IoTデバイスを活用し、再生可能エネルギーの普及を後押し。Nature株式会社にインタビュー
Nature株式会社は「自然との共生」をミッションに掲げ、再生可能エネルギーで極力賄える世界を作るべく電力にフォーカスを当てて事業を展開しています。
地球温暖化も深刻化していく中で、持続可能な社会の実現に向けて電力のあり方は私たちにとっても、非常に大きなテーマとなっています。
今回は、Nature株式会社代表取締役の塩出 晴海さんに、創業の経緯や同社が展開する「Nature Remo」「Nature Remo E」についてお話を伺いました。
IoTデバイスを活用し、電力の需要をコントロール
―本日はよろしくお願いします。まず、御社の事業内容や沿革についてお聞かせください。
Nature株式会社は、「自然との共生をドライブする」をミッションに掲げ、スマートリモコン「Nature Remo」シリーズ、スマホHEMS(ヘムス)「Nature Remo E」を開発・販売しています。また、電力会社に対し、電力需要を調整するデマンドレスポンス(DR)支援サービスの提供も行っています。家庭のエネルギーマネジメントを後押しして、再生可能エネルギー100%の未来の実現に貢献するためのインフラを作っていきたいと考えています。
好奇心の赴くままに、幼い頃から様々なことに挑戦
―塩出さんは非常にユニークなご経歴をお持ちだと伺いました。ご経歴についてもお聞かせいただけますか?
父親が自分で経営していた会社の子会社として3人くらいで3Dのレーシングゲームを制作する会社を立ち上げたのですが、それがとても楽しそうで。僕自身もレーシングゲームが好きだったし、ターゲットユーザーのど真ん中だったので、かなり巻き込まれてました。一緒にマーケットリサーチで買い込んできたゲームをプレイしたり、ゲームが少しずつできてからはそのフィードバックやバグチェックをしたり。
そういう経験もあって、プログラミングに興味を持ち、父が昔使っていた古いパソコンで遊んでいたら、「インベーダーゲームを自作したら新しいパソコンを買ってやる」と言われて、必死で作りましたね。電源を消したらプログラムが全部消えてしまうような古いパソコンだったので、ノートにソースコードを全部書き出していました(笑)。
学生時代には、インドでIT領域のインターンをしていたことがあります。世界中から30人〜50人ほどのインターン生が集まる中で日本人は1人だけでした。異なるバックグラウンドを持つ仲間たちとインドという異次元の国を毎週末一緒に旅したりして、今思えば人生の中でも一番楽しかったひとときの1つだったかもしれません。
北海道大学を卒業後、スウェーデン王立工科大学の修士課程に進学し、コンピュータサイエンスを学びました。父親の実家が元々海の目の前に建っていたせいか(NKKの工場が建てられたため今では製鉄工場の目の前になっています)、私の名前にも海(うみ)をつけるくらい父親は海に対する思い入れが強く、19歳の頃に父親と一緒にヨットに乗り始めました。そんな父親に就職するまでに一緒に広島から沖縄にセーリングに行かないかと誘われました。
スウェーデンの大学は6月が卒業時期なんですが、「論文を早めに提出するので、早く卒業させてほしい」と教授に交渉して4月頭には卒業し、3か月間のセーリングを実現させました。
その後、新卒で入社した三井物産で6年間働いた後、2014年、ハーバード大学ビジネススクール在学中にボストンで「Nature」を創業しました。
―周りに日本人がいない中、インドでインターンをされていたというお話もありましたが、苦労することはなかったですか?
文化や生活習慣の違いを、あまりネガティブには感じませんでした。違うことやわからないこともありますが、それが新鮮で面白くてもっと理解したいという気持ちの方が強かったです。
―何事もポジティブに捉えるマインドは、元々の性格なのでしょうか?
僕の原動力は好奇心だと思います。例えば、トライアスロンの「アイアンマン」やヴィパッサナー瞑想修行への挑戦も、「やりきったときの自分がどのような気持ち・状態になるのかを知りたい」という好奇心がきっかけでした。
父親の影響で小学生の頃から起業を意識
―Nature株式会社を設立された背景についても、お聞かせいただけますか?
起業しようと思った一番のきっかけは前述の父です。父がゲームソフトを制作して少しずつ形になっていく姿を見たり、事業についての様々な話を聞かせてもらったりする中で、「こういう人生はいいな、将来自分で会社をやろう」と小学生の頃から考えていました。
その後、大学院では電子系やソフトウェア、ネットワークなど、自分が勉強したいことは一通り勉強したので、次は事業について学ぼうと考え、三井物産に就職しました。
今でいうIoTの要素技術を使って海外展開している「ユビキタス事業部」に惹かれたのが入社の決め手でした。結局、現在でこそ広く活用されているIoTも、当時としては時代の先を行き過ぎていたため、入社と同時に「ユビキタス事業部」は廃部になってしまっていたんですけどね。
一方、「人生をかけられるテーマに取り組むような起業家になりたい」と思っていたので、それがきっかけで自分にとってのテーマを再考するきっかけになりました。その中で、起業家として人生をかけて取り組むべきテーマを考える上で大事なことが2つあると考えました。
1つは「自分の感性に響くテーマであること」、もう1つは「自分がビジネスパーソンとしてピークを迎えるであろう、10年から20年後に大きな波が来そうな領域を選ぶこと」です。
先述の「ユビキタス事業部」のように、自分がどんなにやりたいと思っても業界の波が来ていないと事業として展開するのは難しいですからね。
そこで、2008年当時から10年後の2018年頃に波が来るものを考え、行きついたのが「クリーンテック」でした。田舎の島で育ち、3か月間のヨットでのセーリングの経験や北海道やスウェーデンの大学に通っていた経験から、自然は非常に自分にとっても大きなテーマだと感じたんです。
クリーンテックに興味を持ち始め、この分野にキャリアをシフトしようと希望を出したところ、私のスウェーデンの大学院卒業という経歴に興味を持った国際プロジェクト部門の人事担当者のおかげもあり、ありがたいことに電力の事業部への異動が叶いました。
働きながら電力に関して様々なことを知っていく中で、発電側だけでなく需要側を調整する新しい領域があることを知り、自分が取り組んできたIoTやユビキタスも活かせると感じ、最終的にはそれがNature株式会社の設立に繋がりました。
電力供給の仕組みが大きく変化していく中で、需要側の調整力は重要性を増していく
―電力の供給側ではなく需要側に焦点を当てて事業を展開しようと思われたのは、なぜなのでしょうか?
再生可能エネルギーへのシフトが進む中で、「分散化」が非常に重要だと考えているためです。
戸建の家庭で自宅の屋根に標準的なサイズの太陽光パネルを設置すれば、家全体の電力を賄える程度は太陽光で発電することができます。
そのときに課題になるのが、太陽光による発電は、日中のタイミングであるのに対して、電力の消費は朝と夜が中心ということです。各家庭で発電した電力をエネルギーや熱として蓄えて、夜などの発電できないタイミングで使うことができれば、家庭の電力の自家消費の比率が大幅に改善します。
電力会社からの供給ネットワークは既にあるものなので切り離す必要はありませんが、今後は今まで以上に自家発電によって電力が賄われる時代が来るはずです。電力供給の仕組み自体が大きく変わっていく中で、今後はエネルギーマネージメントが今以上に重要になってくると思います。
スマートフォンや声での家電操作を可能にする「Nature Remo」
―冒頭でも少しご紹介いただきましたが、改めて「Nature Remo」とはどのような製品なのか教えてください。
「Nature Remo」は、スマートフォンと連携して専用アプリで家電を操作したり、スマートスピーカーと連携して声で家電を操作したりできるスマートリモコンです。
―「Nature Remo」はどのようなシーンで活用されているのでしょうか?
例えば、寒い時期には帰宅時に部屋が温かくなっているように外出先から遠隔操作で自室のエアコンをつけておいたり、外出時ペットのために自動で部屋の温度や湿度を管理したり、スマートスピーカーと連携させて手が離せないときに声で家電を操作したりと、幅広いシーンで活用いただいています。
―利用者からの反響はいかがですか?
「アプリのUIがわかりやすく、感覚的に操作ができて良い」「スマートリモコン本体のデザインがお部屋のインテリアの邪魔をせずおしゃれで気に入っている」「子育ての助けになっている」「外出先でもペットの体調を気にかけられて安心」といったご好評の声を多く頂いています。
家庭内の電力利用の効率化に役立つ「Nature Remo E」
―では、「Nature Remo E」はどのような製品なのでしょうか?
「Nature Remo E」はHEMS(Home Energy Management System)と呼ばれる製品で、太陽光システムや蓄電池、エコキュートなどのモニタリングや制御ができ、家庭内の電力使用の効率化を図ることができます。
最近では、太陽光の発電量の予測やお湯の沸き上げ時間の自動切り替えなどの機能が追加され、エコキュートの操作がより便利になりました。
現在、電気代が高騰している一方で、電力の買取価格は下落しており、自宅で発電した電力を売るよりも自家消費したいというニーズが高まっています。
―「Nature Remo E」の導入は増えてきているのでしょうか?
はい。今後、これまで以上に導入増加が見込まれる製品だと考えています。東京都や川崎市では新築住宅に太陽光発電設備の設置を義務付ける方針が決まるなど、ようやくマーケットが立ち上がってきて、企業様からの引き合いが非常に多くなってきています。
電気代が高騰する一方で家庭で発電した電力の買取価格が安い現状を踏まえると、エコキュートを導入して太陽光の電力を上手く活用したいというニーズも高まり、今後も「Nature Remo E」が活躍できる場が広がっていくはずです。
―再生可能エネルギーは、今後国としてどれぐらいの普及率を目標としているのでしょうか?
2050年までに50%以上を再生可能エネルギーで発電することを、世界各国が目標に掲げています。
今後10年、20年、30年と、再生可能エネルギーの割合がさらに劇的に増加していくことは、間違いない状況です。
「自然との共生」を目指して
―今後の展望をお聞かせください。
「Nature」という社名の通り、弊社のミッションは「自然との共生」です。再生可能エネルギーで極力賄えるような世界を作っていくことこそが、我々のミッションにあった電力の世界観だと思います。
電力会社が一手に担ってきた発電を家庭単位で行えるようになり、電力業界で大きなパラダイムシフトが起きています。その中で、我々はコンシューマー向けのIoTデバイスからマーケットに参入し、新しい電力のインフラのキープレーヤーとなれるような展開を目指しています。
―最後にマネ会読者へメッセージをお願いします。
マネ会読者の皆様はお金に興味があり、様々な記事を読まれていると思いますが、そのお金と同じぐらい必需品である電力にも少しでも興味を持っていただけると幸いです。
我々の電力の使い方は地球環境にダイレクトに影響していますし、よりサステナブルな社会を作っていけるように、一緒にご協力いただけるとありがたいです。
また、再生可能エネルギー事業がどんどん成長していく中で、Nature株式会社としても現在事業を拡大しています。
事業開発やマーケティング、プロダクトマネージャー、エンジニアなど、様々な方面で積極的に採用を行っています。
ご興味ある方は、ぜひご連絡ください。直接私にDMを送っていただいても構いません!よろしくお願いいたします。
―本日はご紹介いただき、ありがとうございました!
Nature株式会社
代表取締役
気になるけど、なかなか話しづらい。けどとても大事な「お金」のこと。 日々の生活の中の身近な節約術から、ちょっと難しい金融知識まで、知ってて得する、為になるお金の情報を更新していきます。