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ラーメンだけど1,500円は当たり前! 「エクストリームラーメン」を愛する男のお金の使い方

ラーメンだけど1,500円は当たり前! 「エクストリームラーメン」を愛する男のお金の使い方

私、エクストリームラーメン専門家を勝手に名乗っているケイキリヲと申す者である。

これまで1週間に5回はラーメン屋に足を運び、下手をすれば1日に2件のラーメン屋をはしごすることも辞さない日々を送ってきた私。

2015年にはブログ「フロムムサシノ」を立ち上げ、常人であれば見るだけでお腹いっぱいになるようなラーメンを貪り、記録してきた。

しかし、それも未曾有の感染症の影響により一時ストップ。「人のつくったラーメンを食べることができないのは、こんなにもつらいことなのか」と、奥歯を噛み締める毎日である。

そんなとき、タイミング良く「ラーメンにどれぐらいのお金を使っているか教えてほしい」と依頼をいただいた。これは、私とラーメンの関係性を考える良い機会かもしれない。

そこで今回は、これまでの私のラーメンに対する出費を振り返り、私にとってラーメンを食べるとはどういうことなのか、その哲学的な問いについて考えてみたいと思う。

エクストリームラーメンとは?

さっきからお前が言っているエクストリームラーメンとはなんだ? そんな声が聞こえてきそうだ。

私は世の中のラーメンには3種類あると考えている。一つは味わいを重視したもの、もう一つはとにかく腹を満たすことに重点を置いたもの、そして最後の一つは、その両方を完璧に満たすものである。

エクストリームラーメンとは、この3つ目の要素が極めて強いラーメンを指し、その特徴はある種の重たさとでも言えるようなパンチ力があることだ。

昨今、芸術的なラーメンというものをよく目にする。見た目は洗練されており、どこか高級フレンチを思わせるようなそれは、インバウンド向けのガイドブックなどにもよく取り上げられていたりする。

しかし、それらはどうも私の基準においては満足感という意味で足らない。食べざかりな私にとっては「攻撃力不足」だと言える。

私はラーメンの旨味とは、材料の質によって決まるものではなく、それを扱う職人の技と、何より材料の圧倒的な物量であると考えているところがある。

例えば、私のお気に入りのラーメン屋「富士丸」では、一般的なチャーシュー麺に値するラーメンを注文すると、驚くべきことにその丼の上には、およそスマートフォンと変わらぬ立体の豚肉のチャーシューが添えられてくる。

いや、添えられてくる、という表現はいささか不適当かもしれない。もはや主役級。

しかも、その豚肉がラーメンのスープを取る用途にも使われていることを考えると、とてつもない量の豚肉の旨味がスープに溶け出していることはたやすく想像できるだろう。

ひとくちスープをすすったとき、使われている材料の鳴き声は聞こえてくるか、その姿は透けて見えてくるのか。

私にとってラーメンを食べることとは、新たな世界への旅なのである。私はそのために、今日もエクストリームラーメンの夢を見る。

1カ月の出費は軽く3万円超え

エクストリームラーメンのイメージを共有したところで、まずは直近のラーメン関連の出費を振り返ってみようと思う。

すると、この1カ月の間にラーメン屋で使った金額は、なんとゆうに3万円を超えていることが判明した。

3万円……。なんて金額をラーメンに使っているのだと地元・北海道のお父さんお母さんに申し訳ない気持ちがこみ上げてくる。

ただ、勘違いしないでいただきたいのは、何も30杯も40杯もひと月のうちにラーメンを食べたわけではないということ。1杯800円で換算するとだいたい37〜38杯ほどになるが、純粋に数だけを数えてみると23杯だ。

賢明な読者ならばお分かりかもしれない。そう、私の場合は一度のラーメン行脚で使う金額が平均1,500円ほどと高値で安定しているのだ。

ラーメンと言えば、一般的には生存のための食事の一つ。最近は材料にこだわる店舗が増加し、ラーメンは高級化をたどっていると言われるが、それでもせいぜい一度の食事に使う金額は1,000円以内に収めたいと考えるのが常人の考えだろう。

しかし、エクストリームラーメンを存分に堪能しようとすると、一度の食事にそれくらいの金額に達することはザラなのである。

これでもか! とトッピングを加える。エクストリームラーメンが高い理由

エクストリームラーメンは、必ずしも値段までエクストリームというわけではない。せいぜい一杯1,000円前後というパターンが多い。ではなぜ私は一度に1,500円も払っているのか?

それはラーメンマニアの悲しき性とも言える、ラーメンという宇宙を彩る「トッピング」をこれでもかと加えるからである。

ラーメン屋のメニューには、「チャーシュー麺」であったり、「ワンタン麺」であったり、既にトッピングの付いたメニューが用意されている。

私は初見の店であっても即決と言わんばかりにその食券のボタンを押してしまうわけだが、もともとの量だけでは決して満足することなどできない。

どこのラーメン屋に行っても「味玉」(だいたい100円)という但し書きがある。まずは、このボタンをちゅうちょなく押し、さらには店によってチャーシューやメンマなどを加えていく。

例えば、最後にも紹介する「麺屋 永太」でつけ麺を頼むとき、私は必ず「チャーシューメンマ」(450円)のトッピングをする。

通常の「つけ麺」(850円)でも、「こんなに入れてもらえるのか」と驚くレベルのチャーシューとメンマが入っているところ、さらに追加で倍増させるのだ。

そして、「生卵」(50円)も忘れてはならない。これがあると、ただでさえなめらかな口触りの麺に、艶と輝きがより高まるのである。

とどまることを知らない欲に、自分自身も愕然としてしまうが、麺を食べているのか、肉を食べているのか、たけのこを食べているのか、何がなんだか分からなくなる。そうなってからが本番だと、私は考えている。

“エクストリーム”を体験するために、食前酒で旅の準備をする

エクストリームな体験をする上で、もうひとつ押さえておきたいのは食前のビールである。

北海道の田舎育ちの私は、地元でラーメンを食べに行くときたいてい車で訪れていた。そのため、当初はラーメン屋でビールを飲むという行為はなかなか受け入れがたいものがあった。

しかし、慣れとは怖いもの。この大都会・東京での生活を送っていくうち、ラーメンを食べる前にビールを飲むことは至高の楽しみになってしまった。

食券を買いそろえ、席に座る。まずはビールとおつまみのお出ましだ。軽く一礼をし、キンキンに冷えたグラスにビールを注ぐ。

乾いた喉を潤しながら、おつまみに手をやると、口がその贅沢な小皿を求めていたことを実感する。ラーメンが提供されるまでのおよそ10分弱の刹那、私はこのひとときを抱きしめるために生きていると言っても過言ではない。

そしてラーメンが来たら、残ったビールとともに麺を流し込んでいく。無論、私が通うお店のスープは、ビールで薄まるようなパンチの弱い代物ではないから安心だ。

ただし付け加えておきたいのが、回転率が命のラーメン屋で長居は禁物ということ。与えられた時間を有意義に使い、長くても30分弱のショートトリップで済ませることは忘れないでほしい。お兄さんとの約束だ。

おうちでエクストリーム!

ここまでが平時の私のエクストリームラーメン体験である。なぜ、一度のラーメン行脚で私が1,500円も支払っているのか、お分かりいただけただろう。

しかし、前述の通り、今はコロナ禍でおいそれと店に足を運ぶことはできない。そこで最近手を出しているのが自作ラーメンだ。

まず最初は各ラーメン屋の力を借り、テイクアウトを利用したラーメンづくりに挑戦した。

ラーメン屋で働く戦士たちの手付きの一つ一つを思い出し、最終的には降霊術に任せ、自分自身に語りかける。「ニンニク入れますか?」と。

そして、先日からはこれだけに飽き足らず、製麺機を借りて麺やスープの自作に踏み切ることになった。

詳細は割愛するが、具材とスープをつくるだけで5,000円ほどの材料費がかかったことを告白しておく。

鶏ガラ、豚のげんこつ、ネギ、にんにく、生姜などを煮込み、そこにチャーシュー用の豚のウデ肉や肩ロースを入浴させていくわけだが、だいたい2kgぐらいないと良い出汁が出ない感覚がある。そのため、どうしてもチャーシュー代だけで2,000円台、高いときには4,000円近くなってしまうのだ。

じっくりとスープをつくっていると、あっという間に1日が経過してしまう。ただ、時間とお金をかけた代わりに、私は今まで抱いたことのない達成感を得ることができた。たまには自作するのも悪くない。

初心者におすすめしたいエクストリームラーメンの名店

それでは最後に、エクストリームラーメンに興味が出てきて、自分も味わってみたいと思った人に向け、おすすめのお店を紹介しておこう。

麺屋永太(埼玉県蕨市)

先にも紹介した西川口のお隣に位置する、埼玉県蕨市の「麺屋永太」

まずは、おつまみ(チャーシューメンマ)付きの「ビール中瓶」(600円)をオーダーし、ラーメン到着までにコンディションを調整するのが定番。その上で、「つけ麺」の気分でない日は、塩ラーメン(900円)にチャーシューメンマ(450円)をトッピングし、最後に辛味(100円)をぶち込み、一気にたいらげていくのが至高。

もちろん、さらなる高みを目指したいときには、チャーシューメンマラーメン(1,250円)にさらに「チャーシューメンマ」をトッピングしてもOK。「翌朝まで満腹」になりたい人は、ぜひ一度訪れてみていただきたい。

覆麺 智(東京神保町)

冒頭に「食材の質云々より」などと申し上げたが、さすがに仕込みの段階でたっぷりうにを20Kgも使っている「覆麺 智」の「雲丹まぜそば」(1,800円 ※限定メニュー)となれば話は別だ。

神保町にお店を構えるこちらのお店は、ほかのレギュラーメニューについても膨大な材料が使われている。東京のど真ん中、ひときわ目立つオレンジの外観が眩しい店舗があれば、ぜひとも飛び込み、そのときに味わえる限定メニューとレギュラーメニューを堪能してほしい。

らぁ麺とうひち(京都市北区)

昨年、とあるラーメンマニアと関西まで1泊2日で5杯のラーメンを食べる旅行に出た。2日目の京都で堪能したのが「らぁ麺とうひち」の芸術的なつけ麺「鶏醤油つけそば」(900円)とトッピングのメンマ(150円)、それに唐揚げ(500円)という豪華ラインナップ。

唐揚げをつまみながら塩で麺を食べ、スープを味わい、また唐揚げをそのまま堪能する…大変忙しい食事をこれでもか、と楽しむことができるのである。

同行したラーメンマニアは、観光地を回る気など一切なく、ただただラーメンと酒を欲していた。私はさすがにもったいないと思ってしまったので、無理やり彼を三十三間堂へのお参りに付き合わせたものである……。恐るべし、ラーメンマニア。

ラーメンは娯楽だ

ラーメンを愛する者は学生であったり、サラリーマンであったり、さまざまな背景を持った人がいるであろうが、ラーメンは決して差別をしない。等しくラーメンの神は我々に微笑んでくれる。

今回は私のラーメンにかける熱意とお金のせめぎあいについてのドキュメンタリーとなったが、今度はあなたとラーメンの物語を聞かせてほしい。

最後に改めてこう言おう。ラーメン代は食費ではない。娯楽費の一つとして、あなたの生活を彩るのである。

はてなブログ、Instagramを主戦場とするエクストリームラーメン専門家。ラーメンレビューはそこそこに、文章の中身はほぼエッセイや日記。ラーメン屋往復の道すがらに文章を書いているせいか、フリック入力が女子高生並みのスピードに。

編集:はてな編集部