目指すのは成長格差のない社会!育伸会が取り組む「子どもの習い事支援」活動とは
お子さんから「習い事をやってみたい!」と相談されたこと、どのご家庭でも一度はあるのではないでしょうか。
お子さんが抱く「新しいことへ挑戦したい」という前向きな気持ちは、何よりも大切にしたいもの。でも、習い事をさせるにあたっては、毎月の月謝や道具代なども気になりますよね。
そういった経済的問題を支援するために活動しているのが、NPO法人「育伸会」です。今回は、子どもたちの学びや経験の機会をサポートする「育伸会」の活動内容を、理事長である保 公介さんに取材しました。
現在取り組んでいる、「月謝サポート」による支援に加えて、もっと多くの子どもをサポートできるようオープンした「寄付型ショッピングサイト」についてもお話をお伺いしてきましたので、ぜひご一読ください。
子どもの経験と学びの場「習い事」を月謝の面からサポート
―本日はよろしくお願いいたします。さっそくお伺いしますが、育伸会はどのような活動をされている団体なのでしょうか?
保 公介さん(以下 保):私たちは、ひとり親家庭を対象に、経済的理由から習い事に通えない子どものサポートを目的とした団体です。
現在は、サッカーやバスケットなどスポーツを中心に習い事の月謝をサポートする「ONE+」に取り組んでいます。
具体的には、支援金をご家庭にお渡しするのではなく、習い事を運営する方々に月謝を直接支払う「月謝サポートスタイル」での支援を行っています。
支援金は、運営目的に賛同していただいた企業や個人からのご寄付、行政のお金を運用しています。
―サポートを受けるための条件や注意点などはありますか?
保:サポートを受けるために、特に厳しい条件はありません。
児童扶養手当証明が必要なので収入の制限はありますが、ほかにひとり親家庭で子どもが小学生までであることが条件です。
- ひとり親世帯(母子・父子問わず)
- 4歳~12歳までの小学生
- 児童扶養手当証明を提出できる方
- スポーツの習い事
現在は月謝の1万円、1種目のみをサポートしており、シューズやラケットなどの費用は対象外です。
ちなみに、スポーツ全般を対象としており、競技の種類は問いません。
また、今はスポーツの習い事に限定していますが、今後は文化系の習い事にもサポートの手を広げていきたいと考えています。
経済的サポートで子どもの可能性を広げたい
―育伸会を設立した経緯を教えてください。
保:私の本業であるお部屋を片づける会社の運営をしていると、仕事柄さまざまな環境のご家庭に触れることが多くあります。
ひとり親家庭の生活や育児負担の現状を目の当たりにしたときに、現状を少しでも楽にできる片づけ以外のサポート方法はないか、と考え出したのがきっかけです。
平成27年度のデータでは、児童がいる全世帯の平均年収は707.6万円となっていますが、母子家庭の年間平均収入は243万円、父子家庭では420万円と、収入の面で大きな差が見られます。
令和3年3月に出た厚生労働省子ども家庭局の調査によれば、ひとり親家庭は令和元年時点で全国に72万世帯いらっしゃいます。多くの家庭が、収入面での悩みを抱えているのではないか。数字を見て、改めて支援への思いを募らせました。
養護施設への寄付も考えましたが、ひとり親家庭の状況を知るにつれて、経済的支援を通じて父母の方々に「余裕」を持ってもらうという選択肢に至りました。
その具体策として思いついたのが、子どもが親の元を離れて外で学ぶ「習い事」の支援です。
習い事サポートを通じて、お子さんには新たな学びの機会を、父母の方々には一人の時間や金銭的な余裕を提供する。こうした思い・目的のもとに育伸会を設立しました。
ほかにも、会社を経営している友人たちにサポート方法について相談したところ、賛同してくれる声が多かったことも設立への後押しになりました。
―経済的サポートの中でも習い事に注目したきっかけはありますか?
保:どの家庭も子育てに関しては、さまざまな悩みを抱えているかと思いますが、厚生労働省の調査でひとり親家庭が抱える悩みの半分以上は、教育や進学であることを知ったのがきっかけです。
子どもが習い事に通えるかどうかは、収入によって大きく左右されやすいものだと思います。時間はあったとしても、生活に余裕がなければ子どもに習い事をさせるのは難しいです。
さらに、習い事は継続してこそ子どもの力になるものが多く、継続できる安定した経済環境が必要になります。
こうした面での子どもの成長格差をなくしたいと考え、習い事のサポートにふみきりました。
経験や学びの機会を収入に関係なく平等に得られるようにし、子どもの可能性をもっと広げるサポートをしたいと考え、習い事の月謝に注目したのです。
習い事は親子のコミュニティ形成にもつながっている
―育伸会の活動への反響はいかがですか?
保:運営開始当初は、月謝サポートで可能なのは経済的な手助けだけだと思っていました。
でも、実際にサポートを開始すると経済的なメリットに加え、子どもが習い事に通い始めたことで保護者も新しいコミュニティに参加できるなど、親子でメリットを感じられる方が多かったのです。
考えてみると、スポーツの習い事は塾のように送り迎えだけではなく、試合など親と子が一緒に行動することが多いですよね。
そのため、子どもが習い事をしている間に、別の保護者とコミュニケーションをとる機会も増え、自然とコミュニティに参加して人間関係を広げることにもつながっているようです。
それに、習い事を通して親子間のコミュニケーションを充実させるきっかけにもなっていると聞き、習い事は子どもを成長させるだけではないのだと気づかされました。
また、サポートを求める方の多さも実感しています。初めての募集は、窓口をInstagramのみに限定したのですが、小規模な受付に多くの申込みがありました。
需要の多さを感じたとともに、やってよかったなと思えた瞬間でもありましたね。
「寄付型ショッピング」という寄附方法
―育伸会の公式サイトには「寄付型ショッピングサイト」というコンテンツがありますが、こちらはどのような目的でオープンされたのでしょうか。
保:現在、育伸会は賛同していただいた会社からのご寄付によって運営されています。
しかし、会社の経営状況によって寄付が難しくなると、サポートする子を厳選しなくてはいけないかもしれません。それでは、安定したサポートができているとはいえません。
そのため、寄附状況に左右されずにサポートを続けたいと思い、「団体の認知度向上」や「団体としての自立」を目的に、寄付型ショッピングサイトをオープンしました。
―寄附の流れや仕組みを教えてください。
保:寄付型ショッピングサイトは、商品を購入していただきその売上の10%を指定した団体に寄付する仕組みです。
購入の流れは一般的なショッピングサイトと変わりませんが、寄付する先を3つの団体から選択できます。
販売する商品は、団体の理事が経営する会社で販売しているものもあります。
今はまだ商品数が少ないのですが、協賛していただける企業・個人の募集を続けており、今後さらに販売商品を増やす予定です。
―手続き不要かつ、買物で寄附ができるという気軽さが魅力ですね。
保:ありがとうございます。寄付をしたことがない方にとって、寄付に伴う手続きなど不安なことが多く、腰が重くなってしまう方も少なくないんですよね。
それに、寄付したとしても寄付の報告があるだけでは、「自分もサポートしている」という実感は沸きにくいです。
実際、私も寄付した際に報告を受けたことがありますが、それだけではサポートできたという感覚が薄かった経験があります。
「寄附型ショッピングサイト」は、商品を購入するだけで気軽に寄付できるほか、寄付金の使い道が明確に示されています。
また、購入した商品が手元に届いたり、実際に使ってみたりすることで、寄附への実感も湧くのではないでしょうか。
寄付へのハードルを下げられるだけでなく、買物を通じてより多くの方に育伸会の存在を知っていただけるのではないか、と期待しています。
育伸会が目指すのは子どもの成長格差のない社会
―今後、育伸会が目指す社会の姿を教えてください。
保:育伸会が目指すのは、子どもが何かに挑戦したいとき、学びたいとき、大人の都合に関係なく誰もが学べる環境を作れる社会です。
子どもたちは、将来大人になりこれからの日本や世界を担う存在です。
オリンピックで金メダルを取るような選手になる子も、総理大臣になる子もいます。世界を飛び回って活躍する子もいるはずです。
ひとり親に限らず、経済的理由からそうした芽を摘むことがないよう、子どもが成長する機会を諦めてしまう家庭への支援をしていきたいと考えています。
―読者の方に向けてメッセージをお願いいたします。
保:現在、育成会では残念ながらスポーツの習い事への支援しかできません。しかし今後は、文化系の習い事にも支援できるようサポートの幅を広げていく予定です。
何よりも、経済的理由で子どもの学びや経験の場を諦めざるを得ない家庭を、少しでも減らしたいと考えています。
もし、家庭の事情により子どもの習い事を諦めているのではあれば、まずは私たちのサポートも選択肢として検討していただけると幸いです。
ー本日は大変貴重なお話をありがとうございました!
NPO法人「育伸会」 理事長
子供が大きくなったのを機に、2017年より本格的にWebライターとして始動。クレジットカードとカードローンを得意分野とし、恋愛・離婚・エンタメ系や商品紹介など、さまざまなメディアのライターを経験。誰もがわかりやすい記事を作成するのを信念に、自分の無知さや語彙力のなさに落胆しながらも、持ち前の探求心を武器に奮闘中。クレジットカードは、楽天カード・Yahooカード・地元のマイナーのカードを利用。キャッシュレスはPayPayとメルペイを利用し、家計を整理するのが目標。