日本中の冷凍食品を届ける仕組みづくりとは?ナオヨシ株式会社にインタビュー PR

日本中の冷凍食品を届ける仕組みづくりとは?ナオヨシ株式会社にインタビュー

東京都千代田区に本社を構えるナオヨシ株式会社は、食品物流事業、データセンター事業などを営む会社です。

現在同社は冷凍・冷蔵品の物流事業における「地方工場で製造されたメーカーの商品を全国にお届けできるような物流網づくり」と「地方生産者も活用できるプラットフォームの整備」を進めていく、全国コールドチェーンプロジェクトに力を入れています。

今回は、ナオヨシ株式会社の営業本部ディレクターを務める丹羽尚平さんに、この全国コールドチェーンプロジェクトについて伺いました。

コールドチェーンプロジェクトで、全国に冷凍商品を。

インタビュー中の丹羽さん

―本日はよろしくお願いします。まず御社の沿革と事業内容について教えてください。

持ち株会社である当社は2009年に設立された会社で、食品の三温度帯物流や冷凍冷蔵倉庫の運営、データセンター運営など、複数の事業を展開しています。

当社代表は、埼玉県熊谷市に本社を構える「株式会社井ノ瀬運送」の社長も兼任している井ノ瀬広和です。井ノ瀬は事業再生領域でのコンサルティングなどを経て2019年、ナオヨシ株式会社を本格始動させました。

その後さまざまな業態の企業にグループ入りしていただき、現在はグループ会社が18社、売上約150億円、従業員1,200名程度の規模となっております。

メイン事業は、食品の運輸事業とデータセンター運営事業です。ほかには、埼玉県中央青果という青果市場の運営事業や、物流業界向けのソフトウェア開発事業などがあります。

―御社が進めている「全国コールドチェーンプロジェクト」とはどのようなものでしょうか?

全国コールドチェーンプロジェクトは、日本中の冷凍食品をいつでもどこでも届けられるようにするための取り組みです。

大手企業様は商品の販売量/種類が多く、小売業者や卸売業者との交渉がしやすいのですが、中小メーカー様だとロット(製造数量や出荷数量の最小単位)やリードタイム(発注から納品までの所要時間や日数)に厳しい制約があり、それらを乗り越えて全国へ商品を供給するしなければなりません。

また、物流業界には「2024年問題」と呼ばれる課題があるのをご存知でしょうか。2024年4月から、働き方改革関連法によりトラックドライバーの時間外労働に上限規制が設けられます。

労働時間に制限がかかると1便あたりの輸送できる時間が短くなり、単純に言うとこれまでよりも運賃が上がったり、拠点を中継する回数が増えたりすることにより、車両の確保が難しくなるといった問題が想定されます。

そのため私たちは今、地方の中小メーカー様の荷物を全国に供給できるプラットフォームを作ることを目指しています。

弊グループにお任せいただければ全国にものをお届けできるよう、各地に冷凍冷蔵の倉庫を展開していく計画です。

―全国にものを供給するには、どのような仕組みが必要なのでしょうか。

私たちがお預かりする主商品がアイスクリームということもあり、品質を保ちながら配送できる車両の手配や仕組み、倉庫管理システムとの連携が必要です。

単にものを動かすだけではなく、網羅的に中小メーカー様のお手伝いができるような仕組みにしたいと考えています。

複数の拠点を活用し、適切なタイミングで運ぶ

全国コールドチェーンプロジェクトのロードマップ

―御社に商品を預ける企業様は、どのような点をメリットに感じていらっしゃいますか?

全国でコールドチェーン網を保有している企業は少なく、完成すれば中小メーカー様にとって商品輸送の選択肢を増やすことができ、コスト・ロット・納品日の点で大きなメリットになります。

そのほかには、冷凍冷蔵設備のある倉庫が絶対的に不足している現状があるうえ、昔の備蓄を前提とした仕様の倉庫なので、トラックバース(荷物の積み降しのためにトラックが停車する場所)の数が少なく、荷物の積み降ろしに時間がかかってしまい、システム化したとしてもトラックの入出庫の待ち時間が長い、つまりはトラックドライバーの待機時間が長い倉庫センターも多数存在します。

私たちにはその状況を打開し、トラックドライバーの拘束時間を守れる仕組みの構築が期待されていると思います。

―冷凍冷蔵設備のある倉庫が足りていないのは、なぜでしょうか。

理由として、建設コストが高いことが挙げられます。ネットショッピングが普及し、以前と比べて常温商品の需要が爆発的に伸びていますよね。弊社グループ企業がある埼玉県内にも坂戸や岩槻近辺で倉庫が多数建設されています。

ただ、冷蔵冷凍倉庫は常温倉庫よりも建設コストが数倍程度かかるため、減価償却期間を考えると物流事業者の投資は容易でないという事情があります。

また、現存の倉庫センターが老朽化しているという問題もあります。1964年に開催された東京オリンピックの頃に建てられ、50年以上経過している倉庫が多く、そうした古い倉庫が日本の冷凍冷蔵倉庫の約半数を占めます。

冷凍冷蔵倉庫の会社や、当社のように外部から資金を調達して積極的に投資をしていく会社が踏み込んでいかないと、いつか冷凍冷蔵商品の配送網がストップしかねません。

新設センターの仕様はニーズの「最大公約数」

―全国規模でコールドチェーンプロジェクトを進めるにあたり、難しいことはありますか?

このプロジェクトには欠かせない倉庫センターの建設において2点挙げると、1点目は一定の大きさがある用地の確保です。

立地がいい高速道路インターの近くは常温倉庫が数多く建っており、近年の個配(個人宛の宅配)の拡大によって伸長、更に土地価格の高騰が進みました。関東や近畿の物流一等地は軽く坪100万円を超える金額で取引されています。

2点目は建築・建設に関する部材費のインフレーションが進んでおり、確保が難しくなっていることですね。当社が2020年に愛知県新城市に「新城マザーセンター」を建て始めた頃と比較すると、現在は建設コストが、坪単価約1.7倍~2倍近くまで上がっている状況です。

倉庫センターの建設にはゼネコンや設備メーカー、作業機械の業者など、複数企業からのご協力が必要になるため、建設予算をもとに各社への交渉が重要となってきます。

また、一般的にはお客様の明確なニーズをもとに倉庫センターを建設するのですが、当社はマーケットから想定されるニーズの仮説を立て、さまざまなお客様の「最大公約数」となる仕様の倉庫センターを建てるのが特徴的です。

いかに多くのお客様に使っていただける仕様にするか日々頭を悩ませながら、倉庫センターの設計が完了してから、竣工するまでの約2年間でお客様へご提案させていただいています。

ドライバーの待機時間を削減!中継輸送の新拠点「新城マザーセンター」

―倉庫センターの建設には多大なコスト・労力がかかっているのですね。2022年7月に稼働開始された「新城マザーセンター」について詳しくお聞かせください。

新城マザーセンターは、天井高30m(6階建て相当)で、東海圏において最大級の冷凍冷蔵倉庫センターです。全国各地をハブセンター、サテライトセンターでつなぎ、国内の冷凍品物流網を構築する事業の礎となります。

荷主様は約15社で、新城マザーセンターでお預かりしている商品全体の約70%はアイスクリームです。

他には冷凍されたバウムクーヘンやケーキなどのお菓子、シーフードミックスなどの水産加工品。卵料理に使われる冷凍卵白、冷凍野菜などもあります。冬場にはおでんやおせちも冷凍でお預かりしています。

最近はコンビニエンスストアでもチルドのおいしいスイーツが多数販売されていますが、冷凍品を物流の過程で徐々に保管・輸送するときの温度帯を変えて解凍していき、冷蔵品としてお店に並ぶ商品も多くなっています。

―さまざまな商品を預かっていらっしゃるのですね!量としてはどのくらい保管できるのでしょうか。

新城センターの冷凍自動倉庫では、1.1m×1.1mのパレット(荷物を載せるための荷役台)が約1万枚保管できます。

1枚のパレットに載る量は商品によって段ボールの容積が違うためさまざまで、1枚のパレットに30箱の商品もあれば、アイスクリームのように200箱載る商品もあります。

もともと最大約3万パレットの容積保管できるところを、あえて1万パレット保管の設計にしています。ボリュームを優先するのではなく、中継輸送の拠点として、荷物の積み降ろしをスピーディー行える仕様にすることに重きをおきました。

そのため、新城マザーセンターのトラックバースは25台分あり、現状トラックの待機時間の問題は、ほぼ発生しておりません。今後建設する倉庫センターでも、トラックの待ち時間がないような環境の整備を進めていく予定です。

また、荷物の積み下ろしをパレット運用にしていく働きかけもしています。アイスクリーム業界はパレット運用が進みましたが、その他の菓子業界や冷凍食品業界においてもパレット運用を私たち物流事業者から荷主様に推奨していきます。

倉庫への自動格納設備導入で負担が減り、品質安定化も

―新城マザーセンターは、働く方への配慮を凝らした倉庫だそうですね。詳しく教えてください。

まず安全面に関して、倉庫内には耐震装置が設置されており、震度7程度の揺れには耐えられるよう設計されています。

冷凍倉庫内は一般的に-25度程度に保たれているのですが、働く人は防寒着を着ていても30分ほどで手足が冷えてきます。そのため、当社は自動倉庫やAGV(商品の移動に使われる機器)を導入して冷蔵環境でのみ働く仕様にしております。

フォークリフトで荷物を専用レーンに載せれば、自動で冷凍倉庫内に格納されるため、負荷のかかる人的作業がありません。結果的に商品に人が触れる回数を減らし、商品の破損率も既存倉庫と比べて各段に減りました。

新城マザーセンターに関しては自動運転フォークリフトが動くスペースも十分にありますので、今後は完全無人化の仕様にもチャレンジしていきたいと考えています。

ー環境への配慮もあるそうですが、どのような工夫をされているのでしょうか。

新城マザーセンターでは、オゾン層破壊の効果がなく地球温暖化係数が低い代替フロンを使用しています。今後建設する倉庫センターについても、二酸化炭素やアンモニアを使った自然冷媒のみで建設予定です。

また、太陽光発電で得た電力を倉庫センターや倉庫内事務所で使っていく仕組みを、今後全てのセンターで取り入れていきたいと考えています。

さらに、アイスクリームをはじめ冷凍商品で焼却処分となったものを堆肥に変えたり、家畜の餌として活用したりといった仕組みも検討中です。

2024年問題を見据え、関東と関西をつなぐ立地を選択

―さまざまな強みをもつ新城マザーセンターですが、愛知県新城市に建設されたのはなぜだったのでしょうか。

理由は大きく2つあります。まず1つ目は、新城市は関東と関西をつなぐ中間エリアだということです。

新城市から大阪までは約3時間半、東京までは約4時間で到着します。2024年問題が進んでいくとドライバーさんが往復運行できる時間が8時間ほどになりますので、新東名の新城エリア、東名の袋井エリアは注目され始めています。

2つ目は、東海エリアには新設センターが少なく、需要に対し冷凍倉庫の供給が追い付いていないという事情です。

当社は愛知県春日井市にもセンターを所有している関係上、その備蓄供給倉庫としても使えるようにと新城市に建設しました。

新城市から土地を購入した際、専用道を使わせていただけることになったのもポイントです。

高速道路のインターを降りた後に細い一般道を走るよりも、そのまま専用道を通って倉庫に行けるほうが事故のリスクが少なく、早く輸送できるとドライバーの方にも好評です。

誰でも働きやすい倉庫センターを目指す

―新城マザーセンターに勤務されている方の声をお聞かせください。

冷凍庫内の作業が減り、手積みが少ないパレット運用のため身体的な負荷が下がったという声をいただいております。

今後は相対的に若い世代の働き手が少なくなっていくと思いますが、新城マザーセンターのような倉庫であれば若い働き手も増えるのではないかと期待しています。

また、新城マザーセンターでは外国籍の方も複数名働いていただいています。今後は外国籍の方や障害をお持ちの方でも働きやすいような、ピクトグラムなどを活用したユニバーサルデザイン設計を推進していきます。

―丹羽さんは営業本部ディレクターとのことですが、センター勤務の方ともよくお話されるのですね。

はい、倉庫に行った際はよく話しますよ。実際の営業活動で得たお客様の声を会議の場で伝えることは私の役割ですので、今従事している業務がこれからどのように拡張していくか、未来の姿を常に示していきたいと考えています。

そして、皆さんと一緒に収益アップにつながるようなアイデアを考え、お客様を多く呼び込むことで、事業を邁進していきたいと思っています。

海外投資家を呼び込む「コールドチェーンファンド」計画

―今後の展望をお聞かせください。

全国コールドチェーンプロジェクトに関しては、日本初のコールドチェーンファンドを作り、海外投資家の出資を呼び込む予定です。日本全国に建設していく倉庫センターは、2030年頃までに少なくとも10以上になるかと思います。

M&A戦略も含め、物流に関わるあらゆる企業様とパートナーシップを組んで進めていきますので、当社の取り組みを少しでも多くのメーカー様に知っていただきたいですね。

また、当社は冒頭にお話したようにデータセンター事業も展開しています。今後は日本データセンターの需要も日本全国に広がるはずですので、大規模な地方データセンターの建設も構想中です。

ナオヨシグループは「今後100年続くインフラを創造し豊かな社会の実現に貢献すると同時に、社員一人一人の幸福を追求します」という経営理念のもと、事業を展開しています。

今後もこの理念を大切にしていきたいですし、共鳴していただける方がいらっしゃれば、ぜひ一緒にお仕事をしていきたいです。

―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

ナオヨシ株式会社
営業本部 ディレクター

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気になるけど、なかなか話しづらい。けどとても大事な「お金」のこと。 日々の生活の中の身近な節約術から、ちょっと難しい金融知識まで、知ってて得する、為になるお金の情報を更新していきます。

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