消費者から信頼される良い広告を育てる!公益社団法人 日本広告審査機構にインタビュー PR

消費者から信頼される良い広告を育てる!公益社団法人 日本広告審査機構にインタビュー

テレビやインターネット、新聞など、さまざまなメディアに触れるなかで、メディア内の広告は商品・サービスを知るきっかけとなる存在です。しかし、広告の中にウソや誤解を招く表現があると消費者は正しく判断できません。

公益社団法人 日本広告審査機構(JARO)では、そうした不適切な広告をなくし、良い広告を育てる活動をしています。

今回はJARO広報担当の今泉尚子さんに、活動内容や寄せられる相談についてお話を伺いました。

JAROは「良い広告」を育てる自主規制団体

JARO正式名称の解説画像

―本日はよろしくお願いします。まずは、日本広告審査機構(JARO)の沿革や主な活動内容を教えてください。

今泉さん:JAROはウソのある広告、大げさな広告、誤解を招く広告をなくし、消費者から信頼される良い広告を育てるために活動している民間の自主規制団体です。

法律で行政から規制されるのではなく、広告業界が自主的に適正な広告を行い、広告の信頼を築いていくために、広告主や新聞社、出版社、放送会社、広告会社や広告制作会社などの広告に関係する企業が自ら集い1974年に設立されました。

広告に対する苦情を受け付けて審査し、問題があると判断したものは広告主へ改善を求めています。

―良い広告を育てるためにJAROが設立されたとのことですが、設立当初は問題のある広告が多く見られたのでしょうか。

今泉さん:設立された1974年の少し前は誇大広告が多く、広告業界は危機感を持っていました。

消費者を誤認させて契約につなげる広告ばかりだと、消費者にとって広告が「信頼できない存在」になってしまいます。広告は商品の購入やサービス契約時に役立つ情報の1つだと思いますので、そのためには広告が信頼されるものである必要があります。

―今泉さんは、普段どのようなお仕事を担当されていますか?

今泉さん:2000年の入局当初は審査部に所属し、広告への苦情を受付けて審査する仕事をしていました。現在は宣伝や広報、雑誌編集が主な業務で、広告やWebサイト、会員向けの雑誌制作に携わっています。

会員向けの雑誌には、広告規制に関する法律や広告業界の自主規制例を網羅的に掲載しているため、この雑誌がJAROへの入会のきっかけとなる企業もあります。

近年、景品表示法が厳しくなっており行政処分が出ているため、情報をキャッチアップして注意しなければという思いが企業さまにもあるようです。

苦情は公平・中立を保ち3ステップで対応

苦情処理プロセスの図説

―JAROで受け付けた苦情は、どのように処理されるのですか?

今泉さん:苦情処理のプロセスは、大きく3つのステップに分けられます。相談者(消費者)からの苦情に対し、私たちが問題がありそうだと判断したものは広告主である企業へ「御社の広告に対してこのような苦情が寄せられていますが、どのようにお考えでしょうか」と、文書で問い合わせ、回答をいただきます。これが第1ステップです。

第2ステップでは、当該企業の広告と回答をもとに委員会で審議します。予備審査として「業務委員会分科会」で見解案を作成したのち、「業務委員会」での審議に入り、見解を作成します。

見解は問題の度合いによって「厳重警告」「警告」「要望」「助言」の4段階に分け、相談者と広告主企業へ見解の内容を伝えます。それに対して相談者・広告主企業が納得すれば終了です。

結果に納得できない場合は、不服申し立てもできます。ただし不服申し立てはあまりありません。JAROによる審議後の見解に納得していただけるケースがほとんどです。

申し立てがあった場合は、第3ステップとして「審査委員会」で改めて内容を審査し、審査結果を相談者・広告主企業の双方に伝えます。

見解で「厳重警告」「警告」が出るのは、法律違反になり得る広告です。私たちは行政機関とは異なり強制力のある命令はできませんが、ほとんどの広告主企業はJAROからの指摘を受け止め、改善へ向けて動いてくださいます。

―苦情処理の委員会は、どのような方で構成されているのでしょうか?

今泉さん:第2ステップの業務委員会と6つの業務委員会分科会は、広告表示に知見のあるJARO会員の担当者で構成されています。

企業の宣伝部や広告審査の担当など、さまざまな業界・立場のメンバーが1つの委員会で十数名ほど担当しています。

審査委員会は、弁護士や大学教授など、学識経験者を含めた7名で構成されています。

学識者が審査にあたり、苦情を寄せられた広告主企業がJAROの会員かどうかにかかわらず、公平中立な立場で審査をしています

会員企業からは広告表示への相談が寄せられる

―会員相談室には、どのようなご相談が寄せられていますか?

今泉さん:会員企業からの相談は自社広告や自社媒体で受け付けた広告の内容について「この表示の仕方は問題ないでしょうか」「このような表現は違法になりますか?」といったお問い合わせが多く寄せられています。

具体的な例としては「顧客満足度No.1表示」の問題です。広告に「顧客満足度No.1」と記載されていると、消費者は該当商品を使った人が「この商品は良かった」と感じた比率の高さだと受け取るでしょう。

でも、実際は商品の購入に関係なく、たとえば1,000人程度に複数社のホームページを見せて「顧客満足度が高そうに感じるのはどの企業ですか?」といった聞き方のモニター調査をしているケースがあります。

こうしたやり方のイメージ調査で、企業に対して「No.1表示をさせてあげますよ」と営業する会社もあるようです。結果として消費者の感覚と乖離したNo.1を表示している広告が増え、誤認させる調査結果は不当表示に該当するおそれがあります。

ほかには、景品や値引きに関する相談もあります。たとえば、商品に対して過剰な景品を付けてしまうと、消費者は正しく商品を判断できなくなるでしょう。

景品の豪華さに惑わされて選んでしまっては、良い商品選択にならないかもしれません。景品の金額や総額も、決められた範囲内で設定する必要があります。

化粧品なども薬機法の規制があり、効果・効能を表示できる範囲が定められています。たとえば化粧品の広告で肌荒れに効果があるようにうたうのは、法律に抵触する恐れがあります。

こうした広告表現の問題に抵触しないか、確認のために相談をいただくケースが多いですね。

―定期的に相談される会員企業もいらっしゃいますか?

今泉さん:繰り返し相談される会員企業も多くいます。もしかすると、広告を出す際に「JAROにチェックを受ける」というフローが組み込まれているのかもしれません。

時代とともに広告の問題点が変化

―1974年の設立当初から現在まで、問題のある広告に変遷はありますか?

今泉さん:設立時から2022年度までの受付件数を見ると、寄せられる苦情は年々増加傾向にあります。また、時代とともに問題広告の内容や媒体にも変化が見られました。

1974年度の苦情処理件数は37件で、内容を見ると誇大広告が最多の11件、次いでコピーの不明確・不正確が6件です。

業種別にみると約3分の1が不動産関係の広告でした。たとえば「新宿まで37分で通勤可能」と表示されていた物件が、実際にはそうではないという広告です。

寄せられた苦情をもとに検証すると、確かに事実とは異なっていて、通勤時間帯にその物件から新宿まで行こうとするともっと時間がかかりました。

そこでJAROでは会員各社へ周知し、不動産の業界団体にも伝えたところ早急に修正されました。「通勤ラッシュ時は50分」「新百合ヶ丘駅で急行に乗り換えた場合」といった注釈が入り、今では不動産の広告への苦情はあまりありません。不動産の業界団体も、広告表現には気を配っています。

直近の2022年度は9,206件の苦情が寄せられ、広告媒体の内訳としては、テレビが4,044件、インターネットが4,001件、ラジオが299件でした。

苦情の内容は半分ほどが誇大広告など表示に問題があると主張するもので、法律に抵触する可能性のあるものも含まれています。残りの半分は「広告内のスマホの音が自分のものと勘違いするのでまぎらわしい」「この広告は男女の描き方がよくないのではないか」といった表現に関する内容です。こうした苦情は私たちの審議には回りませんが、広告主企業へ情報として提供することはあります。

2022年度に委員会で審議にかけた広告・表示は26件で、多いのは医薬部外品や化粧品などの広告です。その次に教室・講座やレンタル、健康食品が続きます。効果・効能の表示や安価であるように誤認させる点が問題になりました。

また、審議にかけた苦情26件中21件がインターネット広告だった点も、近年の特徴を表していると思います。

近年の苦情件数ピークは2020年度です。コロナ禍に入った最初の年だったため、巣ごもり中にテレビやネットで広告を見る機会が増え、通販需要の高まりからネット広告の露出も多くなり、増加につながったのだと思います。

この時期はマスクや消毒液の需要が急増し、手に入りにくい状態でした。そんな時、入荷せずに折込広告の目玉商品にマスクや消毒液が掲載され、広告通りに販売されないことがありました。また、安易にコロナ対策になるようにうたった広告もあり、「これはウソの広告ではないか」という苦情が寄せられたことがあります。

同時に行動制限や感染への不安からモヤモヤした気持ちになる人が増え、マスクをせずに大勢の人が集まって騒ぐシーンをテレビCMで見かけると、不愉快に感じる人もいたようです。「あんな広告はやめてほしい」という苦情も寄せられました。

2019年度あたりから、健康食品や化粧品などの美容健康商材で問題の多いネット広告も急増しています。最近は落ち着いてきましたが、加工画像を使ったあり得ない効果・効能を見せるものや、不快感を覚える画像を使ったものへの苦情が集まりました。

―不適切な広告については、各業界団体も注意しているのですね。不動産業界のほかに、適切な広告表現に対して注意している業界はありますか?

今泉さん:食品業界や化粧品、銀行などの金融関係など多くの業界が自主的な取り組みで適正な広告・表示に努めています。

ただ、業界団体が広告内容に注意していても、その業界団体に加盟していない企業も存在します。

加盟企業は業界の自主基準に従って適切な広告を出しても、加盟していない企業は基準を守らないこともあるでしょう。ルールを守らない広告のほうが消費者の目を引き、魅力的に映ることもあります。適正な広告を出している企業が損をしてしまう可能性もあり、適正な広告活動の普及・啓発は多くの業界で課題だと思います。

事業者と消費者への啓発活動も

セミナー開催の様子

―企業側が問題広告を出さないと同時に、消費者側もリテラシーを身につける必要があると思います。JAROでは、どのような啓発活動をされていますか?

今泉さん:啓発活動は大きく分けると事業者啓発と消費者啓発があります。広告表示は法改正が度々あるため、ルールを企業に周知し、適切に広告を出していただくための支援を行っています。

セミナーも実施し、企業の宣伝・マーケティングや審査・考査の担当者、法務コンプライアンス、お客様相談室の方などに参加いただいています。

事業者向け啓発内容の例を挙げると、2023年10月から景品表示法でステマが規制されるので、理解していただくためのセミナーがあります。ほかにも薬機法における化粧品・医薬部外品の効果、効能はどこまで表示できるのか、機能性表示食品やNo.1表示の扱い方、インフルエンサーマーケティングやアフィリエイトなども最近多いテーマです。

また、若年層は広告を飛ばす人もいらっしゃると思うので、嫌がられずに視聴してもらえる広告はどのようなものか、ジェンダーや人種・文化的なステレオタイプの問題など、広告から受ける印象の変化などもセミナーや勉強会では扱っています。

消費者への啓発セミナーも実施し、こちらには会社員や高齢者など、さまざまな方が参加してくれています。

中学生~大学生向けには授業も実施しており、広告の中のジェンダーステレオタイプを考えてもらったり、身の回りにある問題広告を探してもらったりしています。

―消費者啓発では、参加者からどのような反応がありますか?

不快・不適切に感じる広告表現は世代によって受け取り方に違いが感じられ、若い人の意見は大変参考になります。

消費者啓発で参加者の話をお聞きすると、普段受付けている苦情と違う受け取り方もあるので、さまざまな視点があることを私たちも勉強させていただいています。

高校の家庭科では「消費生活」という単元で広告の見方を扱っており、JAROのキャラクター「ダメダメ3匹」が掲載されました。JAROのホームページでも、身の回りにあるダメダメ広告を探すワークシートをダウンロードできるようにしています。

―キャラクターがいることで興味が惹かれ、気軽に問い合わせできそうですね。

今泉さん:この「ダメダメ3匹」は、「ウソ」「大げさ」「紛らわしい」をあらわすキャラクターなので、単なるかわいさではなく「キモカワイイ」くらいの雰囲気で作っていただきました。2017年から使用しています。3匹のテレビCMも、ホームページやYouTubeから閲覧可能です。

ちなみに、広告への苦情を寄せてくださる方の多くは30代~50代の方です。若い方が見る広告に悪質なものがあっても、JAROへ情報が入ってこないと置き去りになってしまいます。

「ダメダメ3匹」は若い方からの評判もいいため、キャラクターを使ったPRをして、皆さんから気軽に広告に関するご意見を送っていただけるようにしています。

ダメダメ3匹の画像

―セミナーはどれくらいの人数が受講されていますか?

今泉さん:コロナ禍に入ってからはセミナーをオンラインに切り替えたため、以前よりも多くの方にご参加いただいています。

オンラインで開催した2020年度は延べ3,200人でしたが、2021年度は5,900人、2022年度は7,300人に増加しました。2023年度は7月までに4回セミナーを実施していますが、すでに4,000人ほど参加されています。

―特に人気・好評のセミナーを教えてください。

今泉さん:今年7月に実施した、2022年度にJAROで受付けた苦情の審査状況を報告するセミナーには、2,000人を超える申込みがありました。アーカイブ配信もするためリアルタイム視聴の方だけではありませんが、JARO史上最大規模の人数です。このセミナーは無料ということもあって、非常に多くの申込が集まりました。

内容としては、まず2022年度の苦情件数と実際に見解を出した件数、苦情の多くはどのような内容だったかをお伝えし、どのような点が問題で「厳重警告」や「警告」を出すに至ったかを審査担当からお話ししました。

広告内容に問題を感じたらJAROに報告しよう

―今後の計画やマネ会読者へのメッセージがあれば、お聞かせください。

今泉さん:広告に関する報告や相談があれば、JAROの報告フォームから気軽に情報をお寄せください。ホームページでは問題があった広告の事例やQ&Aを掲載しているので、参考にしていただけると幸いです。

スマートフォンやパソコンで見るインターネット広告は、ユーザーの世代・性別に合わせた内容を表示している場合があります。

そのため特定の世代・性別の人向けに表示された広告の内容は私たち相談員が自分の端末で見るときには表示されず、見つけられないかもしれません。テレビCMだと多くの人が同じものを見ますが、これはインターネット広告の特徴です。

広告を見た方自身から報告をいただかないと問題を把握できないので、ぜひ情報提供をお願いします。

また、もし不利益な契約を結んでしまっても泣き寝入りせず、しかるべき窓口へご相談ください。悪質業者は泣き寝入りを狙っています。必ず解約できるとは限りませんが、「188」に電話すると、全国どこからでもお近くの消費生活センターに相談できます。

広告や契約時の書類を見直して「確かに書いてあるから、よく見ずに契約した自分が悪かった」と言う方がいらっしゃるのですが、わざと目に付きにくい書き方をしているものもあります。自分が悪かったとは思わず、JAROにも報告や相談をお寄せください。

行政機関も呼びかけていますが、契約時の最終確認画面はスクリーンショットを残すようにしましょう。最後の確定ボタンを押してしまうと、報告・相談するときに途中で表示されていた内容の確認が難しくなります。

JAROは2024年に50周年を迎えます。今後の活動にも注目いただけますと幸いです。広告へのご意見は「広告みんなの声」を検索してお寄せください。

―本日はお話いただき、ありがとうございました!

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