公益資本主義とは?「王道経営」への取り組みを公益資本主義推進協議会にインタビュー PR

公益資本主義とは?「王道経営」への取り組みを公益資本主義推進協議会にインタビュー

従来、「企業」というと、商品やサービス等の提供を通じて営利目的で事業を展開する組織を指すと考えるのが一般的だったかもしれません。

しかし、企業を社会的な存在ととらえ、株主資本主義でもなく、国家資本主義でもない「第三の道」を指す「公益資本主義」という概念を広めようと活動している社団法人があります。

今回お話を伺ったのは、「一般社団法人 公益資本主義推進協議会」組織運営本部事務局の方。公益資本主義とはどのような概念で、同会ではどのような活動をしているのか、詳しくお聞かせいただきました。

企業は国を支える「社会の公器」。公益資本主義推進協議会の始まり

公益資本主義推進協議会での勉強会の様子

―本日はよろしくお願いします。まず貴会の設立経緯について教えてください。

当会は今からおよそ10年前、2014年に設立されました。その背景には、発起人であり会長である大久保秀夫が抱いていた危惧があります。

大久保自身は25歳で株式会社フォーバルを設立し、当時の最短・最年少記録で株式公開を果たしたアントレプレナーとして知られる人物です。そのため、若手経営者から事業や上場についてよく相談を受けるのですが、彼らに「なぜこの事業を始めるのか?」「なぜ上場するのか?」と問いかけると、「お金が欲しいから」「上場したいから」という、不安になるような回答ばかりでした。

また、既に上場している大企業を見ても、黒字リストラ、粉飾決算、商品データの改ざん、談合、社員を使い捨てにするブラック体質等、さまざまなかたちで社会を騒がせる存在となっていました。

「何よりも優先すべきは目標数字を達成すること」「より短期間でより多くの利益を株主に還元することが企業価値だ」という偏った価値観を持ち、「自分さえ良ければ」「今さえ良ければ」という考え方で経営判断を下した結果、企業は本来の存在意義を忘れてしまったのです。

では、企業の本来の存在意義とは何でしょうか。私たちは「企業は社会の困りごとを解決するために存在している」と考えています。お客様から選んでいただけるよう、企業はより良い商品・サービスを提供するために努力を重ね、その結果として収益を得られるはずです。その収益から、社員へは給与というかたちで、株主へは配当というかたちで利益の一部を分配します。

あわせて、企業の事業活動は取引先や仕入れ先の収益にも寄与するものであり、また社員の雇用や納税を通じて地域社会や国の維持・発展にも貢献しているのです。

このように、企業は国を支える「社会の公器」と言える存在です。日本では古来、こうした考えのもと商売が行われていました。「三方よし」「和を以って貴しとなす」「吾唯足知(われ ただ足るを知る)」、古くから日本に根付くこのような企業の在り方にもう一度しっかりと目を向け、間違った世の中の在り方を変えていくため、この「公益資本主義推進協議会=PICC(Public Interest Capitalism Council)」という組織をつくりました。

オンライン・リアルの両方を活用し「王道経営」の学びを実践

―「公益資本主義」という概念について教えてください。

「公益資本主義」とは、当会(以下、「PICC」)の最高顧問である原丈人氏が提唱する社会全体の利益、つまり「公益」を追求する資本主義を称する概念です。我々は、公益資本主義を実現するためには、個人の利益でも、会社の利益でも、国家の利益でもなく、「地球全体の利益」という高い視座を持ち、物事の是非を判断していくことが必要だと考えています。

ただ、PICC会員の大半は中小企業経営者です。まだまだ成長途上にある我々にとって「公益資本主義」という概念は非常に崇高であり、大きすぎるものでもあります。まずはそれぞれの会社が強くなり、自社から変えていかなければ、理想を語ることも挑戦することもできません。

そこで現時点の最上位目的として、「王道経営を学び、実践する、いい会社を増やす」と定め、そのための取り組みを一歩一歩進めています。「いい会社」とは財務上の数字が優れた会社ではなく、企業を取り巻く関係者から「ありがとう」がたくさん集まる会社を指します。

具体的には、法人会員を中心に、正しい企業の在り方=「王道経営」を学び、それを実際の事業活動の中で実践することで社業を伸ばし、その有用性について実証していくこと、そして、公益資本主義に賛同する企業経営者を数多く育成・輩出していくことをミッションとしています。

―ご活動内容についても詳しくお聞かせください。

全会員が参加できる学びの場として、会長の大久保が自ら講師を務める「王道経営実践道場」や、全国の会員が王道経営実践に役立つ事例を学ぶ「全国定例会」等、オンラインを活用して企画・運営しております。

また、リアルの場でなければ学べないこともあります。そのためさまざまな現場・現物・現実を確認することで、人としての在り方や未来について深く考えることを目指し「PICCツアー」もスタートいたしました。直近では、長野県を代表する「いい会社」である宮坂醸造様、菓匠Shimizu様、伊那食品工業様を訪問し、各社の社長から取り組みについて直接教えていただきました。

また地域ごとに設けた支部や設立準備委員会を中心とする活動も活発です。100年企業研究、地域活性、教育支援、途上国支援、健康経営、会員交流等、公益資本主義を実現するために企業経営者が寄与すべきと考える取り組みについて、各地域の課題やニーズに沿った委員会を立ち上げ、活動を展開しています。

―会員様から好評のお取り組みはありますか?

教育支援委員会が実施する出前授業は特に好評で、2022年は延べ41校、4,512名の学生に向け実施しております。「働くとはどういうことか?」「社会における企業の役割」「志や目標を持つことの大切さ」等をテーマに、企業経営者が自身の経験や想いを直接伝えることで、これから社会に出てゆく子どもたちに働くことの意味や将来の夢を考えるきっかけを提供することを狙いとしています。

PICCはまだ法人会員250社、25歳以下の若者のU25会員が70名程度の小さな組織のため、一つひとつの活動に大きな影響力はないかもしれません。しかし、このPICCを公益資本主義について学ぶ場、実践する場、そして発信する場として全国に広めていくことによって、必ずどこかで世の中を変えるためのきっかけをつくることができると信じ、活動を続けています。

出前授業の様子

得た視点で空き家を活かし、地域経済を活性化させた会員も

―会員にはどのような企業様がいらっしゃいますか?

会員は、規模も地域も業種業態もバラバラですが、共通点は自分の会社を「王道経営」で「いい会社」にしたい経営者、そのような会社で働きたい若者です。

PICCでの学びを通じ、「自分の会社は何のために存在するのか?」「誰のために存在するのか?」を振り返り、会社の理念やビジョンを正しく設定し直し、社会性第一で永続する会社づくりをすることを目指し、いろいろな挑戦をされている企業経営者が集まっています。

たとえばある不動産会社の会員企業は、「王道経営」を学んだことで「駅前にたくさん不動産屋があるけれど、なくなって本当に困ると感じる人はどれだけいるんだろう?」と考えるようになり、地域にとってなくてはならない会社の在り方を模索するようになりました。

初めは手探り状態で、本業とは関係のないボランティア活動からスタートされたのですが、PICCの学びから「人がやりたがらないもの」に着目していく中で、業界で問題となっている「空き家」をビジネスモデルで解決できないかと考えるようになります。

そこから空き家をリノベーションし、地域の宿泊施設として活用する新規事業を立ち上げました。従来のホテルのビジネスモデルは、一つの建物の中で宿泊も食事も入浴も完結するのが基本ですが、この新規事業では、宿泊施設を地域の商店街を中心に点在させ、周りの飲食店や銭湯もホテルの一機能として利用できるよう、ホテルと地域による協業関係を構築しました。

誘致した観光客をホテルだけで囲い込むのではなく、地域の日常を楽しんでもらい、地域経済の活性化にも寄与する、まさしく三方良しのビジネスモデルです。その社会性と独自性の高さは、各種メディアからも広く注目を集めています。

他の会員企業でも、王道経営の考えを自社の経営に採り入れながら、社会性第一で、独自性のある事業創造にチャレンジされています。

―貴会での学びが、社会性・独自性を重視した事業の立ち上げにつながったのですね。会員が得られるメリットについても教えてください。

「王道経営」を実践するために柱となる考え方、経営者としての在り方、また他社での「王道経営」実践事例について学び、考える機会をオンライン・リアル、さまざまなかたちで得ることができます。

また、同じ志で「王道経営」に挑戦している経営者と意見や情報を交換する機会も豊富です。「経営者は孤独」と言われますが、同じ「王道経営」を目指す仲間と共に、「いい会社」づくりに挑戦できる環境があります。

また、会全体の取り組みとは別に、地域ごとの委員会活動や勉強会にも参加いただくことができます。中小企業が自社だけで社会貢献活動に取り組むことはハードルが高いですが、PICCの仲間と共に地域の学校で出前授業を行ったり、東南アジアを中心とした諸外国への教育支援や海外進出についてチャレンジしたり、さまざまな実践機会が用意されています。

こうした活動を通じ、知見を広め、自社や自身が本当に使命感を持って取り組めることを見出していただくことができます。

人生の在り方を考え直し、「いい会社」像を見出していく

―会員企業様の声をお聞かせください。

会員からは次のような反響を受けています。

「経営者としての私は、焦りや違和感を抱えていました。売上を上げなければという焦りと、数字づくりを優先する自分への違和感です。そんな胸中で参加したPICCのセミナーで、大久保会長から『事業は社会性、独自性、経済性の順番で考えるべき』という言葉を受け、『デザインの力で世の中に良い変化をもたらしたい』という社会への思いを優先していいんだと勇気づけられました。マインドチェンジのきっかけをくださった大久保会長や同会のみなさんに感謝しています」

「私がPICCに興味を持ったきっかけは、大久保会長の著書を拝読したことです。テクニックやハウツーばかりを追っていた当時の私には『人生とはどう在るべきか』と問いかける大久保会長の言葉一つひとつが、胸に突き刺さるものでした」

「人生の在り方という本質を真剣に考えてみると、仕事やプライベートの捉え方も変化していきました。この『在り方』こそが、PICCからの一番の学びだと感じています。在り方を考える中で、会社の軸となるビジョンやミッションも納得のいくかたちで決めることができました。進むべき道を示してもらったことに心から感謝しています」

「PICCでの一番の学びは、社会貢献をしたいという思いを、時代や地域のニーズにマッチするかたちでサービスとして提供する方法を学べたことだと思います。『事業は社会性、独自性、経済性の順番で考えるべき』という教えを体現してきた大久保会長だからこそ、その本質を多くの経営者に伝えられるのだと思います。大久保会長は、私にとって初めての『経営の師』です。行動と成果が伴う大久保会長の言葉はいつも私の胸に深く刺さります」

「起業した以上、経営者は100年後の未来を見据える責任を負う立場であり、ビジョンの重要性を社員全員に理解させなければいけないことを学びました。100年ビジョンムービーを作成し、学んだ在り方を経営に落とし込むことを愚直に実行してきました。その結果、スタッフの人間関係が非常に良好となり、仕事後に夕食をとりながら『これから自分達はどう生きていく?どう社会貢献する?』など真剣に話し合う関係性が構築できています。この関係性は在り方経営を愚直に実践したから得られたものだと思います。また、定性面だけでなく、当初は約4,000万円の売上が、今期で1億8,000万円と、数字の面でも順調に成長を続けています」

長く続く企業から経営の本質を学ぶ「100年企業研究委員会」

100年企業研究委員会の活動の様子(宮坂醸造前の集合写真)

―「100年企業研究委員会」についてもご紹介ください。

「王道経営」において、会社の最上位目的は継続することであり、利益はあくまでもその手段です。こうした考えで経営されてきた見本は、実は日本にたくさんあります。大震災や戦争を乗り越え、100年以上続いている企業が世界で最も多く存在しているのです。

「100年企業研究委員会」は、こうした企業から経営の本質を学び、自らの経営に採り入れると共に、外部に対しても日本の100年企業の在り方を広く周知していくことに取り組んでいる委員会です。100年企業への訪問はもちろん、経営者をお招きした勉強会などを行っています。

活動を重ねる度、いろいろな学びや気づきがあります。ただ、会社訪問は先方の都合もあり大人数では参加できないことも多いです。特にこの数年はコロナ禍の影響もあり、本当に限られた人数での訪問となっていました。

訪問に参加できなかった会員はもちろん、100年企業に興味を持っていただいた方に学びを広く共有するため、訪問レポートを作成し、Webサイトでも公開するようにいたしました。現在はWebサイトだけでなく情報誌としてもまとめ、PICC活動のPRツールとして活用していくことも決まり、取材と編集を進めています。

一社でも多く「正しい企業の在り方」に気づくように

PICCのシンボルマーク

―今後のご計画や目標がありましたらお聞かせください。

約10年かけ、PICCの理念に賛同いただける会員を集めてまいりました。会を立ち上げた当初は、せっかく入会いただいたのに組織や活動も整っておらず、残念ながら何も活動できないまま退会されていった方もいらっしゃいます。

しかし、そんな環境でも「公益資本主義」や「地球益に貢献する」という高い理念を実現していこうという熱い想いを持ち続け、活動を続けてくださっている会員が残ってくださいました。そのメンバーで議論し、試行錯誤を重ね、ようやく学びのコンテンツや活動がかたちとなりつつあります。

外部環境も大きく変化してきています。会がスタートした当初は、「企業は社会性第一だ」「公益を考えなければダメ」と言っても、「きれいごとだよ」「理想だけではなにもできない」というネガティブな反応が大半でした。

しかし、ここ数年でESGやSDGsが世の中に浸透し、社会性や継続性を考えることは、企業の社会的責任として認識されるように改まってきました。多くの企業が「公益資本主義」や「王道経営」に興味を持っていただける好機が来たと確信しております。実際、若者を中心に、我々の理念に賛同いただける方が増えていると実感しております。

当会は「社会性」を重視した会社経営についての学びや取り組みには、一日の長があると自負しております。このような時代の流れを追い風に、正しい企業の在り方に一社でも多くの経営者に気付いていただけるよう、活動してまいります。

―最後に、マネ会読者へメッセージをお願いします。

読者の方も多くの方が企業をはじめとしたさまざまな団体で活動されていると思います。その団体が「何のために存在するのか?」「誰のために存在するのか?」「その存在理由に理念やビジョンは合致しているのか?」とぜひ考えてみてください。いろいろ気付くこと、感じることがあると思います。

もし、「うちの会社も社会性第一に挑戦したい」「王道経営に賛同するが、どうしたらいいかわからない」という経営者の方は、当会にご参加ください。ただし、当会は経営塾やビジネススクールではなく、会員自身で運営していく会です。共に汗をかきながら、「いい会社」づくりにチャレンジしていただける仲間をお待ちしております。

――本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

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