プロの料理人おすすめの家庭用キッチングッズを、無印良品・ニトリ・100円ショップから総額1万円分教えてもらった

プロの料理人おすすめの家庭用キッチングッズを、無印良品・ニトリ・100円ショップから総額1万円分教えてもらった

はじめまして。竹内啓二と申します。大阪・福島に3店舗、梅田に1店舗を展開するイタリアンのオーナーシェフをやっております。4店舗を経営しながら、毎日市場へ足を運んで食材を厳選し、料理を提供しています。

おかげさまで舌の肥えた大阪のお客様から支持を受け、自らキッチンに立っている本店のil luogo di TAKEUCHI(イル ルォーゴ ディ タケウチ)と姉妹店のMACELLERIA di TAKEUCHI(マチェレリーア ディ タケウチ)はミシュランガイドに2014年から2022年まで連続で掲載されるようになりました。

飲食店を経営し、毎日お客様に料理を提供する中で、食材や料理人の腕とともに重要なのが「調理器具」です。

皆さまは「プロはプロ用のものを使っている」と思っているかも知れません。私も昔はそう思っていました。家庭用のものは安いかもしれないけど、毎日使うとなると耐久面などが不安だったのです。

ですが、最近の家庭用キッチングッズの進化はめざましく、業務用と遜色ないものも数多く出てきています。

特に、無印良品やニトリ、100円ショップなどで売られているものの中にはコストパフォーマンスが良く、プロの現場で使えるものも少なくありません。

お店でも使えると気づいてからこれらのキッチングッズにはまり、今では頻繁に無印良品などを見て回り、コスパがよくプロの現場でも使えるものを常に探すようになりました。

4店舗分の10年間と考えると、購入した調理器具は800〜1000万円ぐらいでしょうか。もちろん、プロ用のものも便利なキッチングッズも含めてです。

そこで今回は、両者の道具を使い倒している私が納得し、プロの現場でも日常的に使用しているおすすめの家庭用キッチングッズを紹介します。総額1万円でそろえられるよう、1,000円以下で買えるもの、2,000円以下で買えるものを中心に選んでみました。

コストパフォーマンス抜群! 1,000円以下で買えるキッチングッズ

  • 【1】無印良品:シリコーン調理スプーン……490円
  • 【2】無印良品:シリコーンジャムスプーン……390円
  • 【3】ニトリ:引っ張り式みじん切り器 M……814円
  • 【4】ニトリ:油はね防止ネット 22cm……299円
  • 【5】ニトリ:減塩 しょうゆスプレー……610円
  • 【6】100円ショップ:シリコーンハケ(21.5cm)……110円

【1】無印良品:シリコーン調理スプーン……490円

無印良品:シリコーン調理スプーン


この商品に出会ったことから「無印良品、使えるやん」と気づき、前から好きだった無印良品がさらに好きになり、キッチングッズ売り場に足を運ぶ頻度が上がるきっかけとなった品です。関西の人気グルメ番組でもイチオシとして紹介させていただきました。

この「シリコーン調理スプーン」は、「木べら」「お玉」「ゴムベラ」の三役をこなしてくれる優れものなんです。

全体が耐熱シリコーンでできているので、「木べら」「ゴムベラ(スパチュラ)」のように混ぜる・炒める調理に使えます。

そして、スプーン状になっていることで「すくう」という働き、つまり「お玉」の役割も果たしてくれるんです。これがすごい。

鍋からお皿にパスタのソースなどを盛り付けるとき、「ゴムベラ(スパチュラ)」などを使うよりも、このシリコーン調理スプーンでいったんすくうことで、均一に丁寧に盛り付けられます。

さらに、スプーンの先の部分だけ少し柔らかくなっているので、「ゴムベラ」のように鍋をこそぐこともできるんです。あまりにも便利過ぎて、常に2〜3本は用意して使っています。

私が購入したときには590円でしたが、現在は490円。必ず490円以上の仕事をしてくれるはずです。

【2】無印良品:シリコーンジャムスプーン……390円

無印良品:シリコーンジャムスプーン


先ほど紹介したシリコーン調理スプーンに出会ったことから、無印良品のシリコーン調理器具シリーズをチェックするようになりました。中でも愛用品となったのが、この「シリコーンジャムスプーン」です。

こちらも耐熱シリコーンができていて、スプーンの先だけが少し柔らかくなっています。

さらにサイズが小さく細いため、先ほどの調理スプーンでは届かない瓶の隅々まで「こそぐ」ことができるようになっていて、これがすごいんです。

お店では食材の味や香りを一番いい状態でお客様に提供するために、生の野菜や果物を使ったソースは、提供する直前にミンサーなどで少量ずつ作っています。

刃のある小さい器具からソースを取り出すのは意外と大変で面倒な作業です。

それが、このシリコーンジャムスプーンだと、細いところにも入るし、なにより「こそぐ」ことができるので、無駄なくソースを取り出すことができるんです。

もちろん、瓶からジャムを取り出すときにも「こそぐ」ことで、しっかり全てのジャムを取り出すことができます。

この形状と硬さは、代わりになる物がありません。常に手元に置いてあるキッチングッズです。

【3】ニトリ:引っ張り式みじん切り器 M……814円

ニトリ:引っ張り式みじん切り器


今まで料理をしなかったけれども、コロナ禍の自粛期間で料理をするようになった人も多いと思います。そんな方にぜひ使ってみてほしいのが、ニトリの「引っ張り式みじん切り器(フードチョッパー)」です。

使い方はとても簡単で、中に野菜をセットし、ハンドルを引っ張るだけ。

それだけであっという間にみじん切りができてしまいます。料理初心者の人でも簡単です。

時短調理の味方であるフードチョッパーなのですが、切れ味が悪いものでみじん切りをすると、繊維がつぶれて水が出てしまい、仕上がりの味が大きく変わってしまいます。

例えばトマトソースや肉の煮込みなどを作る際には、タマネギやニンジン、セロリなどを繊維をつぶさずみじん切りするのがとても重要なのです。

その点、このフードチョッパーは切れ味も良く、他社のものより刃の数も多く、水っぽくならないので気に入りました。食材を取り出す際には、先ほどご紹介したシリコーン調理スプーンをぜひ。

【4】ニトリ:油はね防止ネット 22cm……299円

ニトリ:油はね防止ネット


おもしろいキッチングッズはないかと、いろいろなお店をパトロールしていたところ、各社から「油はね防止ネット」というものが出ていることを最近になって知りました。

さっそく買って試したところ、これが実に便利なんです。特に、キッチンの汚れが気になる家庭での使い勝手がいいのではないでしょうか。私も、お店だけでなく自宅でも愛用しています。家のキッチンは、特に汚したくないですよね。

このネットは揚げ物をするときの油はねを防いでくれる以外にも、トマトソースなど粘度のあるものをゆっくり煮込んだときなどに、知らない間に跳んでキッチンが汚れるのを防いでくれます。

跳ねるのが嫌で蓋をしてしまうと「水分を飛ばして煮詰める」という調理ができません。でも、このネットをかぶせれば、食材や油が跳ねるのは防ぎながらも水分を飛ばすことができるのです。

煮詰めるという調理法がキッチンをまったく汚さずにできるので、一度使うと手放せなくなります。

ニトリの「油はね防止ネット」は、299円とは思えないしっかりとした作りで、本当にコストパフォーマンスがいいです。初めて油はね防止ネットを買うならこれがおすすめです。

【5】ニトリ:減塩 しょうゆスプレー……610円

ニトリ:減塩 しょうゆスプレー


ニトリの「減塩 しょうゆスプレー」は名前の通り、しょうゆを入れてスプレーすることで、使うしょうゆの量を減らして減塩できる、というアイデア商品です。

スプレーで薄くまんべんなくかけることで、つけたりかけたりするよりもしょうゆの総量が減るのですね。

プロの現場ではこれを主に調理で使っています。例えば、イタリアの魚醤コラトゥーラを入れて、炭焼きの仕上げに振りかける、などです。

刷毛で調味料を塗るよりも繊細で簡単に、さっと仕上げられるので、香りがベストな状態でお客様に料理を提供することができるのです。

家庭で使う場合でも、減塩目的はもちろん、焼き魚の焼き上がり直前にしょうゆを振りかけて芳ばしい香りを出す、といった使い方で、普段の料理をグレードアップできると思います。

【6】100円ショップ:シリコーンハケ(21.5cm)……110円

100円ショップ:シリコーンハケ


最近の100円ショップも侮れないな! と思わせてくれたのが、ダイソーで購入できる「シリコーンハケ(刷毛)」です。

シリコーンハケが世に出始めたころは、刷毛(はけ)の部分が硬くて使いにくいというのが正直な印象でした。でも、最近のものはすごい。刷毛が柔らかく、食材に負担をかけることがありません。

店では、香りが移らないよう刷毛は使い分けています。例えば、肉や魚に使うものと、デザートに用いるものとは別のものにしなければなりません。100円ショップのものなら気兼ねなく何本もそろえることができ、重宝しています。

お値段以上の価値がある、2,000円以下のキッチングッズ

  • 【1】無印良品:分解して洗えるキッチンばさみ……1,490円
  • 【2】無印良品:ステンレス平ザル……1,790円

【1】無印良品:分解して洗えるキッチンばさみ……1,490円

無印良品:分解して洗えるキッチンばさみ


調理器具にもできるだけ無駄なお金はかけたくありません。できるだけいいものを、できるだけコスパよく手に入れたい。それは、プロでも一般の人と違いはありません。

その中で、1,000円未満で買えるものもあるけれど1,000円以上かけていいと思えたのが、この「分解して洗えるキッチンばさみ」です。

外して洗えるというのは、今ではキッチンばさみに求められる機能としては当たり前かもしれません。

ですが、外して洗えるキッチンばさみといえば、これまでは持ち手まで全てステンレスのものが一般的でした(無印良品のはさみもこれが出るまでは全体がステンレスだったような記憶があります)。

しかし、この持ち手は耐熱温度100度の合成ゴムで作られているので、手当たりが良いのです。

これが、これまでの分解できるキッチンばさみにはなかった特徴です。もちろん手当たりが良いからといって、壊れやすいということもありません。

また、刃をよく見るとのこぎり状になっていて、魚や肉の太い骨などを切ることもできます。

毎日のように魚の下ごしらえなどに使い、骨を切っていますが、切れ味が落ちることなく使えているのも大きなポイントです。

パクチーなど、香りが強いものを包丁とまな板で切ると、まな板に香りが移ってしまうこともあります。そういったものこそ、このキッチンばさみで切るといいと思います。

私が購入したときは1,990円でしたが、今は1,490円。この価格の見直しをする姿勢も、無印良品のキッチングッズの好きなところです。

【2】無印良品:ステンレス平ザル……1,790円

無印良品:ステンレス平ザル


ありそうでなかったのが「ステンレス平ザル」です。正直な話、購入するときには「これは高いな」と思いました。

でも使ってみると、他にはない商品で、作りもしっかりしていて耐久性も高いので、この値段に納得せざるを得なかった商品です。

まず、ボウルと組み合わせて気軽に使えるのがうれしいポイントです。出汁をとるときに、素材が出汁の中に浸かってしまうことがないため、非常に使いやすいのです。

また、底が平たいので、食材を粗く漉(こ)すときにも使っています。

さらに、茹でた野菜を冷ますときにも、普通のボウル型のザルよりも使いやすいのです。

ボウル型だとどうしても野菜が重なってしまうのですが、平ザルに広げて置くことで、早く冷ますことができます。

茹でた野菜は、水で冷やすと味が水っぽくなってしまうので、水にさらさず早く冷やしたいときに重宝しています。

また、この平ザルには小さな脚がついているのですが、これが重要です。

シンクにそのまま置いても安心ですし、そのまま鍋に入れたら少量の水で蒸し器代わりに使うこともできます。
少し深めのフライパンでも蒸し器にできるのは、家庭でも便利だと思います。

ボウル型よりも圧倒的に場所をとらないので、収納するのにも便利です。

なんで今まで使っていなかったんだ? と思うほど、シンプルでありながら工夫の凝らされたキッチングッズだと思います。一度使い出したら、必需品になることでしょう。

3,000円台だけど、毎日の営業で一番使用頻度が高いキッチングッズ

無印良品:ソーラークッキングスケール…… 3,490円

無印良品:ソーラークッキングスケール


最後に、ちょっとお値段は高いのですが、今回取り上げたアイテムの中でも毎日の営業で一番使用頻度の高いキッチングッズを紹介させてください。それがこの「ソーラークッキングスケール」です。

これまでにもクッキングスケールは何台も使っていて、その中でも比較的値段が高いほうだなと購入時には感じていました。ですが、使って納得した商品です。

まず一番の特徴は、ソーラー電池とボタン電池のハイブリッド電源だということです。明るいところではソーラー電池のみ、暗いところだと電池で稼働するのですね。

どちらか片方だけだと、ちょっと暗くなったときに使えなかったり、電池切れで使えなくなったりするのですが、両方を組み合わせることでいつでもどこでも絶対に使える、という安定性があるのは非常に便利です。

家庭と比べて圧倒的に使用回数の多いイタリアンレストランの現場では、ものすごく忙しいタイミングでの電池切れにイライラさせられることもありましたが、これに変えてからはそれがありません。

さらに、蓋の部分は外して裏返すとちょっとした受け皿になります。

少量のものを測るときはこれで十分です。この受け皿は少しカーブしているので、パスタなど長い麺を載せて測ることもできます。

正直なところ、プロの現場ではこれには載せきれない量のパスタを計量することも多いので、パスタ計測としては使う機会が少ないのですが、地味に便利な機能だと思います。

そして、他のクッキングスケールにはない、使ってみて良さに気づいた点は、このデザイン性です。無駄がないデザインは無印良品の特徴ですが、プロの現場でお客様に見えるところで使ったときに、この無駄のないデザインは映えるな、と感じています。

キッチングッズマニアから見る、店ごとの調理器具の特徴

私が最初に市販の(業務用ではない)キッチングッズを店にも取り入れるようになったのは、100円ショップの商品からでした。

「使い捨てできる」「気軽に使い分けができる」という利点から、今回紹介したシリコーンハケや、まな板シートなどの商品を購入し、試してみたのです。

最初はちょっと使いにくいかなと思ったものも、どんどん進化して使いやすくなっていくのに驚いたものです。

そこから、無印良品やIKEA、ニトリなどでキッチングッズをチェックするようになりました。いろいろと試した結果、これらのお店のグッズには、それぞれ特徴があると感じています。

100円ショップは、なんといっても気軽に使ってみることができるのと、消耗品として扱えるものが多くそろえられています。少し前には100円で売っていなかったものが、商品化されるまでのスピードの速さも驚異的です。頻繁にチェックをすると掘り出し物があると感じています。

今回はご紹介していませんが、IKEAのキッチングッズも見逃せません。

イタリアンのレストランで使っていても不自然ではない北欧のデザイン性と、大量に購入する場合のコストパフォーマンスの良さもうれしいポイントです。

お客様に見えても不自然ではない、洗練されたデザインの商品が多いので、キッチングッズ以外にも取り入れている飲食店は多いと思います。私の店でも、キッチンクロスなどは定番として使っています。

ニトリは「お値段以上」というキャッチコピーの通り、コストパフォーマンスの良い商品が多いのが特徴だと思います。

今回紹介したフードチョッパーやしょうゆスプレーのように、アイデア商品も多く扱われているので、定期的に足を運んで店で扱える新商品がないか、チェックを欠かさずしています。

最後に無印良品です。もともと私は無印良品が好きだったのですが、キッチングッズを使い始めてからはさらにファンになりました。

常にお客様の声を聞いて商品がアップデートされるところや定番商品の価格の見直しも行われているところ(※1)は、一消費者としても信頼できる点です。

また、キッチングッズもこだわりを感じるとともに、プロの現場で使っても問題ないクオリティーのものが多く、現場で重宝しています。

レストランでも使い始めたのはここ数年からなのですが、今現場で愛用しているキッチングッズたちのこれからの耐久性と、これから出てくる新商品に期待しています。

※1……商品のアップデート:要望に答えて、シリコーン調理スプーンの長さ違いを展開したりしている。価格の見直し:半年に一度商品の価格見直しをしている。これは、商品開発の初期費用が回収できたものなどが値下げされるというもので、定番の人気商品ほど早く値下げされる
https://www.muji.com/jp/ja/store/cmdty/section/T11003

プロの現場でも使えるクオリティーの調理器具で、料理を楽しんでほしい

今の店を始めて、12年目になります。結構長い期間ですが、昔は先入観もあり、市販の家庭用調理器具を現場で使うことはあまりありませんでした。

ですが、一度使ってみると、その工夫と進化に驚き、これはすごいと使うようになりました。

コストパフォーマンスの面でも、ここ数年で機能と価格のバランスが採れてきたように感じています。

100円だからといって、プロの現場で使えないわけではありません。もちろん、家庭でも便利に使えます。


コロナ禍で家に閉じこもることが多くなり、自宅でも本格的な料理をする人が増えていると思います。そのため、調理器具の売り上げはかなり増えているのだとか。

そうしてどんどん進化していく家庭用とプロ用の調理器具の垣根は、なくなっていっているとも感じています。

たとえば低温調理器具なんて、数年前までは自宅で使う人はいなかったでしょう。プロでも使えるような高クオリティーのものが、気軽に買えるキッチングッズの中にもたくさんあるのです。

プロは業務用の業者から買う、家庭用のものは一般の市販品を買う、というのが少し前までは当たり前でしたが、もっと垣根をなくして調理用品が開発されていき、コスパのよい商品を手に取りやすくなってほしい。そして、いろんな人に料理を楽しんでほしいと思っています。

※掲載している情報は2021年11月25日時点のものです。また、価格は税込みです。

編集:はてな編集部

飲食店を営む両親のもとに育ったことがきっかけで、この世界へ。辻料理師専門学校を卒業後、大阪市のイタリア料理店で修業し腕を磨く。2010年にオーナーシェフとして【イル ルォーゴ ディ タケウチ】を開業。『ミシュランガイド関西2014~2022年』に掲載される。現在福島区に3店舗、梅田に1店舗を経営。

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