農家への転職は難しい?農家の現実と転職する際の注意点を解説
農業へのあこがれから、未経験から農家の転職を検討している人がいるかもしれません。
結論からいうと、国や行政の支援により、農家への転職は歓迎される傾向にあり、未経験でも転職できる可能性は十分にあります。
ただし、理想やあこがれだけで転職すると、現実とのギャップに苦しめられる可能性もあるので、業界の現状やメリット・デメリットについては事前に理解しておきましょう。
この記事では、農業全体の現状やメリット・デメリットだけではなく、失敗しないために知っておくべきポイントも紹介します。
農家への転職を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
農家の現実と仕事事情
農家へ転職する前に、農業全体の現状を理解しておくことは大切です。
漠然としたイメージや理想だけで転職すると、ギャップを感じてしまうかもしれません。
最初に、農業における就業人口や、年収を紹介するので参考にしてください。
農家の人口はどれくらい?
まずは、農林水産省のデータをもとに農業従事者の人口を紹介します。
項目 | 平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 平成31年 | 令和2年 | 令和3年 | 令和4年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
基幹的農業従事者 | 175.7万人 | 158.6万人 | 150.7万人 | 145.1万人 | 140.4万人 | 136.3万人 | 130.2万人 | 122.6万人 |
うち65歳以上 | 114.0万人 | 103.1万人 | 100.1万人 | 98.7万人 | 97.9万人 | 94.9万人 | 90.5万人 | 86.0万人 |
基幹的農業従事者とは、普段の仕事として自営農業に従事している人のことを指します。
表を見ると、農業を生業としている人は年々減少傾向にあることがわかります。
一方で、新規就農者の人口は以下のとおりです。
項目 | 平成26年 | 平成27年 | 平成28年 | 平成29年 | 平成30年 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
新規就農者(※1) |
57.7千人 | 65.0千人 | 60.2千人 | 55.7千人 | 55.8千人 | 55.9千人 | 53.7千人 | 52.3千人 |
うち49歳以下 | 21.9千人 | 23.0千人 | 22.1千人 | 20.8千人 | 19.3千人 | 18.5千人 | 18.4万人 | 18.4千人 |
新規自営農業就農者(※2) |
46.3千人 | 51.0千人 | 46.0千人 | 41.5千人 | 42.8千人 | 42.7千人 | 40.1千人 | 36.9千人 |
うち49歳以下 | 13.2千人 | 12.5千人 | 11.4千人 | 10.1千人 | 9.9千人 | 9.2千人 | 8.4千人 | 7.2千人 |
新規雇用就農者(※3) |
7.7千人 | 10.4千人 | 10.7千人 | 10.5千人 | 9.8千人 | 9.9千人 | 10.1千人 | 11.6千人 |
うち49歳以下 | 6.0千人 | 8.0千人 | 8.2千人 | 8.0千人 | 7.1千人 | 7.1千人 | 7.4千人 | 8.5千人 |
新規参入者(※4) |
3.7千人 | 3.6千人 | 3.4千人 | 3.6千人 | 3.2千人 | 3.2千人 | 3.6千人 | 3.8千人 |
うち49歳以下 | 2.7千人 | 2.5千人 | 2.5千人 | 2.7千人 | 2.4千人 | 2.3千人 | 2.6千人 | 2.7千人 |
就農者全体でみると平成28年から令和3年にかけて、徐々に減少傾向にありますが、新規雇用就農者や新規参入者は増えていることがわかります。
特に、新規雇用就農者や新規参入者は49歳以下の若者が増えている点が特徴的です。
この結果から、農家全体の就業者へ減少傾向にあるものの、一部では若者が農家へ転職するケースが増えているといえます。
(※2)学生もしくは雇われての勤務から自営農業になった人を指す
(※3)法人等に常雇い(年間7か月以上)により就農した人を指す
(※4)土地や資金を独自に調達し、新たに農業経営を開始した経営の責任者及び共同経営者を指す
農家の平均年収はいくら?
次に、農林水産省が公表しているデータをもとに、農家の平均年収を個人と法人に分けて紹介します。
項目 | 令和元年 | 令和2年 | 令和3年 |
---|---|---|---|
全農業経営体 | 118.8万円 | 123.6万円 | 125.4万円 |
個人経営体 | 113.6万円 | 117.5万円 | 115.2万円 |
法人経営体 | 287.7万円 | 323.4万円 | 424.5万円 |
上記のデータをみると、全農業経営体での年収は増加傾向にあり、特に個人経営体よりも法人経営体のほうが年収は高い傾向にあることがわかります。
ただし、上記のデータはあくまでも農業全体におけるものであり、実際には販売する農作物の種類などによっても年収が大きく変わる点については覚えておきましょう。
農家に転職するメリット
漠然と農家への転職にあこがれている人もいるかもしれませんが、具体的なメリットを理解しておくことは大切です。
農家へ転職する主なメリットは以下のとおりです。
- 食材関連の知識と経験が増える
- 収入が青天井である
- 学歴や職務経歴が反映されない
- 健康に詳しくなる
それぞれについて詳しく紹介するので参考にしてください。
食材関連の知識と経験が増える
農家に転職して農業に従事すると、自然に食材に関する知識は増えていくはずです。
経験を積めば、作物がもつそれぞれの味や特性に関する知識、色や大きさ、生産量に関する知識などが増えていくでしょう。
食材に関する知識が深まれば、付加価値のある商品を開発して販売するなど、新しい道も見えてくるかもしれません。
食材ごとの旬や最も美味しい食べ方などの知識が深まれば、自分が消費する際や知人に教えることもできます。
収入が青天井である
農家は頑張り次第で収入を伸ばせる点が大きなメリットです。
一般的な企業勤めだと、あらかじめ決められた月収が得られるものの、自分の意思や頑張りが反映される可能性は低いといえるでしょう。
農家の場合、収穫量を増や、売り上げを増やせばその分収入も上がるため、努力の成果が出やすいといえます。
無農薬野菜やオーガニック野菜など、需要が高く単価も高い商品に集中すればその分売り上げがアップし、収入も増えるかもしれません。
収穫量を増やすためには土地を広げる努力が必要になるほか、需要の高い作物を育てるためにはそのための知識や労力がかかるため、簡単ではないかもしれませんが、頑張りに応じた報酬が得られるのは農家の大きなメリットです。
学歴や職務経歴が反映されない
農家では一般的な企業に比べ、学歴や職務経歴が重視されない傾向にあるため、比較的誰でもチャレンジしやすい点がメリットとして挙げられます。
特に既存の農業法人や、専門知識が必要な研究分野へ転職するのではなく、個人事業主として独立するのであれば自分自身が経営者となるため、学歴は関係ありません。
一般社団法人全国農業会議所全国新規就農相談センターによる令和3年度の調査では、農家として活動する人の最終学歴は大学・大学院(農学系以外)が最多の39.4%、次いで高等学校(農業高校以外)が24.3%となっています。
就農前職業では、製造業が15.2%で最多、次いで農業とその他のサービスが11.7%となっています。
この結果からも、学籍や職務経歴に問わず、幅広い人が挑戦しやすい分野であることがわかるでしょう。
健康に詳しくなる
農家は、そのライフスタイルから規則正しい生活が送りやすいとされています。
一般的に農家の仕事は朝からはじまり、夕方ごろに終了するため、深夜まで残業することや、夜から朝にかけての仕事はありません。
早寝早起きが基本的な生活スタイルになるほか、身体を動かしながら外での作業が基本になるため、心身共に健康的な生活を送りやすいでしょう。
作物の栄養について詳しくなれば、毎日の健康的な食事にもつながるかもしれません。
このようなライフスタイルから、農家では健康的な生活が送りやすいというメリットがあります。
農家に転職するデメリット
農家として農業に携わると、さまざまなメリットがある反面、以下のようなデメリットもあります。
- 足腰に負担がかかりやすい
- 天候によって売上が変動する
- コストがかかる
- 年功序列の風潮が若干ある
こんなはずじゃなかったと後悔しないように、メリットだけではなくデメリットについても理解しておきましょう。
足腰に負担がかかりやすい
昔のように全てが手作業ということはなくなりましたが、それでも肉体労働であることに変わりはないため、足腰に負担がかかるなど、体への負担をデメリットに感じる人がいるかもしれません。
運動習慣がない人や、これまでオフィスワークで椅子に長時間座って仕事をしていた人からすると、農業は想像以上にキツく感じることもあるでしょう。
農家に転職を考えているのであれば、日頃から体力作りを意識したほうが良いかもしれません。
天候によって売上が変動する
売上が天候に左右されやすいのは、農家が抱えるデメリットのひとつといえるでしょう。
台風や大雨などの自然災害のほか、温暖化の影響を受けることにより、思い通りの収穫量や品質・価格にならず、収入が安定しないことがあります。
自然災害は人の手でコントロールできるものではないので、自然災害に備えた設備や対策などを用意する必要があるでしょう。
そのほか、自然災害が少ない場所を農地として選ぶなどの工夫も大切です。農家に転職する前に、天候によるリスクは理解しておきましょう。
コストがかかる
農家として独立する場合、農地の購入や農業に必要な設備などに対する初期費用がかかる点もデメリットのひとつです。
一般社団法人全国農業会議所全国新規就農相談センターによる令和3年度の調査によると、就農1年目にかかった費用は全体平均で755万円(機械・施設等+種苗・肥料・燃料等の経費)とされています(※)。
これに加え、必要に応じて農地の購入にも費用が必要なうえ、生活するための資金も必要になるので、ある程度まとまったお金を用意しておきましょう。
自己資金では賄えない場合、後述する国からの支援金などについて理解を深めておき、頼ることも大切です。
年功序列の風潮が若干ある
一般社会の人間関係におけるストレスから解放されるため、農家への転職を希望する人がいるかもしれませんが、農家に転職したからといって完全に人間関係から解放されるわけではありません。
雇用就農の場合では働く従業員との人間関係があり、独立する場合でも作物を販売する取引先との人間関係があります。
農地がある場所も比較的都会から離れた田舎であることも多く、周辺の農家の人や自治体の人との関わりが大切になってきます。
地方では年功序列を重視する風潮が残っているケースも多いため、行事への参加や挨拶など、周囲の人から受け入れられるように努力することも大切です。
農家に転職する3つの方法
農家に転職する方法は、大きく分けて下記の3つがあります。
- 農家の後継者になる
- 農家となり独立する
- 農業法人へ就職する
それぞれの特徴や、メリット・デメリットについて簡潔に紹介するので参考にしてください。
農家の後継者になる
1つ目は、自分の親などが営む農業の後継者として、経営を受け継ぐ方法です。
「親元就農」ともいわれます。
農家を親から受け継ぐ場合、農地や農業に必要な設備・機器だけではなく、農作物の販路も引き継げるので、完全新規として参入するよりもコスト面や労力が少なく済むのは大きなメリットでしょう。
ただし、農家への転職に興味があるうえ、親が農家で、土地も設備も揃っているという人は少ないかもしれません。
実家が農家ではない人は、農業経営の継承を検討してみましょう。
家族以外の人でも、農家の施設や機器などの資産、経営ノウハウ、販売経路を受け継いで農家を始められる可能性があります。
農家となり独立する
2つ目は、独立して農業を始める方法です。
経営のための計画や、何を作るか、どこに販売するかなど、一から自分で決められるなど、自由度が高いのはメリットといえるでしょう。
経営歴が長くなればなるほど、農業に関する知識や経験だけではなく、経営やマーケティングに関するノウハウも身につきます。
ただし、未経験で挑戦する場合は、今まで経験したことがないトラブルに対応する必要や、農地の購入、設備・機器の購入にかかる資金の用意、販売経路の確保など、さまざまな壁を乗り越える必要があるでしょう。
独立する場合は自力だけで頑張るのではなく、国や地方自治体が提供する支援制度などについて事前に理解しておき、うまく活用することが大切です。
支援制度については後述しているので、ぜひそちらも参考にしてください。
農業法人へ就職する
3つ目は、農業法人に就職(転職)して、農業に携わる方法です。
農業法人に就職する方法は「雇用就農」ともいわれており、未経験でも作物を育てる手順や、農業に必要な設備が用意されているのが大きな魅力です。
一般的な就職と同じように、安定したお給料が貰えるので、いきなり独立することに対して不安がある人におすすめの方法といえます。
農業をおこなうための下地が揃った環境で学びつつ、将来的に独立するのも選択肢として良いでしょう。
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農家への転職をあこがれる4つの理由
農家への転職を考える理由は人それぞれですが、代表的な理由として下記のようなものがあります。
- 自然が好きで自然の中で仕事がしたい
- 自分の頑張り次第で収入を増やしたい
- 自給自足にあこがれがある
- 国からの支援金もたくさんある
それぞれ簡潔に紹介するので参考にしてください。
自然が好きで自然の中で仕事がしたい
一般社団法人全国農業会議所全国新規就農相談センターの調査によると、就農する理由として、「自然が好き」、「農村での生活が好き」など、自然・環境を理由に挙げる人は70%以上にのぼることもわかっています。
都会の満員電車やビル群、人間関係に疲れている人は、大自然の中で仕事ができる農業に憧れを持つことがあるかもしれません。
テクノロジーの発展と共にオフィスワークが多くなっているため、自然に触れながら仕事ができるのは農業の大きな魅力といえるでしょう。
自分の頑張り次第で収入を増やしたい
農家のメリットでも紹介したとおり、独立する場合は努力に応じて収入を上げられる可能性があります。
一般的な社会人では業績を上げても、上司や役員の判断でしか収入が上げられないケースがほとんどのため、働きに対する収入に不満を感じることもあるかもしれません。
農家として独立すると、収入は自分の頑張りに比例する可能性が高いため、他人の裁量に縛られず努力したい人には向いている環境といえるでしょう。
また、休みや家族との時間も自分で調整しやすいのもメリットとして挙げられるため、自由な生活に憧れを持つ人も多いかもしれません。
自給自足にあこがれがある
自給自足の生活に憧れを抱き、田舎で農業をしながらの生活を目指す人も多いでしょう。
農家では作物を販売することで収入を得るのが基本ですが、自分で消費することも可能です。
自給自足できるノウハウが身につけば、とりあえず食べるものには困らなくなるため、過度にお金へ執着する必要もなくなるかもしれません。
仕事がそのまま自給自足につながるのは、大きな魅力のひとつですね。
国からの支援金もたくさんある
農家を始めるにあたり、まとまった資金が必要になるのは大きなハードルのひとつですが、農林水産省などでは次世代を担う農業者を育てることを目的とした支援制度を提供しています。
例えば「農業次世代人材投資資金」では、49歳以下の新規就農者に対して年間150万円を最長3年間、49歳以下の人が研修を受けて就農するための資金が年間150万円、最長2年間支援されます(※1)。
そのほか「雇用就農資金」では、49歳以下の就農希望者に技術を習得させることを目的とし、年間最大60万円を最長4年間支援する制度などもあります。
農業用機械・施設の導入等の支援として「農地利用効率化等支援交付金」、「担い手確保・経営強化支援事業」など、多数の支援制度もあり、農業にチャレンジしたい人に対してのサポート体制が充実いしています(※2)。
資金が必要なことには変わりありませんが、国からの手厚いサポートがあるのは農家へ転職することに憧れを持つ人が増える要因のひとつでしょう。
(※2)経営体育成支援:農林水産省
農家への転職にはリスクもある
農家への転職を憧れる人がいる反面で、農林水産省によると「規就農者の3割は生活が安定しないことから5年以内に離農する」というデータもあります(※)。
そのため、農家へ転職した際に考えられるリスクについても理解しておきましょう。
- 立地や気候に恵まれない
- 農場経営がうまくいかない
- 周りの農家との人間関係が複雑
あらかじめリスクを知っておくことで、対策や心構えができるので、ぜひ参考にしてください。
(※)担い手の動向:農林水産省立地や気候に恵まれない
農業をおこなうにあたり、立地や気候は非常に重要な要素であり、恵まれない場合は安定した経営ができないリスクが伴います。
独立して自分で農業を始める場合、土壌や気候に合わせて育てる作物の選定をする必要があるでしょう。
土壌や気候を見極めても、台風や豪雨など事前には予測できない自然災害に見舞われるケースもあり、収穫量が安定しないこともあるかもしれません。
農場経営がうまくいかない
農場の経営がうまくいくかどうかは、自分の努力次第ではどうにもならない要素も含まれる点にも注意が必要です。
例えば、前述したとおり、予測できない自然災害によって収穫量や作物の品質が落る可能性などがあるほか、市場価格によっては想定する利益を上げられない場合もあるでしょう。
収穫量が多くても、市場に需要がなければ大量の作物を余らせてしまうかもしれません。
長期的に保存ができない作物だと、廃棄処分しなければならないケースもあります。
農家への転職に対して「のんびり生活しながら作物を育てる」といった漠然としたイメージだけではなく、リスクに備えた経営方法についても学んでおいたほうが良いでしょう。
周りの農家との人間関係が複雑
人間関係のストレスから逃れるために農家への転職を考える人がいるかもしれませんが、農家に転職しても周囲の人との関わりは大切な要素です。
前述したように、農地がある田舎によっては年功序列の風習が残っている場合もあるほか、知らない人に対しては「よそ者」として風当たりが強いこともあるかもしれません。
場所によっては自分と気の合う人だけと付き合うのではなく、地域全体と関わりながら、行事などにも積極的に参加し、長期的な目線で信頼関係を築いていく必要があるでしょう。
コミュニケーションがうまくいかず、孤立してしまうと、情報交換ができないほか、住みづらさや働きづらさにもつながるリスクがあります。
一方で人間関係がうまく構築でき、受け入れられれば、農業に関するノウハウや、紹介などにより販路の拡大なども見込めるかもしれません。
農家への転職で失敗しないための注意点
ここまで紹介した内容だけでも、農家への漠然としたあこがれだけで転職するのは危険ということが理解できたのではないでしょうか。
続いては、農家への転職で失敗しないための注意点として、以下を紹介します。
- まずは農業のお金の仕組みを理解する
- 農機具や土地にかかる費用を計算する
- 農業に適正のある性格かどうかを見極める
- 農業に専念できる環境が整っているか確かめる
- 仕事先の人間関係に問題がないか確認する
上記の点を具体化しておくことで、実際に転職したときに「こんなはずじゃなかった」と感じることが少なくなるかもしれません。
ひとつずつ関係に紹介するので、参考にしてください。
まずは農業のお金の仕組みを理解する
農家に転職する前に、農家がどのような仕組みでお金を稼いでいるかを具体的に理解しておくことは大切です。
「作物を作って販売して利益を得る」という漠然としたイメージだけではなく、前年の気温や水量、日照時間のデータを参考にしつつ、どのような作物を作るか、どうすれば付加価値をつけられるかなどを考えることも大切です。
年間計画の立て方や、どのような経営戦略があるかなども事前に調べておくほか、害虫被害や自然災害のときに考えられる出費など、リスクに備えておくことも重要といえます。
農機具や土地にかかる費用を計算する
令和3年度の調査によると、新規就農者が機械や施設にかけた経費は平均561万円、種苗・肥料・燃料等などその他必要経費にかかった費用は194万円で、合計755万円です(※)。
加えて、農地となる土地の購入費用が必要になる場合、それぞれの金額について計算しておきましょう。
初期費用として1年目にかかるお金、2年目以降にも必要となるお金、経費以外に必要となる生活費などを細かく計算しておくことで、どれだけのお金を用意しておく必要があるのかを自分自身で理解しておくことが大切です。
自己資金で足りない場合は借入れを検討するほか、頼れる国の制度がないか探してみましょう。
具体的な費用がわからないまま農家に転職すると、お金のやりくりで精一杯になり、失敗する可能性があるため注意が必要です。
農業に適性のある性格かどうかを見極める
自分が農業に適性のある性格かどうかも事前にチェックしておきましょう。
例えば「自然が好き」という人でも、雨や泥に塗れて仕事することに抵抗がないか、肉体労働に自信はあるか、虫や鳥が苦手ではないかなど、注意するべき点が多数あります。
そのほか、試行錯誤しながらコツコツと作物を育てる忍耐力や、周囲の農家や取引先の人とのコミュニケーション能力も必要になるでしょう。
漠然としたイメージだけではなく、実際の現場を見学するなどして、自分の性格に合っているかについてよく確認しておくことが大切です。
農業に専念できる環境が整っているか確かめる
農業に対して「自然のなかでまったりと自分のペースで仕事ができる」というイメージを抱いている人は、現実とのギャップに疲れてしまうかもしれません。
農業は長期的な目線でコツコツとした作業や、しっかりとした経営戦略を立てることも大切です。
そのためには、農業を始める土地ですでに農家として暮らしている人にノウハウを聞いたり、実際に働かせてもらったりするなど、積極的な行動が必要です。
自分の気持ちが農業に専念できる状態に整っているかを確認するほか、近隣の人から学べる環境が整っているかなどもしっかり確認しておきましょう。
仕事先の人間関係に問題がないか確認する
繰り返しになりますが、農家に転職しても、人間関係がなくなるわけではありません。
むしろ、積極的なコミュニケーションにより、人間関係を築くことも大切です。
人間関係は、近隣農家だけではなく、取引することになる卸先や農薬・肥料を販売する会社、自治体や町内会など多岐にわたります。
農業法人に就職する際には、一般的な会社のように同僚との人間関係も重要になるでしょう。
人間関係の構築に失敗しないためには、就農する前に、挨拶や見学にいき、どのような人間関係かや、独自のルールがあるかなどをチェックしておくことが大切です。
農家におすすめの転職サービス
農家の求人が掲載されているおすすめの転職サービスをご紹介します。
リクナビNEXT
リクナビNEXTは、企業から直接オファーが届く転職サイトです。
農家向けの求人も扱っているので、農家への転職を考えている方にもおすすめです。
リクルートダイレクトスカウト
リクルートダイレクトスカウトは農業のハイクラス転職も支援しています。
スカウトも受け取れるので、農家転職を検討している人には最適な転職サービスでしょう。
まとめ
農業就業者は減少傾向にあるものの、国の積極的な支援により、一部では新規就農者が増加しています。
今回紹介したように、農家への転職には、イメージとはギャップがあるデメリットや注意点などが存在するので、しっかり押さえておきましょう。
経営がうまくいけば、一般企業にはない体験・経験が得られるほか、頑張り次第では収入を伸ばすこともできます。
メリット・デメリットを理解したうえで、活用できる国の支援を利用しつつ、農家への転職を検討してみてください。
31歳。クレジットカード系270記事以上、ビジネススキル記事100記事以上、書籍執筆、などなど金融系・経済系のライティングが好き。ガジェット・旅行・音楽・ゲーム・芸能・心理学など多数のライティングを経て現在にいたる。読書好きで月に30冊は読破。読書の経験から「読みやすさ・わかりやすさとは」を常に研究中。作成文章でも経験読者さんにとって分かりやすく、読みやすい、求めている正確な情報をお届けすることをモットーに執筆しています。