個を活かして共存する組織を目指すワンピース経営とは?株式会社BuddyCompassにインタビュー
組織の作り方やリーダーのあり方、会社経営に必要とされる事柄はさまざまなビジネス書が説いています。しかし、現実の会社経営はビジネス書の指南通りに進まないことも多くあるでしょう。
そんなとき、誰もが知っている人気作品の名シーンや登場人物に喩えれば、社内の共通認識として伝わりやすいこともあります。漫画やアニメ作品のなかには、ビジネスに活かせる考えが多数存在します。
今回は株式会社BuddyCompassが掲げる経営方針「ワンピース経営」について、代表取締役の髙石 大地さんにお話を伺いました。
生きがい・やりがいをつくることから始まった起業
―本日はよろしくお願いします。まずは、御社の沿革や事業内容を教えてください。
株式会社BuddyCompassは「モノクロな世の中を、カラフルに」をテーマに、ブランディングと事業再生コンサルティングを中心に手掛ける会社です。17人の社員のほか業務委託で一緒に仕事をするメンバーがおり、現在37人で運営しています。
ブランディング事業では、地方創生や観光、結婚式場などの再生・ブランディングが中心に、SNSやWebを使ったPR、ブランドの世界観作りと実現までの道筋を提案するほか、建築企画やリニューアル・リブランディングにも取り組んでいます。
事業再生コンサルティング事業では、比較的規模が大きめの中小企業における組織作り・企業文化作りの課題に対する支援をすることが多く、経営戦略や育成・スキルマネジメント、事業継承なども含めて行なっています。
―ありがとうございます。髙石さんが起業に至った経緯や背景を教えてください。
起業する前は、新卒で入社した会社でSEとして働いていました。その会社で付き合いの長かった同期がメンタルを病んでしまい、彼を勇気づけたいと思ってアイデア出しの会を始めたのが起業のきっかけです。
その時は本気で起業を考えていたというより、同期の生きがい・やりがいになることを見つけたい、何かしたいという想いでしたね。仕事が辛いのであれば、面白い仕事を自分たちで作ればいいと考えました。
同期の不調がきっかけではありましたが、自分自身も仕事にやりがいを見出せない時期を経験していましたし、このアイデア出しの会で、自分たち実現したい社会や、みんなが活き活きと活躍できる環境を話し合ううちに、本格的に起業したいと考えるようになりました。
ただ、起業するといっても何をどうすればいいか分からず、修行する意味で転職してリクルートに入社し、最初に配属された関西でいろいろな経験を積ませていただきました。
その後、起業準備のために東京に戻り、まずは自分のできることをサービスとして提供するところから事業を始め、現在に至ります。ブランディングとマーケティングが得意だったので、最初はSNS運用やPRの支援、メディア運営などを試行錯誤しながらやっている状態でした。
コロナ禍というタイミングもあり、創業から1年くらいは厳しい状況も経験しましたが徐々にブランディング効果があらわれ、事業再生の成功事例も積み上げることができました。
株式会社BuddyCompassの掲げる「ワンピース経営」とは
―御社の掲げる「ワンピース経営」とは、どのような経営指針ですか?
弊社の「ワンピース経営」は、多種多様な個人が独立しながら共存する組織形態を目指す経営指針です。個を尊重した組織作りを確立したいと思い、現在挑戦しています。
私自身、漫画の『ONE PIECE』がとても好きだったのもありますが、単純なキャッチーさだけではなくて、作品のエッセンスには組織のあり方や経営にも通じるところがあると感じ、分かりやすい指針になればと思って「ワンピース経営」と名付けました。
新卒の頃に読んだ、ルフィと白ひげのキャラクターからリーダーシップを学ぶビジネス書を読んだこともきっかけの一つです。いわゆるトップダウンな組織のリーダーである白ひげと、フラットな人間関係の中で組織を率いるルフィの共通点と異なる点を紐解いた内容でした。
ルフィのようなリーダーになりたいと感じ、白ひげ海賊団のような組織とは違う、個を尊重する組織を「ワンピース経営」で確立できないかと現在の会社作りに生きています。
―髙石さんが目指す「ワンピース経営」とは違う、白ひげ海賊団のような組織づくりとはどのようなものですか?
白ひげ海賊団は各部署を統括するトップがいて、中間管理職がいてという、明確な指揮系統を持った、いわゆるトップダウン的な組織です。各自を一つの機能として会社組織に組み込み、各トップが戦略に基づいて指示をして動く組織が白ひげ海賊団の組織形態だと思います。
会社規模や組織の成熟度によってグラデーションはあると思いますが、大企業でもスタートアップ企業でも、指揮系統を作って組織マネジメントしているところは多いのではないでしょうか。
弊社はそうした組織形態・前提の真逆を行き、新しい組織モデルを作りたいと思っています。
―「ワンピース経営」に取り組む御社の組織には、どのような特徴がありますか?
社員それぞれが「Will」を持ち、互いに干渉し合わず自由に動くことを大事にして、完全フルリモートでの勤務や、あえて組織のルール・レギュレーションも作らない組織作りをしています。
組織を良くするためでもルールを敷いてしまうと、自由な組織作りを阻害することもあるので、非効率かも知れませんが、こうしたやり方を取っています。
そのように、普段は自由に活動していますが、例えばルフィが「ここを救うんだ!」と、共通の目的を掲げた瞬間、麦わら海賊団はそれぞれの個性を発揮してまとまる組織です。社内でも「ここは『ONE PIECE』ならこうだよね」と、作中の登場人物や展開に喩えて説明することも多いですね。
―個々の自由度がとても高い組織運営だと感じましたが、「ワンピース経営」における課題や障壁はありますか?
基本的に組織戦略の定石とは真逆となる、難しい方法で組織作りをしている自覚があるので、常に課題は感じています。
具体的には何か一つ、注力したい事業があるときに、最短で進められるようにリソースを集中させるのは難しいです。また、完全リモートワークなので普段みんながどこにいるかわかりづらく、コミュニケーションを取りにくい問題もあります。
ただ、「本来こうあるべき」というやり方を選択すると、新しい組織モデルは生まれないと思うので、非効率でもひたすら新しい形を目指して検証しながら取り組んでいる状況です。
―では、髙石さんと漫画『ONE PIECE』との出会いを教えてください。
『ONE PIECE』を読み始めたのは、小学生のときです。昔から漫画は大好きでめちゃくちゃ読んでいましたが、なかでも『ONE PIECE』にすごくハマって、何度も読みました。それが大人になっても続いていて、作中に登場する海賊団を組織に喩えられたり、ビジネスに活かせる考え方が詰まっていたりすることに気付き、さらに好きになりました。
また、『ONE PIECE』が一番の軸ではありますが、その他のアニメなどからも経営や組織作りに必要なエッセンスを学ぶことはあります。
社内での会話にも『ONE PIECE』のシーンに喩えて話すことがあるので、面接時にも『ONE PIECE』を読んでから入社してほしいと伝えています。
―組織を作るうえで、わかりやすい共通認識を作る部分にも役立っているのですね。
さまざまな経営学についても学びましたが専門用語も多く、一般的にわかりづらい・伝わりづらい内容もあります。社内のメンバーに共通認識として話すには、わかりやすいものが必要です。
そういう意味では漫画やアニメに出てきたシーンやキャラクターを取り上げて説明すると伝わりやすく、社内の指針としても共通解を持ちやすくていいと思います。国民的人気作を社内の共通認識に使うのはとても良い方法だと実感していますね。
―「ワンピース経営」を実践して、社内の変化や効果を感じた点があれば教えてください。
完全リモートも可能で、多種多様な人が集まる組織作りをしているため、さまざまなバックボーンを持つ人が集まっています。お互い干渉し合わずに結果を出せる組織作りは、能力で人を集めればそれほど難しくないように思います。でも、自分が目指す組織は能力だけで人を選びません。
なかには優れた能力を持つメンバーもいますが、ビジネス経験のない人も成長が早いと感じます。それぞれのバックボーンを尊重し、一般的な会社では適応し難い人でもここでは働けて、高いパフォーマンスを発揮してくれることがあります。
それは、普通の会社員をしているだけだと得られないエッセンスを持つ人が集まっているからです。
お笑い芸人や俳優をやりながら、あるいは海外でインフルエンサーのプロデュース事業をやりながら参加しているメンバーもいますが、彼らは一般的な会社では自身のもつ力を十分に発揮できません。
しかし、弊社では組織のルールに縛られず、自身の持つエッセンスを活かしたイノベーションを起こしやすい環境です。その結果、新しい事業の切り口を発見したり、アイデアが生まれたりといったことが起きています。採用の際は、技術や能力よりも弊社に合う人物像であるかも重視しています。
―一緒に仕事をするメンバーは、どのような基準で選ばれていますか?
言語化できていない部分もあるのですが、自分の考えを押しつける人や、厳格なルールのもとに活動することを重視する人は避けています。公平性や平等性を重んじる人は、うちの組織では合わないと感じています。
とはいえ思いやりがないと組織が無法地帯になるので、人への優しさや相手を尊重できるかは、採用で大切にしているポイントです。
社員も業務委託で関わるメンバーも、能力の高さではなくうちの組織に合うかを重視し、互いに干渉し合わず仲よくやっています。
土地・企業・人材の3つをテーマに価値向上を目指す
―御社が注力していることや、今後の展望をお聞かせください。
創業から今期まではブランディング事業が大きく成長し、企業の土台作りができました。今期は社員をもっと増やして、自分たちのミッション・ビジョンを意識した1年にしたいです。
社内で伝えている方向性としては、世界を代表するバリュー企業を目指しています。土地・企業・人材の3つの価値を上げることがテーマです。
土地の価値については、すでに子会社でラグジュアリーホテルの開発プロジェクトが動いています。あえて地方に高級志向のホテルを建てる取り組みです。
日本の企業の8割を占める、中小企業の価値が向上しないと、今後の日本経済は衰退をたどるでしょう。企業の価値向上としては、中小企業がどんどん価値を発信できるブランディングに注力します。
少子高齢化の状況では、パフォーマンスの高い人材を増やさないと、世界を相手に戦えません。人材の価値を上げる取り組みも重要です。学校法人と一緒になってアントレプレーナーを育てるプロジェクトも行なっています。
いずれもブランディングが関わってくるので、ブランディング事業を根幹として引き続き取り組みながら、今期は3つのプロダクトを動かしたいです。土地の価値についてはすでに事業を確立できているので、残りの2つはプロダクトを固めて、今期中にリリースしたいと考えています。
―読者へのメッセージがあればお聞かせください。
先日、今期の飛躍を誓う意味でホームページを全面リニューアルしました。
創業からずっと、ゼロから会社を興すことに注力していて、会社の価値作りには本腰を入れられませんでした。ブランディング事業に使えるリソースも限られていたため、積極的な営業はせず、お声がけいただいても断ることもありました。
しかし、今期は自分たちの持つブランディングノウハウを出し惜しみせず、日本のために全国展開すると決めています。価値創造につながるサービスをどんどんリリースしていきますので、弊社の取り組みに注目いただけると幸いです。
―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。
株式会社BuddyCompass
気になるけど、なかなか話しづらい。けどとても大事な「お金」のこと。 日々の生活の中の身近な節約術から、ちょっと難しい金融知識まで、知ってて得する、為になるお金の情報を更新していきます。