正看護師と准看護師の違いとは?それぞれの年収や仕事内容の違いを解説
医療の現場で働く看護師の資格には、正看護師と准看護師の二種類があります。日本でも超高齢化社会となり、より多くの看護師が必要とされています。
この記事では、正看護師と准看護師の資格・仕事内容・年収・キャリアプランなどの違いを一つずつ解説していきます。
これから看護師の資格を取ろうとお考えの方は、正看護師と准看護師の違いを理解し、それぞれのメリット・デメリットを知った上で、どちらの資格取得を目指すのが今の自分の状況に合っているのかを考えると良いでしょう。
正看護師と准看護師とは
正看護師と准看護師はどのように違うのでしょうか。まず資格を発行する機関が異なりますし、必要となる最終学歴にも違いがあります。
資格 | 資格要件 | 最終学歴 |
---|---|---|
正看護師 | 厚生労働大臣が発行する国家資格 | 高校卒業 |
准看護師 |
都道府県知事が発行する資格 国家資格ではない |
中学卒業 |
正看護師は厚生労働大臣が発行する国家資格ですが、准看護師は都道府県知事が発行する資格で国家資格ではありません。
また、資格取得に必要な学歴も正看護師は高校卒業ですが、准看護師は中学卒業です。
准看護師の資格を発行するのは各都道府県知事ですが、資格を取得した都道府県でしか働けないということはありません。日本全国どこでも勤務可能です。
正看護師と准看護師の資格取得方法の違い
正看護師と准看護師では資格の取得方法や履修すべき授業時間が異なります。正看護師になるための看護学校は全日制の学校しかないため、働きながらの通学は難しいでしょう。
資格 | 資格取得方法 | 学校の形態 | 授業時間 |
---|---|---|---|
正看護師 |
看護大学(4年) 看護短大(3年) 看護専門学校(3年) |
全日制 | 3,000時間以上 |
准看護師 | 看護師養成所(2年) | 全日制・半日制 | 1,890時間以上 |
正看護師の資格を取得するには4年制の看護大学に通うか、3年制の看護短大もしくは看護専門学校に通い、3,000時間以上の授業を受けなければなりません。
最短でも3年以上の学校に通わなければいけない正看護師に対し、准看護師は2年間看護師養成所に通い、1,890時間以上の授業を受ければ、受験資格を得られます。
また、看護師養成所には半日制のところもあるので、働きながら准看護師の資格取得を目指すことも可能です。
正看護師、准看護師ともに資格取得試験は年1回、毎年2月頃に行われます。
正看護師と准看護師の仕事内容の違い
正看護師と准看護師の仕事内容に大きな違いはありません。正看護師と准看護師の業務内容や勤務場所を表にまとめました。
資格 | 業務内容 | 勤務場所 |
---|---|---|
正看護師 | 自己判断で医療行為、患者のケアができる |
どこの医療機関でも勤務可能 |
准看護師 |
医師・正看護師の指示のもと医療行為、患者のケアができる |
どこの医療機関でも勤務可能 ただし、総合病院や大学病院での求人は少ない |
准看護師も正看護師と同じように血圧・脈拍の測定、採血、注射、手術補助、カルテ入力などの業務を行えます。患者さんの食事や入浴の補助も業務に含まれています。
正看護師と准看護師の大きな違いは、自己判断で医療行為ができるかどうかです。准看護師は必ず医師か正看護師の指示に従って医療行為をしなければいけません。
いくら経験を積んでいても、正看護師に指示を出すことや、正看護師の新人教育をすることはできません。
准看護師もどこの医療機関でも働けますが、自己判断が求められることが多い病棟勤務などの求人は少ない傾向にあります。
一方で、診療所やクリニックなどの日勤勤務、パート勤務では准看護師の求人が多く、准看護師は自由度の高い働き方が可能です。
正看護師と准看護師の平均年収の違い
厚生労働省が実施した「令和3年 賃金構造基本統計調査」(※1)によると正看護師の年収(※2)は平均4,986,200円、准看護師は平均4,067,200円でした。
業務範囲に大きな差はないものの、年収にすると90万円以上の差があります。
働く場所でも給与や賞与は異なります。病棟勤務であれば夜勤もあり、その分給与も高くなりますが、看護ステーションやクリニックなどで日勤で働くと夜勤がない分給与は低くなります。
医師や看護師の指示のもとで働く必要のある准看護師は、日勤勤務やパート勤務で働く人も多いため、年収に差ができてしまうと考えられます。
※2 年収=(きまって支給する現金給与額×12)+年間賞与その他特別給与額
正看護師と准看護師のキャリアプランの違い
正看護師と准看護師のもう一つの大きな違いはキャリアプランです。正看護師は管理職に就くことができます。管理職として職場全体をまとめたり、 看護計画を立てたりできます。
また、専門看護師や認定看護師の資格を取ってキャリアアップすることも可能です。
准看護師は医師や正看護師の指示を受ける必要があるため、経験年数を積んでも管理職にはなれません。勤続年数が長くなっても、正看護師の指示を受けることになります。
しかし、キャリアアップを諦める必要はありません。准看護師も、正看護師の資格取得が可能です。
准看護師は学校に通う期間も短く、半日制のコースもあるため、働きながらや子育てしながら資格取得を目指せます。
また、中学卒業や高校中退でも資格を取れるので、正看護師と比較すると資格取得のハードルが低く、いち早く現場経験を積めます。
自分の置かれている状況や事情に合わせて、まずは准看護師の資格を取って看護師としての経験を積むのか、キャリアアップを見据えて正看護師の資格取得を目指すのかを選ぶと良いでしょう。
正看護師と准看護師の求人の違い
大学病院や総合病院などの大きな病院では、正看護師を積極的に採用する傾向にあります。そもそも准看護師を採用していない病院もあります。
それは、日本看護協会が将来的に「准看護師」資格を廃止して、すべてを看護師資格として一本化する構想を打ち出していることと関係しているかもしれません。
一方で、診療所やクリニック、介護施設などの予算の限られている施設では、給与水準が低い准看護師を積極的に採用しています。
准看護師の求人では日勤勤務やパート勤務、フレックス勤務など、働き方の幅が広く、自分の生活スタイルに合わせた働き方が可能です。
正看護師にはない准看護師のメリット
准看護師は正看護師と比較して、資格取得のハードルが低いというメリットがあります。
人生において看護師を目指したいと思うタイミングは人それぞれです。働きながらや子育てしながら、介護をしながら看護師になる勉強をしたいという方もおられることでしょう。
ここでは、具体的に准看護師の資格取得を目指すメリットを2つご紹介します。
- 資格取得までの期間が短い
- 高校を卒業していなくても資格取得が可能
資格取得までの期間が短い
正看護師の受験資格を得るためには、3~4年の看護学校で3,000時間以上の授業を履修するしなければなりません。
働いている方や子育て中の方など時間に限りがある方にとって、これは非常に高いハードルになります。
しかし、准看護師の受験資格は2年の看護師養成所で1,890時間以上の授業を履修すれば得られます。
しかも、半日制のコースもあるので、時間に制約のある方でも勉強するための時間を取り分けやすいでしょう。
1,890時間の授業を2年間で履修するので、通常は全日制のコースだと週3日、半日制のコースだと週5日、学校に通うことになります。
正看護師を目指すとなると、現在の仕事を辞めてから看護学校に通わなければいけない上に、3~4年の年月を要するため、一度社会に出てからとなると、難しく感じる方も多いでしょう。
その点、准看護師であれば、現在の仕事を続けながら最短2年で受験資格を得られるので、資格を取りやすいと言えます。
高校を卒業していなくても資格取得が可能
准看護師の資格は戦後の看護師不足の時代、当時はまだ女性が高等教育を受ける機会が限られていたことを背景に作られました。そのため、資格取得に必要な最終学歴は「中学卒業」となっています。
現在では、ほとんどの女性が高等教育を受けられるようになっています。しかし、中にはさまざまな事情で中学卒業や高校中退の方もおられることでしょう。
准看護師であれば、中学卒業の学歴があれば、看護師養成所へ2年通うことで、受験資格を得られます。
学歴に関するハードルが低く、より多くの人に門徒が開かれていることも准看護師のメリットといえます。
准看護師から正看護師になる方法
准看護師から正看護師になるには大きく分けて3つの方法があります。置かれている状況や意思の強さなどに合わせて、自分に合った学習方法を選びましょう。
課程 | 期間 | 必要な要件 |
---|---|---|
全日制 | 2年 |
准看護師の資格 中学卒業の場合は、3年以上の実務経験 |
定時制 | 3年 |
准看護師の資格 中学卒業の場合は、3年以上の実務経験 |
通信制 | 2年 |
准看護師の資格 7年以上の実務経験 |
全日制の看護学校で正看護師を目指す
准看護師の資格を持っているなら、最短で正看護師になれる方法です。最終学歴が中学卒業の方は、3年以上の実務経験が必要ですが、キャリアアップの最短コースです。
全日制なので、勉強に集中できる環境で、より多くの時間を学習に費やせます。挫折率が低く、確実性の高い方法です。
ただし、日中に通学する必要があるので、現在の仕事は休職、もしくは離職しなければなりません。そのため、貯金があったり、奨学金制度を利用できたりする方におすすめの方法です。
定時制の看護学校で正看護師を目指す
経済的な理由などで現在の仕事を続けながら、正看護師を目指したい方には定時制の看護学校に通うという方法もあります。
昼間定時制と夜間定時制があり、3年間通わなければなりませんが、働きながら勉強できます。
1、2年次は座学が中心で、3年次は実習が中心です。そのため、3年次は働きながら実習をこなさないといけないため、体力的な負担がかかるという点は知っておきましょう。
また、土日に実習を行うことも多いので、スケジュール管理も大切です。現職の病院の理解や協力が得られないと難しいかもしれません。
通信制の看護学校で正看護師を目指す
准看護師としての実務経験が7年以上ある方におすすめなのは、通信制の看護学校に2年間、通うという方法です。
座学は主に通信教材を使って自分で勉強します。実習は病院などでの「見学実習」のほか、登校して「面接授業」や「事例検討」などが行われます。
登校日は学校によって異なりますが、2年間で50日以上と決められています。
通信制だと、時間に制約のある方でも学びやすいというメリットがありますが、忙しい予定の中で自分で学習時間を確保しなければいけないため、挫折率も高くなります。
2年間、集中して学ぶ時間を取り分けるという強い意志が必要です。
准看護師から正看護師になることは可能です。しかし、いずれの方法で正看護師を目指すとしても、道のりは決して楽ではありません。「なぜ正看護師になりたいのか」という強い動機づけが必要です。
正看護師と准看護師におすすめの転職サイト
正看護師と准看護師の方におすすめの看護師転職サイトをご紹介します。
キャリアアップを目指したい方やもっと自分のライフスタイルに合った勤務形態で働きたい方など、転職をお考えの看護師の方はぜひ参考になさってください。
看護roo!
看護師業界に特化した転職サイト「看護roo!」は、株式会社クイックが運営する国内最大級の求人数を誇る人気のサイトです。
正看護師の求人数(※)は40,000件以上、准看護師の求人も24,000件以上を掲載していて、正看護師・准看護師を問わず、豊富な求人の中から自分の希望に合った職場を探すことができます。
勤務形態・施設形態・担当業務などからも検索でき、「土日休み」「託児所あり」「ブランク・未経験可」などの条件も追加して検索可能。細かな検索項目があるので、自分に合った求人を見つけやすいのが特徴です。
また、看護roo!は手厚い転職サポートでも定評があります。会員登録することで、以下のサービスが無料で受けられます。
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- 円満退職のアドバイス
そのほか、「転職の希望条件こだわり診断」「性格から解る職場診断」「キャリアパートナー診断」「看護師さんの転職体験レポート」など、転職に役立つコンテンツも満載。初めての転職で不安な方でも心強いサポートで安心できます。
レバウェル看護(旧:看護のお仕事)
レバウェル看護はレバレジーズメディカルケア株式会社が運営する看護師転職サイトです。
看護師さんの転職だけでなく、サイト内に看護師さんの相談窓口を設け、総合的に看護師さんの悩みや疑問を幅広く相談できるサービスを提供するため、「看護のお仕事」から「レバウェル看護」へとサービス名が変更になりました。
レバウェル看護はオリコン顧客満足度調査で「担当者の対応」「紹介案件の質」「交渉力」の3項目で第1位(※1)を獲得した、多くの人に認められている看護師転職サイトです。
取り扱っている求人数(※2)も多く、正看護師の求人は83,000件以上、准看護師の求人は49,000件以上あります。妥協せずに、自分の希望条件に合う求人を見つけられます。
看護師さんの働きやすさを大切にしている看護師転職サイトなので、年間4,000回を超える職場訪問によって得られた、求人施設の詳しい内部情報を事前に教えてもらえます。そのため、応募前に自分に合っている職場なのかを見極められます。
求人の紹介はLINEやメールで送られてきます。相談はLINEでも可能です。そのため、在職中に転職活動をする人でも自分のペースで進められます。
※2 レバウェル看護公式HP 2023年2月時点
マイナビ看護師
「マイナビ看護師」は、マイナビやマイナビ転職で知られている、株式会社マイナビが運営しているサイトです。
「経営の安定性」など78項目の厳しい審査基準を満たした事業者だけが受けられる「職業紹介優良事業者」の認定を受けているため、安心して利用できる看護師転職サイトです。
マイナビ看護師では公開されている求人数(※)だけでも、正看護師の求人を43,000件以上、准看護師の求人も26,000件以上保有しています。さらに、マイナビグループの圧倒的なネットワークで非公開求人も満載です。
実際、マイナビ看護で取り扱っている求人の30%前後は非公開求人です。これだけの求人数があれば、あなたの希望に合った職場もきっと見つけられるでしょう。
マイナビ看護師は全国にオフィスを展開しており、病院だけでなく、クリニック、訪問看護、介護施設など幅広い施設形態から自分に合った仕事を紹介してもらえます。
また、求人施設の採用担当者や現場で働く看護師さんにも話を聞き、給与・有休消化率・待遇など職場環境についての詳しい情報を持っているので、入職してからの「こんなはずじゃなかった」というミスマッチを防げます。
まとめ
正看護師と准看護師はどのように違うのか、資格や仕事内容、年収、キャリアプラン、求人の違いなどを解説してきました。
正看護師は最短で21歳でなれるのに対して、准看護師は最短で17歳で医療の現場に立てます。准看護師の方が資格取得のハードルが低いというのはメリットと言えるでしょう。
しかし、年収は正看護師と比較すると平均で90万円以上低く、キャリアップも難しい准看護師は40年働いたとして、生涯年収では3,600万円もの差が開いてしまいます。
業務範囲に大きな差がないことを考えると、キャリアップを望む准看護師の方は正看護師の資格取得を目指すというのも一つの選択肢として考えられるでしょう。
自分のライフプランやキャリアプランに合わせて、正看護師として働くか准看護師として働くかを選ぶことができます。
気になるけど、なかなか話しづらい。けどとても大事な「お金」のこと。 日々の生活の中の身近な節約術から、ちょっと難しい金融知識まで、知ってて得する、為になるお金の情報を更新していきます。