将棋を一局観戦するために250万円。「叡王戦見届け人」を経験した“観る将”のお金の使い方

将棋を一局観戦するために250万円。「叡王戦見届け人」を経験した“観る将”のお金の使い方

皆さま、こんにちは。「将棋マダム」と申します。ここ数年は専業主婦のかたわら、ABEMAの将棋チャンネルを視聴したり、将棋イベントに行ったりといった将棋観戦を楽しんでいます。

近年ではニコニコ生放送やABEMAなどのインターネット配信の充実もあり、私のように実際に将棋を指すわけではなく、プロ棋士の対局を観戦して楽しむ将棋ファンが増えています。こういったファンは「観る将」と呼ばれています。

そして、将棋界には棋士の先生方が目指している大きなタイトルが8つあります。今注目を集めている藤井聡太竜王(執筆時点の2021年11月時点での肩書き。他に王位・叡王・棋聖のタイトルを持つ)は、そのうちの4つを獲得しているので四冠と呼ばれています。

この中で、もっとも歴史が新しいタイトルは「叡王(えいおう)」です。2015年にニコニコ生放送で予選も含めた全対局を配信することを前提に誕生しました(正確には誕生が2015年でタイトル戦に昇格したのは2017年)。

ネット配信時代に生まれたタイトルということもあり、「観る将」にも楽しめるさまざまな試みがなされており、その中に「叡王戦見届け人」があります。

「叡王戦見届け人」とは、現在の叡王保持者とトーナメントを勝ち上がった挑戦者が「叡王」をかけて戦うタイトル戦を、対局場で見守ることができる制度です。

それだけでなく、おやつや昼食も棋士が食べるものと同じものをいただけたり、終局後には勝者から対局で使用した駒までいただけたりと、特典がもりだくさんです。

千駄ヶ谷にある日本将棋連盟の「将棋会館」


この度、幸運にも、各対局で当選者1名の「叡王戦見届け人」に当選することができました。

叡王戦は先に3勝した方がタイトルを獲得できる5番勝負なので、最大5対局あり、見届け人も最大5人選ばれます。そして、第六期叡王戦の3局目で見届け人を務め、今をときめく藤井竜王の対局を直接この目で見届けることができたのです。

参加費はなんと250万円! 高額なのですが、憧れの藤井竜王にお会いできる数少ないチャンスです。どうしても参加したいと思い、清水の舞台から飛び降りるつもりで申し込みました。きっと私の一生の運を使い果たしたと思っています。

実際に務めさせていただいた「叡王戦見届け人」は、事前に聞いていた以上の特典や関係者の方々のおもてなしに満ちた素敵な体験でした。

今回は、私の「観る将」としての趣味活動と、「叡王戦見届け人」で体験した素晴らしい出来事について紹介したいと思います。

藤井聡太竜王の番組を見て将棋に興味を持ち、沼にハマる

私が将棋に興味を持ったのは、藤井竜王がきっかけです。ハマる前の私はまったくの初心者で、駒の動かし方も正確には知りませんでした。「二歩」が反則ということぐらいの知識しかなかったほどです。

藤井竜王は2016年10月1日に、史上5人目の中学生棋士として四段に昇段しました。将棋の世界では四段から「プロ棋士」となります。初めての公式戦(2016年のクリスマスイブ)では、テレビなどでおなじみの「ひふみん」こと加藤一二三(ひふみ)九段と対局されました。私はその模様をAbemaTV(当時)で視聴していたのです。

何しろ、駒の動かし方もあやふやなド素人だったので「将棋 駒 動き」と検索して、検索結果の駒の動かし方の図を見ながら盤面と見比べていた記憶があります。

さらに翌年の2017年、AbemaTVで放送された『藤井聡太 炎の七番勝負』を観て、羽生善治三冠(当時)に涼しい顔で勝った姿を目の当たりにし、失礼ながら「この子(藤井四段・当時)すご過ぎる!」と仰天。そこから藤井竜王の大ファンになったのです。

【用語集】
  • 藤井聡太四段 炎の七番勝負……将棋界の記録を62年ぶりに塗り替えて最年少プロ棋士デビューをした藤井聡太四段(当時)が、若手からトップ棋士までを含む7人の棋士と対局する番組。対戦相手は増田康宏四段、永瀬拓矢六段、斎藤慎太郎六段、中村太地六段、深浦康市九段、佐藤康光九段、羽生善治三冠(肩書きは全て当時のもの)
ABEMA将棋チャンネルより。「藤井聡太四段 炎の七番勝負」もプレミアムに加入すれば現在も見ることができます


なぜよく知りもしない将棋番組を観たのかというと、私が愛知県名古屋市出身で、藤井竜王が愛知県瀬戸市出身なこともあり、地元のヒーロー的な、郷土愛の延長でした。ローカルニュースでも「愛知県から中学生棋士誕生! すごいすごい!」の大合唱でしたから。

最初はほんの軽い気持ちでした。それが沼に落ちるきっかけになるとも気づかずに……。

その後はいろいろな将棋番組を観るようになり、さらに藤井竜王のファンになっていったのは言うまでもありません。

そのまま少しずつ将棋を理解していくと、他の棋士の先生を観る余裕が出てきました。棋士や女流棋士の先生方には面白い人、カッコいい人、かわいい人がたくさんいらっしゃいます。本当の意味でのタレントの宝庫だったのです。

もともと私自身は頭の回転が速い人が好きだったということもあり、将棋や、棋士の先生方にすっかり心酔してしまいました。

現在では藤井将棋のすごさを少しでも身近に感じるために、将棋の勉強を始めました。亀の歩みではありますが……。今は、なんちゃって「相掛かり」が指せるようになりました。自信はありませんが「一手詰」の詰将棋の本とにらめっこする日々を過ごしています。

また、時々ですが藤井聡太竜王のインタビュー本や、将棋世界(将棋専門誌)も買って眺めるようになっています。

【用語集】
  • 相掛かり……将棋の戦法のひとつ。飛車を初期位置から動かさずに駒組みをする(居飛車戦法)のひとつで、先手と後手がお互いに居飛車を選び、飛車の先にある歩を伸ばしていく戦法。
  • 一手詰……詰め将棋の一種。あと一手指すと相手の玉が「詰み」になっている局面が描かれているので、最適な「一手」を探す問題のことを言う。

「観る将」活動にかけるお金。観戦・グッズ・将棋メシ

集めたグッズや本の一部です


「観る将」の活動は、極端な話、まったくお金をかけなくてもいい趣味です。ABEMAの将棋チャンネルは基本的に無料ですし、今ではたくさんのプロ棋士やアマチュアの将棋YouTuberの方々が、解説や将棋の面白いお話を動画で紹介しています。これらを観ているだけでも、将棋を楽しむことは十分にできます。

ですが、お金をかけようと思ったら青天井でキリがありません。その中から、いくつか代表的なものを紹介したいと思います。

「観戦」するための遠征費

配信だけでなく、実際に将棋を観に行くようになると、これもお金がかかります。

私が当選した「叡王戦見届け人」のような、250万円もかかる高額なものは例外としても、普通に参加できる「大盤解説会」があります。これは、タイトル戦などで、対局者ではない棋士が大きな盤面を使って、いま戦いがどのように行われているのか、この手の狙いは何なのかを解説してくれるイベントです。

大盤解説会は、得てして実際に対局が行われている場所の近くで開催されるイベントです。そして、タイトル戦はさまざまな地方で行われるのですが、舞台となるのは高級旅館や高級ホテルが多いのもポイントです。対局者は集中して将棋を指す必要があるため、関係者の多くは別室で待機しなければなりません。

また、2日にかけて行われる対局では当然宿泊場所も必要になりますし、1日で行われる対局でも、決着がつくまで行われるため、深夜までかかることもあります。そのため、部屋が多く、泊まれるホテルや旅館になるというわけです。

実際の大盤解説会も、対局と同じホテルの大広間などで行われることがほとんどです。そのため、遠征費や宿泊費がかかるのですね。実際、コロナ禍の前までは、対局場の旅館やホテルの宿泊代金が含まれた将棋タイトル戦のパッケージツアーもたくさんあったようです。

残念なことに、現在ではコロナ禍の影響で大盤解説会は縮小されて、ツアーなどは組まれず、事前抽選制になっています(執筆時点の2021年11月現在)。寂しい限りですね……。

でも、藤井竜王が今後も活躍されて、将棋のムーブメントがもっと加速していけば、コロナ禍にも必ず打ち勝って楽しい将棋イベントが復活することを信じています。

現在、私は、家の近くで行われる大盤解説会の抽選には申し込んでいますが、ほとんどネット配信を中心に観戦しています。月額料金を払うサブスクでは、ABEMAプレミアム(月額960円)に入会し、将棋チャンネルで対局や解説を楽しんでいます。

また、スマートフォン用の日本将棋連盟Live中継アプリ(月額550円)にも加入しており、対局の実際の棋譜や解説を読んでいます。

かわいいものから何百万円するものまである将棋関連グッズ

観戦以外にも、将棋や棋士の先生方にハマってくると、関連グッズが欲しくなります。

トップ棋士と同じ将棋盤と駒が欲しいと思ったら何百万円もかかるし、それが年代物の希少価値の逸品だったらもっとかかるでしょう。

高い駒だと、このように側面に誰が作ったのか等の銘が入ったりします(後述しますが、この駒は叡王戦見届け人の特典でもらえるもので、全部で70万円ほどの価値があります)


将棋を指す人だと、ファンの先生が書いた戦法の本が欲しくなるでしょう。でも、それ以外にもさまざまな本が出ています。

中には、アイドルの写真集に出てくるようなラフなお写真が掲載されている本もあります。スポーツ誌『Number』の将棋特集などですね。そういったものもこっそり買っています。

駒の根付。「馬」が反転しているのは「左馬」といって、福を表す縁起の良い駒とされています


また、日本将棋連盟ではかわいい将棋グッズなども販売されているので、それを少しずつ集めています。いま一番メインで集めているのは「駒の根付」です。

もうひとつ集めているものがあります。それは揮毫(きごう)と呼ばれるもので、いわゆるサインです。

藤井竜王が色紙に筆で揮毫されているのを、テレビで観たことがある人も多いと思います。棋士の先生方は、毛筆でサインを書き、落款という印を押してくださるのですね。

だとすると、御朱印帳に揮毫をもらえばいいのでは、と思いつきました。これは神社仏閣巡りが趣味の友人の影響でもあります。

実は「リラックマ」も好きなので、御朱印帳は「リラックマ」のものにしています


少し罰当たりだったかなと思わなくもありません。神様ごめんなさい。でもすごく趣があって、すぐに見返せる素敵なサイン帳になりました。私の最も大事な宝物の一つです。

聖地巡礼も楽しい「将棋メシ」

ここまで読まれた方の中には「将棋はルールも複雑だしハードルが高い」と思っている方もいるかもしれません。実は将棋の対局をネット配信などで観ていると、結構軽い話題や雑談が登場します。中でも「将棋メシ」は必ず写真付で紹介されて、対局中の棋士がお昼または夕食に何を食べたのかが話題になるのです。

そのため、「将棋メシ」のお店に実際に行って、同じものを食べる聖地巡礼的なことをすることもあります。

普段、棋士の方々が対局中に食べているのは、東京と大阪の将棋会館の近くにあるお店です。対局中は不正防止のために将棋会館の外に出られないので、出前を取っているのですね。

私は地方在住ということとコロナ禍もあって、なかなか行く機会がなかったのですが、先日藤井竜王の叡王就位式に招待していただいた際(後述します)に、東京の千駄ヶ谷にある将棋会館周辺の、将棋メシで有名なお店に行くことができました! いくつか紹介しましょう。

「ル・キャレ」のビーフストロガノフ


「ル・キャレ」のビーフストロガノフは、お肉がホロホロと溶けるくらい柔らかくて棋士の人気メニューです。毎日食べたいくらい美味しかったです。

和定食のお弁当などが棋士の先生方にも人気の「鳩やぐら」です。残念ながらたどり着いたときはラストオーダー後でした。

「アンフォラ」のティラミスとアイスティー


洋食といったらここ! という、ワインビストロ「アンフォラ」のティラミスです。ケーキの生地から手造りで、エスプレッソを抽出した香り高い濃厚なお味は女流棋士に大人気!

それなのに後味がさっぱりしているティラミスでした。こんなに爽やかなティラミスは今までに食べたことがありません!

一緒に注文したアイスティーは、見た目から分かるようにかなり濃くて香り高いのに、渋味がほとんどありませんでした。これにはちょっと感動してしまいました。

あまりのおいしさに、次に将棋会館のある千駄ヶ谷に来たときは必ず「アンフォラ」でお食事をしたいと固く決意し、ついでにオススメの人気メニューを伺っちゃいました。

「骨付き鶏もも肉のガーリックローストセット(サラダ・自家製パン付き)1,000円」は、お肉の裏側に切れ込みがあり、お箸でもスッと取れる柔らかさがたまらないそうです。将棋ファンの間では、永瀬拓矢王座が何回も注文したことで話題にもなりました。羽生善治九段も注文される、棋士の間で大人気メニューです。

体感では事前情報の倍以上! すご過ぎる「叡王戦見届け人」特典の数々

ここからは、冒頭でも触れた「叡王戦見届け人」について紹介します。「叡王戦見届け人」に当選すると、全部で9個の特典を受けることができます。

これは第六期叡王戦にて発表された内容でありますので、今後、変更の可能性があるかも知れません。その点をご了承ください。では、実際に特典とはどんな内容だったのか? 私の実体験を詳しくご案内したいと思います。

特典内容
  1. 対局者が行う対局前の事前確認に同席できる(「前日検分」)
  2. 開始前後に対局室に入室できる(「対局開始時ならびに感想戦」)
  3. 棋士・女流棋士に対局を解説・指導してもらえる
  4. 棋士・女流棋士に対局会場の近隣を案内してもらえる
  5. 対局者が選んだ昼食と同じものを注文できる
  6. 両対局者と立会人、解説棋士・女流棋士の直筆色紙がもらえる
  7. 叡王戦五番勝負記念扇子がもらえる
  8. 宿泊用に、対局会場もしくは近隣のホテルを用意してもらえる
  9. 対局で使用した駒がもらえる
  10. 【エクストラスペシャル】叡王就位式に招待してもらえる

【特典1】<初日>対局者が行う対局前の事前確認に同席できる(「前日検分」)

検分とは、対局前に当日使う駒や座布団などを選んだり、室温を確認したりすることです。

ABEMA将棋チャンネルで検分の様子をご覧になった事がある方は想像できると思いますが、解説や立会人をするための棋士、女流棋士の先生が、そこかしこに至近距離でいらっしゃいます。まさに画面で見ている光景そのものです。

相撲で例えると土俵下の「たまり席」と同じで、目の前に藤井聡太二冠(当時)がいらっしゃるのです。もうドキドキしっぱなし。舞い上がること請け合いです。

両対局者との記念撮影も公式カメラで撮ってもらえました。これは公式ブログなどに掲載される可能性があります。ただし、「公式ブログや映像などにアップしないで下さい」と事前申告すれば公開はされません。


【特典2】<2日目>開始前後に対局室に入室できる(「対局開始時ならびに感想戦」)


対局開始時と、対局が終了した後の感想戦の際に、実際にタイトル戦の対局が行われるお部屋に入室できます。写真も撮り放題です。神聖な勝負の世界の一端を垣間見ることが出来るすごい特典です。

【用語集】
  • 感想戦……対局終了後に、両対局者が初手から盤面を再現し、何が勝因だったのか、どれが敗着だったのかを探る反省会のようなもの。どちらかというと、両者で最適な一手は何かを探る意味合いが強い。

この特典1と2は将棋ファンなら非常に貴重な体験ができる素晴らしい特典なのですが、2つの問題がありました。

対局が行われる部屋には、初日の「検分」と、「対局前から開始2手ぐらい」まで、そして対局終了後の「感想戦」の計3回のみ入室できます。対局室には両対局者が将棋盤を挟んで座っているところの横に長机があり、真ん中に立ち会い人の棋士の先生が座布団で正座で座ります。「検分」と「感想戦」の際には、さらにこの真横に座る権利をいただけるのです。

1つ目の問題としては、ABEMA将棋チャンネルやテレビ局の取材が入った場合には、インターネット配信だけでなく、全国放送またはローカル放送でテレビに大映しになることです。顔バレNGの人は要注意です。私は残念ながらこの特典は辞退しました。

2つ目は、テレビに出たくないということ以外にも、正座が厳しいことでした。「検分」は5分程度なので何とかなりそうですが、「感想戦」は通常30分から1時間ほどかかります。正座に慣れない人はつらいでしょう。男性はあぐらでもOKのようですが、どちらにしてもなかなか難しいと思います。

ということで、テレビカメラの後ろ側の、画面には映らないけれども割と近い場所で「叡王戦見届け人」をさせていただきました。私と同じように、テレビに出たくない、正座が苦手という人は、事前に申請すればこのように配慮していただけます。

【特典3】棋士・女流棋士に対局を解説・指導してもらえる

対局中は棋士と女流棋士の先生方に直接解説していただけます。

どの先生に解説してもらいたいか、希望する棋士を事前に申告することができました。私は第3希望までを書きましたが、書かずに将棋連盟にお任せしてもいいし、10人ぐらい希望を出してもいいと思います。

その結果、谷合廣紀四段と安食総子女流初段に案内していただけました。後から教えていただいたのですが、スケジュールが忙しい棋士の先生以外は極力叡王戦見届け人の希望を優先して下さるそうなので、希望を出した方が良いと思います。

谷合四段を第1希望にしたのは、棋士だけでなく、東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程に在籍中のエンジニアだからです。

私もファンではありますが、夫が棋士としてもエンジニアとしても谷合四段の大ファンで、当日は谷合四段と夫が30分も電話で会話できるサプライズもありました!

安食女流初段は、お気遣いが素晴らしい、とても素敵な女流棋士でした。初めてお会いしたのですが、すっかり大ファンになりました。


【特典4】棋士・女流棋士に対局会場の近隣を案内してもらえる


対局会場や大盤解説会場の近隣を、棋士や女流棋士と一緒に散策したり、写真撮影を行える特典です。

ですが、この特典はパスしました。私は名古屋市民なので、名古屋の料亭(今回の対局場)の近隣を散策するのはいつでもできると思ったからです。


【特典5】対局者が選んだ昼食と同じものを注文できる


実際に対局者が注文するのと同じメニューを注文できるという特典です。

対局者の近くで、同じものを食べられるのですから、究極の将棋メシといえるかもしれません。

ちなみにこれは正確には対局者用メニューではなく、対局者が選んだ昼食(最大2種類)からチョイスという意味でした。ですから、対局者に選ばれなかった昼食メニューは食べれません。これは少し残念でした。思い出優先チョイスですね。「これも一局」ということで。

ただ最近は、藤井竜王の選んだかわいいおやつの話題の広告効果がすさまじいので、そちらの楽しみの方が大きいかも知れません。2021年の竜王戦において提供された和菓子が超人気で、お店が想像した以上にお客さんが殺到し、連日1時間以上の行列ができているそうです。そういう風物詩みたいなものは、長く続いてほしいなと思っています。

実際には昼食だけでなく、おやつも午前と午後の2回出してもらえました。対局は頭を使うので、糖分補給の意味もあっておやつが提供されるのですね。胸がいっぱいで食欲が無くなる可能性はありますが、いろいろな美味しいものを食べるチャンスがあります。


【特典6】両対局者と立会人、解説棋士・女流棋士の直筆色紙がもらえる


日本将棋連盟の公式サイトには「両対局者と立会人・解説(アテンド)棋士・女流棋士の揮毫色紙をプレゼントします」と、合計5名の先生方の色紙をいただけると記載されていますが、私は9枚(9名の棋士と女流棋士)の色紙をいただきました! ほぼ倍です。大満足です。

棋士の先生方は、女流棋士や記録係の齊藤優希三段を含めると総勢17名にお会いできました。皆さま個性的な素晴らしい先生方です。本当に楽しい時間でした。

そして持参した御朱印帳に16名の棋士と女流棋士の先生方の揮毫を全ていただくことができました! 今後「叡王戦見届け人」として参加される方には、御朱印帳かサイン帳のいずれかを持参されることを強く推奨します!


【特典7】叡王戦五番勝負記念扇子がもらえる


実は当日いただいた扇子は豊島将之叡王(当時)お一人の記念扇子だったのですが(これもすごくうれしかった)、後日宅配便で「叡王戦五番勝負記念扇子」と叡王戦ポスターが3枚も送られてきました!日本将棋連盟のお心遣いがとてもうれしかったです。

いただいた扇子の箱です。中身は私だけの宝物とさせてください。


【特典8】<対局前日・当日>宿泊用に、対局会場もしくは近隣のホテルを用意してもらえる

対局会場もしくは近隣のホテルを用意してもらえます。いずれも高級ホテル(旅館)です。

現在はコロナ禍で飲食を伴うイベントができないので、対局の食事以外はルームサービスのみでした。それもあってか、食事が美味しいホテル(旅館)を選ばれているような気がします。これも日本将棋連盟のお心遣いですね。


【特典9】対局で使用した駒がもらえる


これが一番うれしくて、一番高価な特典になります。私が「叡王戦見届け人」として参加した対局時は藤井竜王が勝利されたので、藤井竜王から手渡しで駒をいただきました。ツーショット写真もたくさん撮っていただけて、とても素晴らしい思い出となっています。

後日、日本将棋連盟の関係者の方に伺ったのですが、駒そのもののお値段は70万円ほどだそうです。私はせいぜい5万円くらいの駒かと思っていたので(失礼)とんでも無かったです。250万円のお値段に見合う、むしろ十分過ぎる特典の数々でした。

実際の対局で使用された駒だけでなく、駒袋と駒箱もいただきました


【特典エクストラスペシャル】叡王就位式に招待してもらえる

叡王戦が終わったあとに、日本将棋連盟からお手紙がきました。開封してビックリ! 藤井聡太「新叡王」の就位式のご招待状が入っていました。

そのおかげで12年ぶりに上京し、千駄ヶ谷の将棋会館や、少しですが「将棋メシ」のお店にも伺うことができました。また、お世話になった関係者の方々にお会いすることができて二重の喜びでした。

結局、叡王就位式では藤井新叡王とは言葉を交わせなかったのですが、次の楽しみに取っておきます。いろいろと前向きに頑張ろうと思わせてくれる「藤井聡太」という棋士の存在が、私の生きる目標の一つであることは間違いないのです。

いただいた叡王就位式の招待状です


特典をつらつらと書いてみましたが、実際に「叡王戦見届け人」になってみて、事前に伺っていた特典よりも、たくさんいただけたと言うのが嘘偽りのない実感です。私の体感としては、事前情報の倍くらいのイメージです。

また棋士の先生方だけでなく、そこで働く日本将棋連盟の職員の方々、記者の方々、カメラマンの方々、いろいろな方々とお話しできる機会があり、将棋を取り巻く世界の一部を実際に観て体験して感動し続けた2日間でした。

そうそう、「叡王戦見届け人」の2日間では、1円のお金もかからなかったのです。行きの自宅から対局場の料亭までと、帰りのホテルから自宅のタクシー代金も無料で交通費も全くかかりませんでした。

宿泊先ホテルのルームサービスに至るまで特典に含まれており、さらにはタクシー移動中に寄ってもらったコンビニでのジュースやお菓子代までスタッフさんに出していただきました。

その他に私が使ったお金は、豊島将之叡王(当時)と藤井二冠(当時)にそれぞれプレゼントをお渡ししたり、関係者の方々にお配りしたりした贈答用のお菓子代くらいです。

あとお伝えしたい重要なポイントは、ご自分の名刺(無ければ自作して)を持って行くことと、性能の良いデジカメを持っていくことです。これはマストですよ!

将棋によって救われた。今は藤井聡太竜王がどこまでいくかを見届けたい

冒頭でも触れた通り、私は昔から将棋にハマって熱狂していたというわけではありませんでした。もちろん将棋が強いわけでもありません。「叡王戦見届け人」の応募の際に、メールの備考欄で参加したいことをすごくアピールした訳でもないです。

でも、私の中の将棋が好きという気持ち、対局を観ていてわくわくする気持ちは本物だと思っています。もしかしたら、それが「叡王戦見届け人」に選ばれた理由かも知れません。

私はまだハマりたてのファンで、これで一生の運も使い果たしたかも知れません。ですが、2020年にガンの手術をして、本当に死ぬんじゃないか? とも思った時に比べれば、今はとても幸せだと思います。

「叡王戦見届け人」に当選するまでは、大袈裟ではなく人生を儚んでいて、ひょっとして自分が消えてしまったら? ということばかり考えていました。毎日の生活に対して、かなり後ろ向きな態度だったのです。

それが今では、将棋が楽しくてしかたありません。藤井竜王がどこまで強くなるか、「見届け」なければ! という使命感すらあります。もしかしたら神様が、私の心の弱さを見かねて、叱咤激励してくれたのかな? という気持ちにもなっています。

「叡王戦見届け人」を務め終わってすぐに、この体験を一人だけのものにしておくのはもったいない! 多くの将棋ファンの皆さまに追体験してもらいたい! と思い、ブログを開設しました。私の体験した「叡王戦見届け人」制度のことを、多くの将棋ファンの皆さまに文章や写真で伝えたいと思ったからです。

また、一局につき限定1名のみ選ばれる「見届け人」ですから、私の体験談で楽しかったことや失敗談をお伝えして、これから「叡王戦見届け人」に応募される方々の、僭越ながら羅針盤になれれば……とも思ったのです。

今後も観る将として、藤井竜王のファンとして、「藤井将棋」を少しでも身近に感じるために将棋の勉強を続けたいと思います。

そしていつの日か棋士の先生のオンライン指導対局を受けたいと考えています。また、できるだけ健康を取り戻して将棋メシを食べるために、東西の将棋会館に旅行に行ってお世話になった関係者の方々に会いに行きたいと思っています。

将棋の藤井聡太竜王に人生の教えを乞う、専業主婦の「観る将」です。せっかく将棋を好きになったので、ちゃんと将棋が指せるようになりたいけれど、道のりはまだまだ遠いようです。テレビはABEMAとNHKで将棋を見るための専用モニターになっています。

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編集:はてな編集部