ICT活用でユニバーサル社会の実現を!社会福祉法人プロップ・ステーションにインタビュー PR

ICT活用でユニバーサル社会の実現を!社会福祉法人プロップ・ステーションにインタビュー

プロップ・ステーションは、パソコンやインターネットを活用し、チャレンジド(障がいを持つ方)の就労支援をしている社会福祉法人です。

まだ、世の中に情報通信技術が普及する前から、将来を見据えてチャレンジドの技術習得と就労を支援してきました。最近ではドローン操縦技術にも着目し、新たな業界への挑戦も積極的に行っています。

また、障がいを持つ方を「障がい者」ではなく、彼らの挑戦や可能性に着目して「チャレンジド」と呼称する同法人。今回は理事を務める「ナミねぇ」こと、竹中ナミさんから活動を始めた経緯や取り組み内容をお伺いしました。

草の根活動から30年続くプロップ・ステーション

ビルゲイツさんとの写真

―本日はよろしくお願いします。まずは、社会福祉法人プロップ・ステーションの活動内容や法人設立の経緯を教えてください。  

社会福祉法人プロップ・ステーションは、草の根の活動をしていた時代を含め30年になるグループです。現在の社会福祉法人になってからは25年ぐらいになります。障がいを持つ方の就労支援がおもな活動です。

障がいを持つ方は周りに支えられて生きるだけでなく、自分たちも社会を支える側に回りたいと思っていることを知り、それを実現できる社会を目指して取り組んできました。

重い障がいを持っていて介護が必要な人も、新しいデジタル技術を活用して就労すれば、タックス・ペイヤー(納税者)になれます。そんな社会を目指すチャレンジド(障がいを持つ方)の方々と一緒に活動を始めました。

活動を始めた当初はインターネットやパソコンなどの情報通信技術に着目し、チャレンジドへの就労支援をしていました。現在はドローン活用やスウィーツ作りなどの分野にも活動を広げています。

―30年前では、情報通信の技術も機器も今とはまったく違う状況だったと思います。そのようななかで、なぜ情報通信に着目されたのですか?

30年前というと日本に情報通信技術が入ってきたばかりで、一般家庭にパソコンもなければスマートフォンもありませんでした。しかし、「これからはパソコンが仕事に使われる」と人々が口にするのをよく耳にしていたので、気になってはいたんですね。

詳しく話を聞くうちに、重い障がいを持つ方でもパソコンを使えば仕事ができるのではないかと考え始めました。体を動かせなくても指一つでキーボード入力ができたり、目が見えなくても音声でパソコンを使うことができます。

重い障がいがある方が働けないのは、仕事場へ行けないことも大きな理由です。だったら、仕事のほうが来てくれればいいと。情報通信技術を使えばそれが可能になると思いました。

そんな折にタイミングよく、兵庫県西宮市から「行政として初めてパソコン通信を始めるので、福祉分野のパソコン通信をナミねぇに担当して欲しい」とお声がけいただきました。

「なんで私がパソコンを?」とも思いましたが、実際に、周りの重い障がいを持つ方が音声でパソコンを使ったり、体を動かせなくても指先一つでキーボード入力したりする姿をみて、情報通信技術を活かして「チャレンジド」の方々が働ける世の中にしたいという考えが固まりました。

徹底的に最先端の技術を使ってやってみようと取り組み始めたのが、プロップ・ステーションの前身です。

活動を始めてからいろいろな形で活動内容を発信していると、情報通信技術に関わる大手メーカーの方の目に止まり、応援してくださるようになりました。

社会福祉法人になるときにはマイクロソフト創設者のビル・ゲイツさんや、マイクロソフト日本法人の社長をされていた成毛眞さんが1億円以上の基金を寄付してくださって、本当に多くの方に支えられてきたと思います。

私は情報通信の素人でしたが、情報通信の将来に期待する人たちとそれを使って仕事をしようとする人たち、応援してくださった情報通信業界が三位一体となったからこそ、活動を続けてこられたと思い、とても感謝しています。

娘の存在が活動のきっかけに

―ナミねぇがチャレンジドの就労支援を始められたのには、何かきっかけがあったのでしょうか?

自分の娘が重い障がいを持って生まれたのが大きなきっかけです。

親である私はどうしても先に亡くなってしまいます。自分が亡くなったあと、残された子どもを社会は守ってくれるのか、そういう国や社会であってくれるのかと、親として疑問を持ちました。

その当時もすでに「少子高齢社会がくる」と言われ、日本の経済力が下がっていくという話がありました。そう考えると、働いて税金を納められる人が一人でも多くないと、日本経済は回らなくなります。

元気な人はすでに働いているので、それ以外で働く人、納税者を増やすにはどうすればと考えていたところ、娘を通じて重い障がいを持つ仲間ができました。

会って話を聞いてみると、重い障がいを持っていても働きたい・人から認められたいと思っているし、「あなたに期待している」と言われたいと思っているんですよね。

だから、福祉は重い障がいを持つ人に優しくするだけではなくて、その人達がきちんと働ける環境や活躍の場を用意する役割もあると気づきました。

―娘さんをはじめ、周りにいらした方の思いを受けて活動を広げてきたのですね。

そうですね。みんなが周りの幸せを願って、一人ひとりが自分にできる範囲の努力をしてきたからこそ、大きな力になったのだと思います。

情報通信技術だけでなく近年はドローン活用にも注力

ユニバーサル・ドローン協会での活動

―現在、注力されている活動についてお聞かせください。

30年前に活動を始めた頃は情報通信技術を使ったチャレンジドの就労支援をしていましたが、ここ数年はドローンの活用にも注力しています。

3、4年前、ドローンに出会い「パソコンの次は絶対にこれや!」と感じたんですよね。それで手に障がいを持つ女性に、足でドローンを操縦することに興味がないかと聞いたところ「私、やってみたいです」と言ってくれたので、当時中学生だった彼女と一緒にドローンを学ぶことが決まりました。

ドローン分野での人脈がなかったため、指導してくれる良い人がいないか必死になって探しました。パソコンのときもですが、私は技術を身につけて一流を目指すには、超一流の方に教えてもらうべきだと思っています。

それで探し回った結果、国際ドローン協会の代表理事を務められている榎本幸太郎さんにたどり着いたんです。発信されている内容を見て、この方ならと思い、早速メールでアポイントを取りました。

神戸から東京のオフィスへ伺い、10分も話さないうちに榎本さんのほうからチャレンジドにドローン技術を伝授すると言っていただけました。「これは僕の仕事かもしれない」と真剣に向き合って下さり、自費で神戸まで来てドローン技術を指導いただきました。

榎本さんの指導を直接受けられる、本当にすごい講習会を実現でき、人の縁に恵まれたと思います。

現在ドローン操縦には国家資格ができ、2022年から国家試験が始まっています。一緒にドローンを学び始めた女性はこの国家資格「一等無人航空機操縦士」を日本最年少の16歳で取得するという快挙を成し遂げました。

彼女は手に障がいを抱えていますが、その他のハンディがあっても技術を身につければ職業に就き、次の人材を育てる指導者になれると思います。

また、発達障害を持つ18歳の男性も、同じく一等無人航空機操縦士の資格をめでたく取得しました。

現在の障がい者雇用制度は、会社規模に応じた人数を雇う義務があって採用しているという状況です。でも、パソコンやドローンを活用すれば、チャレンジド自身が職業を開拓し、自分の生きる道を広げていけると思います。

とくにドローンは新しい産業を担うとともに、有資格者がまだ少ない段階からチャレンジドもその業界へ挑戦できることは、大きな可能性につながるのではないでしょうか。

一等無人航空機操縦士資格を取得した女性の写真や新聞記事

超一流パティシエから学べる「神戸スウィーツ・コンソーシアム」

―神戸スウィーツ・コンソーシアムも主催されているそうですが、こちらの活動についても教えていただけますか。

神戸スウィーツ・コンソーシアムは、日清製粉さんと一緒に取り組んでいる活動で、今年で16年になります。

17、8年前に大阪で講演をしたとき、日清製粉の社員さんが参加されていて、講演後に「自分の会社も活動に参加できないか」と声をかけていただきました。

あれよあれよという間に社長さんや会長さんにまで話が通り、社会貢献活動に熱心な会社ということもあって1年もしないうちに話がまとまりました。

神戸は美味しいパン屋さんが多く、しかも関西にはお好み焼きやたこ焼きなどの粉もん文化があります。それで粉もんからスウィーツへと話が膨らみ、全国の福祉作業所でパンやお菓子作りをしているチャレンジドの方々が、超一流のパティシエから学べる講演会を日清製粉さんと一緒にやろうということになりました。

そこで鶏卵業界や製乳業界、お菓子作りの素材を扱うメーカーさんたちに賛同いただけたのは、日清製粉さんが活動に加わっていたからです。私が声をかけたのでは多分、実現しなかったと思います。

また、お菓子業界は社会貢献活動をしていても、力を合わせて1つの取り組みをしたことがなかったそうです。それが日清製粉さんを中心に一致団結し、全国各地でお菓子作りができる調理室を借りてチャレンジドの方々が学ぶ機会をつくることができました。

指導に来ていただいている先生方も超一流で、プロジェクトのためにレシピの詳細を惜しげなく提供くださっています。日清製粉さんの活動ならと、ボランタリーに協力してくださってありがたいです。

チャレンジドがタックスペイヤー(納税者)になりたいと、意欲を持って本気で取り組む活動は、みんな応援したくなるんだろうと思います。私自身も、やっていてますます元気になれる活動です。

今後もチャレンジドの活躍につながる活動を継続したい

―今後予定されている活動があれば、お聞かせください。

お話してきました通り、基本的に私がやってきた活動はほとんどは出会いから始まっているんですね。私自身がすごいアイデアを持っていて、企画力があって実現してきたというより、「こんなことができたら、きっとすごいよね」と思ったとき、必ずその分野の第一線にいる一流の方と出会えてきました。

だから次に何がしたいとか、具体的な計画があるわけではありません。私はとにかく、チャレンジドの方が色んな分野で活躍できればと思い、活動しています。

次に何が来るか今ははっきり見えていませんが、チャレンジドの方々とお付き合いしていると、次はこういうものが必要なんだろうと見えてくるものです。それが見えたとき、どんな方が現れ、どんなステップがあるだろうと、ワクワクしながら待っています。

チャレンジドが活躍するという目的に向かって、とにかく色んな分野に挑戦し、結果を出していくことは、これからも変わらないと思います。

障がいの有無にかかわらず活躍できる、元気な国と社会を目指して

―読者へのメッセージがありましたらお聞かせください。

まずは自分の娘に感謝したいです。娘を授からなければ、多くの気付きを得る機会もなかったでしょう。言葉だけでは伝えられない部分もあるので、感謝の気持ちを込めて娘をギュッと抱きしめます。

重い障がいがあっても仲間を作って一緒に取り組み、結果を出せれば誇らしく、生き生きとした気持ちになれます。読者の方も「自分ができることをやりたい」「何かないだろうか」と思ったとき、私達の活動から気づくことがあればありがたいです。

また、今後も私達は活動を続けていきたいと思っていますので、ヒントになることがあればぜひ教えてください。「ナミねぇ、次はこれが来るんじゃない?」と、ご意見いただければすぐに伺いますので、アイデアをいただけると嬉しいです。

障がいがあろうがなかろうが、元気な国・社会であるよう、一緒に力を合わせていきたいと思います。これからも社会福祉法人プロップ・ステーションの活動へ、応援よろしくお願いします。

―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

社会福祉法人プロップ・ステーション
理事長

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気になるけど、なかなか話しづらい。けどとても大事な「お金」のこと。 日々の生活の中の身近な節約術から、ちょっと難しい金融知識まで、知ってて得する、為になるお金の情報を更新していきます。

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