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小さな生き物と、ともに暮らして生きていこう。お花屋さんが教える、300円からできる「花のある暮らし」

小さな生き物と、ともに暮らして生きていこう。お花屋さんが教える、300円からできる「花のある暮らし」

はじめまして。都内の花屋でディレクターとフラワーデザイナーをしています、JUNERAY(ジューンレイ)と申します。

「花屋のディレクター業って何をするの?」とよくご質問いただきますが、簡単に言うと、フローリストとお客様をより良い形でつなげるお手伝いです。デザイナーとして企画した商品を、フローリストさん達に実際に作っていただいて、それをどうお客様に届けるかを考える仕事をしています。

最近は自宅で過ごす時間が増えて、お部屋に植物を取り入れる方が増えました。ただ、興味はあるけど、まだ手が出せていない……という方もいらっしゃるかもしれません。

今では花屋でディレクターをしている私ですが、最初は300円ほどで買えるバジルの苗から育て始めました。そこから鉢が増えていき、切り花も取り入れることになり……というふうに、どんどんお花を育てる楽しさを知っていったのです。

そこで今回は、わたしがお花を好きになったきっかけや、花のある暮らしをどう楽しんでいるかについて話すとともに、これからお花を迎えたいと考えている人に向けた「切り花・鉢花のおすすめの楽しみ方」を、わたしなりの視点で金額別にご紹介いたします。

まずは何をそろえたらいいんだろう? どうやって育てればいいんだろう? という悩みを解消するためのお手伝いができれば幸いです。

「バジルって、買うより育てた方が安いかも」がきっかけで購入して以来、どんどん鉢が増えていった

まずは、わたしがお花と暮らすようになったきっかけからお話します。

家に植物を取り入れはじめたのは、就職して一人暮らしを始めた頃です。当時はお花屋さんを見かけるたびに「切り花はギフトでつかうものだから縁がない」と入店をためらっていました。

そんなときに、たまたま入ったホームセンターで、バジルの小さな鉢を見つけました。お値段は確か300円ほど。「もしかして、これを育てたらスーパーでバジルを買わなくてもよくなるのかな……」と考え、試しに買って育ててみることに。

バジルを育ててしばらくたったときの写真


それからしばらくして撮ったのがこちらの写真。1つ、また1つと鉢が増え、ついには窓際にずらりと鉢が並ぶほどになりました。

ちょっと目を離した隙に虫がついたり、萎れていたりと、「自分が目を離すと死んでしまうかもしれない存在」は、ほとんどペットのようなものです。友人たちから離れた土地で一人暮らしをしていたわたしにとっては、かけがえのない存在になりました。

初めての切り花


初めて買った切り花がこちら。

ある日、お花屋さんの店頭で鉢を見ていたら、店員さんから「切り花も1輪から買っていただけますよ」と声をかけていただき、選んだものです。当時はお花の種類なんてほとんど知らず、じゃあ知ってるお花を買おう……ということで、バラになりました。

食卓に飾った時の不思議なわくわく、ソワソワした気持ちは今でも忘れられません。

それから紆余曲折あった後、ついに花屋になり、店頭でのフローリスト経験を経て今に至ります。仕事で毎日お花を見ていても、お花を買うことはすっかり習慣になってしまい、だいたい月に3,000〜10,000円分ほどの植物を迎えています。

花と暮らす上で大切なポイントは? 気になる疑問を解説

昨年から、おうち時間の増加にともなって、ご自宅や室内に植物を取り入れたいというお話をよく伺うようになりました。

その際に「切り花のお手入れはどうしたらいいの?」、「お花を迎える準備はどんなことをしたらいいの?」といった質問をよくいただいていました。

これから花のある暮らしを楽しんでみようと思っている人に向けて、わたしの視点で1つ1つ解説していきます。

  • 【1】切り花と鉢花の長所・短所は? それぞれの特徴を知っておこう
  • 【2】切り花・鉢花を育てる上で大切なポイントは?

【1】切り花と鉢花の長所・短所は? それぞれの特徴を知っておこう

切り花と鉢花それぞれに、育てる上での長所と短所があります。ご自身のライフスタイルと照らし合わせて、どちらの方が楽しめそうかを考えるといいかもしれません。

切り花は飾りやすい/鑑賞できる期間は短い

農家さんが育てたお花を切っていただき、水に生けて飾るのが切り花です。ほとんどはお花や葉が散ったらおしまいで、1〜2週間程度の観賞を目的に売られています。

梅雨は紫陽花、夏はヒマワリというように、季節のお花を気軽に取り入れられるのと、食卓にも飾りやすいのがポイントです。

鉢花は育てる過程を楽しめる/虫がつく可能性も

鉢花とは、根っこがついていて、土に植えられた植物のことです。基本的には「育てて楽しむ」もので、果樹や野菜、ハーブは収穫して食べることもできます。

注意点として、鉢のある暮らしとは、すなわち「虫のいる暮らし」になる可能性があるということ。刺す虫がつくことは少ないので怖がる必要はありませんが、大切な植物を守るために対策を練る必要があります。

【2】切り花・鉢花を育てる上で大切なポイントは?

それでは、実際に切り花・鉢花を迎えた際のお世話の仕方を簡単にご説明しましょう。

切り花で大切なのは「きれいな水」

もしかすると、これから花のある暮らしを始める方にとっては、鉢花よりも切り花の方がお手軽かもしれません。

切り花をお世話する際のポイントは、以下の3つだけ。

  1. 水がきれいか
  2. 花瓶がきれいか
  3. 切り口が新しいか

植物の茎が水に浸かり続けると、微生物が水の中で増えて、少しずつ濁っていきます。濁った水に晒された切り花は傷んで枯れてしまうので、なるべくこまめに水を替えてあげるようにしましょう。夏場でしたら1日1回、冬場は2、3日に1回が目安です。

その際、花瓶が曇っている際はきれいなスポンジと中性洗剤で洗い、よく水ですすいでおくと、次から水が濁りづらくなります。

また、切り口が古くなった茎は、うまく水を吸うことができなくなります。水換えの際に少しだけ切り詰めて、切り口を新しくしてあげましょう。

このように、切り花全体に新鮮な水を行き渡らせてあげる作業を「水揚げ」といいます。切り花のお手入れ方法を紹介した本やサイトには、よく「水切り」という方法が紹介されています。これは水を張ったバケツなどの中で茎を切り、水圧で茎の中に水を行き渡らせるテクニックですが、ご家庭でのお手入れでは空気中で茎を切ってすぐ水につける「空切り」で構いません。

夏場は水が傷みやすいので、水をやや少なめにして、口の広い花瓶にいけるとカビ防止になりますよ。

鉢花には「植え替え」が必要

根っこのついた植物は、環境がいいとどんどん成長します。子供の服のサイズが大きくなっていくように、鉢のサイズも成長に合わせて変えていかなければなりません。

鉢の大きさで足りなくなると、このように根詰まりを起こし始めます。放置すると弱ってしまうので、定期的に一回り大きい鉢と土を買い足す必要があります。

水やりの頻度については、「土が乾いてきたらたっぷり与える」が基本です。毎日少しずつあげてしまいがちですが、常に土が濡れた状態になると根腐れを起こしてしまいます。ビギナーさんが植物(特に多肉植物)を枯らしてしまう原因のほとんどが、「水のあげ過ぎ」といっても過言ではありません。

また、「観葉植物を玄関に置いていたら枯れてしまった」というような話もよく耳にします。耐陰性(薄暗いところでも成長できる性質)がある植物でも、ある程度は陽の光が必要です。「どこに飾りたいか」よりも、「どこに飾ると植物にとって快適か」を考えて配置してあげましょう。

植物の種類によって水やりの目安や、どのぐらい日光に当てたら良いかは異なるので、「(植物の名前)育て方」のようなワードで個別に調べておくのがおすすめです。

ビギナーさんでも大丈夫。300円から始める花のある暮らし

切り花と鉢花の特徴を知って、花と暮らすイメージがわいてきたのではないでしょうか。ただ、「費用はどのくらいかかるの?」「最初は何を買えばいいの?」と疑問に思われる方も多いはず。

花瓶の用意も含めて、花のある暮らしは数百円から気軽に始めることができます。

【ビギナーさん向け】まずは300円で買えるお花から始めてみよう

切り花の場合:お花屋さんでの魔法の言葉「一輪だけでも買えますか?」

お花屋さんに入りづらいという方の話を伺うと、「何円からなら個人で買ってもいいのかなと思って……」と不安に思われている方が多いです。

フローリストの立場でお答えしますと、「どうぞ一輪から、お好きなお花をお求めください!」。実際ほとんどのお花屋さんで、切り花を一輪から買うことができます。

もちろん、中には束売り専門のお花屋さんもいらっしゃいますので、不安な場合は「一輪挿しをもらってしまって、はじめてなのですが一輪から買えますか?」のように訊いてみてください。

立地や季節にもよりますが、チェーン展開されている大きいお花屋さんだと、切り花はだいたい250円程度から購入することができます。

「センスがなくてどれを飾ればいいか……」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、どれを買っても正解です。目が合ったお花を持ち帰ってみてください。

また、よく質問される「花瓶はどういうものを買えばいいか」問題。これも好きずきですが、個人的には「水が入ればなんでもOK」と思います。

わたしのお気に入りは、クラフトビールの瓶や缶をそのまま再利用した花瓶。オシャレな柄の瓶はつい取っておきたくなりますが、一輪挿しとして意外と重宝します。

再利用の花瓶ならノーコストで手に入りますし、お花代の数百円だけで花のある暮らしを始めることができますね。

鉢花の場合:夏におすすめ。収穫して楽しめる小型のハーブ鉢

鉢花については、小さいものであれば100円ほどから購入することができます。とはいえ、芽が出てから間もない植物は赤ちゃんと同じで、大きくするのにだいぶ時間と手間がかかります。

300円程度で購入できる鉢は、芽が出てからある程度育ったものが出回ることが多いため、ビギナーさんが買われる際は300〜500円程度の小型の鉢がおすすめです。

こちらのミントは園芸店で298円だったもの。鉢の植物を選ぶ際は、下から覗き込んで、葉裏に虫がついていないかを確認しましょう。

園芸店でもホームセンターでも、小さな苗は上記の写真のような薄い材質のポットに入って売られていることがあります。こちらは最低限の土しか入っていない場合が多いので、ひと回り大きな鉢に植え替えると成長させやすくなります。

剪定したミントで淹れるハーブティー


「どれを選べばいいか分からない」という方には、食べられる野菜やハーブがおすすめです。「いつか収穫して自分が食べるものだから」と思うと、いっそう丁寧にお手入れすることができるかもしれません。

「鉢花は植え替えが必要」と書きましたが、鉢花を迎える際は、長期的にコストがかかることを知っておく必要があります。まず花のある暮らしを試してみたいという方は、切り花を買うところから始めてみるのがおすすめです。

【中級者さん向け】もう一歩踏み出したい人へ。3,000円あったら何を買うべき?

花のある暮らしに慣れてきた人は、少しお金を使ってより深く切り花や鉢花を楽しんでみましょう。

切り花の場合:道具をそろえて環境を整えてみよう

お花屋さんの店頭で受けるギフト用のご注文でよくあるのが、「だいたい3,000円くらいで花束を見繕ってください」です。つまり、3,000円あると「束」のお花が買えます。

もちろん、家のあちこちに植物を置いて、お花に溢れた暮らしをするのも素敵です。でも植物が多ければ多いほど、お手入れやお世話にかける時間を毎日確保しなくてはなりません。お花の数を増やす前に、環境を整えておきたいところです。

もし3,000円ほどの予算があるときは、まずこちらのセットを揃えておくと便利でしょう。

先ほど、切り花のお手入れの際に茎の切り戻しをすると良いと書きました。文房具用のハサミだと、切る際に水を吸い上げる管を潰してしまうことがあるので、植物用のハサミを1つ持っておくと便利です。

また、切り花用の栄養剤を使用するとお花が長持ちしますし、蕾のお花も咲きやすくなります。雑菌の繁殖を抑える成分が入っているものは、夏場の水が濁りやすい時期に重宝します。

花瓶もインテリアショップや雑貨店、ネットストアにいたるまで、さまざまな場所で購入することができます。ご自宅の雰囲気に合わせた花瓶や、作家さんの一点ものの器まで、花瓶に課金することで切り花の違った姿を楽しむのも、花のある暮らしの醍醐味(だいごみ)です。

もちろん、画像の価格よりも安いもの・高いものを探すことはできますが、このくらいの金額の道具をそろえれば安心かな、と参考にしていただければと思います。

鉢花の場合:あらかじめ植え替えセットを買っておくと安心

鉢花の場合でも、3,000円ほど予算があると大きめの木苗を買うことができます。やや大きめの観葉植物などを買って育てるのも素敵ですが、これからの季節である初夏〜秋は成長が早いため、買ってすぐの状態でも根詰まりを起こしかけている場合があります。

あらかじめ植え替え用の鉢と土を買っておくと、その後すくすく育つ姿を安心して眺めることができるでしょう。

3,000円ほどの予算があるときは、まずこのセットをそろえておくと安心です。

1,000円以下の植物を買って、まだ予算があるときは、土用のスコップやジョウロなどを買っておくと便利です。

花と暮らすことは、小さな生き物とともに生きるということ。「1日3分、その植物と向き合えるか」を考えよう

植物がある暮らしを楽しみはじめると、ついつい買い足してしまい、気付けば家が植物だらけ、なんてことも。

もちろん、毎日1つ1つお手入れが続けられるようでしたら、いくつ増やしても構いませんが、お忙しい方は特に「何個までならお世話し続けられるか」を考える必要があります。

わたしが個人的に設けているルールは、「1日3分、その植物と向き合えるかを考える」こと。鉢花1つ、切り花1本につき3分。10本あったら30分です。虫がついていないかをチェックしたり、花瓶の水換えをしたりするのにかかる時間がだいたいそれくらいです。

たくさん増やして植物に囲まれたいところですが、ご自身が大変になってしまわないように、適切な距離感でともに生活できるといいですね。

花のある暮らしとは、家に小さな生き物がいる暮らし

丁寧にお世話するほど元気な姿を見せてくれる植物との暮らしを、皆さんもぜひ、楽しんでみてくださいね。

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパートの花屋。たまにライター。

編集:はてな編集部