「黒はダメだよ、森では目立つからね」――サバゲー沼に堕ちた男のロマンとお金の話
こんにちは、とみね(id:htomine)です。初めてサバゲーで遊んでから5年、今ではこんな格好で遊んでいます。個人的にはザ・ロマンといえる趣味だと思っているサバゲーことサバイバルゲームについて、お金の観点を交えて水先案内をしてみたいと思います。興味を持った方はぜひ、一緒に沼に飛び込みましょう。
意外と身近にあった、非日常体験
筆者がサバイバルゲームと出会ったのは、以前勤めていた会社の部活動でした。元々FPSゲームの趣味もあり、サバゲーに昔から興味はあったのですが、身近に遊んでいる人もおらず、かといってどこで遊べばいいのかも知らず、「ハードルの高い趣味」という印象でした。この印象を抱いている方も多いんじゃないでしょうか。
しかし一度参加してみると、意外と「遊びやすく整備されている」ということが分かりました。
サバイバルゲームは「フィールド」と呼ばれる専用のエリア(ゴルフでいうゴルフ場的存在)で遊ぶのが一般的です。関東には千葉方面に屋外フィールドが多くあり、最寄り駅からの送迎を行っているところも多く、駅から徒歩で行ける場所も存在します。
・用語解説【1】フィールド……サバゲーを行う敷地のことを指す。フィールドには、大きく分けて森や平地などの自然の地形をベースにした「アウトドアフィールド」と、廃工場や廃ビルに作られた「インドアフィールド」の2つがある
また、迷彩服やゴーグル、銃などの基本的な装備一式は現地でレンタルでき、初心者向けの銃の使い方講習やルール説明など、不慣れな参加者を受け入れる仕組みが驚くほど整っています。しっかり遊ぼうと思うと朝が早い((10時のゲーム開始に合わせると9時頃には到着している必要があり、朝7時半~8時頃には都内を出る必要アリ))のがネックといえばネックですが、越えないといけない壁はその点ぐらいだということが分かりました。
金銭的にもフィールド代が3,000~4,000円、レンタル一式に3,000円ほどと、1万円以内でお釣りが来ます。
そして一度フィールドに降り立てば、そこは迷彩服に身を包んだ人たちや普段目にすることのないたくさんの銃器に囲まれた、濃密な非日常の気配を感じる空間です。さらにはそのまま撃ち合うわけですから、これはどうしたってドキドキしてしまいます。
筆者の初体験は、降り立った瞬間から1日遊び終わるまで常に「これはヤバい……絶対ハマる……!」という予感しかありませんでした。
そして予感通り、「サバゲーって意外と遊べるじゃん!」と気付いてしまえば、あとは財布の紐を緩めるだけでした。
沼へのハマり方
まずはカッコよく、自分の好みを形にしていく
初めてサバゲーに参加すると確実に思うのは「自分の装備が欲しい!」という気持ちです。レンタルで遊べるとはいえ、やはりレンタル用の備品は動作が悪いものもあったり、服もサイズがイマイチ合わなかったりと、どこか頭の中に描く「サバゲーでカッコイイ自分像」と大きくずれてくるものです。*3
斯くいう筆者も何度か遊んですぐにあの銃この銃この装備とインターネットや実店舗をうろつくハメになり、迷彩服一式、中古で安く売っていたプレートキャリア、メインの武器となるアサルトライフル、ハンドガンなどが気付けば手元にありました。
用語解説
【2】迷彩服……その名の通り、迷彩柄の服。サバゲーといえば迷彩服を思い浮かべる人も多いのでは用語解説
【3】プレートキャリア……防具のようなもの。シンプルな防弾ベスト用語解説
【4】アサルトライフル……銃の一種。いわゆる自動小銃と呼ばれるタイプで連射が可能。射程(弾丸や弾頭が届く最大距離)も長いため、アウトドアフィールドでは主力になる。電動タイプのものが主流。ちなみにサバゲーでいう「銃」はもちろん実銃ではなく、モデルガンですよ用語解説
【5】ハンドガン……コンパクトで使いやすい小型の銃。電動タイプ、ガスタイプなど種類も豊富にあり、コレクション性も高い
サバゲーの恐ろしい、いやいいところは、これらの装備が比較的ちょっと頑張れば買える価格であるところです。
もっとも高価である「銃」にしても、だいたいは国産メーカーの品質のいいものが2~3万円で手に入ります。インドアフィールド中心で遊ぶつもりならハンドガン一丁で十分楽しめるため、1万円前後で済むこともあるでしょう。この1~3万円というのがまた「物欲を満たすのにちょうどよく、かといって社会人がちょっと頑張ればイケちゃう金額」なのです(個人的には)。
また、服や防具などの装備品も、モノによっては服の上下セットで3,000円なんていうのもザラにあります。しかも、迷彩服や銃のバリエーションも実に豊富で、自分の思い描く「カッコイイ!」を存分に追求しても結構お釣りがきちゃう感覚で楽しめるのです。
フィールドのレンタル装備で「コレジャナイ……」感を味わった後では余計魅力的に思えるものです。
そんなわけで、自分の好みを形にした装備はこんな感じ。全身真っ黒で非常に……なんというか……厨二感に溢れてますね。しかし男の子のロマンとはこんなものです!
「黒はダメだよ、森では目立つ」一張羅をベテランに一蹴
そんなわけで、そろえた一張羅に身を包みフィールド通いの日々が続いていたのですが、あるとき、都内にできたインドアフィールドのオープニングイベントで、のちに師匠とお呼びすることになるサバゲー歴30年超というベテランの皆さんに出会いました。
彼らのチームのアウトドア貸切ゲーム(フィールドは、貸し切って仲間内で遊ぶこともできます)に参加したところ、開口一番「黒はダメだよ、森では目立つからね」と一張羅をバッサリ。
言われてみれば、ベテランの皆さんの装備を見るとかすれたオリーブドラブ色の迷彩服に、頭周辺にはもしゃっとした布をまとった姿で「ゲリラかな……?」といった雰囲気です。
自分の中の「カッコイイ」をあっさり否定されたわけですが、ゲームが始まってみると納得するしかありませんでした。
普段筆者が遊んでいたフィールド主催の定例会ゲームだと「3、2、1……ゲームスタート!」の号令とともに「ウオーーーッ!」という感じで元気のいい若者がダッシュしていくのが定番の光景ですが、「俺らは森でしか遊ばないから」というベテランたちのプレイはさすがでした。
濃いブッシュの中、風で草が揺れる音以外、一切人の気配も感じられないのに、突然弾が飛んできてやられるという激シブなゲームで1日が終わりました。その日筆者は一人も敵を見つけることができませんでした。
・用語解説【6】ブッシュ……やぶや茂みのこと。アウトドアの森林フィールドでよく見られる地形。うまく隠れられると敵に見つかりにくいが、茂みに分け入っていくのはなかなか大変
「こんな世界があるのか……」と驚くとともに、ベテランの方が使っている銃や装備が急にカッコよく見えてきます。実用性重視で硬派なイメージ……イイ!
実用性こそカッコよさだ!
そんなわけで、全身黒装備をスパッと切られてしまい、ブッシュに溶け込むプレイスタイルのカッコよさも知ってしまったわけで、また装備をそろえ直すことにしました。
まずは迷彩服を、より日本のブッシュに溶け込みやすいものに買い替えます。
実は皆さんがよく見かける迷彩柄にはブランド化されているパターンのものがあり、それを使ったさまざまな装備やグッズは人気商品です。筆者が選んだのは、「マルチカム(Multicam)」という米軍でも採用されている人気迷彩ブランドの「トロピック(Tropic)」という熱帯地方向けの迷彩パターンです。熱帯とありますが日本の植生でも十分に効果があるものです。
こちらはお安いレプリカ品も多々ありますが、純正生地を使った有名メーカー縫製の迷彩服上下だと各1万2,000円と言ったところです。多少高いですが、野外で雑に使うものなのでやはりいいものにしておいた方が長持ちします。
次に装備で考えたのは「いかに人型のシルエットを消すか」という点です。
遠くから見た際、人の頭から肩にかけての輪郭が認識できると「人だ」と認識しやすくなるといいます。この輪郭を消すことで、遠目に見たときに敵から視認されづらくなります。
そこで用意したのが「ギリースーツ」と呼ばれる装備です。
映画などで見たことがあるかもしれませんね。リアルな軍隊の世界では全身に着込むタイプのものもよく使われるようですが、サバゲーでは一箇所に長時間潜むようなことはあまりないため、そういう某子供向け番組のム◯クみたいな格好で動きまわることになると、逆に目立ってしまうことが多いです(ある種のロマン装備ではありますが)。
そのためサバゲーでは写真のような頭から肩あたりにかけてを覆うタイプの「ハーフギリー」とか「ギリーフード」と呼ばれるものを使う方が多いです。
これを装備することで、木に寄り添って立っているだけでも、動かなければかなり目立たなくなります。
ギリースーツは基本的にベースとなるネット状の服部分に、擬態となるもしゃっとした部分「ギリージュート(麻)」を植生に合わせて結びつけるなどして作ります。有名ブランドのハーフギリー用ベースは2万5,000円ほどとなかなか高価ですが、ギリージュート自体は1ポンドで2,000円を切る程度で販売されているので、安価なベースを併用して自作すれば1万円もかからずに入手できます。上の写真は自作のものですね(まだ作ったばかりで色がかなり明るいんですが……)
というわけで、あっという間に銃1丁分ぐらいの追加投資が行われたわけですが、 今まで紹介してきたのは実は「サバゲー沼」のごくごく一部に過ぎないのです……。
装備だけじゃない、銃だってカスタムできる!
先の項目で紹介したのはいわゆる「装備品」についてでした。
もちろんサバゲーの別の主役である「銃」に関しても、沼が待ち構えています。
サバゲーにおける銃の沼には、大きく3つの種類があります。
1つ目は「銃が増える」こと。もっともシンプルでみんながハマる沼ではないでしょうか。筆者も気付けばライフル7丁、ハンドガン4丁と増殖していました。不思議ですね。
2つ目は「外装カスタム」です。近代の銃は多様な戦場に対応するため、さまざまな外装オプションが取り付けられるようになっています。例えば照準を合わせるスコープなどの「光学機器」や、銃声を小さくする「サイレンサー(消音器)」など、実銃ではそれだけで大きな市場があるほどのカテゴリーとなっています。これは装備品の話と似ていますが、実用性重視で選ぶこともできるし、「あの特殊部隊と同じ装備にする!」といったカッコよさ重視のカスタムも存在します。
3つ目は「内部カスタム」です。サバゲーで主に使われる銃は「電動ガン」と呼ばれるバッテリー駆動の銃となります。当然実銃とはまったく違う仕組みで、どちらかというとラジコンの心臓部と似たようなパーツ類が使われています。また、国内では2006年に施行された改正銃刀法によって「パワー規制」がかけられていることも、内部カスタムの一つの面白さとなっています。この規制によって、すべての電動ガンは「0.98ジュール未満」のパワーでなければいけないとされています。その制限の中で、いかに自分の思い通りの性能を引き出すか。バラしては組み、バラしては組みの繰り返しで性能を追求していきます。
・用語解説【7】ジュール……エネルギーの単位。「銃口から1mはなれた場所での1平方センチメートル当たりの運動エネルギー値が3.5ジュール以上のものを準空気銃とする」というのが銃刀法の関連箇所。サバゲーで使う6mmBB弾相当で換算すると、約0.989ジュールとなる
筆者は主に3つ目の「内部カスタム」沼にハマっており、遠くまで綺麗な弾道で飛んでいく銃を目指して師匠に教わりながら試行錯誤しています。
気付くとバネばかり10本以上も持っていたり、バラバラのまましばらく完成品の姿を見ていない銃があったりもしますがきっと気のせいでしょう。
内部カスタムではほんの小さなゴム製のパッキンが1,000円を超えてきたり、流通量が少ないため割高になっている製品が多いのですが、1点1点はさほど高価なものでもないので、これも気軽に楽しむことが可能です。銃を増やすとそれだけで数万円という世界ですが、内部カスタムならば少しずつ調整していく楽しみもありますね。
ただしうっかりハマりすぎると、「おかしいな中身のカスタムに銃本体と同じ値段かかっていてつまりは2倍の価格になってるんだけど……」というようなことも……。
筆者は選べなかった「究極」の沼
さて、これまで筆者の沼にハマった流れから、装備や銃についての沼ポイントを紹介してきました。
「実用性こそカッコよさだ!」というロマンと、あとは主に金銭面の問題で筆者は横目に見ている別の沼として、もっと究極的なものが存在します。
特殊部隊になりきろう! 実物装備で固めるロマン
まずは、「実物装備」。実物装備が手に入る(銃以外)のもこの世界のロマンの一つです。
装備にしろ銃の外装カスタムにしろ、それぞれ「実物」の民間向けマーケットが存在するため個人でも購入することが可能なのです。
装備系でブームなのはやはり、上から下までガチガチに装備を盛った特殊部隊装備でしょう。米国のあの部隊、ドイツのあの部隊などなど、「ミリフォト」と呼ばれる戦地で撮影された実際の兵士の写真などを参考にパーツを推定し、同じ装備でそろえていく、というのが一般的でしょうか。ある種コスプレ的な楽しみ方ともいえますね。
ただし、お値段は容赦ない感じとなっていきます。
例えば装備品の1つである弾倉ポーチ。実物だと1つ6,000円を超える価格となります。またチェストリグは、レプリカなら数千円で買えるところ、実物系の製品は2~3万円からと数倍のお値段となってきます。また無線用ヘッドセットの実物も、レプリカであれば7,000円程度で購入できますが、実物製品の場合オークション価格で7万円前後といった価格です。
・用語解説【8】弾倉ポーチ……銃弾を装填するための弾倉をしまっておくポーチ。マガジンポーチともいう
・用語解説【9】チェストリグ……弾倉ポーチなどの装備品を装着するためのベースがついたハーネス
・用語解説【10】ヘッドセット……軍用だと集音機能や爆発音をカットする機能がついていたりする
筆者は実際にサバゲーで使うものしか装備していませんが、コスプレとなると使用しないものも含めて多数の装備が必要となります。それをすべて実物でそろえていくわけですから、なかなかの金額になりそうですね。
他にも暗視ゴーグルやサーマルスコープ(熱源を探知するもの)という夜間のサバゲーで役立つ装備オプションもあり、暗視ゴーグルは安いもので15万円ぐらいから、サーマルスコープになると「軽自動車が買えるぐらいかな~」と聞いたことがあります(もっと安い機材もありますが)。
究極のチョイス? トレポンこそ最高品質の既製品
また、銃本体についてもある種「究極」なチョイスが存在します。それがトレーニングウェポン、いわゆる「トレポン」です。
トレポンとは、その名の通り警察や軍などでのトレーニングに使うことを前提に作られた電動ガンです。実銃を使う方々の訓練なわけなので、極力実銃と同じ寸法や重量で、同様の操作方法となるように設計されています。そのため、実銃用のアクセサリを無加工で取り付けることできるのです。
最近では内部の性能もよくなってきており、筆者のようにちまちまカスタムしなくてもかなり高性能だと聞いています。外観カスタムも実物装備が楽しめ、電動ガンとしての性能もいいという、全部入り的なチョイスとなっています。 もちろんその分価格も豪華となっており、最低でも20万円から、高価なカスタム品では数十万円というものもあります。それをベースにあれこれカスタムしていくわけですから、「その銃ほんとにサバゲーで使っていいの?!」って感じもしてきますね。
車が欲しくなる、フィールドを作りたくなる……
というわけで、実物に身を固めることもサバゲーでは分かりやすいロマンの形となります。もちろん、実物装備やトレポンがなくても十分楽しめます。実用性重視の筆者の場合、実物装備で固めた特殊部隊系の格好は重い傾向があるのであまり選びませんし、色さえ目立ちにくいものならジーパンにパーカーというスタイルでもまったく問題ありません。
さて、そんな筆者もちょっと気になっている別の「究極」のチョイスも存在します。
まず「車が欲しい」。これはこの手のアウトドア趣味ではド定番でしょう。
冒頭で「千葉に多く存在するフィールドには電車で行けるところもある」と紹介しましたが、実際これだけ増えた装備を抱えて電車に乗るのはあまり現実的な選択肢ではありません。今は主にベテランの先輩たちが車をお持ちなので同乗させてもらっているのですが、やはり自分の車があったらいいなあ……と考えてしまいます。
この写真は以前サバゲーに行く途中で見かけた車ですが、こんな感じで大型車のハマーを改造して軍用車「ハンヴィー」風にしてしまった人もいるらしく、ある意味究極の実物装備と言えるかもしれません。
・用語解説【11】ハンヴィー……米軍の軍用車両「HMMWV」のこと。ハンヴィーを民生仕様にしたのがハマー(GM社)である
また、「自分たち好みのフィールドを作りたい!」というのもサバゲーにハマった人が必ず一度は考えることじゃないでしょうか。
田舎に帰ったときに広大な森や空き地をみると「ここにフィールド作れる気がする……」「あの森をベースにこっちに市街地フィールドをつくって……」と考えてしまったことがあるのは筆者だけではないはずだと信じています。この記事を読んでいる方の中で、「実家が山を持ってる」という方がいたらぜひご紹介ください。
いろいろな沼があるのがサバゲーのいいところ
筆者のハマった経緯から、サバゲーのいろいろな沼についてご紹介してきました。ここ数年関東を中心にまさにサバゲーブームとも言える状況ができていて、皆さんの身の回りにも「やったことある!」「やりたい!」という方がいるんじゃないかと思います。
サバゲーというとどうしても「ミリタリーマニア向け」という印象が強いように思いますが、サバゲーブームを背景とした気軽に遊べるフィールドの増加((主要都市圏では 「サバイバルゲームフィールド ASOBIBA」 さんが展開されている、「都心で仕事帰りにサバゲー!」というコンセプトのインドアフィールドが手軽にフルレンタルで遊べ、初心者を意識していていいのではないかと思います))もあり、ちょっとした非日常体験としても十分に楽しめる遊びとなっています。
あの非日常感はクセになりますよ。未体験の方もぜひ体験してみて、自分に合った「サバゲー沼」を見つけて欲しいなと思います。
サバゲー歴7年のペーペー。一向に上達の気配がないまま遠距離支援型としてプレイ中。 愛機はG3SG1です。