世界初のDMV本格営業運行を実現した阿佐海岸鉄道!その特徴や乗り方、沿線情報をご紹介 PR

世界初のDMV本格営業運行を実現した阿佐海岸鉄道!その特徴や乗り方、沿線情報をご紹介

日常の交通手段や旅先の移動手段には、さまざまな乗り物があります。目的地によっては特定の方法でしかアクセスできず、複数の乗り換えが生じることもあるでしょう。

人口減少により地域の交通を支えてきた鉄道が、経営悪化から廃線となれば、地元住民の生活に支障が出るケースも考えられます。廃線時に代替輸送をどのようにするかは、重大な課題です。

阿佐海岸鉄道株式会社では、阿佐東線を存続させるため、線路と道路の両方を走行できるデュアル・モード・ビークル(DMV)を採用しました。現在、3台のDMVを使い、世界初の本格営業運行を実施しています。

今回は、阿佐海岸鉄道のDMVについて、導入経緯や乗車方法、沿線情報をご紹介します。

徳島県と高知県を結ぶ阿佐海岸鉄道

デュアル・モード・ビークル931海南MIC4

阿佐海岸鉄道株式会社は1988年に設立し、徳島県と高知県、関連する市町村などが出資した第三セクターによる鉄道会社です。1992年に阿佐東線の海部駅・甲浦駅間が開業し、JR牟岐線との直通運転が始まりました。

以来、地域住人の生活に欠かせない路線となりましたが、沿線の過疎化や学校統廃合により輸送者数は減少。開業時の2割にまで落ち込み、阿佐海岸鉄道の経営状況は厳しくなりました。

地域公共交通の新しい形「デュアル・モード・ビークル」

従来では、継続が困難になった地方の鉄道事業者は、運行廃止を余儀なくされていました。

しかし、今まで地域住民が利用していた路線が使えなくなると、さまざまな形で地域経済に影響を与えます。住民の生活圏が狭くなり、地域経済の活力減少につながるほか、代替輸送をどのようにして確保するかといった問題が生じます。

廃止によって抱えることになる問題を解決するため、新しい選択肢としてDMV(デュアル・モード・ビークル)が考案されました。

DMVは鉄道と道路の2つを走行できる、新しい形の交通機関です。DMVの実用化については、JR北海道と国土交通省が技術開発や試験運行、性能確認をしていました。

既存の線路を使いつつ、地域の需要に見合う大きさの車両にするため、鉄道車両よりもコスト削減が可能です。ローカルバスとも融合させ、バスと電車の要素を兼ね備えた形で運用できる点が特徴です。

阿佐海岸鉄道では、阿佐東線を廃止ではなく存続させるためにDMVの導入を決め、2016年に阿佐東線DMV導入協議会を設立しました。協議や導入に向けた施設工事、性能試験などを重ね、2021年に営業運行がスタートし、現在に至ります。

2021年より阿佐東線で世界初の本格的な営業運行がスタート

阿佐東線では、2021年12月からDMVの本格的な営業運行が始まりました。現在、阿波海南文化村から道の駅 宍喰温泉までの運行ルートを運行し、土日祝日は海の駅 とろむまで運行します。

DMVの導入を決めた当初の計画では、2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでの運行開始を目指していました。しかし、安全対策の追加や新型コロナの影響により関係機関との協議が停滞するなど、課題克服が必要となったため2021年12月からの運行開始となりました。

マネ会編集部
マネ会編集部

導入に向けた協議開始から営業運行の開始までに、特に印象的だったエピソードがあればご紹介ください。

阿佐海岸鉄道株式会社ご担当者
阿佐海岸鉄道株式会社 ご担当者

乗車時は、モードチェンジを見ることができないため、地元高校生と考案したのが、車内で流れる郷土芸能部の阿波海南太鼓の音色です。

今ではアナウンスと共にDMVの名物になっています。

マネ会編集部
マネ会編集部

DMVを使った地域活性化について、今後の展望があればお聞かせください。

阿佐海岸鉄道株式会社ご担当者
阿佐海岸鉄道株式会社 ご担当者

DMVが観光の起爆剤となり、新たな人の流れを作ることができました。
今後は、沿線地域の観光資源との融合を進め、リピーターに繋げたいです。

線路と道路を走るDMVの特徴

マイクロバスをベースにしているDMVの車両には、道路を走るゴムタイヤと線路を走る車輪が付いています。走る場所に応じてモードチェンジし、タイヤと車輪を使い分けて走行します。

線路を走るときは鉄道車輪を出し、道路用後部のゴムタイヤが線路に接して走行する形式です。道路を走るときは鉄道車輪を格納し、ゴムタイヤで走行するため、道路を傷つけることはありません。

モードチェンジは15秒ほどで完了

道路から線路へ、線路から道路へのモードチェンジは、わずか15秒ほどで完了します。道路と線路をつなぐ「モードインターチェンジ」の上で乗客を乗せたまま行うため、時間を取られません。

また、阿佐東線では2つのスポットでモードチェンジの見学が可能です。阿波海南駅と甲浦駅にあるモードインターチェンジという所で、バスから列車に、列車からバスへのモードチェンジを見ることができます。

カラーが違う3台のDMV

阿佐東線では現在、カラーの異なるDMV3台が運行中です。車両のカラー・愛称は公募で決め、地域の特色や歴史を反映させています。

DMV931 愛称「未来への波乗り」 太平洋の波をモチーフにした青い車両
宍喰駅の伊勢えび駅長がサーフィンする姿を描いている
DMV932 愛称「すだちの風」 阿波の名物「すだち」を表現した緑の車両
そよ風を感じさせ、徳島県の鳥・白鷺の姿が描かれている
DMV933 愛称「阿佐海岸維新」 赤い車両に坂本龍馬と降りそそぐ太陽、地域活性への情熱が込められている

DMVの導入で期待される3つの効果

DMVを導入すると、地域活性、経営改善、災害時の交通機能維持の3つの面で効果を期待できます。

DMVの本格営業運行は話題性が高く、見てみたい・乗ってみたいと感じた人が集まる可能性があります。実際、阿佐東線のDMVは、新しい観光資源として注目を集めている存在です。

車両は鉄道と比べると低コストで用意でき、維持管理費も抑えられます。経営難から存続が難しくなった路線を運行する鉄道会社にとって、輸送方法を確保しつつ経営改善につながる選択肢です。

さらに、DMVは線路と道路を走れるため、災害発生時にもフレキシブルな対応ができる交通機関です。特徴を活かして交通機能を維持できれば、災害時の物資輸送や移動手段を確保できます。

マネ会編集部
マネ会編集部

導入から少し経った現在、DMVの効果はどれくらい感じていらっしゃいますか?

阿佐海岸鉄道株式会社ご担当者
阿佐海岸鉄道株式会社 ご担当者

アンケート調査では、DMV目当ての方が約90%。県外客が多く、宿泊、他の交通機関利用率が高いことから、地域活性化および公共交通への寄与に繋がっていると感じています。

DMVの乗車方法

現在の阿佐東線は無人駅が多く、DMVは交通系ICカードに対応していません。乗車に際しては注意点があるため、現地を訪れて利用する際は以下に紹介するポイントを知っておきましょう。

確実に乗るなら事前予約がおすすめ

阿佐東線のDMVは、もともとマイクロバスを利用した車両であるため、定員があります。一般的な鉄道車両よりも乗車できる人数が限られるため、乗車予約を受け付けています。

運転士に確認し、空席があれば予約なしの乗車も可能ですが、満席時は利用できません。空席のある状態でも予約が入っているとそちらが優先です。

確実に乗車するには、事前予約がオススメです。DMVの乗車予約は、発車オーライネットからチケット販売ページへアクセスすると手続きできます。

出発日から乗りたい便の空席を確認して予約しましょう。予約は、1ヶ月先の便まで対応しており、空席照会のみも可能です。

DMVの乗り方・降り方

事前予約をしている場合、乗車予定の乗り場で車両到着を待ち、運転士に座席番号・名前・人数を伝えて乗車します。運転士が確認のうえ指定座席に乗り、目的地に着いたら予約画面を見せて降車します。

事前予約をしていない場合は直接乗り場へ行き、運転士に行き先と人数を伝えて乗りますが、空席がないと乗車できません。空席のあるDMVが来るまで待つことになります。空席があり、乗車可能な場合は整理券を取って指定された席に座り、目的地で運賃を精算します。

運賃の支払いも予約の有無で方法が異なります。事前予約している場合は、予約時にクレジットカードまたはd払いおよびPayPayで決済し、予約なしの場合は当日現金または回数券で支払います。

乗車券の販売

DMVが停車する阿佐東線の宍喰駅では、回数券や通勤・通学定期券、入場券、一時預かり切符を販売しています。

回数券は100円券36枚綴りを3,000円、100円券12枚綴りを1,000円で販売し、有効期限は3ヶ月です。回数券や入場券にも、DMVの絵があしらわれています。

また、徳島から高知まで室戸経由で行き来できる「四国みぎした55フリーきっぷ」(※)でも、当日空席があればDMVに乗車可能です。「四国みぎした55フリーきっぷ」は連続3日間、指定区間内を自由に乗り降りできる企画乗車券です。

※「四国みぎした55フリーきっぷ」は、2025年4月より「徳島・室戸・高知55フリーきっぷ」という名称へ変更される予定です。

DMVの停留所・停車駅と沿線情報

阿佐東線を走るDMVは現在、阿波海南文化村から道の駅 宍喰温泉まで(土日祝は海の駅 とろむまでの便もある)の運行です。

阿波海南文化村の停留所からバスとして走行するDMVは、阿波海南駅から甲浦駅までの区間を列車にモードチェンジして鉄道を走ります。甲浦駅からはバスにモードチェンジし、道の駅 宍喰温泉または海の駅とろむまで道路を走ります。

なお、阿波海南文化村から道の駅 宍喰温泉までは、30分程度で到着です。

マネ会編集部
マネ会編集部

沿線でおすすめのスポットや観光ルートがあれば教えてください。

阿佐海岸鉄道株式会社ご担当者
阿佐海岸鉄道株式会社 ご担当者

海陽町竹ケ島にあるマリンジャム、海中観光船ブルーマリンがおすすめです。
海中観光船ブルーマリンでは、サンゴの周りを優雅に泳ぐ熱帯魚などが観察できます。

阿波海南文化村

阿波海南文化村は、DMVの始発となる停留所があります。停留所側の阿波海南文化村は、海陽町立博物館や工芸館、関船展示館、文化館などからなる施設です。

ワークショップや体験学習、パネル展示などがあり、地域の歴史や文化を知り、体験できます。レンタルできるホールや会議室があり、地域の人にも利用されています。

阿波海南駅

阿波海南文化村から1つ進んだ阿波海南駅は、DMVがバスから列車に、列車からバスに変形する、モードチェンジの見学ができるスポットです。また、阿佐海岸鉄道の阿佐東線と、JR牟岐線の乗り換え駅でもあります。

海部駅

海部駅では、旧ホーム前に引退したディーゼル車両「ASA-101しおかぜ」を展示しています。しおかぜの横を走るDMVや、山のないトンネルを通過する姿を収められる撮影スポットとして知られています。

宍喰駅

宍喰駅は阿佐東線で唯一の有人駅で、DMVグッズの販売も行っています。改札横の駅長室(水槽)には伊勢えび駅長がいるなど、ユニークな駅です。

また、DMVの停留所がある道の駅 宍喰温泉は、宍喰駅から徒歩10分ほどの距離にあります。

甲浦駅

阿佐東線のDMVが列車として鉄道を走るのは甲浦駅までとなります。甲浦駅は、モードチェンジする様子を見学できるもう1つのスポットです。

道の駅 東洋町

DMVが停車する海の駅 東洋町には、白浜海水浴場やキャンプ場があり、ホテルも隣接しています。

道の駅には魚介類や野菜の直売、お土産販売があり、レストランでは購入した魚を刺身定食にして味わえるなど、自分だけのメニューを楽しめるスポットです。ご当地グルメ「ポンカンソフト」もあり、観光中の食事や休憩場所に使えます。

道の駅 宍喰温泉

道の駅 宍喰温泉は、海の幸や野菜の直売所「すぎのこ市場」、お土産コーナー、DMV巨大ジオラマの展示があるスポットで、海陽町観光協会も併設しています。

巨大ジオラマのDMVには小型カメラが設置されており、2階の運転台では運転士になった気分で操作できます。隣接するホテルリビエラししくいではオーシャンビューの部屋が人気で、日帰り温泉も楽しめます。

また、DMVの停車駅である宍喰駅へは、徒歩10分ほどでアクセス可能です。

むろと廃校水族館

むろと廃校水族館は、廃校となった旧椎名小学校の校舎を活用したユニークな水族館です。地元の定置網にかかったウミガメや魚を、屋外プールや校舎内の水槽で展示しています。

室戸世界ジオパークセンター

DMV停留所の隣には、世界ジオパークに認定された室戸世界ジオパークセンターがあり、地球のダイナミックな営みを感じられる場所です。徒歩や自転車などで周辺スポットを巡れば、室戸の雄大な自然を間近に感じられます。

室戸岬

室戸岬の停留所周辺には、壮大な岩や荒々しい海、空海にまつわるスポットなどがあります。室戸市観光協会の案内所もあり、周辺の観光情報も確認できます。

海の駅 とろむ

海の駅 とろむには、漁港で水揚げされた魚の定食が美味しい飲食・体験施設「室玄」があります。

また、停留所近くには室戸ドルフィンセンターもあり、イルカと間近に触れあえるスポットです。室戸ドルフィンセンターではエサやりやトレーナー体験、ドルフィンスイムなどを楽しめます。

まとめ

阿佐海岸鉄道では阿佐東線を存続させるため、地域公共交通の新しい形としてデュアル・モード・ビークル(DMV)の導入を決定しました。2021年より、世界初の本格営業運行を開始し、注目されている存在です。

現在、阿佐東線では3台のDMVが運行しており、平日は阿波海南文化村から道の駅 宍喰温泉まで、土日祝は海の駅 とろむまでを走行しています。

新しい乗り物に興味のある方、徳島県や高知県を訪れる予定のある方は、DMVも観光時の足に活用してみてください。

暮らしに関わるお金の知識を強化するため、FP技能検定に挑戦し、2021年に独学で2級FP技能検定に合格。学んだ知識を活かし、暮らしやお金に関する記事を執筆しています。

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