地域の特色を活かした特別列車が魅力!乗車や沿線を楽しむポイントを井原鉄道株式会社にインタビュー
井原鉄道は、岡山県の総社駅から広島県の神辺駅を結ぶ鉄道です。個性溢れる特別列車が充実しており、多くの地元住民や観光客に親しまれています。
今回は、井原鉄道の特別列車や沿線の観光情報について、井原鉄道株式会社営業企画課長・井原駅長の芝崎直人さんにお話を伺いました。
乗るのも撮るのも楽しい「井原鉄道」
―本日はよろしくお願いします。まずは、御社の事業内容について教えていただけますか?
井原鉄道の前身は、国鉄時代に遡ります。国鉄の吉備線からの延長で、岡山県の総社駅から広島県福山市の神辺駅間の約41kmの鉄道です。1969年に起工式が始まり、1999年に第三セクターとして開業しました。2024年で開業から25周年を迎えます。
沿線には観光スポットや列車を撮影される方に人気のスポットもあります。最近では、一般車両に加え、特別列車の企画にも力を入れています。
乗車して内装を楽しむのもいいですし、外から列車の写真を撮るのもおもしろいと思います。
コンセプトはさまざま!個性溢れる井原鉄道の特別列車
―井原鉄道の特別列車について詳しく教えていただけますか。
井原鉄道では、現在4種類の特別列車が運行しています。これらの車両は、イベントや臨時列車で使用するとき以外は、一般車両として通常運行もしております。事前予約は必要なく、通常料金で乗車可能です。
最初にデビューしたのは、「夢やすらぎ号」です。2005年に岡山県出身のデザイナーの水戸岡鋭治さんに車両を手がけていただきました。ポイントは、茜色の車両と木のぬくもりを感じられる車内です。水戸岡さんのデザインは、木を多用するのが特徴です。車内というよりも居間やティールームのような心やすらぐ部屋をイメージしてデザインしていただきました。そういったデザインがレトロな雰囲気を醸し出していて、乗っていると癒やされます。
次に登場したのは、「アート列車」です。2021年に倉敷市の大原美術館とコラボして誕生した、芸術作品43作品54点を列車内外へラッピングした特別車両です。
きっかけは、コロナ禍で車内でのお客様同士の距離をとるために車両のボックス席をロングシートに改造しなければならなくなったことでした。せっかく改造するならと、座席の形を活かし、地域を盛り上げることができないかと考えました。
アート列車では、有名な絵画をそのまま展示するのではなく、切手風のデザインにし、額に入れたモチーフを展示しています。また、日よけのスクリーンを下ろすと、そこにも絵が入っています。すべてのスクリーンを下ろすと、本当に美術館の中にいるような雰囲気になります。
乗った瞬間はとても圧倒されて、びっくりされる方も多いです。美術館では、飲食や会話をしながらの鑑賞はなかなかできないと思いますが、列車では自由にお過ごしいただけます。身近で気軽にアートに触れることのできる機会かと思います。
翌年2022年に誕生したのは、「スタートレイン」という青い列車です。岡山県は「天文王国」として注目を集めています。井原市美星町に有名な天文台があり、そこから星をテーマにした列車をつくることになりました。車内はプラネタリウムの機械を使い星空を投影できるように、シンプルなデザインを意識し、ホワイトを貴重としたつくりに統一しています。
車両は、美しい星空のイメージの中に、沿線地域の観光素材をモチーフとしたイラストや12星座を溶け込ませた特別なデザインになっています。沿線は自然が多く、青い車両は緑の中にも映えます。ぜひ撮影も楽しんでみてください。
一番新しい列車は、2023年にデビューした「戦国列車」です。お客様に沿線地域の歴史的魅力を発信するためにつくられました。井原駅周辺は、戦国大名「北条早雲」の出生の地です。また、周辺には城跡などがたくさんあるので、歴史ファンの方がわくわくするような車両をつくろうと井原市が企画し、誕生しました。
黒い車両がシックでかっこいい列車です。車内は、家紋がラッピングされ、つり革には武将の兜がついています。兜の上に各市町村の市章がついていますので、ご乗車の際はつり革に注目していただくのもおすすめです。
スケジュールにもよりますが、1日ですべての車両コンプリートすることも可能です。事前に運行情報をご確認いただくと、効率よくご乗車いただけると思います。みなさん思いがけず出会えると喜ばれていますよ。
運行スケジュールは、HPに掲載しております。フェイスブックやXでは、より詳細な運用表を掲載していますので、お越しの際はご活用ください。
土日祝日は乗り放題パスがお得!
―井原鉄道の旅をお得に楽しめる切符があるそうですが、どういったものなのでしょうか。
土日祝日限定の「スーパーホリデーパス」があります。井原鉄道全線が1日乗り放題という切符です。
たとえば、総社から乗って矢掛で降りて、井原に行って帰るというだけでも元がとれます。土日祝日に乗られる方は、ぜひこちらをご利用ください。いろいろなところを回っていただければと思います。
切符の提示で沿線のお店や施設でも特典を受けられます。駅にチラシなども置いていますので、そちらを見ていただきながら回るとよりお得に周遊できます。
購入方法は有人駅の窓口、車内、アプリです。アプリではデジタルチケットを事前に購入いただけます。いずれも料金は変わりません。
なお、総社駅は無人駅です。清音駅は有人駅なので、岡山方面からお越しの場合は、清音駅で乗り換えていただき、清音駅で切符を購入するのがいいかと思います。乗り換えの関係で時間がなければ、車内で運転士も取り扱っておりますので、停車時間中にお声がけいただければ、販売いたします。
―この切符を使って、特別列車のコンプリートを目指すのもいいですね!
宿場町やデニムのまちを散策!沿線のおすすめ観光情報
―井原鉄道沿線の見どころやおすすめのスポットはありますか?
列車からの景色では、「高梁川鉄橋」がおすすめです。岡山方面からですと、最初は総社駅か清音駅でお乗り換えいただくのですが、清音駅を出発し、ちょうど伯備線をくぐったところに、一級河川の高梁川という大きな川があります。そこを渡るために800メートルほどの鉄橋があります。普通の鉄橋は直線ですが、高梁川の鉄橋は、少しカーブしています。トラス橋でカーブをしているのは、とても珍しいです。ぜひ先頭車両に乗って、景色を眺めていただければと思います。これは、井原駅まで向かう入口の景色ですので、ぜひその景色を楽しみながら井原までお越しください。
また、矢掛には、江戸時代の旧本陣と旧脇本陣の宿場町が残っている古い街並みがあります。最近は観光に力を入れており、そこで降りて散策していただくのもとても楽しいと思います。岡山県というと倉敷は有名でみなさんご存じかと思いますが、こちらも見ごたえがあります。最近ではいろいろな取り組みをされており、平日も賑わっています。
また、井原のまちはデニムがとても有名です。岡山県のデニムというと、児島が聖地になっていますが、そこのデニム製品のほとんどの生地をつくっているのが井原です。生地なのであまり知られていないかもしれませんが、実は世界的にも有名な商品をつくり、出荷しているようなところです。井原駅の駅ビルの中にもデニムの歴史などを展示しています。中にはデニムのショップもありますので、見ていただけると楽しめると思います。
また、事前予約で列車に自転車を乗せることが可能です。解体せずにそのままご乗車いただけます。起点になる総社駅は、古い歴史があるまちです。奈良県などの史跡が多い地域と似ているので、観光にもおすすめです。最近では、パン屋さんがたくさんオープンしていてイベントなども開催されています。レンタサイクルで旅するのもおもしろいかもしれません。
本格的にツーリングされている方も利用されており、井原市から自転車に乗ってしまなみ海道へ行く方もいらっしゃいますよ。
―観光におすすめの時期はありますか?
矢掛では、毎年11月の第2週に大名行列のイベントがあります。大名が本格的に練り歩く様子が楽しめる人気のイベントです。
6、7、8月の新緑がきれいな時期は、列車に乗りながら景色を楽しんでいただければと思います。
30周年に向けて、さらに列車やサービスを充実させていきたい
―今後の目標や計画などがありましたらお聞かせください。
井原鉄道は2024年で25周年を迎えました。これから30年、50年と続いていくためにも観光路線として収益を上げながら、住民のみなさまに安心して乗っていただき安全な足となるように日々努力していきます。
夢やすらぎ号もデビューして10年以上経ちます。そろそろリニューアルや新しい車両の導入を検討していく時期なので、30周年に向けて、何か新たな動きができたらいいなと考えております。
最近では、新型車両導入が話題になりますが、中国地方、特に井原鉄道周辺では、古い気動車が現役で走っています。そういった味のある車両たちも楽しみつつ、井原鉄道にも乗っていただきたいです。
―最後に、マネ会読者へメッセージをお願いします。
岡山県総社市から広島県福山市神辺町までの40キロほどの鉄道路線になりますが、風光明媚で自然豊かな環境です。また、8割が高架の路線ですので、眺めがとてもいいです。ぜひ気軽に、ふらっとお立ち寄りいただけたらと思います。みなさまのお越しをお待ちしております。
―本日は、貴重なお話をありがとうございました!
井原鉄道株式会社
営業企画課長・井原駅長
気になるけど、なかなか話しづらい。けどとても大事な「お金」のこと。 日々の生活の中の身近な節約術から、ちょっと難しい金融知識まで、知ってて得する、為になるお金の情報を更新していきます。