森をつくる農業を世界に!アサイーを広めた株式会社フルッタフルッタにインタビュー
株式会社フルッタフルッタは、ブラジル最大手アマゾンフルーツサプライヤー「CAMTA(トメアス総合農業協同組合)」産フルーツ原料の国内独占輸入販売代理店であり、さまざまな業界のメーカーへの原料卸、自社製品開発・販売などを行っています。
今回は、同社の代表取締役社長/CEOの長澤誠さんに、ブラジルで出会ったサスティナブルな農法「アグロフォレストリー」と、アグロフォレストリーによるCO2削減効果の製品表示などについてお話を伺いました。
森をつくる農業、アグロフォレストリーとの出会い
―本日はよろしくお願いします。まず御社の事業内容についてお聞かせください。
当社は2002年に神戸で創業した会社で、当初はアマゾンフルーツのクプアスのチョコレートをメイン商材とする目的で「クプアス・インターナショナル・ジャパン株式会社」という社名で創業しました。最初に始めた事業はジュースバーの運営で、お店の称号だった「フルッタフルッタ」がのちに社名に変わりました。
アマゾン原産のクプアスは現地の言葉で「大きくてカカオに似たもの」という意味で、カカオの仲間です。栄養価が高く、白い実の甘酸っぱさとクセになる神秘的な香りが非常においしくて、現地ではアサイーと同じくらい人気のあるフルーツです。
その一方でチョコレートの原料になる種は捨てられていて、当時はその種を輸入するため、クプアスを安定供給してくれる生産者を探してアマゾン中を回りました。
その時に、今私たちが取引をしているブラジルの「トメアス総合農業協同組合(CAMTA)」と、彼らが実践している「アグロフォレストリー」という農法に出会ったのです。CAMTAはトメアスの日本人移住者が1931年に創立した農業組合でした。
―アグロフォレストリーとは、どのような農法なのでしょうか?
「アグリカルチャー(農業)」と「林業(フォレストリー)」を合体させたアグロフォレストリーは、「森をつくる農業」と呼ばれています。あくまでも農業を目的としつつ、そこに森林が持つような多様性を取り込む農法です。日本語では「農林複合経営」や「混農林業」などとも呼ばれます。
複数の農産物や樹木を混植することで、 単一栽培に比べて生態系が多様な農場が構成され、1年目から持続的に収穫できるのが特徴です。東南アジア、中南米、アフリカなどでさまざまな事例がありますが、CAMTAが実践するアグロフォレストリーはその持続可能性が世界から特に注目されています。
CAMTAも最初は単一栽培、モノカルチャーな農業を展開していたそうですが、病害により壊滅的な被害を受けた歴史があります。ジャングルを切り拓いて単一栽培を進めたことで、土地が荒廃してしまったのです。
どうしたら農業が維持できるのかを考え、周辺の先住民の人々の生活を参考にするなどしてたどり着いたのがアグロフォレストリーでした。
―その後、御社はアグロフォレストリーとどのように関わるようになったのでしょうか。
まず、アグロフォレストリーが、経済活動と環境保全は歩み寄れないという課題の逆をいく取り組みだということに驚きました。
従来の農業は単一のものを大量に生産することでコストを下げて、利益を最大化させてきましたが、自然の多様性に抗っているので持続しません。
CAMTAのアグロフォレストリーを見て「経済の力で森を再生するビジネスがあるのだ」と気づき、当社の使命を、この多様性から成り立つ農業を広げることへと転換しました。
「フルッタフルッタ」という新しい社名は、ポルトガル語の意味でフルーツを意味します。2回重ねることで、フルーツがたくさんある様子や自然の多様性を意味しています。
私たちの役割は、アグロフォレストリーで生産した農産物を販売することです。彼らにとっては工場を拡張したタイミングだったため、販売をお手伝いしたい私たちとの出会いは良いタイミングでした。
栄養素たっぷり!アサイーを中心に事業スタート
―御社はアグロフォレストリーで生産されたアサイーを使って、ドリンク製品を多数展開されています。その経緯をお聞かせください。
現地ブラジルのトメアスでは、カカオ、クプアス、アセロラ、パッションフルーツ、グァバなど多くのアマゾンフルーツが栽培されていますが、中でも一番際立った特徴を持つのがアサイーだと聞きました。
アサイーにはポリフェノールや鉄分、ビタミンE、不飽和脂肪酸などの豊富な栄養素・抗酸化成分があり、健康に良いことを分かりやすく打ち出すことができます。その特徴と併せて、原産地や生産者についても伝えていき、アグロフォレストリーを広めたいと考えたのです。
日本では2012~2014年頃に健康面のメリットとお洒落な見た目からアサイーブームが起き、一度人気は落ち着きましたが、コロナ禍で「自然の栄養から免疫力をつけよう」といった風潮が強まり、再びアサイーが注目されました。
スポーツ、格闘技、芸能。各界で活躍する「アサイーニスト」による発信も
―アサイーが持つエネルギーと栄養素を取り入れて充実した生活を送る人を「アサイーニスト」と呼んでいらっしゃいます。公式アサイーニストも多数いらっしゃいますが、なぜ認定を始めたのでしょうか。
当所はアサイーの知名度が全くありませんでしたから、スポーツ選手や芸能関係者など、各界の第一線で活躍しているアサイー愛好家の方に、アサイーの魅力を語っていただこうと考えました。
アサイーはブラジルのフルーツということもあって、ブラジルでは特にサッカーやブラジリアン柔術の選手にはアサイーを愛する方が多いです。こうした方々が、アマゾンにしかないアサイーの魅力をブラジル全土に広めていきました。
ベストアサイーニストの皆さんには、駐日ブラジル大使が感謝を込めて表彰をしてくださいました。
アグロフォレストリーによるCO2削減量を表示
―アグロフォレストリーの普及について、最近のお取り組みを教えてください。
先ほどアグロフォレストリーは「森をつくる農業」だとお話しました。森林はCO2を吸収しますので、日本では飲料業界において初めて、アグロフォレストリー産原料の使用によってCO2削減に貢献していることを可視化する取り組みを進めています。
算出方法の構築を経て、2023年9月から当社のアサイー製品『フルッタアサイーシリーズ』にCO2削減マークを記載し始めました。
消費者の皆さんにアグロフォレストリーの意義をお伝えし認知を広め、おいしくて体と環境にやさしい製品であることを表現することが目的です。
―CO2削減量はどのように算出されているのでしょうか。
削減マークに表示されている数値は、CAMTA組合員のアグロフォレストリー農場の高木樹種が吸収したCO2から、ブラジルにおける生産や日本までの輸送時に排出されたCO2を引き、原料の生産量で割った1gあたりの数値を、製品に配合された原料の使用量に応じて削減量として算出しています(いずれも年間ベース)。環境省にも認められた手法です。
アグロフォレストリーの畑を広げ、世界中にCO2削減マークを
―アグロフォレストリーは人にも地球にもやさしい農法なのだと改めて分かりました。
私たちは『フルッタアサイーシリーズ』などの自社商品も作っていますが、アグロフォレストリーで生産される農産物を原料としても販売しています。私たちの最終目的はアグロフォレストリーの畑をもっと広げることだからです。
トメアスのアグロフォレストリーで生産された作物は、実は食品だけでなく、マホガニーやゴム、パームヤシなどもあり、家を建てる際の建材や自動車の内装材、燃料、化粧品、製紙などさまざまな用途に活用することができます。
多種多様な植物を栽培することで自然の多様性を回復させながら、複雑な生態系が構築され、さまざまな産業で活かすことができるのです。「森をみんなでシェアする」イメージともいえるでしょう。
自然の資源をみんなで分けながら、広げていけば、森が大きくなり、CO2がさらに削減されます。その連続で、世の中にCO2削減マークがたくさんある状態を作るのが目標です。
―今後のご計画をお聞かせください。
アグロフォレストリーのような取り組みが必要であることは、すでに多くの方が認識されていると思います。ただ、その先に課題となるのは「サスティナブルな原料はどこで手に入るのか?」という疑問です。
そこで私たちは、次のステップとして、アグロフォレストリーの生産物を求める人と供給する人をつなぐ役割を担い、国際的なプラットフォームを実現しようと考えています。
ただ物とお金が動くだけでなく、二酸化炭素の削減量が動き、やがてはそれが炭素クレジット化される、そんな世界を作ろうと計画中です。
2025年のCOP30(国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議)は、ブラジル北部のアマゾン地域にある都市ベレンで開催されることが決まっています。
アグロフォレストリーが盛んなエリアでの開催になりますので、おそらくこの農法がキーワードとして取り上げられる可能性が高いでしょう。そのタイミングを目標にプラットフォームを立ち上げることが私たちの目標です。
―最後に、マネ会読者へメッセージをお願いします。
金融への関心が高い皆さんは、おそらく投資の文脈で企業価値を考えることも多いでしょう。その際、これからどのような企業の価値が上がるかと考えると、一つにはサスティナブルな社会づくりに貢献する企業があると思います。普段の購買シーンでも、投資シーンでも、そんな視点で考えてみていただけたら幸いです。
―本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!
株式会社フルッタフルッタ
代表取締役社長執行役員/CEO
気になるけど、なかなか話しづらい。けどとても大事な「お金」のこと。 日々の生活の中の身近な節約術から、ちょっと難しい金融知識まで、知ってて得する、為になるお金の情報を更新していきます。