求人票の見るべきポイントは?給与や賞与、休日の見方は?
求人票とは、企業側が提示する労働条件が記載されているものです。
職業安定法第5条の4の1項において、虚偽の情報や誤解を生む表現をしてはいけないと定められています。また、職業安定法第5条の4の2項において、正確かつ最新の内容を保たなければいけないと定められています。
このことから、求人票は労働条件についての情報を集める最も有効な手段の1つといえます。
では、どのように求人票を見れば正しく情報を集められるでしょうか?
本記事では、上記の疑問に答えるために、求人票の見方やチェックすべきポイントについて解説していきます。
【求人票】必ず明示されている項目
下記の項目は、職業安定法第5条の3の1項および2項において、明示されることが定められています。
- 業務内容
- 契約期間
- 就業場所
- 労働時間(※1)
- 賃金(※2)
- 社会保険の加入状況
- 試用期間の有無(※3)
- 募集者・求人者の氏名または名称
- 雇用形態(※4)
(※2)固定残業代が適用される場合には、その旨が明示される
(※3)試用期間が適用される場合には、試用期間中の労働条件が明示される
(※4)非正規として雇用される場合には、その旨が明示される
労働条件が明示されるタイミング
- 求人が掲載されるとき
- 労働条件に変更があったとき
- 労働契約を締結するとき
特に重要なのは、労働契約を締結するときです。このときに、「労働条件通知書」というものが渡されます。
この通知書には、「この条件で雇用契約します」という最終的な労働条件が明示されています。企業と従業員との間で、労働条件に関するトラブルが発生した際に、「いったいわない」を避けるため、文書として残すのです。
そのため、「労働条件通知書」はしっかりと確認するようにしてください。企業にとって有利な条件に変更されている場合もあります。求人に記載されていた条件と異なる場合には、然るべき対処をおこなう必要があります。
もし、しっかりと確認していなくて企業に有利な雇用契約を結んでしまった場合、「労働条件通知書」が証拠となってしまいます。
労働条件が変更された場合
職業安定法第5条の3の3項において、求人票に記載されている内容に変更があった場合、変更内容を明示しなければいけないと定められています。
その際には、当初の明示と新たな明示の両方が明確に記載されるため、「何が変更されたのか」の理解は簡単です。たとえば、「当初:基本給30万円/月→基本給28万円/月」というように記載されます。
【求人票】見方とポイント
求人票に記載されている項目について、それぞれの見方とチェックするべきポイントについて解説していきます。
業務内容
業務内容とは、企業がおこなっている業務の内容ではなく、入社した際に自分が担当する業務の内容です。
チェックすべきポイントは、内容の具体性です。たとえば、「事務作業」などのように抽象的な表現の場合、「実際に何をやるのか」が不明確になっています。このような場合、入社後に「イメージと違う」と感じてしまう可能性が高いです。
雇用形態と契約期間
雇用形態が正規雇用ではなく非正規雇用の場合、求人票にて明示されています。また、非正規雇用の場合には、契約期間も明示されています。
チェックすべきポイントは、「どのような雇用形態の求人か」です。最近では、在宅ワークの浸透によって業務委託契約も多いです。自分が望んでいる形態で雇用されるためには、必ずチェックしておきましょう。
また、正規雇用だったとしても試用期間がある場合もあります。試用期間中は、本採用の労働条件とは異なる場合もあるため、チェックしておきましょう。
就業場所
就業場所では、入社した際に「どこで働くか」が明示されています。最近では、在宅ワークなど、リモート勤務の求人も増えてきています。
チェックすべきポイントは2つあります。1つは、ストレスなく通えるかを確認することです。もう1つは、転勤の有無を確認することです。
ストレスなく通えるか
通勤に関して大きなストレスとなるのは、通勤時間です。片道で1時間かかる場合には、往復で2時間かかります。1日や2日であれば問題ないと考える方も多いと思います。しかし、年単位で考えると約480時間を通勤に充てることになります。これが何年も続いてもストレスがないかを考えてみましょう。
また、通勤手当の有無も確認しておくとよいでしょう。通勤手当を採用していなくて、少し遠いところから通勤する場合には、金銭的な不満を感じるかもしれません。
転勤の有無
入社した際の勤務場所に不満がなくても、転勤先の勤務場所に不満が発生する可能性があります。
もし、転勤がある企業であれば、「どんなところに転勤する可能性があるか」を調べておきましょう。
労働時間
- 就業時間
- 休憩時間
- 休日
- 時間外労働時間
求人票には、上記の情報が明示されています。
チェックすべきポイントは、4つあります。1つめは、就業時間の形態です。2つめは、時間外労働の項目です。3つ目は、休日の制度です。最後は、休暇についてになります。
勤務時間の形態
一般的には、8時~17時もしくは9時~18時が就業時間です。しかし、フレックスタイム制やシフト制、裁量労働制など特殊な就業形態を採用している可能性もあります。
時間外労働時間
法定労働時間を超える労働の有無を確認しましょう。また、月平均で何時間くらいの時間外労働があるのかも確認するとよいでしょう。
休日の制度
休日には、主に「週休2日制」と「完全週休2日制」があります。
週休2日制とは、1年をとおして月に1度でも週2日間の休日があることを指します。つまり、週休が1日しかないことも多いです。
完全週休2日制とは、1年をとおして必ず週2日間の休日があることを指します。
このように名称が似ていても、週休2日制と完全週休2日制では休日数に非常に大きな差があります。
休暇について
休日は、労働者に働く義務がない休みの日のことです。一方で休暇とは、働く義務があるものの企業側が労働を免除する休みの日のことです。
休暇には2種類あります。一定の条件を満たすことで必ず休める「法定休暇」と企業が任意で設定している「任意休暇」です。
- 年次有給休暇
- 育児休暇
- 看護休暇
- 介護休暇 など
任意休暇は、慶弔休暇やリフレッシュ休暇など、企業によって異なります。
賃金
賃金の項目には、1ヶ月間で支払われる金額が明示されていることが多いです。非正規雇用の場合には、時給が明示されていることもあります。
チェックすべきポイントは、3つあります。1つ目は、言葉の違いです。2つ目は、固定残業代です。3つ目は、ボーナスです。
言葉の違い
1ヶ月の賃金を示す言葉として、「月給」と「月収」があります。
月給とは、基本給+固定手当(※1)の金額です。月収とは、基本給+固定手当+変動手当(※2)の金額です。年収は、月収×12ヶ月で算出されます。
つまり、月収の表記で大きな金額が明示されていたとしても、残業時間が多いだけで基本給は高くないという可能性もあるのです。
また、賃金を示す言葉として、「給与」と「給料」があります。給与とは、月収のことを指します。給料とは、基本給のことを指しています。
(※2)月によって変動する手当、時間外手当や深夜手当など
固定残業代
固定残業代(※)とは、時間外労働の有無にかかわらず一定の手当が支給される制度です。
たとえば、「固定残業代:30時間分の時間外手当として75,000円を支給」とされていた場合、30時間の時間外労働をおこなっていなくても75,000円が支給されます。また、時間外労働が30時間を超えた場合には、追加で時間外手当が支給されます。
ボーナス
ボーナスの明示は必須ではありません。しかし、ボーナスを支給している企業の多くは、アピールポイントとしてボーナスの金額などを明示しています。
そのため、ボーナスに関する明示がなければ、その企業ではボーナスを支給していないと考えられます。
社会保険の加入状況
健康保険 | 自分や扶養する家族の医療費を一部負担する。 |
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厚生年金保険 | 国民年金に上乗せされる年金で、老後の所得が安定する。 |
労働者災害補償保険 | 病気や怪我(業務が原因)で休業する際に、治療費や休業中の保障をおこなう。 |
雇用保険 | 失業した際、「失業給付」を受けられる。 |
社会保険とは、上記4つの保険のことを指します。これらに加入していなければ、必要なときに支援をおこなってもらえないです。
チェックすべきポイントは、社会保険の加入状況です。
社会保険の加入状況とは
社会保険は、「加入しているだろう」と思われがちですが、実は加入していない事業所も多いです。
厚生労働省が平成29年に公表した『社会保険の適用促進対策について』では、社会保険に「加入済み」と回答したのは16.3%で、「未加入」と回答したのは83.7%でした。
「未加入」と回答した40%は、廃業していたり休業中だったりで、実際に事業をおこなっていませんでした。しかし、残りの60%は加入義務があるにもかかわらず、加入していません。
このように、実際には多くの事業所が社会保険に加入していないのです。
理由として最も多いのは、「保険料を負担することが困難」というもので、60.5%となっています。
この実態を理解して、可能であれば求人票に社会保険完備(※)と記載されている求人を選びましょう。
その他
求人票には、明記義務がある項目のほかにも、自社が求める人材が集まるような項目やアピールできる項目を設けている場合も多いです。
自社が求める人材を集めるための項目として、応募資格の項目を設けることが多いです。そして、アピールできる項目としては、福利厚生の項目を設けていることが多いです。
応募資格
応募資格には、いわゆる学歴フィルターがある場合も多いです。必須資格を挙げている場合もあります。
そのため、高校よりも大学を卒業している方が、さまざまな求人に応募できます。また、専門的な業務をおこなう企業の場合、特定の資格を取得していなければ、応募すらできない求人もあります。
福利厚生
福利厚生とは、お金以外の報酬やサービスを指します。上記で解説した社会保険も福利厚生の一部です。ほかの福利厚生で代表的なものは下記です。
- 家賃補助や社宅の提供
- 健康診断や人間ドックの実施
- 資格取得の支援
- オフィス内食堂や保育園
- 飲み会や社員旅行の実施
このように福利厚生には、さまざまなものがあります。従業員にとって福利厚生は、生活の質を向上させてくれるものです。そのため、可能な限り福利厚生が充実している求人を選ぶとよいでしょう。
求人票と実態が異なる場合の対処
求人票に記載されていた労働条件と実際の労働条件が異なることはあります。
いわゆるブラック企業と呼ばれる企業の場合、実際の労働条件が悪いために離職者が増えて人材が不足します。新たな人材を確保するためには、真実を伝えても集まりません。そのため、求職者が有利になるような、実際と異なる労働条件を求人票に記載するのです。
このような企業を避けるには、労働契約を締結するときに渡される「労働条件通知書」をしっかりと確認することが最重要です。
この時点で、「求人票と異なる」と気づければ、ブラック企業を避けられます。
また、ブラック企業でなくても「労働条件通知書」と求人票に記載されていた条件が異なる場合もあります。それは、人為的なミスで条件が異なっている場合です。この場合は、労働条件が異なっていることを伝えて、修正してもらう必要があります。
しかしなかには、「労働条件通知書」では求人票と同じ労働条件なのに、実際には異なるという場合もあります。この場合には、下記の対処をおこなう必要があります。
- 相談窓口で相談する
- 辞職する
相談窓口で相談する
最低賃金を下回る賃金や法外な労働時間など、法令違反に関する相談をしたいときには、「労働基準監督署」に相談しましょう。
労働に関する相談をしたいけど、どこに相談したらよいのかわからない方は、「総合労働相談コーナー」に相談しましょう。
「総合労働相談コーナー」では、法令に直接的な違反はしていない問題やパワハラ、セクハラなど、さまざまな分野の相談が可能です。
辞職する
労働条件の明示義務違反がある場合、労働基準法第15条の2によって、労働者に契約解除の権利が発生します。
一般的には、契約解除の申入れから2週間の期間がなければ、契約の解除をおこなえません。しかし、労働条件明示義務違反の場合には、即刻解除できます。
求人票をしっかりとチェックしよう
求人票には、企業のさまざまな情報が記載されています。職業安定法第5条の4の1項において、虚偽や誤解を生む表現をしてはいけないと定められているため、信憑性が高い情報です。
そのため、求人票をしっかりとチェックし、望んでいる条件で働けるようにしましょう。
キャリア形成支援を主な事業とするCareer Expertを経営。具体的には、就職・転職支援や自己理解支援、キャリアデザイン支援などを実行。その経験や専門知識を活かし、読者の役に立つ記事を執筆。