千葉県勝浦市の歴史を知ることができる「開運トワイライトツアー」とは?その魅力を勝浦市観光協会にインタビュー
千葉県勝浦市は、房総半島の南東部に位置していて、美しい海が魅力的なまちです。おいしい海産物やきれいな風景、釣りやダイビングなどのレジャーを求めて多くの観光客が訪れます。
実は、観光だけではなく房総開拓の歴史とも深い関わりがある地域です。勝浦市では、その歴史を知ることができる「宮司とめぐる遠見岬神社 開運トワイライトツアー」が開催されています。
今回は、主催者である勝浦市観光協会の吉野さんと遠見岬神社の小林宮司にお話を伺いました。
美しい景色と昔ながらの雰囲気を味わえる港まち
―本日はよろしくお願いします。まずは、勝浦市について教えていただけますか?
吉野さん:勝浦市は、夏は非常に涼しく、冬は暖かいところとして知られています。特に、近年は首都圏が猛暑の中で、観測史上一度も猛暑日を記録したことがないため、注目をされています。最近は避暑のお客様も大変増えています。
東京からは、JR外房線の特急列車「わかしお」で、1時間半ほどでお越しいただけます。都心から近い割には自然が豊かで、昔ながらの景色を残しているおもしろい、過ごしやすい町だなと思っています。
漁業が盛んで、勝浦漁港は、県内でも有数の水揚げ量となっています。特にかつおは、全国的にも有名です。
特産品は海産物にちなんだものが多くあります。かつおはもちろんですが、最近は「勝浦灯台沖きんめ鯛」という勝浦の沖で獲れる金目鯛や伊勢海老なども非常に有名です。また、勝浦で獲れた魚を加工した干物はとてもおいしくて、お土産としてもおすすめです。
「勝浦朝市」では、新鮮な海産物や農産物を買うことができます。
ご当地グルメでは、「勝浦タンタンメン」も有名です。現在市内には35店舗あります。
―おすすめの観光スポットはありますか?
勝浦海中公園にある、「海中展望塔」がおすすめです。海の中を泳ぎ回る魚や海底の様子を見ることができます。
2024年2月開始!「開運トワイライトツアー」とは?
―勝浦の歴史を知ることができる「開運トワイライトツアー」があるとお聞きしました。こちらは、どのようなツアーなのでしょうか?
遠見岬神社の夕暮れの境内を歩いてめぐるツアーです。宮司が同行して、歴史についてのお話や、社殿内などを特別にご案内いただきます。神社や勝浦をはじめ房総半島の歴史に触れていただく内容となっております。また、ツアー当日は境内のライトアップも実施します。
このツアーは、2024年2月から開始しました。試験的に始めましたが、お客様に大変好評で年間を通じて開催することになりました。4月、5月も開催し、今後も行っていく予定です。
このツアーに参加いただいた方には、特典もございます。
地元で作られた貴重な勝浦塩を使用した、今回のツアーのためにご用意いただいた貴重なお守りが授与されます。
海水は、満月と新月でそれぞれ濃度が変わります。それぞれの時期に採集した海水で作られるこの2種類の塩を使用した、「満月塩守」と「新月塩守」をツアーの時期に応じてお渡ししております。
また、勝浦には酒蔵が2つあります。それぞれの蔵のお酒がお神酒として参加者に授与されます。勝浦のお酒を味わうことができるので、毎回お喜びいただいています。
―「開運トワイライトツアー」を開催することになったきっかけを教えていただけますか?
勝浦は海のまち、朝市が有名なまちです。朝から日中の時間帯は観光として、いろいろな楽しみ方ができるのですが、夕方から夜にかけてのコンテンツがあまりありませんでした。
その中で、遠見岬神社は歴史的な物語を持っており、そこと絡めてお客様に喜んでいただけるようなものが作れれば、より長い時間、勝浦に滞在していただけるのではないかと思い、今回の企画を考えていきました。
房総半島開拓の歴史と深い関わりがある「遠見岬神社」
―ツアー開催のきっかけにもなった「歴史的な物語」とは、どういったものなのですか?
小林さん:遠見岬神社は、房総半島に技術と文化をもたらした天富命をお祀りする神社です。奈良から四国を経て房総へと渡られた天富命は関東全域の発展に寄与されました。
初代天皇である神武天皇の時代のお話ですが、もともと日本の文化の中心は奈良にありました。神武天皇が即位されたときに、橿原宮の御造営を任されたのが、遠見岬神社でお祀りされている天富命です。神武天皇の右腕として、とても活躍されていました。
当時朝廷の祭祀をしていた一族に忌部という人たちがおり、忌部の中のリーダーにあたるのが、天富命とされています。
その後、神武天皇の命令を受けて、四国の阿波国(現在の徳島県)に開拓事業のために移り住み、そのときに、「阿波忌部」という人たちと一緒に四国を開拓していきました。その中でさらに肥沃な地を目指して、船で紀伊半島や伊豆を経て、房総半島に移動してきました。房総半島沖は親潮と黒潮がぶつかるところで、西の方から潮の流れに乗って比較的来やすかったという状況も関係しています。
館山市には、安房(あわ)神社という神社があります。もともと四国の阿波(あわ)の国から来た人が移り住んで、建立したといわれています。
自分のご先祖様を神様としてお祀りし、開拓の成功や無事安全な暮らしを祈るということは、昔から行われていたようです。そのため、南房総地域には忌部系の神社が多くあります。
そして、勝浦市にある遠見岬神社にも、天富命とその一族が房総半島や関東の一部に当時の最先端の技術と文化を伝え、開拓していったというお話が残っています。
「千葉県」「勝浦」の地名ともつながりが
―千葉県の地名にも深いつながりがあるとお聞きしました。
千葉県の旧国名は、「総国(ふさのくに)」です。現在も「上総(かずさ)」「下総(しもうさ)」という地名がありますが、南側(下の方)が上総、北側(上の方)が下総と上下逆になっています。
それは、昔は船で海を移動してきた中で、海路で都に近い方が上総、遠い方が下総とされたからなんです。
総国の名前の由来も諸説ありますが、有力な説は、遠見岬神社にお祀りされている天富命と深く関係しています。阿波忌部一族を連れて、房総半島に移り住んだときに麻を植えたところ、麻がよく育ったというお話があります。
麻のことを古語で「総」といい、そこから「総国」という名前がついたという説です。
また、勝浦の地名は、遠見岬神社を建立した勝占忌部氏の名が由来と伝わっています。
徳島県や和歌山県にも「勝浦」という地名がありますが、この地名も深いつながりがあるとされています。
昔はこういった伝承は大事にされていましたが、戦後の高度成長期の中で、神話や民話があまり大事にされなくなってきたと感じています。そうした伝承を大切にすることこそ、地域の人たちが誇りを持ったり、郷土愛を再認識できることにつながったりするのではと思っています。
また、他の地域との差別化を考えたときに、忌部氏が移り住み、開拓したという話はストーリー性がしっかりしているので、房総らしさ、勝浦らしさにつながると考えました。
そこで神社と観光協会がタッグを組みながら、地域の活性化に寄与したいという思いで、いろいろと取り組んでいます。
春の風物詩「かつうらビッグひな祭り」
―勝浦の代表的なイベントも神社の歴史とつながりがあるそうですね。
「かつうらビッグひな祭り」というイベントを毎年2月の後半から3月3日まで開催しています。毎年多くのお客様にお越しいただき、大変賑わいます。
もともとは徳島の勝浦町で行っているイベントでしたが、同じ地名のご縁だということで、徳島よりおよそ7,000体のひな人形を里子として譲り受け、千葉の勝浦でもひな祭りを開催することになりました。
市内で飾る場所を探しているときに、地元の方たちから「遠見岬神社の長い石段をひな壇に見立てて飾ってみてはどうか」という声があり、神社も協力することになりました。
まさか徳島から来た人たちが建てたこの神社に、平成になって今度は徳島から人形がやって来ることになるとは、驚きましたし、ご縁があってのことだと思いました。地域の発展を願い、神社も地域の方たちと一緒にイベントを行ってきました。
今では、イベントを知った全国の方から人形の寄付もいただくようになり、イベント期間中、市内には人形が至るところに飾られています。ここ、遠見岬神社の階段には約1,800体を飾っています。
人形がずらっと並ぶ姿は圧巻なので、みなさんにぜひ見ていただきたいです。
ツアーをきっかけに勝浦市、千葉県の魅力を再認識してもらいたい
―今後の目標や計画などがありましたらお聞かせください。
吉野さん:今回は勝浦市内の遠見岬神社のツアーですが、天富命と忌部氏の歴史は、勝浦だけではなく、千葉県内各地、関東一円など、いろいろな地に残っています。勝浦以外の近隣の自治体、観光協会や施設とも連携しながら、点ではなく線や面でお客様に来ていただけるような取り組みをしていけたらと考えております。
―最後に、マネ会読者へメッセージをお願いします。
勝浦は歴史的なところでもありますし、海があるのでおいしいものもたくさんあります。また、夏は涼しいまちとして注目されていますので、ぜひ一度勝浦の魅力を体感しにお越しください。
また、ツアーでは、宮司のとてもおもしろくて、ためになるお話がたくさん聞けるかと思います。特典もご用意しておりますので、日程が合いましたら、ぜひ一度ご参加いただければと思います。
ツアーの詳細、次回開催日などの最新情報は、勝浦市観光協会のHPのトップページに掲載しております。
―本日は、貴重なお話をありがとうございました!
勝浦市観光協会
遠見岬神社 宮司
気になるけど、なかなか話しづらい。けどとても大事な「お金」のこと。 日々の生活の中の身近な節約術から、ちょっと難しい金融知識まで、知ってて得する、為になるお金の情報を更新していきます。