「擁抱変化 持続創新」。企業のDX化に貢献するHOUSEI株式会社にインタビュー
HOUSEI株式会社は、メディア産業向けのシステム構築において国内トップレベルのシェアを誇る企業です。越境ECプラットフォームやクラウドサービスなど、さまざまな事業を展開しています。
新型コロナウイルス感染症の影響でテクノロジーの活用が急速に拡大してきたこの数年、以前から研究開発を進めてきた顔認証技術も日本市場に投入した同社。
本日はHOUSEI株式会社の代表取締役社長の管祥紅さんに、事業内容や日本におけるビジネス・技術革新の課題と展望についてお話を伺いました。
中国の研究グループから始まったHOUSEI株式会社
―本日はどうぞよろしくお願いします。最初に、御社の創業の経緯についてお伺いできますか?
管社長:当社のルーツは、北京大学の教授による研究グループです。出版・印刷業界においてより多くの漢字を扱えるようにするにはどうしたら良いのかを研究するグループでした。
この教授たちが作った会社が中国で成果を上げたため、日本でも1996年に「方正株式会社」(社名変更前)を創業したのです。方正は、コンピュータでデザインと印刷の工程を行うDTP(デスクトップパブリッシング)普及に貢献してきました。
そのため、日本で最初に取り組んだ事業は新聞社・出版社などメディア企業向けのシステム構築です。2014年に中国の会社から独立しましたが、事業はそのまま継続して今年(2023年)で28年目となりました。
技術と信頼を積み重ねてきた結果、日本を代表する大手の新聞社や出版社を中心に、各種サービスを利用していただいています。
―ありがとうございます。ほかにもさまざまな事業があるそうですね。
管社長:基盤となるメディア事業のノウハウを活かして、セキュリティ・教育・越境ECを3つの柱として事業を展開しています。
1つ目のセキュリティ事業は、クラウドの時代において欠かせない汎用的なソフトウェアを提供する事業です。
たとえば、顔認証ソリューション「WelcomID(ウェルカム・アイディ)」は、顔認証で入退室管理などを行えるサービスとなっています。オフィスや倉庫、イベント会場などさまざまな場所のセキュリティに使われています。
2つ目の教育クラウド事業では、先生との対話や宿題のアサインなど、教育現場におけるさまざまなやり取りをクラウド化するサービスを提供しています。
そして3つ目の越境EC事業は、もともと会社が誕生した中国と非常に深い縁があります。これまでに培ってきた日本と中国の流通のノウハウを活かし、「安心・安全・高品質」な商品を生み出す日本の中小企業が中国進出するのをECでサポートしています。
安心・安全な現場づくりに貢献する「WelcomID」
―顔認証ソリューション「WelcomID」について詳しくお聞かせください。
管社長:WelcomIDは、非接触・非対面での高速検温、高速顔認証ができるタブレット端末です。対面時におけるストレスや労力、感染症リスクの低減につながり、安心・安全な現場づくりをサポートします。
検温渋滞を起こさないため、オフィス、コワーキングスペースでの受付や大規模イベント会場での入場口、セルフフィットネスジム・インドアゴルフ店舗、病院など、さまざまな場所で多く採用されています。
WelcomIDの特徴は、カスタマイズ性の高さと、連携できる外部機器が豊富、かつ容易であることです。
たとえば顔認証の設定内容や、認証結果を画面上にどのように表現するのかをさまざまに設定できます。
顔認証においては社員や会員の顔写真を登録しておくことで利用でき、オフィスや店舗などのドアと連携した電気錠を自動開錠できるのですが、部屋によって入場できる社員とできない社員の設定も可能です。
IDカードの貸し借り・なりすましなどが改善され、利便性だけでなく安全性も向上します。
外部機器との連携については、たとえばタニタ製アルコールチェッカーとの接続が一例です。USB経由でWelcomIDとアルコールチェッカーを接続すると、WelcomID画面上の案内に沿って、顔認証が行えます。
運転業務に従事する方がアルコールチェッカーにストローで息を吹きかけると、判定結果がWelcomIDの画面上に表示されるという仕組みです。
特定された運転者のIDとともに、検査日時・検査結果・検査時の画像も保管されます。
改正道路交通法により対象事業所でのアルコールチェック義務化が進むなか、外部機器との連携によるWelcomID活用は、日々のチェック作業やデータ管理にかかる労力・ミスの軽減につながるでしょう。
技術力と実績が、「変化に対する否定」を乗り越えた
―教育業界でのクラウド事業は新たな挑戦だったかと思いますが、何かハードルはありましたか?
管社長:教育業界に限らず、日本社会全般に言えることですが、変化に対する態度が保守的な傾向があります。そのため、新しいサービスをお客さまに提案しても、まず否定的な見方をされるのが課題でした。
各業界には、パイオニアやリノベーターとなる存在が重要であると感じています。先見の明を持ち、必要な変化を起こしていく人が必要です。
当社が最初のメディア事業を展開していく上で活路となったのは、ある大手サービス業の企業様です。
当時その企業様は分厚い雑誌を出版されていて、非常に時間とコストがかかっていた上に、制作周期も長いという課題がありました。
その状況を打破したいとのお話を聞き、「私たちならできます!」と提案したところ、すぐにお話が進みました。
プロジェクトの過程は困難の連続でしたが、無事に大成功を収め、事業を大きく成長させることができました。
良い前例ができたことで、それからは各新聞社、出版社からも徐々に信用していただけるようになり、メディア業界で技術力と実績を認められるようになったのです。
当社の会社規模は大きくありませんが、ひとつの業界である程度のレベルまでやり遂げ、やり尽くせたという点が特徴的だと思っています。
最初から完璧はありえない。「擁抱変化 持続創新」で前へ進む
―御社がプロダクト・サービスづくりにおいて大切にされていることを教えてください。
管社長:現在システムを提供している企業へ安全な運用を担保すると同時に、これからのシステムの在り方について次々に新しいものを考案して、変化を起こしていくことを意識しています。
そのためには、私自身がどんどん変わっていかなければいけないでしょう。世の中の先端技術を取り入れ、業界の課題を先取りし、あるべき姿のプロダクトを作る。そして業界にぶつけていく責任があると感じています。
―ホームページでも新たな取り組みの情報が次々と公開されています。常に複数の開発が進んでいるのでしょうか?
管社長:プロジェクト数は非常に多いです。社員からの提案で「こんなことをやりたい」という提案があると、ある程度審査したうえで、基本的にGOサインを出します。
ただ、最近は一つひとつのレベルをさらに高めていく時期だと感じていますので、以前よりも的を絞って取り組んでいるところです。
―さまざまなアイデアを試してみないことには、何が成功するかも分からないですよね。
管社長:新しいことをやる時には失敗が付き物ですし、むしろ失敗する確率のほうが高いです。でも、将来的な価値があるのであれば、未熟な形でも生み出すことを大切にしたいと考えています。最初から完璧なものづくりはありえませんから。
時間とともに完成させていくというのが、当社のプロセスです。新しいものをどんどん受け入れて、完成させていくのだという覚悟をもって取り組んでいます。
当社の企業理念は「擁抱変化 持続創新」という言葉で、これはメイク・ザ・チェンジ、変化を起こすという意味です。ビジョンを持って変化を起こしていこう、と社員へ常に語りかけています。
―変化を受け入れるだけでなく、「起こす」ことが重要なのですね。
管社長:口で言うのは簡単ですが、歴史を動かすほどの変化を起こすのは、なかなか難しいことです。ただ、ひとつのチームなり会社なりが変化を起こして、その力が届く範囲で社会に影響を与えていくのは可能だと思います。
そのような目標を持ち、実際に新しいことへ取り組まない限り、変化は永遠に起こらないのではないでしょうか。
ーさまざまな業界のDX化パートナーとして、時代の一歩先を行くまなざしを持たれているのだと感じました。本日はお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
HOUSEI株式会社 代表取締役社長
気になるけど、なかなか話しづらい。けどとても大事な「お金」のこと。 日々の生活の中の身近な節約術から、ちょっと難しい金融知識まで、知ってて得する、為になるお金の情報を更新していきます。