されないのです。
また、いわゆる「新卒」の求人件数は、有効求人倍率に影響しません。
新卒の採用が計算に入っていないのは、一度に非常に多くの人数が就職活動するだけに、就職市場に大きなインパクトを与えるからです。
そのため、「有効求人倍率が本当に就職難易度を正確に示すものなのか」という疑問は、頭の片隅に置いておく必要があります。
職業別・地域別の有効求人倍率
有効求人倍率によって、就職難易度や市場の動向を大まかに把握することは可能です。
ただ、有効求人倍率自体は、各個人が就職活動をおこなっている市場・分野や地域における就職難易度を、ダイレクトに読み解けるものではありません。
ご自身が就職活動をおこなっている市場・分野や地域における就職難易度を把握したい場合は、「職業別」や「地域別」の有効求人倍率を参考にするとよいでしょう。
有効求人倍率の高い職業および低い職業(※1)、都道府県別の有効求人倍率(※2)について、以下で詳しく説明します。
(※1)厚生労働省「職種別有効求人・求職状況(一般常用)」
(※2)独立行政法人労働政策研究・研修機構「都道府県別有効求人倍率」
有効求人倍率の高い職業ベスト5
有効求人倍率の高い職業(2022年3月分)ベスト5およびその有効求人倍率は、以下のようになっています。
- 保安(9.49倍)
- 建設躯体工事(9.07倍)
- 土木(7.63倍)
- 建築・土木技術者(7.57倍)
- 機械整備・修理(5.27倍)
建設・建築・土木など、総じて体力勝負の仕事において、求人数が求職者数を大きく上回っていることがわかります。
求職者から敬遠されやすい分野の仕事ではあるものの、就職先が決まらずに悩んでいる方は、こういった分野の求人に目を通してみることも検討してみましょう。
有効求人倍率の低い職業ベスト5
有効求人倍率の低い職業(2022年3月分)ベスト5およびその有効求人倍率は、以下のようになっています。
- 美術家、デザイナー等(0.17倍)
- 事務用機器操作(0.27倍)
- その他の運搬等(0.28倍)
- 一般事務(0.35倍)
- その他の専門的職業(0.38倍)
美術家やデザイナー、事務用機器操作といった特別な適性や技能が必要な職業が上位にランクインしているなかで、一般事務のような職業も上位にランクインしています。
これは、有効求人数自体が少ないためランクインしているものもあれば、一般事務のように、有効求職者数が非常に多いためランクインしているものもあるためと考えられます。
事務職への就職を目指している方は、有効求人倍率の低さを踏まえたうえで、なるべく幅広く求人に目を通すことなどを心がけるとよいでしょう。
都道府県別の有効求人倍率
都道府県の有効求人倍率(2023年2月分)で、倍率の高い上位5つと倍率の低い下位5つは、それぞれ以下のようになっています。
- 福井県(1.81倍)
- 東京都(1.76倍)
- 島根県(1.71倍)
- 岐阜県(1.64倍)
- 石川県(1.63倍)
- 神奈川県(0.91倍)
- 沖縄県(1.00倍)
- 兵庫県(1.02倍)
- 埼玉県(1.06倍)
- 千葉県(1.06倍)
有効求人倍率の上位にランクインしている都道府県は、東京都こそ異質なものの、総じて過疎化や人口流出が懸念されている地域です。
地域のインフラや行政サービスを維持するためには一定の働き手が必要ですが、本来それらを担うべき労働人口が都市部に流出してしまっているため、有効求人倍率が高めになっていると考えられます。
東京都は人口も多いですが、企業の数も多く求人数も多いことが、有効求人倍率が上振れしている要因といえるでしょう。
有効求人倍率の下位にランクインしている都道府県は、総じて有名な都市を抱えている地域や、大都市のベッドタウンが数多くある地域となっています。
こういった地域は自然と人が集まりやすいので、有効求人倍率も低めになっていると考えられます。
有効求人倍率から考える最適な転職時期とは?
有効求人倍率を踏まえて転職活動を進めるのであれば、有効求人倍率が高くなる時期は転職活動向きの時期で、逆に有効求人倍率が低くなる時期は転職活動向きではない時期といえます。
1年のなかで、どのようなタイミングで有効求人倍率が高く、また低くなるかについて、以下で詳しく説明します。
倍率の高くなる1~3月と10~12月は狙い目
1年間における有効求人倍率の推移(※)を見てみると、1~3月や10~12月は総じて有効求人倍率が高めになっていることがわかります。
企業は退職者が出れば、その補填をおこなうために求人を出しますが、退職者が増えるのはキリのいいタイミングであることが多いです。
退職者目線でのキリのいいタイミングとしては、冬のボーナスが出る12月や、企業としての上期の終わりにあたる9月などが考えられるでしょう。
そのため、そういったタイミングの直後である1~3月や、10~12月には求人の数が多くなり、有効求人倍率も高めになるのです。
競争率が高くなる4、5月は要注意
逆に、1年のなかで有効求人倍率が低めになり競争率が高くなるタイミングは、4~5月です。
日本では4月から年度が始まる企業が多く、新年度に向けて人員を補充するため、1~3月は求人が多くなりやすいです。
しかし、4月を迎えると多くの企業で採用活動が落ち着くため、4~5月は求人の数も減少する傾向にあります。
ただ、企業の年度が4月から始まるということは、その直前の3月は上述したように「退職するのにキリのいいタイミング」になります。
「退職者数が増える=求職数が増える」ということになるので、4~5月は求人数の減少、および求職者数の増加という2つの要因によって、有効求人倍率が低めに算出されるというわけです。
この時期に転職を予定される方は、その点を十分念頭に置いておく必要がありますし、場合によっては転職のタイミングを再検討すべきでしょう。
転職活動は「退職後」「在職中」どちらがおすすめ?
転職活動を「退職後」にするか、「在職中」にするかで悩む方も多いと思います。
退職後の転職活動および在職中の転職活動は、双方ともメリット・デメリットがあるので、それらを把握したうえで転職活動のタイミングを決めるとよいでしょう。
転職活動を退職後にするメリット・デメリット、および在職中にするメリット・デメリットについて、以下で詳しく説明します。
退職後のメリット・デメリット
退職後に転職活動をするメリットとしては、「転職活動に集中できる」ということがまず挙げられるでしょう。
仕事と並行して転職活動をする場合、仕事と転職活動の2つに軸足を置きながら生活することになるので、双方ともに満足のいくパフォーマンスを挙げられなくなってしまう可能性があります。
集中するものを転職活動のみに絞ることで、転職活動を早期に終わらせやすくなることが期待できるでしょう。
また、「面接などの日程調整が容易」ということも、メリットとして考えられます。
在職中の場合は、仕事に差し支えのないタイミングを選んで面接などの選考を受けなければなりませんが、退職後であれば日程調整もやりやすくなります。
一方、退職後に転職活動をするデメリットとしては、「金銭面で不安になる可能性がある」ということが挙げられるでしょう。
ある程度貯金があれば当面の生活に心配はありませんが、転職活動が長引いてしまうと貯金を切り崩しながらの生活になるため、不安が募っていってしまいます。
また、「余裕のなさから求人を吟味できない可能性がある」ということもデメリットとして考えられます。
「貯金がどんどん減ってきた」「転職先が決まらない」といった負の感情が募ってくると、視野が狭くなってしまい、あまり条件のよくない求人に慌てて飛びついてしまうかもしれません。
在職中のメリット・デメリット
在職中に転職活動をするメリットとしては、「お金の心配をする必要がない」ということが挙げられます。
今の仕事で給料を得ながら転職活動を進められるため、転職活動が長引くことになってしまっても、生活費の心配をする必要がありません。
そのため、本当に納得できる転職先を見つけるまで、どっしりと腰を据えて転職活動をおこなえるでしょう。
また、「離職期間が発生しない」ということも、ひとつのメリットです。
離職期間があると、面接で「離職期間にはどのようなことをしていましたか?」という質問が飛んでくる場合があります。
離職期間がないことで、この手の質問に対する対策をおこなわずに済むでしょう。
一方、在職中に転職活動をおこなうデメリットとしては、「スケジュールの調整が難しい」ということが挙げられます。
今の職場での仕事を全うする必要がある以上、転職希望先から面接日程などの連絡が来ても、ミーティングや商談などの時間とかぶっていれば、調整してもらわなければなりません。
企業によっては面接日程調整不可のこともあるので、その場合は、その企業への転職の道が断たれることになってしまいます。
また、「職場の人間からの視線が気になる」ということがデメリットになる可能性も考えられます。
転職活動中であることが今の職場に知られると、周囲からの対応が大なり小なり変わる可能性があるでしょう。
そういった環境で仕事を続けるのがしんどいという方は、退職後に転職活動をスタートさせたほうがよいかもしれません。
転職に向けて知っておくべきポイント
転職活動をおこなうのが初めてで右も左もわからないままだと、納得のいく転職活動にならず、周囲に迷惑をかけてしまう可能性もあります。
転職活動を進めるにあたって注意しておくべきポイントとしては、主に以下のようなことが挙げられます。
- 退職を伝える時期に要注意
- 応募企業の管理をしっかりする
- 自分の希望以外にも目を向ける
- 「転職を辞める」選択肢もいつも胸に持っておく
それぞれについて、詳しく説明します。
退職を伝える時期に要注意
退職をする場合、当然ですが今の職場にそのことを伝えなければなりません。
「立つ鳥跡を濁さず」という言葉もあるように、退職をするためには引き継ぎなどをきちんと済ませ、元の職場の業務に滞りがないようにした状態で退職するのがマナーです。
転職先が決まって実際に退職をすることになったら、引き継ぎ時間などを確保するために、なるべく早く直属の上司に退職の意向を伝えましょう。
伝えるタイミングとしては、「退職日の1~3ヶ月前」が一般的とされています。
ただ、その職場におけるご自身の役割や役職によっては、さまざまな調整が大変なこともあるので、もう少し早く伝えることを意識してもよいかもしれません。
応募企業の管理をしっかりする
転職活動では、複数の企業の求人に応募することが多いです。
そのため、いくつかの企業での転職スケジュールが同時進行することになるので、それぞれの企業におけるスケジュール管理をきちんとおこなわなければなりません。
「明日はA社の面接だと思っていたのにB社だった」「C社に提出する必要のある書類の提出期限が昨日だった」といったことが、起こらないようにしましょう。
自分の希望以外にも目を向ける
転職活動をするにあたっては、できればこういった企業・業界に転職したい、という希望があるのが一般的です。
ただ、転職活動を進めても必ず希望どおりの転職ができるとは限りません。
転職において強い意志や希望があるのであれば、当初の気持ちを貫くのもよいですが、場合によっては転職先として検討する企業や業界の幅を、少し広げてみてもよいかもしれません。
これまで目を通していなかった求人に目を通すことで、思わぬ出会いがあることもあるでしょう。
「転職を辞める」選択肢もいつも胸に持っておく
転職活動を進めていると、「必ず転職しなければならない」という考えに陥ってしまいがちです。
もちろん、今の職場よりも待遇が優れていて、ご自身がよりやりたい仕事ができるところに巡り合えたのであれば、迷わず転職すべきでしょう。
ただ、転職はご自身のキャリアにおける選択肢のひとつに過ぎず、転職活動を進めるなかで、「やっぱり今の職場が一番かもしれない」と思うようになるかもしれません。
転職活動に長い時間をかけていると、「今さら転職しないなんてできるわけない」と思ってしまうかもしれませんが、決してそんなことはありません。
「転職を辞めて今の職場に留まる」という選択肢は、常に胸に持っておくようにしましょう。
転職活動におすすめなエージェント紹介
転職活動を進めるなかで心強い味方になってくれるのが、転職エージェントです。
転職エージェントを利用することで、履歴書や職務経歴書といった書類の添削や、選考スケジュールの調整などをおこなってもらえます。
ただ、転職エージェントは数が多いですし、それぞれのエージェントで強みや特徴も異なるので、どのエージェントに登録すればよいかと悩んでしまうことも考えられます。
「転職エージェントに登録したいけどどこがおすすめかわからない」という方は、まずは以下に挙げる転職エージェントを検討してみるとよいでしょう。
- リクルートエージェント
- マイナビエージェント
- doda
それぞれのエージェントの強みや特徴について、説明します。
リクルートエージェント
リクルートエージェントには、一般の求人サイトには掲載されていない非公開求人だけで20万件以上(2022年8月時点)もの件数があるので、より多くの求人倍率を比較・検討できます。
転職にあたって軸となる条件やタイミング、転職先のイメージが湧いていないという方でも、キャリアアドバイザーと相談しながら転職の方向性を決めることができます。
履歴書や職務経歴書といった書類の添削や、面接対策などの就職サポートが充実しているのも、大きな魅力です。
マイナビエージェント
マイナビエージェントでは、キャリアアドバイザーが業界ごとの専任制になっているのが特徴です。
一般的には見つけにくいとされる、求人倍率が低くて好待遇な案件についても、業界に精通しているキャリアアドバイザーであれば熟知しているでしょう。
また、キャリアアドバイザーとは別に、企業の人事担当者とやり取りしているアドバイザーも在籍しており、各職場のリアルな情報を把握できるのも魅力です。
doda
dodaには、キャリアタイプ診断やレジュメビルダーなど、転職活動に役立つツールが数多くあります。
都道府県別の求人を検索できるだけでなく、「在宅勤務」「服装自由」「転勤なし」といった細かな条件で絞ることもできますので、希望に合った求人も見つけやすくなるでしょう。
さまざまなサポートを受けながら転職活動を進めたい方にも、希望条件を満たした求人のなかから、効率的に転職先を探したい方にもおすすめです。
まとめ
有効求人倍率は、企業からの求人数(有効求人数)をハローワークに登録している求職者数(有効求職者数)で割った値であり、転職市場の動向を把握するうえで重要な指標の1つです。
1年を通じて値が若干上下するので、値が増えやすい(=売り手市場である)1~3月や10~12月に転職活動をするのがおすすめです。
転職活動をするタイミングを「退職後」と「在職中」で迷う方も多いと思いますが、どちらにもメリット・デメリットがあります。
双方のメリット・デメリットを把握したうえで、判断するようにしましょう。
転職活動を成功させられるか不安だ、誰かにサポートしてもらいながら転職活動を進めたいとお考えの場合は、転職エージェントを利用するのがおすすめです。
履歴書や職務経歴書といった書類を添削してもらえたり、面接練習をおこなってもらえたりと、転職活動に対するさまざまなサポートを受けられるので、ぜひ転職エージェントへの登録を検討してみましょう。
不動産広告の営業マンを経て、現在はフリーランスのライターとして活動中。 クレジットカードやカードローンに関する知識を、公平な視点で分かりやすく伝えることを目指しています。 私生活でもいろいろなクレジットカードを使い分けながら、自分にとって最適な使い方を模索中。毎月貯まっていくポイントを見ながらその使い方を考えるのが、ひそかな楽しみ。 自分の実体験や気付きをもとにした、オリジナリティのある記事をお届けしたいと思っています。